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第67章:祭壇

魔導船は波をかき分けて海を進む。

船体が揺れ、潮風が頬を撫でている。

今日も天気が良く、地平線のかなたから太陽の日差しが差し込み、海面をきらめかせている。

海と空は青く、世界の裏側まで続いているようだった。


「多分、こっちで合っているはずね」

シャロンは操舵輪を握りしめ魔導船を操縦し、船の速度を保ちながら進む。


「宝の地図の場所が正しければ…ですけどね…」

サシャは期待半分、不安半分といった様子で呟く。


海賊船から手に入れた宝の地図。

そこには、一つだけ赤い×印で一つの島が示されているだけの、簡素な地図だった。

そして、サシャ達は今その島がある付近に来ていた。


「わざわざ机の中に隠していたんだ。重要な地図である可能性が高いだろう」

リュウは地図があった場所を思い出し、正しい位置を示した地図だと考えていた。


「どんなお宝があるのかな!!」

アリアも船首に立ち、わくわくしている様子だった。


「ふぁぁ…よく寝たのぉ」

その時、精神世界のトルティヤが目を覚ました。

伸びをするような仕草をしている。


「あ、おはよう」

サシャはトルティヤの目覚めに気づくと、いつもの調子で声をかけた。


「うむ…海風が心地いいのぉ」

トルティヤは呑気に呟き、精神世界から外の様子を感じているようだった。

その時、トルティヤの目の色が変わった。


「む!…魔具の気配を感じるのじゃ」

トルティヤは魔導念波増幅機でサシャ達に伝える。


「!!」

その言葉にサシャ達は息を呑み、魔具の気配を感じたことに驚いた。


「どっちの方向かわかる?」

サシャはトルティヤに方向を尋ねた。


「ここから北東じゃな。結構近いぞ」

トルティヤは北東の方向を指さし、具体的な方角を示した。


「分かった!」

サシャは頷くとシャロンに伝えた。


「あら。あなた探知魔法でも使えるの?」

シャロンが魔導船の進む方向を北東に変えつつ呟き、サシャの魔法に興味を示した。


「ま、まぁそんな感じです」

サシャはトルティヤの存在を隠すため、ごまかすようにシャロンに伝えた。


「ふふふ。素敵…じゃあ、飛ばすわよ!!」

シャロンが魔導船に更に魔力を送り込む。

魔導船は白い飛沫を高く上げ、更にスピードを上げて海を疾走した。


そして、20分くらい走った時だった。

前方に一つの島が見えた。

それは、家一つない緑に覆われた自然豊かな島で、手付かずの自然が広がっていた。


「あれだ!」

サシャが指をさした。


「うわぁ!本当にあったよぉ」

アリアが島を眺め呟いた。


「どうやら地図は本物だったようだな」

島の様子を見てリュウは安心した表情を見せ、地図の正確性に納得していた。


「近づくわよ」

シャロンが更に島に魔導船を近づけ、速度を落とした。


魔導船は更に島に近づき、船体はゆっくりと進んだ。

近づくにつれて島の全景が明らかになりつつあり、緑豊かな山々が見えた。

浜辺がポツンとあり、あとは見渡すばかりの山に森、それだけだった。

さらに、サシャ達の目を引くものがあり、それは海の上の異様な光景だった。


「これは…船の残骸?」

サシャが島の周囲の海面を見つめ、海面に浮かぶ物体に気づいた。

魔導船の左右にはボロボロに朽ち果て海面に浮いているマストや船首があちこちに点在しており、まるで船の墓場のようだった。


「嵐で難破したのか?」

リュウが顎に手を当て呟いた。


「いや、数が多すぎるわ。この島…一体なにがあるというの」

シャロンは慎重に魔導船を島へ近づけ、警戒心を強めた。

