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どれだけの時間がたっていたかは知らないが、目を開けると蓮はとある部屋のベッドに寝かされていた。どうやらどこかの地下のようだ。ふと蓮の頭の中に監禁という言葉がよぎったが、ベッドのすぐそばのテーブルににこの世界の果物らしきものが三つほど籠に入っておいてあるのを見ると、どうやら自分を助けてくれたらしい。そんなことを考えていると、部屋にある階段の上から自分と同じくらいの年齢の女の子が下りてきた。
女の子「あ、目が覚めたんだ。よかった。私、あなたを倒れているところを見つけて、ここまで連れてきたのよ。」
蓮「ありがとう、助かったよ。でも、ここはどこなんだ?」
女の子「私の家よ。とはいえ地下室だけどね。」
蓮「地下室?」
女の子「そう。私は冒険者で、この地下室を拠点にしているの。」
蓮「そうなのか。俺、冒険者になるためにここの町に来たんだ。」
女の子「そうなの?それなら話は早いわね。私も冒険者なの。今すぐに冒険者にしてあげてもいいけど条件があるわ。」
蓮「条件?」
女の子「そう。私と一緒に冒険者として活動していくこと。どっちみちあなたはひとりで冒険者をやることはできないし、私のパーティーも人が多ければそれほどできることが増える。winwinでしょ?」
蓮「俺でもいいならぜひ仲間に入れてくれ!」
女の子「よしきまりね!じゃあ、これからは私と一緒に行動していきましょう。私の名前はミカよ。よろしく!」
蓮「俺は蓮だ。こちらこそ、よろしく!」
俺たち二人は冒険者として熱い握手をした。
蓮「ところでなんで冒険者の拠点が地下にあるんだ?普通そういうのって町の目立つところに堂々と建ってるものじゃないか?」
ミカ「いまの冒険者ってのは、少なくともあなたの言う「普通」とは大きく違うわ。いま、国がらみで冒険者という存在そのものを消そうとして来ててね、以前はあなたの言ったような大きな建物があったんだけど、壊されちゃったの。それに、いま国の兵隊につかまって冒険者ってことがばれたら殺されるか呪いをかけられて一生国の兵隊としてこき使われるかの二択よ。だからこうしてひそかに行動するしかないの。あの掲示板も思念伝達の魔法を使ってほかの拠点の人たちや、情報屋からの情報を仕入れるための道具なの。」
蓮「は?そんな国の王様なんて倒しちゃえばいいじゃないか!俺この世界に来た直後でも、炎魔法を使うことができたんだぜ?まあ、ちょっとそのせいで死にかけたけど、、」
ミカ「そううまくはいかないのよ。私の親友だった子もそいつらにとらわれて呪いをかけられたの。その子はこの拠点のメンバーで最も強い子だったの。なのに一瞬で倒されてそのまま連れてかれちゃった。あなたが今むやみに出しゃばっても、冒険者だってばれたら殺されるかもしれないのよ?そういえば、あなたさっき炎魔法で死にかけたって言った?もしかしてあの山火事ってあなたのことなの?」
蓮「そんなことがあったんだな…あと、山火事の件についてなんだが、、、お前の言うとうりなんだ。異世界に来たからノリで手をかざしてそれっぽいこと言ったらなんかもう制御できなくなっちゃって、、あの事、もうそんなに広まってるのか?」
ミカ「そりゃそうよ森林自体は国の術兵(魔法を主に使う国の兵隊)にかかれば数週間程度で治せるけど、山への放火は重罪よ。もうとっくに捜査は始まって、犯人の特徴もそれなりに判明してるわよ。町に出るときは気を付けた方がいいわよ。あなた、捕まったら冗談抜きで即刻死刑でしょうね。」
蓮「そんなに広まってるのか…とにかく気を付けるよ…」
ミカ「まあ、あなたはいろいろ問題を抱えているとはいえ、私たちのもとで冒険者になったんだからやるべきことをやらないとね。まずはこれ。この大きな石に手を置いて。これであなたがどの属性の魔法を使うことができるのかわかるから。」
蓮「よっしゃ!初のステータス測定だな!気合入るぜ!」
蓮は言われるがままその石の上に手を置いた。すると、大きな石の中に解読できない文字が次々と浮かび上がる。ミカはその文字がわかるようで、何かぶつぶつとつぶやいている。しばらくすると、ミカが何かにメモをした紙を俺に渡してきた。