表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

序章1

 今宵は満月

 みるもの全て虜とするような、神秘的な光を醸し出している。

 辺りには(そび)え立つ木々。

 聴覚としてとらえる事が出来る音は、葉風とかすかな波の音だけ。

 「わぁー、きれー」

 生い茂る(すすき)を掻き分けながらたどりついたその先には、静謐(せいひつ)さ漂う湖のほとりだった。 

 そこの湖は、碧水を湛え、月明かりに照らされ、萌黄色の水霧が立ち込めていた。

 風は吹いていない。

 湖の中心から波紋が生じ、小さな波が、月明かりに照らされ、キラキラとしていた。

 静かな夜の湖、その湖が放つ神々しさ、かすかに揺らめく水の音、湖のあたりに囲むように咲いている向日葵の香り、そのすべてが呼んでいるかのようにして、夜陰の中、私をここまで導いてくれた。

 「あなたは、だぁれ?」

 後ろから声がした。

 風の音と同じくらい小さな声で、今にも消えてしまいそう。

 声音は澄んだ優しさを含んでいて、子供特有の高い声だった。

 「わたし?」

 私は肩越しに視線を向けた。

 声の主を視界に捉え、ごくりと息をのむ。

 私は目を見開いて、全身をそちらにかたむける。

 思考が一瞬止まったような気がした。

 自分の後ろに立っていたのは、少女だった。

 それも、小学二年生の自分よりほんの少し年上だろう、九、十歳くらいの。

 「あなたは…地に住む民でしょう?」

 さっきとまったく同じ声だった。さっきの声は、この少女が発したもので間違いない。

 少女の声で我に返った私は、手の甲で目許をこすって、再度少女を見る。

 さっきとなんら変わらない光景だった。

 どうやら目の前にいる少女は、幻でもなんでもないようだ。

 清閑な容貌の可愛らしく、尚且つ美しい少女だった。透き通る金色の髪を高くひとつに結い上げ、多数の鈴のついた(かんざし)をつけている。鎖骨や肩があらわになっていて、着物のように折り重なった胸元に、ひらひら舞う長いスカート。両の腕の肘のあたりでは、ふんわりしたベールを身にまとうという風貌。



 夜風が吹いてきた―――

 


最後まで、読んでいただきありがとうございました。

感想など、お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