第53話 Pieces Of Memory(記憶のカケラ) 3
「パイルグロスまでの道中には小高い山が多いんだ。陽が暮れる頃、横穴を見つけたらそこで1泊過ごせばいい。2泊した先がパイルグロスさ」
「町長さんの説明の通りに馬を走らせれば、間違いなく3日もしないうちに到着できそうだね。途中の横穴で野宿になるけど、二人共大丈夫かい?」
「心配にはおよびませんサンドラさん」
「町長さんが言ってた横穴。見つけたら、陽が残ってても野宿の支度を始めるようにね」
「はい。それでは行ってきます。町長さん、ありがとうございました」
「道中気を付けてお行き」
サンドラと町長に見送られて馬を走らせる姉妹。サンドラは町長が去ったあとも、姉妹の姿が見えなくなるまで見送っていた。
その日二人は日暮れ近くなって、ようやく横穴にたどり着いたが、二日目は日暮れ前には横穴に着いていた。
火を起こすのは二人には危なかろうと、町長さんは小さなランプを2台と油を持たせてくれたのだった。
ときおり薄明かりが横穴から漏れている。
明日、まもなくすれば隣町のパイルグロス。しばらくするとランプの明かりが消えて夜の闇に包まれた。
「ねぇアマ、寝ちゃった?」
「どうしたの?」
「パイルグロスの町で私達の事を知ってる人に会えるかしら?」
「なんとも言えないわ。町中歩いて、声かけられるのを待つしかない。両親に会えるかも知れないじゃない」
「そ、そうよね。でも会えても私達は顔すら憶えていない……それが辛いの」
「私もローの気持ちと同じよ。でも両親に会えれば直ぐに思い出すかも知れないじゃない。元気出して」
夜も更けて、虫の鳴き声だけが横穴に聞こえていた。




