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第5話 神さまからのミッション


 翌朝、少し早起きした椿と由利香はメリケンパークの海岸沿いを歩いている。


 そこには、神戸の歴史にとって欠かせないものがある。

 「神戸港震災メモリアルパーク」だ。

 ここは阪神淡路大震災の追悼と、いつまでも忘れてはならないという思いから、当時の被害をそのまま残してあるのだ。

 来てみると、水没した道はひび割れ、街灯が大きく傾いたまま半分ほどが水に沈んで、当時の被害のひどさを目の当たりにすることが出来る。

 しばし声にならずにいた由利香がそっと手を合わせて目を閉じる。

 椿もそれに倣う。

「人は忘れる生き物だから、どんどん風化していくのは仕方がないとして。でもね、決して忘れちゃならない事柄もあるんだよ。災害は忘れた頃にやってくるものだから」

 後ろで声がした。

 振り向くと、冬里が彼らの向こうを見透かすようにその場所を眺めている。

 その後ろに夏樹、少し離れてシュウがいた。

「うん、うん。誰にでも起こりうる事よね。心します」

 硬い表情で言う由利香に、同じように頷く椿。

「そ、来るわけないって言う傲慢が身を滅ぼすんだからね」

 もう一度思いを込めて手を合わせ、彼らはその場所をあとにした。


 ――世界中のすべての人間が心穏やかになりますように

 ――そして、すべての生きとし生けるものが幸せで平和でありますように





 ホテルへ帰ると、もう朝食が始まっていた。

 ここの朝食はブッフェスタイルだ。とりわけパンの種類が多く、パン好きにはたまらないだろう。料理の種類も多く味も良く、やはり老舗ホテルと言うだけのことはあった。

 最後のスイーツまで堪能し、一行はいったん部屋へと戻る。

 しばしの休憩のあと、お世話になった部屋にさよならを言いロビーへ降りる。チェックアウトのそのあとは……。


「それにしても、本当にそこだけ、しか行っちゃいけないの?」

「うん、神さまからのミッションなんだから、寄り道とかしてると罰が当たるよ~」

「うそおっしゃい!」

 いつものごとくの、由利香と冬里のやり取りだ。

 彼らは今、シュウが運転するレンタカーの中にいる。いつものように7人乗りのワゴン車だ。実はこれにはいきさつがあった。




「淡路島?」

「そうだ」

 社員旅行の行き先を《すさのお》から頼まれた時、ひとつ条件があると言われたのだ。

 それは、淡路島に行くこと。

 せっかく同じ兵庫県で、ひとっ走りでそこまで行ける神戸に行くのだからと、《すさのお》がちゃっかり《てんじん》の依頼に便乗したのだ。そしてこのミッションは《てんじん》も了解済みだ。

「なんでまた? 淡路島なんすか?」

 夏樹が不思議そうに聞くと、ちょっと言いよどんでいた《すさのお》だが、ニッコリ笑顔の冬里が口を開くのを見て、彼が何か言い出す前に慌てたように説明する。

「おとっつあんによ、ことづけものがあるんで、持って行ってもらいたいんだ」

「おとっつあん?」

 またまた首をかしげる夏樹に、《すさのお》が言った。

「知らねえのか? 俺のおとっつあんと言えば、《いざなぎのみこと》だよ!」

「あ!」


《いざなぎのみこと》

 神話では、《いざなみのみこと》と力を合わせて国生みをしたと言われる神さまだ。

 そして彼らが最初にお生みになったのが淡路島だったという説もある。それで淡路島には「伊弉諾神宮いざなぎじんぐう」という《いざなぎのみこと》を祀る神社があるのだ。いわれによると、本殿はもと禁足の聖地だったところにあるらしい。

 そして、《あまてらす》《つくよみ》《すさのお》は、彼から生まれた三姉弟、……失礼、三貴神と言うすごい名前がついた、もったいなくもありがたいと言われている神さまなのだ。


