第61話 Pieces Of Memory(記憶のカケラ) 6
過去の時代……。ある日のこと。
いつものようにバリスタン山の岩山付近。ラビンを狩りに来ていた姉妹。
「ねぇアマ。今日のグアムスタンの雲、いつもと違うわね」
獲物を抱えながらローが言った。
「そうね。あまり見かけない雲の色。雨は降るのかしら」
二人は巨人の槍方向に歩いていった。
巨人の槍の周りには雨宿りできる場所はないのだが、姉妹は引き寄せられるように巨人の槍に近づいていく。
薄紫色の雲は次第に色濃くはっきりとしてきた。
やがて雷鳴が轟き、稲光は巨人の槍を照らし出した。
「見て!ロー。岩が照らされて綺麗」
「すごい岩ね。今まで気が付かなかった」
そうこうしないうち雨が降り始め、巨人の槍に稲光が届くと、軽い地響きと共に輝きだした。その輝きに目を覆う姉妹。
あまりの眩しさに手をかざしながらも巨人の槍に近づく姉妹。
「何故輝きが薄れないのかしら」
好奇心から、ローが巨人の槍に触れた。
「ちょっとロー。危ないじゃない大丈夫?」
「平気よアマ。あなたも触れてみるといいわ」
アマもローに促されて巨人の槍に触れてみた。
と、姉妹の脳裏にフラッシュバックが起こった。
(このままリンクが届きますように。ワンドル、答えて!)
それを耳にした姉妹。そして再び、
(通じているようだミランダ。わかるかい?)
「ロー、声が聞こえるわ。誰かしら」
「ワンドル?……。ミランダ?……」
(ワンドル様、上手くいきました。リンク出来ています)
(ガムの言った通り、グアムスタンの雲が薄紫色の雲の時ならばリンク出来るのだ)
やがて巨人の槍に纏った光は徐々に薄らいでいった。
同じくして会話が聞こえなくなった。
「アマ、これも私達の不思議な力なの?」
「そうとしか考えられないわ。会話の主は誰なのかしら」
「最初の声、女性だった。あとは男性二人」
「ローも聞けたのね。私も同じように聞いたわ。その男性二人はワンドルとガムという人みたいね。……一体誰かしら」
「私達から話しかけられないかなぁ……」
「グアムスタンの雲が薄紫色ならばリンクできるって言ってた。リンクって何?この不思議な力の事?」
「アマの思う通りなのかも。私達が心で話す不思議な力、リンクっていうのよ、きっと」
姉妹は雨で濡れていることなどお構いなし。自分達の記憶のカケラを心に刻んでいるのだった。