表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/135

第15章:芽剣蛇

「…」

巨大な蛇はその異様な存在感を放ちながら、

冷たい光を宿した鋭い目つきでサシャ達を睨みつけている。


「地震の原因って、もしやコイツの仕業!?」

サシャは村長からの話を思い出す。

その巨体は、まるで動く山のように、サシャ達に圧倒的な威圧感を与える。


「これは…まさか芽剣蛇(がけんじゃ)!?」

アリアは、その姿を捉えると、信じられないものを見たかのように呟いた。

その声は、微かに震えており、彼女もまた、この巨大な蛇に恐怖を感じていることが伺える。


「おやおや。これはまた随分な奴が現れたのぉ」

トルティヤは、そんなサシャ達を気にも留めず、

まるで面白いショーでも見ているかのように、興味津々に芽剣蛇(がけんじゃ)を見ていた。

その口元には、不敵な笑みが浮かんでいる。


「トルティヤも知ってるの?」

サシャはトルティヤに尋ねる。


「ふむ。花剣蛇(かけんじゃ)という、そんじょそこらのドラゴンよりもでかい蛇がおってな。こいつはその幼体じゃ」

トルティヤは、まるで昔話でもするかのように、芽剣蛇(がけんじゃ)の正体を明かした。


「それって、アリアが話してた…」

サシャは、アリアが道中で話していた、オババ様が花剣蛇(かけんじゃ)を倒したという話を思い出す。


「…来るぞ!」

リュウが、アリアとサシャに叫ぶ。


その声は、普段の冷静さを失っており、

彼もまた、この状況に危機感を抱いていることが分かる。


「シャァァァァ!!!」

芽剣蛇(がけんじゃ)は、唸り声をあげながら、鎌首をもたげる。

その動きは、まるで獲物を捕食する準備をする獣のように、サシャ達に恐怖を与える。


そして、信じられないほどの素早い動きで、頭部がサシャ達に向かってくる。


「早い!」

サシャ達は、三方向に分かれて辛うじて避ける。


「…」

芽剣蛇(がけんじゃ)は噛み付くが、その大きな口は空を切った。

しかし、その巨体からは、再びサシャ達を追い詰めるような威圧感が放たれている。


「アリア!こいつの弱点とか分からないのか?」

逃げながら、リュウはアリアに尋ねる。


「うーん、一応頭部が弱点だけど、かなり狙いにくいよね。あとは火魔法とか!」

アリアは、必死に記憶を辿りながら、芽剣蛇(がけんじゃ)の弱点を教える。


「火魔法…か」

リュウは、アリアの言葉に小さく呟く。

彼は水魔法しか使えない。


そうなると、この状況で火魔法を使えるのは一人しかいない。


「トルティヤ!火魔法を使ってくれないか?一大事なんだよ」

サシャは精神世界で、気だるそうに横になっているトルティヤに懇願する。


サシャはこの状況を打開するために、トルティヤの力を借りるしかないと考えている。


「おやおや?お主、「この依頼は僕に任せとけ」とか自信満々に言っておらんかったかのぉ?」

トルティヤは、からかうようにサシャに呟く。

その口調は、まるで他人事のように呑気だ。


「あー、悪かったって!ほら、報酬がかかってるし!ね?」

サシャは、必死に頼み込む。

彼は、この状況を打開するために、なりふり構っていられない。


「しかし、ワシはワシが交代したいと思った時にしか交代せんと言ったからのぉ」

トルティヤは、サシャの懇願をあっさりと拒否する。

その態度には、一切の妥協がない。


「もう!分かったよ!僕でなんとかするよ!」

サシャは、トルティヤの態度に諦め、双剣を構える。


「じゃが、ワシの「火魔法」の魔力を貸してやらんことはないぞ」

サシャが覚悟を決めた瞬間、トルティヤはニヤニヤと笑いながら、意外な言葉を口にする。


「魔力を貸す?」

