Keter to Noah《Pentiment》
『ほら急いで。急がないとあの娘は死ぬ』
急かされる儘に塔に入り、階段を下る。
塔の中は人間の根源的な恐怖で満たされていた。
至るところに人の恐怖の象徴―――暴力、迫害、刃が並び―――最後には断頭台まで―――ありとあらゆる恐怖が壁に描かれていた。
「なんなんだよこれ———」
『これは記憶。あの娘が受けた苦しみの記憶の記録。あの娘はここに描かれていることなんて憶えていないけれどね』
「ならあのノアは———」
最後に描かれていたのは断頭台だ。
『そんなことは後でいいでしょう?』
「、、、」
この少女は何を隠している?
明らかに会話の方向を何かから遠ざけている。
『ほら、ここが最下層。あの娘の本質の表れ』
「本質?」
『そう、本質。あの娘の感情が最も動いた瞬間の表れ』
最下層にあったのは真っ白な砂漠と真っ暗な空だった。
何も無いし、風も吹かない。
『何もない、、、って顔ね。その通りよ———あの娘には何もない。記憶も、感情も———人らしさを構成するようなものは何もない』
「どうしてだ?」
『それは———私が■■■■で———あの娘が■■■■だから———要は元となった■■■•■■が■■を起こしたから———』
≪単語は阻害されました≫
≪単語は阻害されました≫
≪単語は阻害されました≫
≪単語は阻害されました≫
「何だって?」
『だから■■■•■■が———あぁ、そうかこれは———まずい!!』
≪単語は阻害されました≫
≪禁止ワードの確認≫
≪神域よりこの地の土着なる契約の天使、メタトロンを召喚します≫
『失念していた———彼奴が来る』
「彼奴?」
『天使ども———詰まる所この世界の管理者』
それまで真っ黒だった空が真っ赤に染まり———光った。
視界が真っ白に染まり、轟音が地面を揺らす。
【異物に死と絶望を———天壊】
『ちっ———【塗り重ねは剥がれ落ちる】』
複雑な魔法陣が形成されたかと思えば、一気に崩れ落ちる。
【天使は秩序。何人も我らの言葉には逆らえない———さぁ、消え———】
『ここがどこだと思っているの?』
天使が口を開いた儘止まる。
まるで時が止まったかのように、ただ止まった。
『ここは■■■•■■の領域。王たるあの娘が目覚めるまでは私が代理の王。つまり———』
少女が微笑みながら、宣言する。
『ここにいる限り私が秩序。何人も私には逆らえない』
【—————】
『消えなさい』
天使の羽が破れ———細切れになっていく。
それを笑顔で眺めながら———言う。
さっさと起きなさい、ノア—————と
、