そして、浜辺に魔導船を着岸させると、サシャ達は船を降り、陸地に足を踏み入れた。


「んー…空気が美味しいよぉ」

アリアが背伸びをしながら肺に空気をいっぱい吸い込み、島の空気を楽しんでいた。


「魔具の気配はあそこからじゃな」

精神世界からトルティヤが指さす方向には深い森があり、目的地を示していた。

それは、まるで侵入者を拒むかのように生い茂っており、簡単には入れそうになかった。


「行ってみよう…シャロンさんはどうします?」

サシャはシャロンに尋ね、同行するか確認した。


「もちろん私も行くわ。何かあったら困るし…ね?」

シャロンも同行する旨を示した。


こうして、サシャ達は深い森へと足を踏み入れた。


「ポンチョを脱いでも暑いよぉ…」

アリアは汗をかきながら手で顔を煽いでいた。

森の中は空気がじめじめとしており、肌にまとわりつくような湿気と蒸し暑さが増し、不快な暑さだった。


「あぁ…サージャスの砂漠よりも暑い」

リュウの額からは汗が滝のように流れており、砂漠とは違う質の暑さに苦労していた。


「マクレンの…ジャングルってこんなものよ…」

シャロンは慣れているようで、経験豊富だった。

とはいえ、暑さには適わないのか、うっすらと汗をかき、上半身は海兵隊のジャケットを脱いで白いビキニ一枚になっていた。


「…そ、そうなんですね」

サシャは少しばかりシャロンのスタイルの良さに見とれていた。

目のやり場に困っているようだった。


「(むぅ…男共はあんな破廉恥女の何が…何がよいのじゃ)」

それを、精神世界のトルティヤが頬を膨らませて見ていた。


そして、サシャ達がしばらく森を進んだ頃。

周囲の音が途絶え、静寂が訪れた。


「ガサガサ…」

近くの茂みから物音が聞こえ、何かが潜んでいる気配がした。


「モンスターかな?」

サシャが茂みに耳を澄ました。


「人がいるというのは考えにくいな」

リュウが冷静に呟く。

その手は背中の刀に手をかけており、いつでも抜ける準備ができていた。


「ガウウウゥ!!」

次の瞬間、サシャ達の目の前に茂みの中からモンスターが多数現れ、一斉に飛び出してきた。


モンスターは緑色の迷彩柄の体表をしており、森の景色と溶け込んでいた。

顔は猫のようだが、両方の手には鋭い爪が見えており、捕食者らしい外見だった。

その鋭い視線はサシャ達を明らかに獲物であると認識しており、敵意をむき出しにしていた。


「あれはカモフラパンサー!昔、おばば様から聞いたことがある!」

アリアがすぐに弓を構え臨戦態勢に入った。

モンスターの名前と能力を知っているようだ。


「カモフラパンサー?どんなやつなんだ?」

リュウがアリアに尋ねた直後だった。


「すっ…」

カモフラパンサーは森の中に、まるで溶け込むようにして姿を消した。


「消えた!?」

サシャが驚きの表情を見せ、姿が見えなくなり戸惑った。


「まるで透明人間のように消えるんだよ…それで集団で奇襲をしかけてくる。気を付けて!」

アリアが周囲を警戒し、能力の詳細と危険性を伝えた。


「厄介な能力ね」

シャロンが周囲を見渡し、姿の見えない敵に警戒した。


「…」

リュウは全神経を集中させ、気配を探知しようと試みた。


木々がザワザワとざわめく。

次の刹那、リュウの背後から音がした。


「ここかぁぁ!!」

リュウは目を開けると、音のした背後に素早く刀を振り、正確な一撃を放った。


「ガウゥゥゥ!」

するとそこには透明化していたカモフラパンサーが姿を現した。

カモフラパンサーはリュウの鋭い一撃を受け吹き飛ばされ、ダメージを与えた。


「(よく耳を澄ませば…)」

サシャも集中力を更に高め、感覚を研ぎ澄ませた。

しかし、その努力も虚しく、背後からカモフラパンサーがサシャめがけて襲い掛かり、気配を消して忍び寄った。


