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第39章:五里雪中

「無限魔法-羅刹の炎(らせつのほのお)-!」

トルティヤの右手から、黒炎が放たれる。


「雪魔法-螺旋雪塊(らせんせっかい)-!」

同時、ケープの眼前から雪で作られた槍が放たれる。


双方の魔法が申し合わせたようにすり抜ける。


「ちっ…」

トルティヤは雪の槍を回避する。


「おっと!火魔法っすか!」

ケープも真横に回避する。


「ズーン!!」

双方の魔法は遠くにある家屋に直撃する。


「雪魔法…凡庸じゃのぉ」

トルティヤは、余裕に満ちた表情を見せる。


「あれは小手調べ。ここからが本番っすよ」

ケープは、涼しい表情で呟くと、魔法を唱えた。


「雪魔法-雪泥鴻爪(せつでいのこうそう)-」

すると、二人を猛吹雪が覆う。


「…くっ!」

トルティヤは、吹雪による強烈な風圧を受け、咄嗟に右腕で顔を覆った。


視界不良と、肌を刺すような冷たさがトルティヤを襲う。


「うわっ…何も見えないよ」

精神世界から見ていたサシャも思わず声を漏らす。


「(特殊な結界魔法じゃのぉ…魔力が消えおった)」

トルティヤは、薄っすらと目を開け、周囲を見渡す。

だが、吹雪が吹き荒れ、周囲は暗闇に包まれていた。


「随分と臆病なんじゃのぉ」

トルティヤはケープに挑発を投げかける。


「臆病?違うっすよ」

すると、四方八方からケープの声が反響する。


「あっし達は、目的のためなら手段を選ばないってだけっすよ」


「ふん。隠密部隊らしいセリフじゃ」

トルティヤは小さく鼻を鳴らす。


「シュッ…」

次の瞬間、トルティヤの死角からケープが襲いかかる。


「小癪な…」

だが、トルティヤはそれを捉える。

完全に避けきれると思っていた。


「甘いっすよ!」

だが、ケープが眼前に迫った時。


「ジャキン!!」

彼女が装備している鈎爪が倍の長さに伸びる。


「むっ!!」

トルティヤは不意をつかれる。


「ザシュッ!」

彼女の腹部が浅く斬られる。


「…ちっ。鉤爪か」

予想だにしない攻撃にトルティヤは、小さく舌打ちをする。


「咄嗟に急所を外すとは、やるっすね…」

そう呟くと、ケープは再び吹雪の中へ消えていった。


「(また魔力が消えおった)」

トルティヤは周囲を見渡すが、ケープの姿は見えなかった。


「あっしの攻撃は変幻自在」


「この吹雪は全てを覆い隠す」


「悪いけど、アンタに勝ち目はないっすよ」

ケープの声が辺りに響き渡り、トルティヤを追い詰める。


「ごちゃごちゃとうるさい奴じゃのぉ」

トルティヤは、ケープに答えるように呟く。


「強がりも大概にするっす」

次の瞬間、トルティヤの死角から、ケープの鈎爪が吹雪を斬り裂いた。


「こっちか!?」

トルティヤは、咄嗟に左腕でガードを入れた。


「ザクッ!」

鉤爪はトルティヤの左腕を深く斬り裂く。


「ぐっ…!」

トルティヤは苦悶の表情を浮かべた。


「トルティヤ!」

精神世界から見ていたサシャが思わず叫ぶ。


「なんの。これくらいかすり傷じゃ」


「…あらら。痛そうっすね?」

ケープはトルティヤを嘲ると、再び吹雪の中に消えた。


「トルティヤ!このままじゃ防戦一方だよ!」

サシャが思わず叫ぶ。


「そんなこと分かっておるわい」

トルティヤはサシャを宥める。


「(この結界魔法は互いの視野と魔力を遮断するものじゃ。そうなると、奴は何かしらの感知魔法を使っていると考えるのが定石じゃのぉ…)」

トルティヤはケープが感知魔法を使っていると確信する。


「(となると、やることは一つ…)」

そして、静かに目をつぶると、周囲に魔力を放出させる。


「もう観念したようっすね!!」

吹雪を斬り裂き、ケープが現れる。

だが…


「スカッ」

