第53章:もてなし
「さぁ、遠慮せず召し上がってください!」
サシャ達は青年の家へと案内され、もてなしを受けていた。
「うおっ…」
「これは中々痛烈な…」
「おいおい、ホンマかいな」
「…え」
「わー!美味しそう!」
アリア以外、全員の顔が凍りついていた。
サシャは目の前の光景に言葉を失い、リュウは眉をひそめ、トラゾウと護衛の女性は明らかに動揺している。
「美味しいですよ!先ほど、採ってきたばかりですから」
エフィメラ族の青年は、目の前のサシャ達の反応には気づいていない様子で、屈託のない笑みで呟いた。
サシャ達の目の前には、茹でられた巨大な白い芋虫が、湯気を立てながら置かれ、まだら模様の蛙が入ったスープからは、独特の香草の香りが漂っていた。
そして、バッタのような虫の串焼きは、焦げ付いたような香ばしい匂いを放ち、トドメと言わんばかりに、真ん中には、長い触覚が生えた、光沢のある巨大な甲虫の姿焼きが堂々と鎮座しており、その硬質な殻が異様な存在感を放っていた。
「…は、はぁ…新鮮…」
サシャは、目の前の衝撃的な料理の数々に、言葉とは裏腹に内心で戦慄した。
「これは…インパクト抜群や…なぁ、レイカ…?」
トラゾウは、隣にいる女性に視線を向けた。
明らかに彼女の顔は引きつっていた。
「ふ、ふむ…今まで食べたことがないものばかりだな」
レイカと呼ばれた女性は、平静を装おうとしているものの、その声は微かに震えているようにも見えた。
「…(いくらなんでも、そのまますぎではないか?)」
リュウは、喉が渇いたようにゴクリと息を呑んだ。
内心では、この見た目の料理を本当に食べるのかと、強い抵抗を感じていた。
「ね、ねぇトルティヤ、お腹空いているんじゃないの?」
サシャは、藁にもすがる思いで精神世界にいるトルティヤの顔を覗き込んだ。
「空いておらんのぉ」
トルティヤは、いつもの飄々とした様子はなく、珍しく素っ気なく答えた。
「ほら!いつも美味しそうにご飯を食べてるじゃないか!普段のお礼もあるし、ここは俺の代わりに食べていってよ!」
サシャは、両手でゴマをすりながら、必死の表情でトルティヤに懇願した。
「わしは昨夜のメガそばを食べて満足なのじゃ。だから、お主が、もてなしを受けるのじゃ」
トルティヤはそう言うと、サシャの期待を裏切るようにそっぽを向いてしまった。
「(くーっ!こういう時に限って…)」
サシャは、恨めしそうな目でトルティヤを見つめた。
「(そういえば、エフィメラ族の主食は昆虫と両生類だったのを忘れておったわい。さすがにあの見た目を食べるのは抵抗があるのぉ)」
トルティヤは、今更ながらエフィメラ族の食文化を思い出し、内心で苦笑いしていた。
「さ!皆さん、遠慮せずに!」
青年は、手慣れた様子で石製のナイフを使い、巨大な甲虫の肉を葉の皿に切り分けている。
切り分けられた甲虫の肉は、鮮やかな青色をしており、それが更に一同の食欲を微妙に減退させた。
「…」
しかし、せっかくの温かいもてなしを無にするわけにはいかず、一同はそれを黙って受け取る以外なかった。
ただし、アリアだけは別だった。
「わー!これって、ダイヤモンドダストカミキリの丸焼き?」
アリアは、目を輝かせながら青年に尋ねた。
「よくご存知で!」
青年は、嬉しそうなニコニコとした表情をアリアに向けた。
「アリア、知っているのか?」
サシャは、信じられないといった表情でアリアに尋ねた。
「うん!「森の宝石」と呼ばれていて、滅多に取れない希少食材なんだよ!僕も小さい頃に1回食べたきりだったよ!」