「てへへ、すんません」

「で? ことづけものって、なーにー?」

 冬里がまたいらぬ事を面白がって聞くので、《すさのお》はまったくもう、と言う感じのため息のあと、ぶわあ、と恐ろしげな気を出す。

「知らずとも良い」

 その一言に、夏樹は「!」と身を縮めるが、冬里はどこ吹く風だ。

「なんだ、つまんないの。でもさあ、人にものを頼むときは言い方ってものがあるでしょ? なに、さっきのあの口調」

「はあ? なんだよお前みたいな遠慮のかけらもないような奴が……」

 そこまで言って冬里を睨むが、なぜか冬里はいつものように茶化しもせず黙ったまま。

 しかも、にこりともしない。

「あ? もっと真面目に頼めってか? あーあーわかったよ」

 そう言うと、《すさのお》は、今度は春の日差しのような温かな気を出し、姿勢を正して軽く頭を下げながら言う。

「千年人のお三方、どうか我が父君に、ことづけものをお渡し下され。謹んでお願い申し上げまする。……これでいいか?」

「うぬ、よかろう」

 口調とは裏腹に、冬里の表情はいつものニッコリに変わっている。

「ガハハハ、まったくめんどくさい奴」

 すると、いつものごとくため息交じりで2人のやり取りを見ていたシュウが言う。

「冬里、もうその辺で」

 だがそのあとに、ふと思いついたように微笑みを浮かべて《すさのお》の正面に歩いて行く。

「……では、このミッション、謹んでお受け致します」

 そう言いながら《すさのお》の前に跪いて胸に手を当てるシュウ。

 横で見ていた夏樹が慌てて飛んでいき同じように跪く。

 そして、なんと言うことでしょう、冬里までがニッコリと美しい笑みを浮かべながら、彼の前に跪いたのだ。

「は?」

 しばしポカンとしていた《すさのお》が、膝を打って大笑いしたのは言うまでもない。

「ガーッハハハ、鞍馬やるじゃねえか。こんなジョークが言えるようになったんだな」

「へ? ジョーク?」

「いいえ、ジョークではありませんよ」

 と言いつつ、その微笑みのなかにいたずら心が隠れているようだ。

「なーんだ、あ、でも、俺は真剣ですからね」

「はあ? ああ、わかったわかった、夏樹はいつも真剣で清々しいぜえ」

 と、また大笑いする。その笑いは、あたり一帯の生きとし生けるものを幸せに包みこんでいくのだった。




 と言ういきさつだ。

 せっかくの淡路島、伊弉諾神宮以外のところへ行っても、冬里の言うような罰は当たらないと思うが、本日の宿泊先は有馬温泉に決めているため、なかなかに日程が押しているのだ。

