第7話 Chapter(章) 5
晩の食事の最中。
ガイラも予定より早く帰宅していて、珍しく4人揃ったディナーになった。
姉妹は父と話したくて仕方がない。
もっぱら魔術の話をレクチャーしているガイラ。
姉妹は、もう聞くだけで術式を記憶する。
当然身に付いてはいないが、ガイラの言葉は十分理解の範囲だ。
「2人共。パパの食事が進まないでしょ。食べ終わってからでも構わないじゃない」
「いいんだミランダ。普段留守にしている分、娘達との会話を楽しみながら食事をするのがいいんだよ」
レクチャーの話もひと段落。
話が途切れたところでガイラが言った。
「ミランダ。明日の帰り時間は分からない。なるべく早く戻る様にするよ」
「妖魔退治に手こずる様でも慌てないでくださいね」
それを聞いて、少し肩を落とす姉妹。
16歳を迎えようとする頃の姉妹は、リンク系を習得。シンクロ系の鍛練を始めていた。
リンクを使い、話し始めた姉妹。
「ねぇライラ……明日はパパの帰り遅いって」
「仕方ないわ。パパは妖魔退治が仕事だもん。各国の王様や女王様からの給金が無ければ私達暮らせないもん」
「そうよね、ライラの言う通り。……でも残念だな」
姉妹のリンクによる会話はガイラにも届いているが、彼は黙って聞いていた。
母ミランダはリンクを使っておらず、姉妹のリンクは聞けないが、ガイラにシンクロする事で会話を把握している。
過去にミランダは訳あってリンクを封印したのだった。
ガイラとミランダは顔を見合わせて首を傾げる。
「2人共、リンクとシンクロの鍛練の具合はどうかな?お互いの意識を掴む事が出来る様になっているのかい?」
既にリンクで会話は出来る姉妹だったが、姉のレイラが言った。
「パパ、まだ難しい術式なの。意識は何となく感じられる程度。ママの意識もまだ掴めない」
レイラに合わせる様にライラも話す。
「今、リンクにパワーを加えたりして色々私達なりに試してるわパパ」
ガイラにシンクロしてきたミランダに答える。
「この子達は何か隠しているのかい?複合魔術も使えてきてる。後でそれとなく聞いてあげてくれ」
「分かってます。何か心配事か何かでしょう」
その夜、ガイラは早々に眠りについた。
リビングのテーブルでは、ミランダが姉妹に尋ねた。
「あなた達、何か心配事かしら?それとも、魔術の鍛練に行き詰まり?」
「違うのママ。……明日は何の日だと思う?」
「ママ。明日はライラと2人で、ケーキを焼こうと思ってるの。パパが早く戻ってきたら、一緒に……」
「なるほどそう言う事だったのね。ごめんなさい2人共。あなた達の16歳の誕生日だったものね。……でもパパの仕事も少し考えてみて。……この世界に妖魔神がいる限り、妖魔退治は無くならないわ。世界中の魔道士達も同じ事。パパが早く戻れるかどうかは気にしないで。明日はママも手伝うわ。それでパパの帰りを待ちましょ」