アリアは、葉の皿の上に置かれた青色の肉に釘付けのようだった。
その瞳は、期待に満ち溢れていた。
「…な、なるほどな」
リュウは、アリアの説明を聞いて、納得したように小さく頷いた。
「ええい。せっかくのもてなしや!無下にしたらアカンやろ!」
すると、隣にいたトラゾウが、覚悟を決めたように青色の肉を掴むと、躊躇なく豪快に口に放り込んだ。
「(うわ。一気にいったよ…)」
サシャは、トラゾウの予想外の行動に、目を丸くして驚いた表情で見つめた。
「もぐもぐ…うんうん」
トラゾウは、数回咀嚼すると、満足そうに肉を飲み込んだ。
「なんやこれ…めっちゃうまいで。まるでサタンマグロのトロみたいな感じや」
トラゾウは、初めて味わうダイヤモンドダストカミキリの味に、心底驚いている様子だった。
「そ、そんなに美味しいのか…」
サシャは、まだ少し抵抗がありながらも、意を決して青色の肉を小さく口に頬張った。
そして、噛んだ瞬間、口の中に濃厚な旨味と、とろけるような口触りの良い脂が広がり、脳天を突き抜けるような衝撃が走った。
「うん!確かに…美味しいかも!」
サシャは、ダイヤモンドダストカミキリの意外な美味しさに、目を丸くして驚愕した。
「…食べるか」
「そんなに美味しそうに食べるなら」
黙って様子を見ていたリュウとレイカも、意を決したように青色の肉を少量つまむと、口に放り込んだ。
「これは…」
二人も、その想像を遥かに超える味に、驚いている様子だった。
リュウの険しかった表情が、僅かに緩んだ。
「うーん!やっぱり絶品だよ!」
アリアは、最初から何の抵抗もなく、美味しそうに頬張っていた。
「せやったらこれも…」
トラゾウは、少し間を置くと、今度はバッタらしき昆虫の串焼きを手に取り、躊躇なく口に入れた。
噛んだ瞬間、パリパリとした軽快な音と、香ばしい匂いが広がった。
「んー、パリパリした食感がくせになるな」
意外にも、トラゾウは美味しそうに串焼きを頬張っていた。
「これは、パイタンワームだ!」
アリアは、茹でられた巨大な芋虫を掴むと、まるで抵抗がない様子で口に放り込んだ。
「…(アリア、本当に躊躇ないな)」
サシャは、横で美味しそうに芋虫を食べるアリアの様子を、半ば呆れながら見ていた。
「んー!濃厚で、まるでチキンのスープみたいな味がするよぉ…」
アリアは、芋虫の濃厚な味わいに、すっかり魅了されているようだった。
「…男なら度胸!」
リュウは、そう小さく呟くと、勇気を振り絞って蛙が入ったスープに口をつけた。
すると、彼の険しかった顔が、少しずつ解けていくのがわかった。
「ん!意外と悪くないぞ。蛙の肉も、よく煮込んだ鶏肉みたいで美味しい…」
リュウは、スープに入っていた蛙の肉を、意外なほど美味しそうに頬張った。
「なら、俺も…」
サシャは、意を決して蛙が入ったスープを一口飲む。
すると、ハーブとスパイスが絶妙に効いた、さっぱりとした味わいのスープが口の中に広がり、後からほんのりとした甘みが追いかけてくる。
そして、蛙の肉は、よく煮込んだ鶏肉のようにほろほろと柔らかく、滋味深かった。
「あ、イケる…」
サシャは、その意外な美味しさに、ただただ驚いていた。
「(見た目はアレだけど、味は悪くないのね)」
レイカは、皆が意外にも美味しそうに食べている様子を楽しみながら、勇気を出して芋虫を一口口に放り込んだ。
噛むと、ねっとりとした食感と共に、奥深い旨味が広がった。
こうして、最初は一体どうなることかと思っていた、エフィメラ族からの衝撃的なもてなしも、意外な美味しさのおかげで、あっという間に時間が過ぎ去っていった。