彼女の鈎爪は空を切った。

捉えたはずのトルティヤの姿はそこにはなかった。


「なっ!?」

ケープの表情に焦りの色が浮かぶ。


「かかりおったな…阿呆が…」

トルティヤが不敵な笑みを浮かべると魔法を詠唱する。


「雷魔法-聖者の鉄槌-!!」

空気に雷が迸ると同時、雷撃がケープを襲った。


「あがっ!!」

ケープは攻撃を受けて吹き飛ばされる。

同時に、衝撃で彼女の目隠しが千切れる。


「…なるほど。そういう訳じゃな」

その姿を見たトルティヤが納得したように頷く。


「…っ!!」

ケープの瞳の文様は十字形を描いていた。


それは、彼女の能力である『粒子眼』だった。


「粒子眼…それがあれば吹雪の中だろうと結界の中じゃろうと魔力を辿れるのぉ」

トルティヤは、ケープの瞳をじっと見つめる。


「粒子眼?」

聞き慣れない言葉に、サシャがトルティヤに尋ねる。


「うむ。サージャス公国の『アイアンヴォルト家』に伝わる特異体質でのぉ。魔力を直接感知するのではなく、粒子として視認し、追跡できる能力じゃ」

トルティヤが粒子眼について説明する。


「その特性を逆手にとって、わざと魔力を放出させて、あっしを撹乱させたって訳っすね」

ケープは攻撃が外れた理由を悟った。


「その眼は、あくまで魔力を粒子で感知するだけじゃ。本物か偽物かまでは特定できぬからのぉ」

トルティヤは勝ち誇るように呟くと、魔法を詠唱する。


「無限魔法-海竜の慟哭-!!」

海竜を模した水の塊がケープを目掛けて襲いかかる。


「くっ!!」

ケープは後方に退くと、屋根に飛び移り、海竜から逃れようとする。


「待つのじゃ!!」

それを見たトルティヤは、海竜とケープを追いかけ、結界から飛び出した。


一方、その頃。

リュウとアリアは、コサックと向き合っていた。


「おらぁ!!」

コサックは、まるで猪のような勢いで二人に迫る。


「アリア…奴は俺が引きつける。アルブと一緒に屋根の上から援護してくれ」

リュウは刀を構えると、アリアに援護を求めた。


「うん!任せて!」


「キュイッ!」

アリアとアルブは小さく頷くと近くの屋根の上に移動し始めた。


「おっと!どこに行くんだ!」

だが、コサックはそれを見逃さなかった。


「ゴッ!!」

なんと、手にした金砕棒を地面に叩きつけると、それを振り上げた。


「ヒュウゥゥ!!」

礫が移動している、アリアの背中に向かって飛んでくる。


「はっ!!」

だが、リュウが間に割り込むと、礫を弾き飛ばす。


「ほう。中々の太刀筋だな…」

コサックが口角を釣り上げる。


「だが…」

同時、金砕棒をリュウに向けて振るう。


「(受けるしかないか)」

距離的に回避は不可能と判断したリュウは、受けの体勢を取る。


「ガキィィン!!」

次の瞬間、刀と金砕棒がぶつかる。


「パワーが足りないようだな!」

コサックの腕に力がこもる。


「くっ!!」

リュウが力を込めるが、金砕棒はびくともしない。


「俺のようにムキムキだったら、受けきれたかも…な!!」

コサックは、そのまま金砕棒を振り切る。


「うっ!!」

それはリュウのガードごと弾き飛ばした。


「ドンッ!」

あまりの勢いにリュウの体は近くの家屋に叩きつけられる。


「くはっ…」

肺が押しつぶされる感覚がリュウを襲う。


「リュウ!!」

アリアは、三本の矢を同時に放った。


「ヒュン!!」

矢は的確にコサックに向けて放たれた。

しかし…


「なんだそれは?おもちゃか?」

コサックは、金砕棒を体の前に突き立てる。


「ガキン!!」

矢は金砕棒に弾かれ、地面に落ちた。


「口の割に大したことないな」

コサックは嘲笑を浮かべ、リュウとアリアを見つめる。


「ちっ…厄介な…」

リュウは、ゆっくりと立ち上がる。


「お前らは俺の暇つぶしにもならなさそうだな」