サシャは、トルティヤの言葉に驚き、思わず聞き返す。


「仕方ないから今回はお試しじゃ。ほれ。お主の手を貸せ」

トルティヤは、そう言いながらサシャに手を差し出す。


「なんだよ。藪から棒に…」

言われるがまま、サシャはトルティヤに手を出す。

すると、サシャは自分の魔力に何かが流れ込んでくるのを感じた。

それは、まるで熱い炎が体内に流れ込んでくるような感覚だった。


「これは?」

サシャは、自分の身に起こった異変に戸惑い、トルティヤに尋ねる。


「ワシの火魔法の魔力を一部送り込んだのじゃ。ま、これだけあればなんとかなるじゃろ。だからワシの代わりに頑張るのじゃ」

そう言うと、トルティヤは再び横になる。


「ありがとう。トルティヤ」

サシャはそっとトルティヤに礼を言う。


「(さて、少し時間が必要かな…)」

サシャは逃げながら双剣に意識を集中させる。


「えいっ!」

アリアは逃げながら矢を放つ。

矢は風を切り裂き、芽剣蛇(がけんじゃ)の胴体へと迫る。


「グサッ!」

矢が芽剣蛇(がけんじゃ)の硬い鱗に阻まれ、わずかに食い込む。

しかし、芽剣蛇(がけんじゃ)は痛がる素振りすら見せない。


「シャァァァ!」

芽剣蛇(がけんじゃ)は咆哮を上げ、サシャ達に突っ込んでくる。

その速度は先程よりも増しており、アリアは辛うじて回避する。


「(くっ…なんて早いの?これで幼体って…)」

アリアは回避で精一杯だった。


「喰らえ…荒覇吐流奥義・剛鬼あらはばぎりゅうおうぎ・ごうき!」

リュウは木々の間を縫って芽剣蛇(がけんじゃ)に近づく。

そして、刀身に鬼のオーラを纏い、渾身の一撃を叩き込む。


「ズバッ!」

それは芽剣蛇(がけんじゃ)の頭にヒットした。

ミシミシと剣が肉に食い込む感触を得る。


だがしかし…


「シャァァァ!!」

芽剣蛇(がけんじゃ)は頭を振るうと、リュウを強引に吹き飛ばす。


リュウの身体は宙を舞い、数本の木をなぎ倒し地面へと叩きつけられる。


「くっ…」

咄嗟に受け身を取った。

しかし、衝撃は大きく、身体のあちこちから悲鳴があがる。


「なんて防御力なんだ」

頭の傷からは緑色の体液が流れ出る。

しかし、芽剣蛇(がけんじゃ)は倒れる気配が全く無い。

それどころか、まるで傷一つ負っていないかのように、悠然とサシャ達を見据えている。


「(一旦、下がって態勢を立て直すのも…)」

アリアは撤退も考えた。

しかし、芽剣蛇(がけんじゃ)は逃がすまいと、ゆっくりとサシャ達に近づいてくる。


「(このままじゃ…)」

すると、諦めかけていたところにサシャが二人に話す。


「ね!作戦を閃いたんだ。聞いてくれる?」

サシャは、息を切らしながらも、リュウとアリアに作戦を説明する。


一方で芽剣蛇(がけんじゃ)は先程よりも鋭い目つきをし威嚇の声を上げながら、こちらを睨みつけている。

まるで、傷をつけられたことを怒っているかのように。


「ふむ…やってみる価値はあるな…」

リュウは刀を構え、覚悟を決めた表情で前に出る。


「分かったよ!任せて」

アリアは再び弓を構え集中力を高める。


「二人とも…ありがとう」

サシャは二人に感謝の言葉を伝え、覚悟を決める。


そして、申し合わせたかのように、芽剣蛇(がけんじゃ)はサシャ達に向けて鋭い尻尾のなぎ払いが飛んでくる。

まるで太刀のような尻尾は、風を切り裂き、轟音を立てながら迫ってくる。

直撃したら死を連想させるようなものだった。


「はっ!」

サシャ達は迫りくる尻尾のなぎ払いを間一髪で回避する。


「バキバキバキ」

尻尾が直撃した木々が、まるで紙細工のようにバラバラに折れていく。

その破壊力に、サシャ達は改めて芽剣蛇(がけんじゃ)の強さを思い知る。


「しゅっ!」

