第132話 Sister's Strategy Plan(姉妹の作戦計画) 12
ダットロームの町外れ、聖ユリトール教会の前。
絵にあった構図が分かる場所に姉妹が転移を成功させた。
運良く周囲に人はいなかった。
「ライラ!転移出来たわ。見て。リュージンさんのリビングの絵と同じ場所」
「素敵な絵、そのまま。凄い!」
「ここへ来た証明に、シスターに挨拶していきましょうライラ」
姉妹は教会に入っていった。
天井が高い。壁には数枚の大きなフレスコ画が描かれ、明り取りのステンドグラスが様々な色で光を落としている。
奥にはシスターらしき女性と、側には2人のお付きの修道女が座っていた。
レイラがシスターに声を掛けた。
「こんにちは。私達、旅の途中でダットロームに立ち寄ったのですが、教会を訪ねてみたらと勧められて伺いました」
丁寧な言葉遣いはレイラが得意だ。旅の途中というのは咄嗟に思い付いた。
シスターはゆっくり立ち上がると応じた。
「ようこそ聖ユリトール教会へ」
姉妹は俯いて十字を切る。
姉妹はそれぞれ名乗ると、丁寧にお辞儀をした。
「そんなにかしこまらないでくださいな。私はこの教会の責任者でアマンドです。ここはまだ歴史は浅いですが、多くの人の寄付によって建てられた町の宝物です。またダットロームに立ち寄った際は是非いらしてくださいね」
「ありがとうございます、シスターアマンド。私達は先がありますのでこれで失礼します」
姉妹は再びお辞儀をして、教会を後にした。
外へ出た姉妹は、リュージン邸に戻るため、人影のない所で転移術式を使った。
リュージン邸、リビングの壁の絵の前。
レイラ、ライラが順に戻ってきた。
「お待たせしましたご夫妻。ダットロームの聖ユリトール教会を訪ねてきました」
「旅の途中に立ち寄ったってレイラが話すと、シスターアマンドが優しく迎え入れてくれました」
リュージン夫妻は、シスターの名前をアマンドだと言ったライラの顔を見ている。
「ほ、本当にダットロームに?シスターにお会いしたの?」
「もちろんです、ウェンドさん。私達が名乗ると、シスターもアマンドだとおっしゃいました」
「確かにシスターの名はアマンド。当時は40代だったかな?若くしてシスターの職に就かれた。あなた達は魔術とやらでダットロームに行ったのかい?」
「はい。イメージした場所に転移する事が出来るようになりました。いずれ元の時代へも帰れることになります」
ウェンドは2人にお茶を勧めながら、
「あら、そうなると寂しくなるわね。でもたまにはここにも寄ってくださいね。ねぇあなた」
「そうだな。今度は庭でバーベキューでもやろうじゃないか。いいだろ二人共」
「もちろんですリュージンさん」
姉妹は、声を揃えて答えた。