第148話 Two People When Young(若い頃の2人) 2
兄弟が成人を迎えた頃……。
「近衛隊の試験に行く事が目的だったが、闘技場の建設が決まったようだ。どうだ、2人で腕試しに参加しては」
「父さん、それはいいね。弟と参加するよ」
「兄さん……」
「大丈夫。俺達は日々鍛えてる。負けやしないさ」
「闘技大会も開かれると聞いた。箔が付けば近衛にも即採用される。この先王城も安泰ってもんだ」
「あなた達が近衛になって、王城に奉公できれば母さんはこの上ない事よ」
「でも僕が?……兄さんには敵わないよ。闘技大会も無理だよ」
「いいじゃないか。俺と2人でワンツーだ」
「うむ。賞金も出るって噂だぞ」
「ほら。闘技大会に向けて練習しようよ」
「兄さんには敵わない。参加しても意味がないよ」
「そんなことはない。ワンツーでいいじゃないか」
「考えておくよ」
弟は自分の部屋に入ってしまった。
数年が経ち、ようやく闘技場が建設された。
早速持ち上がったのが闘技大会。国の強者を戦わせ、闘技場に観客を集めようというもの。
その経済的効果もあって、周囲は賑わった。
で、この時を待ちわびた片田舎の兄弟。
かたや自信満々、かたやおどおどして兄に跪きそうである。
第1回の闘技大会のエントリーが始まった。
「お前達なら大丈夫。大手を振って行って来い」
父親は兄弟を鼓舞する。
兄弟は第1回闘技大会にエントリーを済ませた。
第1回だからといって侮るなかれ。エントリーしたのはかなりの強者達。しかし兄弟も負けてはいない。日々の練習で鍛えた身体は他の参加者たちに見劣りしていなかった。
闘技大会の当初のルールは、鎧甲冑の装備は自由。武器、防具も自由であった。
大抵の参加者は、鎧甲冑にロングソード、ハードプレート。
見るからに力にモノを言わせる大会だった。
兄弟は、鎧甲冑は簡素なもの、武器は手作りのショートソードに円形のプレート。ある程度身軽にして戦う戦法をとっていたが、これが功を奏した。
兄弟は決勝まで進出したのだった。
弟は自信のなさから、円盾に細工を施したものを使っていた。