第150話 Two People When Young(若い頃の2人) 4
一派を引き連れて、兄グラードが宿泊している宿にやって来た弟グランダ。
「お、おいグランダ。誰もいねぇ。もぬけの殻だ」
「何!兄は、グラードがいないだと!?よく探せ!」
既に兄グラードは、近衛隊士に導かれ王都に向かってしまった。
宿主からも、グラードは王都に招かれたと知らされた。
「そうか……みんな、一旦山へ戻ろう。それからまた考えるさ」
暗殺を模索したグランダ一派の計画は一旦ここで失敗に終わった。
そして山奥のグランダのアジト……。
「なぁグランダ。俺、第4回闘技大会、参加したいんだ」
「俺も4回に出たいと思ってる」
仲間の数人から、次の闘技大会の事を話された。
「そうしたいなら出ていけ。俺に就いてこれない奴は負け犬だ」
「そういうグランダはどうするんだい?」
「俺は……参加しない」
弟グランダが集めた仲間は、闘技大会の名声が欲しいのか、1人また1人とアジトを去っていった。
グラードが近衛隊入隊となれば次回闘技大会には参加しない。優勝のチャンスと見たのだろう。更にはグランダも参加しないとなれば、そのチャンスも大きくなる。
結局、第4回闘技大会が開催される頃には、アジトには弟グランダしか残っていなかった。
「必ずや決着を着けてやる。例え近衛と対峙しても」
弟グランダには、既に復讐心にも似た感情が沸き立っているのであった。
それからの弟グランダは、日一日と時が経つにつれ、その姿を変えていった。
これがグランダの魔獣化の始まりだった。計り知れないほどの復讐心が、表情を変え体格を変え、考え方まで変わってしまった。
既に兄の存在よりも、去っていった周囲の人間に対しての不信感からの憎悪が激しくなったのだった。