-1時間後-
「いやぁ、食った食った」
トラゾウは、満腹になったお腹をさすりながら、満足そうな表情をした。
「意外と悪くなかったな」
リュウも、食後の余韻に浸りながら小さく呟いた。
「昆虫がこんなに美味しいなんて」
サシャとリュウは、今回の経験で得た新たな発見を噛み締めていた。
「ふぅ…もう食べられないよぉ」
アリアは、あの後も追加で芋虫とバッタの串焼きを平らげており、その顔は恍惚としているようだった。
「それにしても、あなたがたはどうしてエフィメラ族の里に?」
レイカは、食後の落ち着いた雰囲気の中、サシャに問いかけた。
「俺達はマクレンに向かう途中なんです。カリカリの森を歩いていたら、ミラが倒れていてそこで…」
サシャは、近くでアリアと楽しそうに話しているミラを見つめた。
「あの時は…本当に必死だった」
ミラは、その時のことを思い出し、小さく呟いた。
「なるほど。私達はバルサミコ卿…いや、あの貴族の依頼でエフィメラ族の里を探していた。50万ゴールドという高額な報酬につられてな…」
レイカは、少し自嘲気味に呟いた。どうやら、彼女は本当にバルサミコ卿に雇われていただけだったらしい。
「せやけどなぁ、エフィメラ族の里を探して案内するだけやと思っていたら、奴は「エフィメラ族を捕まえろ!」とかぬかしおるんや。じゃなきゃ報酬はくれへんって…金のためとはいえ、ホンマに皆には申し訳ないことをしたわ」
トラゾウは、神妙な面持ちでそう呟くと、青年とミラに向かって深々と頭を下げた。
「いえ。もう終わったことですし…気にしないでください」
青年は、穏やかな笑顔でトラゾウに語りかけた。
「さて…ゆっくりしたいところだけど、僕達はカザに向かわなきゃだ」
サシャは、立ち上がり、伸びをした。
「そうだな…日が暮れる前にたどり着きたいところだしな」
リュウも、サシャに続いて立ち上がった。
「おやおや、もう少しゆっくりしていってもよいですのに…」
青年は、名残惜しそうな残念そうな表情を見せた。
「残念…」
ミラも、寂しそうな表情で小さく呟いた。
すると、アリアはミラの前に屈み込み、優しく頭を撫でた。
「また会えるよ!」
アリアは、満面の明るい笑顔でミラに語りかけた。
「…うん!」
その言葉に、ミラはパッと笑顔になった。
「ほな、ワイらはシュリッアに向かうか。なぁ?レイカ」
トラゾウは、レイカに声をかけた。
「そうだな。あの貴族から報酬をもらいそびれたし、また違う依頼を探さなければな」
レイカは、少し疲れたような表情で呟いた。
「では、皆様、里の近くまでお送りします」
こうして、サシャ達は、温かくもてなしてくれたエフィメラ族の里を後にすることになった。
そして、来た道を戻っていく。
しばらく獣道を進むと、カリカリの森の道の近くにたどり着く。
「我々は、村に代々続く掟で、事情がない限り、人前に簡単に姿を見せるわけにはいきません…なので、ここまででご容赦ください」
青年は、寂しそうなミラを優しく見守りながら、サシャ達に軽くおじぎをした。
「いや、ここまで来れば十分だよ。本当に、お世話になりました」
サシャ達は、青年とミラに向かって深々と頭を下げ、感謝の意を示した。
「…みんな、また来てね…」
ミラは、アリアの服の裾を小さく握りながら、潤んだ瞳でそう呟いた。
その小さな声には、別れを惜しむ気持ちが溢れていた。
「うん!絶対にまた来るよ!」
アリアは、ミラの小さな手を握り返し、満面の笑顔で力強く頷いた。
それに対して、サシャとリュウも、静かに首を縦にふった。