コサックは不敵な表情を見せると、足に力を込める。


「まずは、小僧!お前からだ!!」

爆発的な踏み込みでリュウの元へ突撃する。


「(早い!!)」

リュウは、コサックの動きを凝視する。


「そらよっと!!」

金砕棒は、轟音を立てリュウに振り下ろされる。


「はっ!」

だが、リュウは間一髪でそれを躱す。


「ドコーン!!」

付近の地面が、激しく振動した。


「(ちっ…なんて馬鹿力だ)」

リュウは、冷静にコサックを見つめた。


「最初の威勢はどこへ消えた?おら!おら!!おらぁ!!!」

コサックの金砕棒が、連続で振るわれる。


「くっ…(なんとかスキを作れれば…)」

リュウは回避するので精一杯だった。

その時。


「リュウ!!離れて!!」

アリアが大きく叫ぶと同時に、一本の矢がコサックに放たれる。


「…!!」

リュウはアリアの声と同時に後退する。

同時、リュウの真横を黒い鏃がついた矢が飛んでいく。


「終わりだよぉ!!」

アリアが放ったのは爆発矢だった。


それは、タタラ峠で遭遇した赤角龍(レッドホーンドラゴン)の角を折るほどの破壊力を秘めている。


「…連携したつもりか」

だが、コサックは不気味に口角を釣り上げると地面に金砕棒を叩きつける。


「破裂魔法-撃滅地衝爆(げきめつちしょうばく)!」

彼が魔法を唱えると同時、地面が隆起する。


「ズドーン!!」

地面は土の壁となり、アリアの爆発矢を防いだ。


「えっ!?そんな…」

攻撃を防がれたアリアは開いた口が塞がらない。


「これで終わりじゃないぜ!」

コサックが低い声で呟くと、隆起した地面が更に膨張する。

そして…


「パーン!!」

盛大に破裂すると、地面の破片がリュウとアリアに向かって飛んでいく。


「破裂だと…?」

だが、リュウの頬を掠る。


「うわぁっ!」

アリアは驚きながらも、破片を回避していく。


「キィッ!!」

破片が屋根に直撃する音にアルブは驚く。


「はっはっは!!回避したからといって…」

再び、コサックが凄まじい踏み込みを見せる。

その速度は先程よりも速い。


「なにっ!?」

リュウの目の前には、コサックが近づいていた。


「安心しちゃいないか!?」

コサックは目を見開き、金砕棒を振り上げる。


「(回避もガードも間に合わない)」

リュウが目をつぶった、その時。


「鎖魔法-チェーンバインド-!」

アリアが詠唱した鎖魔法がコサックの手足を締め付ける。


「ぐっ!」

コサックの骨が軋む音が響いた。


「リュウ!今だよぉ!!」

アリアが合図を出す。


「あぁ…」

リュウが荒覇吐流の構えを取る。


「荒覇吐流奥義・蒼月《あらはばぎりゅうおうぎ・そうげつ》!!」

リュウの袈裟斬りが放たれる。


確実に攻撃が届く距離。

コサックは回避できない。

はずだった…


「おめでたいな」

コサックが静かに魔法を唱えた。


「破裂魔法-撃滅天衝爆《げきめつてんしょうばく》-!」

次の瞬間、鎖が膨らむ。


「…!!」

リュウの攻撃が届く前に、鎖が勢いよく破裂した。


「ヒュン!!」

破裂した金属片は、カウンターとなってリュウに襲いかかる。


「ぐあっ!!!」

リュウは、予想外の反撃を受ける。

胴体と腕には、金属の破片が深々と刺さっていた。


「リュウ!!」

アリアが、悲痛な叫び声を上げると、彼に駆け寄る。


「キュイッ!!」

アルブも声をあげる。


「やれやれ…少しヒヤッとしたぞ」

コサックは肩を鳴らすと、地面に倒れているリュウに向かって歩き出した。


「やらせないよ!!」

アリアが、三本の矢を再び放った。


「だから、そんなおもちゃじゃ俺はやれねぇよ」

コサックは、金砕棒を振るい、矢を弾き飛ばした。


「うっ…」

リュウは、痛みをこらえ、立ち上がろうとする。


深々と刺さった金属片からは、血がとめどなく溢れていた。


