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悪夢

 夢の中だとすぐにわかった。死んだはずの母さんが俺の部屋で淡く微笑んでいたから。


 どちらかと言えば豪快な性格の人だったけど、俺が悲しんだ時や困った時に見せる表情は決まって母親のそれだった。


『そうか、まあ喧嘩に負ける事くらい誰にでもあるさ』


 俺がリリアを虐めている連中に返り討ちにされた時は、こうして隣に腰かけた母さんに慰めてもらったっけ。


 ——母さんみたいに強い魔戦士になりたい。


 そう伝えると、母さんは目尻に深い皺を作った。


『だからいつもリリアを助けるのか。私が魔戦士として色んな人を助けてきたから』


 コクンと頷けば、母さんは俺の頭をポンポンと叩いた。


『だけどな、私は何も魔戦士だから人を助けてる訳じゃない。力があるから戦ってる訳でもないんだ』


 母さんの言っている事がよくわからない。首を傾げる俺に、彼女は明るく笑った。


『アレンにもわかる時が来るさ』


 そういうものなのか。ピンと来ないけど、きっと憧れの母さんに手を伸ばし続ければ到達できる答えなのだろう。


 そう結論付け、目の前にいる母さんに手を伸ばす。だけど届かない。こんなに近くで俺を見ているのに。


 ——母さん。


 直後、景色が唐突に切り替わった。


 広がる曇天の空。王都の町並みに降り注ぐ雨。ゆっくりと路上を進む一台の馬車を、建ち並ぶ民家の窓から見つめる民衆。

 馬車の荷台に乗せられた分厚い麻布からは血が滲んでおり、何か(せい)とは真逆のものを包んでいるのだと思い知らされる。


 家路の途中で俺の前に馬車が停まり、荷台に乗った衛兵達が麻布に包まれた何かを慎重に降ろし、地面に寝かせる。


 俺の見ている前で血染めの布が暴かれる。


『アレン君』


 どこかの誰かが言った。


『すまない』


「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」

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