 2日目に有馬温泉に行くと決めたのは、オーナーの1人である由利香。

「なんでまた?」

 と、これまた夏樹が聞くのに、

「だってこれは慰安旅行よ。日頃の疲れを温泉で落としてもらおうと思ったの。せっかくお膝元に行くんだからね」

 と、済まして言う。

 実は温泉好きのシュウに、日頃の感謝を込めて、なんてことは椿以外には決して言わない由利香だが。


 そんなこんなで彼らの乗るレンタカーは、一路淡路島を目指している。

 神戸から淡路島上陸までは、本当にあっという間の40分ほどだ。

 途中、世界でも指折りの吊り橋である明石海峡大橋を渡っていく。

「え~、皆様~、こちらが有名な、明石海峡大橋でございます。全長は……」

 どこから仕入れたのが、夏樹がバスガイドよろしく説明し始めたのだが。

「うわあ、すごいわよ。この鉄柱? っていうの? あ、下を船がいっぱい通ってる~。わあ、道がまっすぐ~ねえ、あそこに見えてるが淡路島よね?」

 由利香はちっとも聞いちゃいないので、ぶすっとして説明をやめてしまう。

「で、全長は?」

 だが優しい椿に促されて、また嬉々として説明の続きを始めるのもいつものことだ。

 まだ出発から1時間もたっていないので少しも疲れてはいないが、運転を交代したいという夏樹のために、淡路ハイウェイオアシスと言うサービスエリアに寄る。

 ここにには土産物や軽食が楽しめる建物や、もちろん広いトイレもある。

 明石海峡大橋を眺められるビュースポットもあり、その上なんと、観覧車まで建っている。休憩と遊びを兼ねた場所のようだ。

 帰りはたぶん寄らないというので、由利香は土産物を物色中だ。もちろん椿は付き添いで。

 夏樹はソフトクリームの文字を見つけて、嬉しそうに買いに行っている。

 シュウと冬里はコーヒーを買って、ちょうど空いていたフードコートの景色が良い窓際の席についた。

「それにしても、誰のおかげか、今回も良い天気だねえ」

 彼らの社員旅行は、天気予報がどんなに雨だと言い張っても、当日は嘘のようによく晴れるのだ。

「そうだね」

 おかしそうに答えるシュウたちのもとへ、究極の晴れ男がやってきた。

「すごいんすよ、ここのソフトクリーム! 俺だけ違う列に並ばされたと思ったら、なんと、機械が作ってくれたんです!」

「へえ」

 見ると、次に並んでいた人にも機械が作ってくれているようだ。工程を見ているとなかなか堂に入っていて? 技術の進歩はたいしたものだと思わせてくれる。

 ただし味は普通のソフトクリームだ〈当たり前です〉

 さて、休憩も終わって、運転席に夏樹、助手席には椿、真ん中はシュウと冬里、一番後ろが由利香、と、若い2人組? が運転するときのお決まりの席に座って出発だ。

 で、なぜ夏樹が運転したいと言い出したのかというと。

 実はこの高速道路の制限速度が、なんと100キロなのだ。

「いえーい、なんか爽快~」

 今日も抜けるような青空の下、夏樹の運転する車は爽快、いや、豪快に高速を走る。

「でもさあ、100キロだよね? そんなのアウトバーンじゃ追い抜かれっぱなしだよ」

 冬里が思いついたように言う。

「そりゃそうっすけど」

 夏樹がちょっとすねたように言ったあとに、由利香が聞いている。

「アウトバーンって、ドイツにある速度制限なしの道路よね?」

「うん、そうだよ」

「いったい何キロ出したことがあるのよ、冬里」

「う~ん、300キロくらい?」

「さ、300キロ? なにそれ! 300キロってすでに新幹線の世界じゃない」

「わあお」

「さ、さすが冬里」

 ここで聞かなきゃ良いのに、由利香がまた余計なことを聞いてしまった。

「さすがに鞍馬くんは出したことないわよね、300キロ」

「ありますよ」