「辛そうだな…」

コサックは哀れみにも似た視線をリュウに送る。


「だが、楽にしてやるよ」

そして、金砕棒を振り上げる。


「鎖魔法-チェーンバインド-」

アリアは慌てた表情を浮かべ、魔法を詠唱する。


「ジャララララ」

地面から鎖が伸び、金砕棒を持つ手を締め上げる。


「くそっ、しゃらくさい!」

コサックは苛立ちを露わにし、鎖を振り払おうとした。


「うっ…(すごい力だよぉ。魔法がもたない…)」

アリアは必死に時間を稼ごうとするが、コサックの剛腕に焦りを浮かべていた。


「アリア…」

その時、リュウが小さく呟く。


「待ってて!今助けるよぉ…」

アリアは、必死に鎖に魔力を込める。


「…俺は今から、ある力を解放する」

リュウはアリアに、そう告げる。


「危険な力だ…万が一暴走した時は…」

リュウは覚悟を決めて、深く息を吸い込んだ。


「リュウ…なにを言っているの?」

アリアは突然の言葉に目を丸くする。


「トルティヤと二人で俺を止めてくれ」

リュウの体を蒼色のオーラが包み込むと、彼はゆっくりと立ち上がる。


「え…えっ?何が起きてるの…?」

その変貌にアリアは呆然とする。


「ええい!」

アリアの気が緩んだためか、コサックは鎖を引きちぎる。


「立ち上がった根性だけは認めてやる」

コサックは勝利を確信した表情を浮かべ、金砕棒を振り下ろす。


「死ねぇい!!」


「スッ…」

しかし、その一撃は空を切った。


「なっ…!?消えた!?」

コサックは突然消えたリュウに驚きの表情を浮かべる。


「オソスギル」

リュウは、いつの間にかコサックの背後に立っていた。


「ちっ!いつの間に!」

コサックは、金砕棒を振り回す。


「シッ…」

だが、リュウは残像を残し、高速で駆け回った。


「速い…今までのリュウとは動きが全然違うよぉ…」

アリアはリュウの動きに、思わず息を呑む。


「こうなれば広範囲に攻撃をお見舞いしてやらぁ…!」

コサックは苛立ちを露わにし、魔法を詠唱しようとする。


「…荒覇吐流奥義《あらはばぎりゅうおうぎ》 」

だが、リュウの方が早かった。


彼は地面が爆ぜるほどの踏み込みでコサックに斬りかかった。


「速い…!」

コサックは金砕棒でガードしようとするが間に合わなかった。


「-絶-蒼月(ぜつ-そうげつ-)!!」

先程よりも速く力強い袈裟斬りが、コサックの体を斬り裂く。


「ぐぉぉぉぉ!」

コサックは、激しく胸を斬り裂かれた。


「うがっ!(くそが…傷が深い…)」

コサックは苦悶の声を上げ、膝をついた。


「…僕も、うかうかしてられない!」

アリアは、リュウを援護しようと弓を構えた。


「オイ…」

だが、リュウがアリアの方を振り向く。


「…ヨケイナコトヲ…スルナ」

そして、殺意のこもった声でアリアを威圧した。


「あ…うん…」

アリアはリュウの殺気に萎縮し、弓を下ろす。


「キュウゥ…」

アルブは本能的にリュウを恐れたのか、アリアの背後に隠れる。


「シュッ…」

再び、リュウは跪いているコサックに向かって踏み込む。


「おのれ…俺に傷をつけたくらいでいい気になりやがって…」

コサックは、跪きながらも、地面に手を当てた。


「破裂魔法-撃滅地衝爆(げきめつちしょうばく)-!!」

地面が隆起し、コサックの周囲を覆い尽くした。


「全方位の攻撃だ!かわせまい!」

コサックが不敵な笑みを浮かべると同時。


「ドーン!!」

膨張した地面が轟音を響かせて爆発し、破片が飛び散る。


「うわっ!!」

アリアは咄嗟に身をかがめる。


凄まじい砂煙が周囲を覆う。


「…ほぼ至近距離。かわせるはずがねぇ」

爆心地には、コサックが息を切らして立っていた。

だが、胸の傷と魔力の消耗によって、疲労の色が浮かんでいた。


「(あの小娘は後でどうにでもなる。問題はあの小僧だ)」