「後ろ!?」

サシャが咄嗟に振り向き双剣で防御の態勢をとる。

しかし、爪による鋭い一撃はサシャの腕を掠め、双剣の防御をすり抜けた。


「…っ!!」

腕から血が噴き出て、傷口から血が滴った。


「坊や!」

次の瞬間、サシャの背後にいたカモフラパンサーはシャロンのパンチを受けて吹き飛んだ。


「すみません…ありがとうございます」

サシャは片腕を押さえつつ、感謝の言葉を述べる。


「これを使って」

シャロンはポーチから青色の瓶を投げた。


「これは?」

サシャは青色の瓶を受け取った。


「治癒薬よ。これを腕にかけて」


治癒薬。

主にミナギハヤナシ草やランダンの実などから作られる薬液。

回復薬と異なり、小中程度の傷であれば瞬時に傷を塞いでくれるアイテムだ。


「わかりました!」

サシャが腕に治癒薬をかけた。


「シュウゥ…」

腕から白い煙が噴き出ると、サシャの腕の傷は一瞬で塞がり、痛みが消えた。


「助かりました!」

サシャはシャロンに礼を言った。


「ふふふ」

シャロンはサシャにウィンクをした。


「やっ!」

一方でアリアはカモフラパンサーに矢を放っていた。


「ギャオォォン!」

カモフラパンサーは矢を浴びて断末魔をあげた。


「はっ!」

リュウは鋭い斬撃でカモフラパンサーを斬りつける。


「クゥゥゥン…」

そして、何頭か撃破すると、残りのカモフラパンサーはサシャ達に敵わないと悟ったのか、戦意を喪失し、怯えながら森の影に溶けて姿を消した。


「どうやら撃退したようだな」

リュウは刀を収め、警戒を解いた。


「うん!カモフラパンサーは慎重なモンスターだから、しばらくは襲ってこないと思う!」

アリアが自信ありげに呟き、カモフラパンサーの生態に詳しいようだった。


「これしきで傷を負うとは…小僧、まだまだじゃのぉ」

精神世界からトルティヤが、傷を負ったサシャを見つめニヤニヤし、サシャの未熟さをからかった。


「わ、分かってるよ…それよりも魔具の気配はこっちで合ってるの?」

サシャは気を取り直すようにトルティヤに尋ねた。


「うむ…このまま進むのじゃ」

精神世界からトルティヤがサシャに指示を飛ばし、迷わず進むように促した。


こうして、サシャ達は更に森へと足を踏み入れた。

しばらく森を進むと開けた場所に出る。


そこには、目の前にはぽっかりと口を開けた洞窟が暗い穴となっており、その入り口からは冷たい空気が漂ってくる。

そして、その前には何人かの骸が無造作に転がっているのが見えた。

骸の横には朽ちた剣や槍が地面に刺さっていた。


「これは…一体!?」

サシャはその様子に驚きの表情を見せ、尋常ではない光景に息を呑んだ。


「骸骨がいっぱいだよぉ」

アリアは口に手を当てて驚いている。


すると、シャロンが前に出て骸骨の様子を調べ、跪いて確認した。


「…死んでから数か月ってところね」

シャロンは考え込むように、死亡時期を推測する。


「この洞窟と何か関係があるのか?」

リュウは洞窟の方に視線を向け、骸と洞窟の関連性を推測した。


「魔具の気配は中からじゃ。ほれ、さっさと行くぞ」

精神世界からトルティヤが洞窟に入るように促し、魔具の存在に確信を持っているようだった。


「行ってみよう…この洞窟の中に宝があるのかもしれない」

意を決して、サシャ達は洞窟の中へと足を踏み入れた。


「…さすが洞窟。涼しいや」

外の蒸し暑さから解放され、サシャはホッと息をついた。

サシャ達はランタンを手に洞窟の奥へと進んでいた。

中は人工的な遺跡というわけではなく、自然が作り出した天然の洞窟だった。

湿った土と石の匂いが鼻をつく。