「……」

「……」

「……」

 冬里以外の3人が、しばしの沈黙の後。

「あるの?! 鞍馬くん!」

「さすがは鞍馬さん」

「ええ?! 俺に黙って、ひどいっすシュウさん!」

 さすがに運転を誤ることはないが、夏樹は大いにご立腹だ。

「シュウってさ、けっこうスピードには強いよねえ」

 すねまくる夏樹を救ったのは、そんな冬里の一言。

 そう言えば、フェアリーワールドでも、シュウさんって絶叫マシン平気で乗ってたよなあ、そうかあ。

「なによもう、ねえ椿、こうなったら樫村さんにお願いして、イギリスじゃなくてドイツで就職させてもらいましょ。それでアウトバーン300キロで走ってやりましょ!」

 ただ、お姉様はどうやら羨ましかったらしい。訳のわからない理屈を言うが、そんなときも椿は冷静だ。

「イギリスからドイツなら航空便いくつも飛んでるし、日本の国内旅行の感覚で行けるよ。それに、俺は300キロ出す度胸はないし」

「うっし! だったら俺と一緒に行きましょう。そんでもって俺が300キロ体験させてあげますよ!」

「よおし、乗った!」

 座席を乗り出して言う由利香。その両側では面白そうな冬里と、「由利香さん、危ないですよ」と苦笑しつつ注意するシュウがいた。

 そんなやりとりをしているうちに、車はもう「伊弉諾神宮」のすぐそばまで来ていた。


 長い参道を通って行くと鳥居があり、その向こうに大きな池が広がっている。

 池にかかる小さな橋を渡って門をくぐると途端に空気が変わる。シンと静まり張り詰めたようなその気配に、椿と由利香は顔を見合わせ思わず背筋を伸ばすのだった。

 拝殿に参拝すると、空気が緩んだような感じがした。

 ホッとしてあたりを見回すと、おみくじと書かれた看板が目に入る。由利香が「ねえ」と言いながら振り向いたとき……

 カチ、と音がしたように「場」というのか、そこの磁場がずれたような感覚がした。

「え? あれ?」

 だが、其処此処にいた参拝客も、椿もあとの3人も、何事もなかったようにさっきと同じ場所に同じ姿勢でいる。

「あ、そうか。フフ」

 納得したように笑ってひとつ息を整えると、由利香は「ねえ、おみくじがあるわよ」と、強制参加の号令をかけるのだった。



§ § §

 さて、由利香が場のずれを感じていた一瞬のあいだに。

 千年人の3人は《いざなぎのみこと》に呼ばれてその奥座敷にいた。

「おや? ああ、そういうことか」

 すると目の前に懐かしい姿が現れる。

「ハル兄!」

 そう、それはなんと樫村だった。

 夏樹が読んで字のごとく、本当に飛んでいくと、樫村はおかしそうに受け止めつつその頭をなでる。

「おお、よしよし、久しぶりだなあ」

「はい! けどハル兄、俺、赤ちゃんじゃないっすよ、頭なでなではひどいっす」

「そうか?」

「お久しぶりです」

「ハルが呼ばれたと言うことは」

 シュウがそう言ったとき、彼らの後ろから声がした。

「春夏秋冬に我が子よりのことづけものをいただこうか」

 振り向くと、そこにはまばゆいばかりの光がさしていて、その向こうからえもいわれず心地よい声が響いてきた。

 4人はまるで打ち合わせていたように揃って頭を下げる。

 ――重くて軽い、弱くて強い、きつくゆるい、様々な感覚がどっと押し寄せる――

 しばらくして、ふむふむと頷くような気配がして。

「しかと受け取った。深く礼を言う。まあ、しばしごゆるりとして行かれよ」

 また心地よい声がして、彼らの前にはいつの間にか日本茶の茶碗が浮かんでいる。

 彼らは頭を上げ、ほう、と息をついたあと、それを手に取り口に運ぶ。ゆるゆると身体から力が抜けていく。あまり自覚はなかったが、やはりかなりの重圧と緊張があったようだ。

