第82話 This World And Times Past(現世と過去の時代) 3
現世の時代……。
「ガム、行ってくるわ。まだ会話ができるとは思ってないけど……。で、この時代から何か伝えることはないかしら?」
「僕からは何も……。2人が無事でいただけで十分です」
「そうね……。今は声を聞かせるだけで良しとしなきゃね」
そして過去の時代……。
既に巨人の槍に光が纏っている。
姉妹は両掌を巨人の槍に添えていた。現世の時代から母ミランダのリンクが聞こえてくる。
「レイラ、ライラ。聞いてるかしら。ママはこの通り元気よ。2人はどう?サンドラさんによろしく伝えてちょうだいね」
「ママ、聞こえているわ。私達は元気でいます」
「ママ、ママ聞こえる?」
姉妹の呼びかけには、まだ母ミランダの反応は無かった。
「まだ私達の声は届かないみたい。」
「そのようねレイラ。もっとリンクのパワーを込めなきゃ」
「ライラ、焦らず頑張ろ。そのうちにママに届くようになるわ」
再び現世の時代……。
巨人の槍で最大値の力でリンクしているミランダの姿。
「まだあの子達の声が聞こえてこない……。でも仕方ないわね、じっくり取り組んでレイラ、ライラ」
巨人の槍の光が薄れてくると、ミランダはそこを離れた。
やがて雨が上がると、遠くグアムスタンの雲は白く変わった。
ミランダ邸、リビングではガムがミランダの帰りを待っていた。
ゆっくりとドアが開き、ミランダが戻ってきた。
立ち上がるガムを見て、ゆっくり首を横に振るミランダ。
座りながら肩を落とすガム。
「ガム、巨人の槍のリンクはまだ始まったばかり。あの子達にはじっくり取り組んでもらって、そのうちにリンクが可能になるわ。焦らず待ちましょ」
「えぇ。2人が頑張ってくれれば、いずれ叶いますね」
両時代の家の煙突から煙が上り始めると、いい匂いが立ち込めた。晩の食事の支度が始まったのだった。