第70話 Encounter(出会い) 1
姉妹はいつものように市場で用を済ませると、リュージン邸に戻っていった。
門の近くで待機していたワンドル。姉妹はワンドルには気付かず、そのままリュージン邸に入っていく。
ローがリュージンに駆け寄り、
「お待たせしましたリュージンさん」
「お帰りロー。さぁアマもここにおいで」
姉妹はリュージンの側の椅子に腰かけた。
「リュージンさん。お話があると」
アマが問う。そこへウェンドが側へ来て、
「二人に紹介したい人がいるんですよ。……あ、ほら入って来たわ。あの方よ」
ワンドルが門から入って来るのが姉妹から見えた。
「あの方、二人は思い当たるかしら?」
姉妹は怪訝な表情を浮かべる。
ワンドルのことは分からない。姉妹の表情がそれを示していた。
「初めまして。私はワンドル。お前達の叔父だよ。やっと見付けた」
「あの……誰かしら?」
姉妹は疑惑の表情を隠さず、声を揃えて尋ねた。
「無理もないさ。記憶を失くしているのだからね。……どうだろう、このままサンドラさんの家に戻りながら話さないか?」
姉妹はサンドラの名を聞き、少しは安心したのか頷いた。
ワンドルと姉妹はリュージン夫妻へ挨拶も早々に邸を出て、サンドラ邸に向かった。
道中の会話。
「二人共、グアムスタンの雲の事は知っているかい?」
ワンドルが問うとアマが答えた。
「えぇ、最近知ったわ。グアムスタンの雲の色が変わったら雨が降る。時には凄い稲光もあって、バリスタンでも眩しいくらい。この町の人なら皆知ってるわ」
「そうか、では最近はどうかな?二人共、何か思い当たる事はなかったかい?」
アマは無言になる。そしてローとリンクで話した。
「ねぇロー。この人何か知ってるのかしら?グアムスタンの雲とか、何か知ってるのかなぁ」
「雲の色が変わると雨が降るってのは、この町の人なら皆知ってる常識なんでしょ?他に何か聞きたいのかしらね」
そこにリンクで口を挟むワンドル。
「稲光で岩が輝いていなかったかな?」
姉妹は驚きの表情で顔を引きつらせた。