 そのあとは近況など報告しあいながら、春夏秋冬はひとときを心ゆくまで楽しんだのだった。

「じゃ、俺はもう行くわ。またそのうち日本にも行くよ」

「お待ちしています」

「なるべく早くね~」

「ハル兄、約束ですよ」

 笑顔で手を振りながら消える樫村を見送ったあと。

 ふ、と気が付くと、彼ら3人も元いた場所に帰っていたのだった。

§ § §



「ほら! 夏樹何してるの。おみくじよ、おみくじ」

 由利香の声がする。

「え? あ、はい! よおし、今日はなんだか大吉の気分だ。いや、絶対大吉だ!」

「あはは、おみくじを引く前から大吉っていう奴も珍しいな」

 楽しそうに笑いながら言う椿と揃って引いたおみくじは。

 なんと! 2人ともに大吉だった。

「わあお」

「すごいぞ夏樹」

 すると彼らの横から声がする。

「わあお、こんなこともあるのね」

 由利香が嬉しそうに示したそれを見ると、なんと大吉。

「わあお、こんなこともあるんだねえ」

 ふざけたように言う冬里のも、やはり大吉。

「と言う事は……」

 顔を見合わせた夏樹と椿が、ババッとシュウを見ると、なんとも複雑な表情でいる彼の手の中には。

〔大凶、と見せかけて実は大吉〕

 と、なんと表現して良いのか解釈に困るおみくじがあった。

「ええ?」

「なんなんすか、これ」

 2人が声を上げると、どこからか「ハーッハハハ」と笑う声が聞こえ、ほわん、と、シュウの手の中にあるおみくじから煙がのぼる。

 するとさっきの文字が消えて、そのあとから文字が浮かび上がる。

〔大大大吉〕

「ええ?」

「なんなんすか、これ」

 同じセリフを言う2人の声にかぶるように、また笑い声が聞こえ、やがてそれは風に乗るようにどこかへ消えて行った。

「それにしても、大大大吉ってさ、シュウだけすごく良いじゃない、《いざなぎ》ってば、ずる~い」

 ちっともずるいと思ってなさそうな笑顔で冬里が言う。そのあとに、まるで知っているかのようにシュウに聞く。

「何かした?」

「特には。ただ、いつか店にいらしてくださればいいなと思っただけだよ」

 ははーんと納得する冬里に、

「お誘いはしていないよ」

 と、苦笑いのシュウ。

「え? 《いざなぎ》さんが来るんすか? うっし! だったら腕によりをかけておもてなししますよ」

「だから、お誘いはしていないよ」

 腕まくりする勢いで言う夏樹に、シュウが重ねて言う。

「でもまあ、シュウが来てくれれば良いと思った時点で、それはお誘いなんだよ。観念したら?」

「観念も何も、いらしてくださるなら、精一杯おもてなしするだけだよ」

 そう言ったシュウの手からまたほわんと煙が上がり。

〔大大大大大吉〕

 なんと大が2つも増えていたそうな。

 めでたしめでたし。


 帰りの運転は椿に任せる、と、夏樹が言うので椿が運転席、助手席には由利香が座っている。

 その後ろにシュウと夏樹。

 珍しいことに冬里が最後部にいる。

「どうしたの?」

 思わず聞いた由利香に、

「何かおかしい?」

 と、質問を質問で返す冬里。

「おかしいわよ、あんたが一番後ろなんて」

「そう? たまには後ろから皆を眺めるのもいいかな~って思っただけだよ」

「またふざける」

 そう言いながらも、それ以上は追求しない由利香だった。


 だが、出発してほどなく、なぜ運転を椿に任せたのかがわかる。

「へえ、珍しい。鞍馬さんがまた寝てる」

「え?」

 バックミラーを見た椿が言うので、思わず由利香が後ろを見ると、シュウと、なんと夏樹も窓にもたれてぐっすりと眠っている。何やら今日は静かだな、と思っていた矢先だ。

「冬里がいないわよ」

「やっぱり寝てるんじゃない?」

「うそ! あの冬里が?」

 伸び上がるようにして最後部座席を見やった由利香が、悔しそうに言う。

「ホントだわ、ちゃっかり横になって寝てるわよ。悔しいけど顔は見えないようにしてる」

「これを見越して最後部に陣取ったんだね」

「そうだわ、まったく冬里ってば隙がないわね」

 そんな言い方に椿は少し笑うが、彼らから説明を受けていた2人は知っているのだ。

 今日のことづけものが、なにか特別なものであったこと。そして、かなり心身に負担がかかるものであったことも。

 だからこのまま眠らせてあげたいことも。


「ところでもうすぐサービスエリアだけど、休憩はいらないよね? みんな寝てるし、あと1時間もしないうちに着くし」

「うん、どうしても冬里の寝顔を見てやりたいけど、悪趣味だからやめておくわ」

「はは」

 また軽く笑った椿が、

「では、ここからも安全運転で参ります」

 と、気を引き締めるように言う。


 帰りはバスガイドのような説明もなく、5人を乗せた車は、明石海峡大橋を爽快に走り抜けていくのだった。






神戸だけでは飽き足らず、なんと淡路島まで出張です!

とは言え、いざなぎさんしか行ってませんが(笑)

淡路島も見所がたくさんありますので、是非色々調べまくってお出かけしてみて下さい。

これから良い時期ですよお~。

彼らの社員旅行、あと少しだけお付き合い下さい。

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