第87話 This World And Times Past(現世と過去の時代) 8
肉屋の店先……。
「やぁドミール、お待たせ」
そう言いながらドンバスは姉妹が背負っている籠を受け取る。
それぞれの籠からラビンを取ってはドミールに手渡している。
「この子達が猟師の姉妹かい?噂を聞いて想像していたが、それ以上に可愛いお嬢ちゃん達じゃないか。話の通り、瓜二つだね。わしはドミール、初めまして」
「私はレイラ、最初はアマと名乗っていました」
「私はライラ、ローと名乗ってましたドミールさん」
姉妹の髪に結ってあるリボンを見ながらドミールが答えた。
「リボンの話を聞いてなきゃ見分けが付かないね、本当にそっくりだ。いつも獲物をありがとうよお嬢ちゃん達、あ、ちょっと待っててくれ」
言うと奥に行ってしまった。
姉妹は自分達のリボンを互いに見ている。
「ははは。私も最初は見分けが付かなかったが、今は慣れたよ。レイラとライラの名を聞いた時は戸惑ったが、それも慣れた。だがリボンは忘れず身に着けてほしいな」
そこへ奥から麻袋を手にドミールが戻ってきた。
「お嬢ちゃん達、いつものお礼と言ってはなんだが、これはラビンの毛皮。フリップグロスはもうじき寒くなる。サンドラに何か作ってもらうといい」
「ラビンは捨てるところが無いんだよ。フリップグロスではね、ラビンの毛皮は繋ぎ合わせて何か作るのさ。サンドラならきっと何かいい物に変えてくれるよ」
「お嬢ちゃん達、寒くなるとラビンも減るが頑張ってな。いつも獲物を待ってるよ」
姉妹はドミールに毛皮のお礼を言うと、ドンバスと事務所に向かっていった。
そして市場事務所……。
「はい、今日の代金。それで二人共、雪の季節はどう過ごすんだい?ラビン以外の獲物で雪の季節と言えば、バトンという小動物なのだが、すばしっこくて捕るのは容易じゃない……」
ドンバスは姉妹の顔を見て、
「いや、君達二人なら捕まえられそうだがね」
市場事務所から出てくる二人。
ドンバスが手を振って送ってくれた。
「雪の季節はラビンが少なくなるのね」
「バトンって小動物だって。すばしっこいって言ってたわ」
「大丈夫、ライラ。そのバトンには悪いけど、術式の鍛錬にちょうどいいかも」
姉妹には簡単な事かもしれない。雪の季節にはバトンも獲物として捕まえればいいだろう。
市場を出るとリンクで話す姉妹であった。