「ほな、ワイらはこれで…リュウ!またいつか、本気で戦おうや!」
トラゾウは、別れ際にリュウに向かってそう声をかけると、レイカと共にシュリッアの方へ歩を進めた。
「ふっ…その時は、また返り討ちにしてやるさ」
リュウは、トラゾウの背中に向かって、小さく、しかし確かな声で呟いた。
「では、ご縁があればまた」
レイカも、サシャ達に軽く手を振った。
そして、二人の姿は、シュリッアの方へと消えていった。
「じゃあ、僕達も…」
サシャ達は、自分たちの目的地であるカザに向けて、再び歩き始めた。
「はい、皆様、道中お気をつけて…」
「またね…」
青年とミラは、サシャ達の姿が見えなくなるまで、手を振り続けていた。
それに対して、サシャ達も振り返り、手を振り返した。
「にしても、エフィメラ族…神秘的だったね」
サシャは、空を見上げながら、しみじみと呟いた。
「そうだな…なんとも美しい種族だったな」
リュウも、エフィメラ族との出会いを思い返すように、遠い目をして呟いた。
「ご飯…美味しかった」
アリアは、エフィメラ族のもてなしの余韻に浸り、満足そうな笑顔を浮かべていた。
サシャ達はカリカリの森をひたすらに進む。
森は、太陽が西に傾きかけた影響で、徐々に薄暗さを増していった。
空気はひんやりと湿り気を帯び、サシャ達の肌をじわじわと突き刺すような、じんわりとした寒さが忍び寄ってきた。
「少し冷えてきたね…」
サシャが、腕をさすりながら小さく呟いた。
「もう少しで抜けられるはずだが…」
リュウが、取り出した地図を注意深く見ながら、低い声で言った。
更にしばらく、足元の木の葉を踏みしめながら道を進む。
やがて、視界が開け、目の前に広大な草原が現れた。
風が草を揺らし、その向こうにはどこまでも続く空が広がっている。
そして、草原の遥か彼方には、小さくぼやけた街の輪郭が微かに見えた。
「ようやく抜けれた…結構、長かった」
サシャ達は、エフィメラ族の里からおよそ一時間ほど歩き続け、ついにカリカリの森を脱出した。
「んー…もうちょっとだね!」
アリアが、遠くに見える街、カザを指さしながら、明るい声で言った。
「あぁ。なんとか夜にはたどり着きそうだな」
リュウが、空を見上げて言った。
空は、太陽が地平線に沈みかけ、刻一刻と夕焼けの色を濃くしていきそうな雰囲気だった。
「行こう。あともう少しだ」
サシャは、前方を指差し、皆を促した。
サシャ達は、草原へと足を踏み入れた。
草原は心地よい風が吹き抜け、道の両サイドには、どこまでも続く白い花畑が広がっていた。
小さな白い花々は、風に揺られ、まるで白い絨毯が波打っているように見え、時折、上空を優雅に舞うドラゴニアの姿が見える。
そして、どこからともなく聞こえてくる鳥類の鳴き声が、広大な草原に響いていた。
「わぁ…綺麗な花だね!」
アリアが、風に揺れる白い花畑に見惚れ、うっとりとした表情で呟いた。
「本当だね…ドラゴニアのカラーとは対称的なのがね…」
サシャは、ドラゴニアのシンボルカラーが情熱的な赤色であることを思い出した。
この花畑は、それとは対照的な、純粋で清らかな白色の花々で埋め尽くされているのだ。
「なんだか、微かに甘い香りもするな…」
リュウが、鼻をかすめるように吹く風に意識を向けると、微かに甘く優しい香りが周囲に漂っていることに気づいた。
それは、白い花々の花粉が風に乗って運ばれてくる香りだった。
そんな穏やかな雰囲気の中、草原を進み、一行が草原の中央付近に差し掛かった頃だった。
「ここは我々ドラゴニアの土地だ!入国料に3万ゴールドを徴収している!」