コサックは、周囲を見渡す。


「(直撃したなら、その辺で野垂れ死んでいるはずだが…)」

しかし、リュウの姿は見当たらなかった。


「どこだ…?」

コサックがそう呟いた。

次の刹那…


「シュパッ…」

空気を切る音が微かに聞こえた。


「なんだ?」

コサックが音に気を取られる。


「荒覇吐流奥義・-滅-幽鬼」

すると、いつの間にかコサックの目の前にリュウが立っていた。


「…な!小僧が!!」

コサックは金砕棒を握りしめ、リュウを攻撃しようとする。


だが、手には力が入らない。

それどころか、踏み込む足にも力が入らない。


「(おいおい…どうなって…)」

数秒後には、言葉も発せなくなる。

同時に、彼の視界が逆さまになる。


「ドサッ…」

やがて、コサックの首が音をたてて地面に落ちた。


「オワリダ…」

リュウはコサックの亡骸に冷たい視線を向けた。


「…どうなったの?リュウは?」

砂煙が晴れると、アリアはゆっくりと顔をあげる。


視線の先には、倒れたコサックの亡骸と首が無惨に転がっていた。

さらに、奥にはどこかへ去っていくリュウの姿があった。


「え…終わったの…?あれをリュウが…」

あまりに唐突な決着にアリアは地面に座り込み呆然としていた。


「キュイッ…」

アルブはどこか落ち込んだ表情をしてアリアを見つめていた。


「アルブ…」

アリアはアルブを撫でると、声伝機を通じてリュウに話しかける。


「リュウ!!どこに行くの…?それに、これは…リュウがやったの?」

アリアは、振り絞るような声で必死に呼びかけた。


「…」

だが、リュウは一切答えなかった。


そのまま、彼はケープとトルティヤが戦っている場所へ向かっていった。


「…リュウ」

アリアはリュウを止めることができず、憔悴しきった様子でその場に留まった。


一方で、ケープは水竜から逃げ、トルティヤはそれを追っていた。


「くっ!いい加減にするっす!」

ケープは魔法を詠唱する。


「雪魔法-凍蓮薄荷(とうれんはっか)-!」

彼女の右手から葉を模した巨大な雪の盾が現れる。


「無駄じゃ…!ワシの魔法は魔法では防げぬ!!」

トルティヤが不敵な笑みを浮かべる。


「ドコーン!!」

水竜は雪の盾を破壊し、ケープに襲いかかる。


「うわぁっ!!」

ケープは水竜に押され、近くの家屋に叩きつけられる。


「ドコーン!!」

あまりの威力に家屋が音をたてて崩れ落ちる。


「さぁ…観念するんじゃな。お主の戦術は、もう通じぬのじゃ」

トルティヤは崩壊した家屋に向かって呟く。


「やるじゃないっすか…」

砂煙の中から、ケープがフラフラになりながらも現れる。


「ですが、奇襲だけがあっしの戦術だと思わないことっす…」

そして、ケープが魔法を詠唱しようとする。


「(!!…何かがくるっす!)」

ケープは粒子眼でトルティヤとは異なる魔力を感知する。


そのまま、勢いよく後退する。


「スパァァンン!」

次の瞬間、近くにあった家屋の柱が両断される。


「…まさか」

ケープが魔力の正体を感知する。


「ほう。小僧め…」

トルティヤは、魔力の正体を見て、口角を釣り上げる。


二人の視線の先には、蒼いオーラに身を包んだリュウが立っていた。


「まさか…コサックの兄貴が…」

ケープは、リュウの姿を見て息を呑む。


「え?リュウ…なの?」

サシャはリュウの姿を見て目を丸くする。


「…」

リュウはケープに向けて静かに刀を向ける。


「さ、どうする。潔く降参するか?」

トルティヤは、ケープを挑発するように呟く。


「まさか…」

だが、ケープは降参の意志を見せない。


「(とはいえ、これは少し骨が折れそうっすね)」

彼女は意を決すると、鈎爪を構えた。

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