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Chapter2-3 “ひとつかみの栄光”


“ひとつかみの栄光”で支配した木の枝が回転しながら狼型のモンスター、グリーンウルフの群れに向かって飛翔する。



「死ね、この犬っころ共が!!」

「わふっ!」

「あぁあぁあぁっ、また失敗した!!??」


 グリーンウルフはまるで飼い主と遊ぶ飼い犬のように、木の枝を易々と口でキャッチしてしまった。



「くっそぉ!! ちょこまかと動きやがってぇええ!!」


 ここは星型の奇妙な形の葉が鬱蒼と生い茂る西の森。


 俺は緑色の体毛を生やしたグリーンウルフというモンスターの集団を相手に遊び……否、激しい戦闘を行っていた。



「ティア!! やっぱ武器無しじゃコイツらには勝てないって!!」


 ――そう。俺は今、無手に近い状態で複数のモンスターたちと戦っている。


 本来ならばアヒトの村で購入した安物の鉄の剣があるのだが、それはティアに没収されてしまって手元にない。


 そしてそのティアと言えば、木の上から文字通りの高みの見物をしていた。俺がグリーンウルフから死に物狂いで逃げるのを、手も貸さずにヘラヘラと嘲笑っていやがる。



「だって、それじゃ修行にならないじゃないの。カイトはそのスキルだけでこの子たちに勝利しなさい」

「そんな無茶苦茶な!? こっちは俺ひとりなのに、こんな大人数相手じゃ――クッ、この!!」


 会話をしている間も、10体以上もいるグリーンウルフたちは次から次へと俺に襲い掛かってきた。


 いくら“ひとつかみの栄光”があるといっても、対応が追いつかない。



「スキルの効果時間は1回の発動に付き1分ってところかしら。弱点は言わずもがなね」


 やっぱりコイツ、俺の観察が目的かよ……!!


 たしかに俺のスキルは右手で握れればたいていの物が操れるとはいえ、弱点が多い。

 というか、俺自身に弱点しかないのが現状だ。



 ――――――――――――

 カイト Lv.5


 HP(生命力):48/100

 MP(魔法力):10/10

 STスタミナ:62/100


 ATK(攻撃力):15

 VIT(耐久力):10

 MGI(魔力):5

 AGI(俊敏力):20

 LUC(幸運力):5


 称号:???

 職業:なし


 スキル:ひとつかみの栄光ユニークLv.1

 魔法:なし


 装備

 武器:なし

 頭:手作りの皮帽子

 腕:手作りの皮グローブ

 胴:手作りの皮胸当て

 脚:手作りの皮すね当て

 装飾:なし


 仲間:ユースティティア(聖剣の精霊)



 ――――――――――――



 このステータスからも分かる通り、戦闘能力がどれも低すぎる。


 なにせモンスターとの戦闘はこれが初めてだし、一度もレベルアップをしていない。つまり、初期ステータスなのだ。


 なのにティアのやつ、俺ひとりに戦わせやがって。



「わふうっ!!」

「おぐっ!? あ、あぶねぇ!! 次当たったら死ぬっ!」


 再びグリーンウルフの一匹が隙を狙って俺の脚を狙ってきたので、慌てて避ける。


 なにしろウルフの突進がかすっただけで、俺のHPはすでに半分近くまで減っている。たぶん頭を撫でられただけでも俺は簡単に死ねる自信があるぜ。



「くそ、何かできることは無いのか!?」


 こんなところでゲームオーバーなんかになりたくない。ロクに攻略も進んでいないのにまた28年後なんて最悪だ。

 だから俺は、この世界で生き残るために必死に頭を働かせる。



【ユニークスキル:ひとつかみの栄光Lv.1】


 ・右手で掴んだ物体を握った秒数だけ掌握し、自在に操ることができる。

 ・ただし掌握できる物体は非生物のみ。

 ・一度スキルを発動させると、再び使用可能となるまで[300秒-(スキルレベル×10秒)]が必要クールタイム

 ・発動開始のタイミングは任意で決定できる。

 ・能力が解除される条件:①自分以外の人間が掌握した物体に触る。②スキルを発動せずに時間が経過する(掴んでいた秒数×10秒)。③スキル発動可能な上限数を超える(スキルレベルで変動、Lv.1では1個)。



 今のスキルレベルでは制限があまりに多く、連発して発動することもできない。多数を相手にする戦闘を非常に厳しくしている要因の一つだ。



「ちょっとー、カイトは棒切れもマトモに振れないわけ? そんな調子じゃ勇者になんてなれないわよ?」

「うるせぇ、だから俺は一般人だって言ってるだろうが!!」


 ――そう。俺はただの一般人だ。

 異世界から召喚された勇者でもなければ、特別な才能を持った英雄でもない。


 しかも俺はジョブについておらず、戦闘用のスキルも他に覚えていない。せめて剣術スキルがLv.1でもあれば、システムによる戦闘アシストが発生して剣道部レベルの動きができるんだが……何もない俺は、素のままの技能で戦わなきゃいけないのだ。


 例外としてスキルオーブという強制的にスキルを覚えさせるアイテムがあるのだが。



「スキルオーブはバベルの塔の中ボス撃破報酬だし、どっちにしろ俺には無理だ……」


 だがそんな俺にもたったひとつだけ、モンスターに通用するモノがあった。それは……。



「くっ……バドミントン部の動体視力を舐めんじゃねぇぞ!!」


 大砲のように次から次へと飛び込んでくるグリーンウルフたちを、俺は身体をひねりながら紙一重で避けていく。


 それはまるで羽根の動きを先読みしてシャトルを打ち返すように。

 部活で毎日のようにラケットを握っていた俺には、これぐらい造作もないことだ。


 そして、グリーンウルフたちの動きに慣れ始めた頃。



「あ、これはやっぱ無理かも――」


 反撃をする前に俺の体力(スタミナ)が尽きた。



 ▷NEXT Chapter2-4 ティアの特製汁

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