リュウは素早い動きで尻尾のあたりを駆け回り、芽剣蛇(がけんじゃ)を翻弄する。


「(サシャ。長くはもたないぞ…)」

しかし、その動きは先程よりも鈍く、芽剣蛇(がけんじゃ)の攻撃をかわすのがやっとだ。


「シャァァァァ!」

芽剣蛇(がけんじゃ)は尻尾のあたりにいるリュウが気になるのだろう。

咆哮を上げ、尻尾をぶんぶんと振るう。


「よし!今ならいける!」

リュウが芽剣蛇(がけんじゃ)の注意を引きつけている隙に、アリアは狙いをよく定め、矢を放つ。


「ドシャッ!」

矢は風を切り裂き、真っ直ぐに飛んでいくと、芽剣蛇(がけんじゃ)の目に命中した。


「グギャァァァァ!!」

さすがの芽剣蛇(がけんじゃ)も、痛さ故か咆哮を上げる。

巨体が激しくのたうち回り、周囲の木々をなぎ倒していく。


その動きは先程よりも遅く、サシャ達にも反撃のチャンスが生まれる。


「今だ!!」

サシャはトルティヤから借りた魔力を双剣に流し込むと、双剣は炎を纏った。


「喰らえ!!」

炎を纏った双剣を芽剣蛇(がけんじゃ)の頭部に振り下ろす。


「グジャァ!」

肉が焼けただれる臭いが森に立ち込める。

しかし、芽剣蛇(がけんじゃ)の皮膚は硬く、双剣は深く切り込むことができない。


「シャァァァァ!」

芽剣蛇(がけんじゃ)は炎の熱さにのたうち回る。

巨体が激しく暴れ、周囲の地面を揺らす。


「効いてる!これなら…!」

サシャは双剣を再び構えて走り出す。


「うぉぉぉ!!!」

追撃と言わんばかりに、芽剣蛇(がけんじゃ)の頭部を双剣で突き刺す。


「グサッ!」

炎を纏った双剣が芽剣蛇(がけんじゃ)の頭を貫く。


「…手応えは…ある!」

サシャは勝利を確信しかけた。


「シャァァァァ!」

だが、芽剣蛇(がけんじゃ)も最後の抵抗と言わんばかりに体を揺らす。


「うわぁ…うわぁぁぁ」

サシャはバランスを崩して落下してしまった。


「うっ!」

サシャは倒れた大木に体をぶつけた。

全身に鈍い痛みが走る。


「サシャ!」

リュウが駆け寄る。

彼の額には汗が滲み、息も少し上がっている。


「いたた…俺は平気だよ」

サシャは痛みながらも立ち上がる。


「それよりも、芽剣蛇(がけんじゃ)は?」

サシャ達は芽剣蛇(がけんじゃ)の方を振り向く。


「…」

そこには、息絶えた芽剣蛇(がけんじゃ)が倒れていた。

頭部には双剣が突き刺さり、緑色の体液が流れ出ている。

どうやら、最後の突き刺しが脳まで貫通していたらしい。


「…やった!やったよ!」

サシャは、安堵の息を吐きながら、小さく拳を握った。


「…ふっ」

リュウは、刀を鞘に納め、静かに息をついた。


「おぉ!これは大手柄だよ!」

アリアは、満面の笑みで両手を挙げた。

だが、サシャが真顔になる。


「ところで…倒したのはいいけれど、ヘルガーヴァの死体は…こいつの胃袋の中だよね?」

サシャがふと頭に浮かんだことを呟く。


「あっ…」

戦闘で忘れていたが、肝心の標的であるヘルガーヴァは、

巨大な芽剣蛇(がけんじゃ)の胃袋の中に消えていた。


先程までの激しい戦闘の余韻が残る静かな森の中で、サシャ達は互いに顔を見合わせ、なんとも言えない空気が流れる。


「とりあえず、胃袋でも取り出してみる?」

芽剣蛇(がけんじゃ)の頭部から、双剣を回収しながらサシャが提案する。

しかし、その声には確信はなく、どこか自信がないような響きが感じられた。


「あ…多分無理だと思う!蛇系のモンスターの消化速度は早いらしいから…恐らく、もう液体…よくて骨になっていると思う!」

アリアは、目の前の巨大な芽剣蛇(がけんじゃ)の腹部をじっと見つめながら、冷静に答える。


その口ぶりを見るに、それは経験に基づく推測であり、もはや手の施しようがないことを示していた。


