第49話 Go Back In Time(時を遡る) 1
(私が訪れた過去の世界の全てを調べた。ここでも姉妹に会う事はなかった……。)
ここはワンドルが訪れた1番古い時代。
ブレインラードの町は無く、荒れた大地。ワンドルはバリスタン山の小高い丘にテントを張り、野営していた。
日暮れ近く。遠くから陽の光がテントを照らす。
テントの側に腰掛けていたワンドルの長い影が、麓に向かって伸びている。
ワンドルは、バリスタン山の頂上にふと目をやった。
「むっ⁉︎グアムスタンの雲が……。いや、山自体が無い!」
バリスタン山の頂上より向こう、グアムスタン山にかかっているはずの雲に気付いたワンドル。
「なるほど、この時代はグアムスタン山は存在しないのか。後の時代になって地殻変動で隆起する訳だな。……となれば、この古い時代にまで転移されたとは思えんな。流石に時間が厚すぎる。グランダの中途半端な術式では不可能と見た。もっと新しい時代に的を絞るとしよう」
立ち上がるとテントに入るワンドル。
陽が暮れて、辺りに夜のとばりが降りるとテントのランタンに灯りが灯った。
翌日、現世の時代のブレインラードに戻ったワンドル。ガイラ邸のミランダとガムに報告に来た。
「と言う訳で、私が思うにグランダが現れた時代までに子供達はいると感じている」
「ブレインラードの、町が出来る以前の時代まで行ったのですか?一体どの位過去に遡るのでしょう?」
「過去800年までに絞れるが、子供達が転移されたのはそれより新しいはず。だが探しだすのは容易ではない」
「手分けして捜索出来ればいいのですが、それにはマタスタシス=テクを習得しなければいけません……。なんとも歯痒い思いが募るばかり」
テーブルを囲んでいた3人はしばらく沈黙してしまった。
ワンドルはポケットから手帳を取り出すと、1枚のメモを広げてテーブルに置いた。
それはガイラの部屋の書棚で見付けた、古い書物の最後のページの切り抜きだった。
「ガイラが古い書物を持っていたはずだが、それはどこに?」
「術式を記した書物ね。ガムと読んだわ」
暖炉の上に置いてあった古い書物は、ミランダのムーブでテーブルまで運ばれた。
「これですねワンドル」
ワンドルは、切り抜かれた書物の最後のページを挟んでミランダに手渡した。
「こ、これは!最後のページを綺麗に切り取っている。……ワンドル、これはあなたが?」
「その通り。気が付かなかったようだね。読んでごらん」
ミランダが読み終えるとガムに手渡す。
「これはマタスタシス=テクとクルスオブメモリーロスの習得法……。ワンドル様はこれによって習得したのですね」
「メモリーロスは習得出来なかったがね。多分シンクロ、リンク、ムーブのパワーが足りなかったせいだ。バーストとサンダーを最大限に引き上げるのが精一杯、私の限界だった」