突然、草原に響き渡るような、威圧的な声が聞こえてきた。
「なんか聞いたことがあるセリフが…」
サシャが、声がした方向へ目を向けると、二人の旅装の商人が、三人のドラゴニアに囲まれていた。
どうやら、ドラゴニアは商人から無理やり通行料をせびっているようだった。
「そんな…以前来た時は、こんなことは一度もなかったのに…」
女性の商人は、恐怖で瞳を潤ませ、震える声で言った。
「そうだ!そもそもお前たちは、王国の兵士ではないだろ!」
男性の商人は、震えながらも勇気を振り絞り、強気な口調でドラゴニアに反論した。
「ほう。劣等種族である人間が、我々に歯向かうと…」
すると、三人のドラゴニアのうち、一人が商人に向けて鋭い槍の穂先を突きつけた。
「ひっ…」
女性商人は、ドラゴニアの冷酷な眼差しと、突きつけられた槍の威圧感に、恐怖で息を呑んだ。
「こんなのは理不尽だ!」
男性商人は、なおも納得がいかない様子で、抗議の言葉を続けた。
「図に乗るな、人間!」
そして、三人のドラゴニアのうち、一人が、苛立ちを露わにして男性商人の頬を思い切り叩いた。
「バシィッ!」という乾いた音が、静かな草原に響き渡った。
「ぐあっ!」
男性商人は、強烈な衝撃に耐えきれず、よろめきながら地面に倒れ込んだ。
彼は、歯が一本折れ、鼻からは鮮血が流れ出て、地面を赤く染めていた。
「あなたっ!」
女性商人は、悲鳴のような声を上げながら、倒れた男性商人のもとへ駆け寄った。
「そうだ!こいつらを国境の入口に張り付けの刑にしようぜ!」
黄色い翼を持つドラゴニアが、冷酷な笑みを浮かべながら提案した。
「頭いいな!見せしめに丁度いい!」
赤い翼を持つドラゴニアが、同意するようにニヤリと笑った。
「というわけだ、恨むなら俺達に歯向かった自分たちを恨むんだな…」
黒い翼を持つドラゴニアは、骨ばったゴツゴツとした手を、震える女性商人に伸ばした。だが…
「ヒュン!!」
その時、鋭い風を切る音と共に、一本の矢が黒い翼を持つドラゴニアの肩に深々と突き刺さった。
「ぐあ!いてて…何かが刺さった…」
黒い翼を持つドラゴニアは、肩を押さえながら、激しい痛みに悶えている様子だった。
「誰だ!!」
残りの二人のドラゴニアは、鋭い視線を矢が飛んできた方向へと向けた。
「お前たち、一体何をしているんだ!」
そこには、弓をしっかりと構えたアリアが立っていた。
そして、その隣には、それぞれの武器を手に、臨戦態勢を取ったサシャとリュウがいた。
「ちっ…また人間かよ…」
三人のドラゴニアは、面倒くさそうなうんざりした表情でサシャたちを見下ろした。
「文句があるなら、俺達が聞いてやる。だが、その二人を解放してもらおうか」
サシャは、冷たい眼差しを黄色い翼を持つドラゴニアに向け、静かに、しかし強い意志を込めた声で言った。
「…ちっ。行け」
黄色い翼を持つドラゴニアは、舌打ちをすると、地面に倒れている男性商人と、その傍らにいる女性商人を軽く肘でつついた。
二人の商人は、申し訳なさそうな、そして感謝の入り混じった表情でサシャ達に軽く会釈をし、足早にその場を後にした。
「で?なんだお前らは?俺達に歯向かおうなんていい度胸してるな」
赤い翼のドラゴニアが威圧するように呟く。
「代わりにお前らを張り付けにしてやる」
黒い翼のドラゴニアは肩に刺さった矢を無理やり抜くと低い声で呟いた。
「聞いたぞ。ドラゴニアに入国料なんてないんだってな」
サシャは、三人のドラゴニアを鋭い眼光で睨みつけながら、低い声で言った。
白い花が咲き誇る穏やかな草原に、一触即発の緊張感が走った。