「…仕方ない。イレギュラーな事案だったし村長に素直に報告しよう」

サシャは、肩を落とし、諦めたように呟く。


「ふむ。こればかりは仕方ないのぉ。じゃが、芽剣蛇(がけんじゃ)じゃぞ。ヘルガーヴァ以上の収穫ではないか」

トルティヤは、腕組みをして、どこか他人事のように呟く。


「けど、依頼はヘルガーヴァの討伐だからなぁ」

サシャは報酬のことが頭をよぎり、なんとも言えない表情を浮かべる。


「まぁまぁ。こういう時は、討伐したモンスターの素材や首を持っていくものじゃ」

トルティヤは、サシャの肩を軽く叩く。


「そうなの?」

サシャは、不思議そうな顔をする。

冒険者としての経験が浅いサシャは、このような場合の対処法を知らなかった。


「確かにモンスターの首だったり素材は討伐の証にはなると思う。ただ、素材は偽物も出回っているから、できるなら本体を持っていきたいところだけど…」

アリアは、倒れている芽剣蛇(がけんじゃ)を見つめる。


しかし、その巨体は全長30m近くはあり、普通の方法では、とても運ぶことができない。


「トルティヤ、転送魔法は使えないの?」

サシャは、藁にもすがる思いでトルティヤに尋ねる。


「ワシの転送魔法はあんな大きなものは運べん。そもそも、村にマーキングしとらんから無理じゃな」

トルティヤは珍しく困った顔をする。


「…うーん、すごく単純な方法だけど…ここはひとつ、やってみようか!」

そう言うとアリアは、どこか楽しげに、魔法を唱える。


「鎖魔法-チェーンバインド-」

アリアの言葉と同時に、地面から無数の鎖が現れ、巨大な芽剣蛇(がけんじゃ)の体を拘束していく。


「アリア…それがあるなら最初から使えばよかったのでは?」

リュウは、アリアの行動に疑問を呈する。


「いやいや。さすがに動いている芽剣蛇(がけんじゃ)を縛るのは難しいよ…」

アリアは、困った顔で答える。

芽剣蛇は動きが速くて予測不能な上に、鱗は固く、

下手に鎖を巻き付けようとしたら、逆に弾かれてしまう可能性もあったからだ。


「ってことは、これを引っ張っていくわけだな」

サシャは、鎖の一本を手に取り、軽く引っ張ってみる。

しかし、その巨体は微動だにしない。


「ふふふ。その必要はないよぉ」

アリアがくすっと笑いながら、右手を上げると、

鎖はまるで生き物のように形を変え、巨大な車輪へと変化した。

それは、簡易的な荷車と呼ぶにはあまりにも巨大で、その光景はサシャ達を驚愕させた。


「おぉ!」

サシャは、アリアの魔法に驚嘆の声を上げる。


「これに自動で動くように命令を出せば…」

アリアは、いつもの調子で、荷車を動かす命令をした。

しかし、巨大な車輪はピクリとも動かない。

アリアは首を傾げ、再度命令を試みるが、結果は同じだった。


「あれ?おかしいなぁ。おーい!動いてよー!」

アリアは、荷車に向かって呼びかける。

しかし、うんともすんとも言わなかった。


「あれは魔力不足じゃな」

トルティヤが冷静に分析する。


「えぇ…やっぱり、引っ張っていくしか?」

サシャは、落胆した様子で呟く。


「お主はアホか。あんなでかいものを三人で引っ張っていけるわけがなかろう…」

トルティヤは、呆れた顔でサシャを見下ろす。


「じゃあ、どうしたら…」

サシャは、トルティヤに助けを求めるように尋ねる。


「はぁ…仕方ない」

そう言うと、トルティヤは渋々起き上がると、サシャの肩を叩く。

そして、サシャとトルティヤの人格が入れ替わる。


「…やれやれ。こうなるとは予想しておったが」

サシャの外見が変わる。


「え?サシャ…なの?」

サシャの外見の変化に驚くアリア。


「今はそんなことはどうでも良かろう…」

