第130話 This World And Times Past (現世と過去の時代) 37
テーブルには、挿し絵のある書籍が並べられ、しおりが挟んであるのが分かる。
「ミランダ様、転移前にリンクしてはどうでしょうか?もしかすると、1人の転移術式にリンクして同時に転移術式を使う……そうなれば同じイメージの場所に転移も可能では?」
「それには、時代が変わると失敗が判断できない。同じ時代の同じ時節で何度も試してみてからが良さそうね。もしガムの考えが正しければ、共に転移が可能になる」
「同じ時節であれば、マタスタシス=テクは自身以外も転移可能とされていますが、時を越えてとなると果たしてどうなるか……結果は分かりません」
「フリップグロスにいるワンドルに聞いてみましょう。何かヒントを得られるでしょう。その前に闘技場の地下へ出掛けるわ」
「かしこまりました。ミランダ様」
ミランダは、闘技場の地下へと転移した。
闘技場の地下……。ミランダが薄暗い廊下を歩いている。
「なるほど歴代の勝者、拳闘士として見るからに強そうな者たちばかりね。……。⁉あら、第一回から第三回までは同じ勝者。名前は……グラード。4回目以降は勝てなかったのね。」
一通り目をやるミランダ。
「連勝していたのは1回から3回まで勝ってきたグラード。他の回は次々に勝者が変わってる。参加者もそれなりに強かったようね。このうちの誰かがグランダとして魔力を手に入れて生き延びたんだわ。……これは過去の時代に行かなきゃ様子が分からない。……さて、ワンドルに聞いてみましょ」
ミランダは闘技場を出て、過去の時代のワンドルの仮住まいに転移した。
過去の時代、フリップグロスのワンドルの仮住まい……。
「……ガムの考えは正しいだろう。リンクして同じイメージを共有しながら転移術式を使う。結果同じ場所に転移することが出来るのだろう。ミランダが最初に転移する時は私が手を添えていた。同じ場所のイメージを共有してはいなかったが、同じ場所に転移できている」
「そうね、思い起こせばそうだったわ。同じバリスタン山の狩場に転移できたものね。それから、ここに来る前、現世の魔導士協会本部から闘技場に関する書籍を借りてきたの。第一回大会から第十回までの当時の記録が記されているもの」
「それで何か分ったかい?」
「1回から3回まではグラードという名の同じ勝者、あとは最後まで勝者は代わる代わるだったわ」
「グラード……。なるほど、それで書籍には挿し絵などは記されていたかい?」
「その時代をイメージできそうな挿し絵はあったけど、先ずは子供達の術式の鍛錬が必要かと思って」
「その書籍を持ってくればよかったが、鍛錬も必要か……。そうだな、万が一転移に失敗して離れ離れになったら、また巨人の槍でリンク続きになってしまうからな」
苦笑いのワンドルが続ける。
「私は転移術式の鍛錬には付き合えそうにない。ミランダがしっかり見てやりなさい」
少し曇りがちの表情のワンドルだったが、ミランダは気が付かなかった。