「少し不気味だな…何が出てきてもおかしくない雰囲気だ」

リュウは辺りを見渡し、警戒を怠らない。

その声が洞窟に微かに反響する。


「ふふふ。怖いの坊や?」

シャロンはからかうようにリュウに尋ね、笑みを浮かべた。


「べ、別に怖くない…不気味だなと思っただけだ」

リュウは咳払いをし呟き、シャロンから視線を逸らした。


「あ!蝙蝠が飛んでいるよぉ」

アリアはランタンの光に集まる天井を飛んでいる蝙蝠を眺めていた。


サシャ達はランタンの光を頼りに、洞窟の奥を進む。

足音だけが洞窟内に静かに響く。

その時、遥か奥に青白い明かりが見えた。


「光?」

サシャは突然現れた光に目を疑い、足を止めた。


「む!魔具の気配がかなり近いぞ…」

精神世界のトルティヤは魔具の気配を強く感じているようだった。


「行こう!」

サシャ達は青白い明かりの方へと向かい、期待に胸を膨らませ足早に進んだ。

すると、洞窟の空間が突然開け、巨大な祭壇のような場所が現れた。息を呑むほどの壮大さだ。


祭壇は古びた石造りになっており、朽ちた階段、そして巨大な柱が見え、明らかに長い年月が経過していることが伺える。

そして、祭壇の篝火は青白く、この世のものとは思えない静かな光を放って燃えており、周囲を神秘的な雰囲気で包み込んでいた。

祭壇全体から、強い古の力が漂ってくるのを感じる。


「これは…」

サシャはその壮大な風景に目を奪われた。


「すごい!こんなところがあるなんて…」

アリアも突然の祭壇の出現に驚きを隠せずにいた。


「さすがマクレン…まだまだ私の知らないことだらけね」

シャロンは腰に手を当てて呟いた。

その光景は経験豊富な彼女でも驚く光景だ。


「…青白い炎だと?」

リュウは篝火の青い炎が気になるようだった。


「魔具の気配はあの祭壇の一番上からじゃ」

精神世界のトルティヤが祭壇の上を指さした。

祭壇の上には神殿らしき建物が建っていた。


「行ってみよう…」

サシャはそう呟くと、慎重に祭壇へ足をかけた。

罠である可能性も否定できない。

だが、目の前にある魔具を手に入れたい欲求が勝っていた。


そして、サシャ達が祭壇の上へあがると、さらに奥へと進んだ。

すると、一番奥に何かの紋章が刻まれた壁が見えた。

そして、その手前の台座には、青白く輝く天使の翼が装飾された、美しい腕輪が置かれていた。


「あれは…熾天使の腕輪(セフィラムバングル)じゃ…」

精神世界のトルティヤはそこに置かれた魔具に思わず息を呑んだ。


熾天使の腕輪(セフィラムバングル)?」

サシャが精神世界でトルティヤに尋ねた。


「うむ…天界に存在する熾天使が創造したと言われている魔具じゃ。持つものに天使と同等の力を与えるという言い伝えがあるのぉ」

トルティヤは熾天使の腕輪(セフィラムバングル)についての説明をした。


「そんなすごいものだなんて…」

サシャはその力の説明に思わず息を呑んだ。


「あれが魔具!?…きれい…」

すると、アリアが思わず魔具と口にしてしまった。


「あ…」

サシャはアリアの失言に思わず口を開き、焦りを浮かべた。


「…アリア」

リュウは呆れたようにため息をつき、アリアを見た。


「魔具?…噂だけは聞いていたけど、本当に存在していたなんてね」

シャロンが熾天使の腕輪(セフィラムバングル)のじっと見つめた。


「え?僕、何か変なこと言ったかな?」

アリアは不思議そうな顔をした。

自分の発言の意図を理解していないようだ。


「馬鹿者!魔具は多くの人間を魅了するのじゃ!わしら以外に魔具だと伝えてしまったら、それを巡って余計な争いが起きるじゃろ!そこの破廉恥女だって魔具だと知ったらワシらを攻撃してくるかもしれぬのだぞ!?」