そう言うと、トルティヤは魔法を唱える。


「土魔法-大地の大巨人(グランドタイタン)-」

次の瞬間、地面が隆起し、巨大なゴーレムが形成される。


それは人型を模し、要塞のように大きく、

大地そのものが躍動しているようだった。


「うわぁ…すご…」

アリアはその光景に唖然とする。

その表情には、トルティヤの魔法に対する驚嘆に満ちていた。


「その鎖を村まで引っ張るのじゃ」

トルティヤがゴーレムに命令する。

ゴーレムは、その巨体を揺らすと、鎖を掴み、ゆっくりと歩き始める。


「ズズッ…ズズッ」

鎖でできた車輪が動き出す。

巨大な芽剣蛇(がけんじゃ)を運んだ荷車が、ゆっくりと森の中を進んでいく。


「おぉ!これなら村まで…!」

サシャは、トルティヤの魔法に感激している。


「以前、誰かさんが魔力を、わしにくれたおかげで使えるようになったのじゃ。全く運が良かったのぉ」

トルティヤは、サシャに呟く。


「(なんだかんだ、トルティヤって優しいんだな)」

サシャが笑みを見せる。


「ただ、勘違いするでないぞ。わしは極力楽をしつつ魔具を回収したいだけじゃ。今回だって魔具の資金稼ぎの一環で助けてやってるだけじゃ。感謝せい」

トルティヤは、少し照れ臭そうに呟く。


「はいはい。ありがとうございます」

サシャは、トルティヤに礼を言う。


「相変わらずスケールが大きい魔法だ」

リュウもトルティヤの魔法に驚いていた。


「ねぇ?あれはサシャだよね?」

アリアは、リュウに尋ねる。

その表情には、戸惑いと、リュウへの確認を求める気持ちが込められていた。


「まぁ、半分正解で半分はずれだな」

リュウは、アリアの問いに曖昧な答えを返す。


「えー!?どういうことかわかんないよー!」

アリアは、じれったそうな顔をする。


こうして、巨大なゴーレムに引かれた芽剣蛇(がけんじゃ)の巨体は、ゆっくりと森を抜け、村へと続く道を歩み始めた。


「なんだなんだ!?」

その異様な光景は、村へと続く道を通る人々を驚かせ、

足を止めて遠巻きに見物する者や、慌てて道を譲る者もいた。

中には、信じられない光景に目を丸くし、口をあんぐりと開けて立ち尽くす者もいた。


やがて、ゴーレムに引かれた芽剣蛇(がけんじゃ)の巨体が村に近づくと、村人たちはその異様な光景に目を丸くした。


村の入り口付近にいた村人たちは、何が起こっているのか理解できず、ただただ唖然と立ち尽くしていた。

子供たちは恐ろしさのあまり母親の背中に隠れ、老人は杖をつきながら目を凝らして近づく巨大な蛇を見つめていた。


「おかえりなさい…って、なんじゃありゃ!?」

村の入り口にいた村人は、サシャ達の姿と、

その後ろに続く巨大な芽剣蛇(がけんじゃ)の巨体を見て、驚きのあまり声を上げた。


その声は、瞬く間に村中に響き渡り、他の村人たちも異変に気づき始めた。

家の中から顔を出す者、店先から飛び出してくる者など、村はたちまち騒然とした雰囲気に包まれた。


「冒険者達が戻ったぞ!村長を呼んでこい!」

そして、数人の村人が村長の家へと走り出した。

村中は、突然の出来事に大騒ぎとなった。


「あれ?なんか騒々しいぞ」

リュウが、辺りを見渡す。


「ふぅ…あとは任せたぞ」

トルティヤは安堵の息をつくと、サシャの肩を叩く。

すると、サシャの外見が元に戻る。


「あれ?元に戻った?」

アリアは、サシャの様子を見て不思議な顔をする。


「まぁ、色々あってさ…後で話すよ」

サシャは、苦笑いしながらアリアに話す。


そうこうしていると、村長が現れた。

村長は、村人たちに囲まれ、困惑した表情を浮かべていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