精神世界のトルティヤは魔導念波増幅機を通じてアリアを叱った。


「あ、ごめん…」

アリアはしょんぼりとした顔をした。

しかし、それを察したのか、シャロンが穏やかな顔をしてアリアの顔を覗き込む。


「大丈夫よ。宝の地図はあなたたちが持っていた。だから、あの魔具はあなたたちのものよ…奪ったりしないわ」

シャロンは穏やかな口調で呟いた。


「…ほっ」

サシャとリュウはシャロンの言葉に安堵した。

彼女が敵ではないことを確認する。


「…それならよいが。ほれ、早く熾天使の腕輪(セフィラムバングル)を取りにいかぬか」

精神世界のトルティヤがサシャに催促した。


「はいはい…」

サシャが熾天使の腕輪(セフィラムバングル)に近く。


「ついに三つ目の魔具が…」

サシャは熾天使の腕輪(セフィラムバングル)に手に触れようとする。

だが、その時だった。


「深淵魔法-黒の奇術(ブラックマギア)-」

空間に歪みが生じ、サシャに向かって黒い鳩が複数、影から湧き出るように飛んできた。


「なんだ!?…魔法解除!」

サシャは咄嗟に右手を前に突き出し魔法解除の魔法を唱えた。


「バシュ!」

右手に鳩が当たった途端、鳩は四散するように黒く消えていった。


「何者だ!」

リュウは背中の刀を抜いた。


「誰!?」

アリアも弓を構えた。


「ね、あそこ…」

シャロンが神殿の上部に指をさした。


「…」

シャロンに言われてサシャ達が視線を向けると、そこには赤いローブを着て、長い髭を生やした老齢の魔導師が、いつの間に現れたのか、じっとこちらを見ていた。

その手には、武骨な一本の杖が握られていた。


「(全く魔力の気配がなかった…それにあの杖からも魔具の気配を感じるのじゃ。一体何者じゃ…?)」

精神世界のトルティヤは突然のことに頭の整理が追い付いていないようだった。

すると、赤いローブの魔導師が口を開いた。


「お主らも、その魔具が狙いか?」

魔導師は低い声でサシャ達に尋ねた。


「そうだ!その魔具は僕たちが先に見つけた。だから、僕たちのものだ!」

サシャは魔導師に話しかけ、自分の権利を主張した。


「たわけ!!」

だが、魔導師は洞窟にこだまするほどの大声で一喝した。

それは、雷鳴のようだった。


「うっ…」

サシャ達が思わず耳を塞いだ。


「魔具とは即ち呪い…人間が持っていいような力ではない…失うものが多すぎる」

魔導師は淡々と語る。

そして、ふわっとサシャ達の前に着地した。


「それでも、僕は魔具を集めなきゃならないんだ!…その理由がある!」

サシャは必死に反論し、魔具を集める理由を主張する。


「そうかそうか…だが駄目だ。どうしても、欲しいというのならば…小生を倒してみよ」

魔導師が杖を構え、戦う意志を示す。


「みんな、ここは僕が…」

サシャが前に出た。

しかし、魔導師はサシャの言葉を遮るように口を開く。


「一人ずつ相手にするのも面倒だ。まとめてかかってくるがよい」

魔導師は冷静な口調で呟いた。

その表情は余裕綽々そうだった。


「どうしよう…トルティヤ?」

相手の実力が未知数である以上、さすがにサシャは躊躇してしまう。


「奴がそう言っておるのじゃ…遠慮はいらぬ!皆、一斉にかかるのじゃ!」

精神世界のトルティヤが魔導念波増幅機を通じてリュウとアリアに命令した。


「それなら遠慮はしない…」

リュウは背中の刀を抜いた。


「あんまりお年寄りを攻撃したくないんだけどなぁ」

アリアは弓を構えるが、少し抵抗を感じているようだ。


「少し手加減した方がよいかしら?」

シャロンが余裕そうな表情をした。


「遠慮はいらぬ。小生が勝つのは明らかだからな…」

魔導師を杖を構え魔法を詠唱しようとしていた。

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