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第4話 山へ海へ散策開始


 北野は入り組んだ坂道に、いくつもの異人館が点在している。


 そんな異人館街では、館内が見学できるチケットが販売されている。

 うろこの家、山手八番館、北野外人倶楽部、坂の上の異人館、英国館、洋館長屋、ベンの家など。他にも風見鶏の館、萌黄の館、デンマーク館、ウイーンオーストリアの家、オランダ館、etc. etc. 見学できる異人館はたくさんあるので、坂道をゼイゼイ言いながら登ったり降りたりしつつ、こんな所に~と楽しみながら見つけていけば良い。

 それぞれの館のオープン時間はだいたい九時半。

 彼らが北野天満神社の階段を降りてきたのもだいたい同じ時間だったので、もうどこでも見学できるのだが、今朝は早朝の出発、実は朝ご飯というものを食べていない。

 なので約1名、ご機嫌が斜めになりつつある人物がいる。


「ねえ、お腹すいた~」

「え? さっきコーヒー頂いたじゃない、《てんじん》家で」

 面白そうに言う冬里を、キッと睨んで由利香が言う。

「私はお腹がすいたって言ったのよ。コーヒーでお腹がいっぱいになるのかしら?」

「うん、僕はそうだけど? 美味しいコーヒーはどんなご馳走よりもお腹に、いや、心に溜まるよお」

 相変わらず人を煙に巻くような理屈? を述べる冬里にあきれ顔の由利香だったが、そんなことでだまされるような彼女ではない。

「そりゃあ、あんたたちはそうかもしれないけど、私は違うの! 今日は朝ご飯抜きだったのよ。ああ~お腹すいた~朝ご飯食べたあい~」

 北野天満神社をあとにした『はるぶすと』ご一行は、このあとは異人館の散策をするはずだったのだが、そう簡単にはいかないようだ。

 すると、

「あーあ、もう、こうなったお姉様には僕ですら勝てないなあ」

 と、冬里は首を振りながら言うと、どこからかタブレットを取り出してきた。

「なになに? 冬里が探してくれるの?」

「うん……、……、あ、すぐ近くにお店がある。でも空いてるかなあ」

「ほんと? 近いのなら行きましょ、どっち?」

「えっとね、こっち」

 冬里が見つけた喫茶店は、本当にすぐ近くにあった。こぢんまりしていて素敵な内装のその店はもうオープンしていて、モーニングサービスもあるようだ。

 注文を取りに来た店主とすぐに打ち解けた夏樹が、異人館のことをあれこれ聞き出しているのもいつもの光景だ。


 さて、美味しいモーニングでお腹が満たされた由利香は最強だ。

 先ほどの喫茶店でもらった異人館のマップを見ながら彼らを引っ張り回す様は、まるでフェアリーワールドの乗り物を攻略したときのようだ。

「ええっと、あ、次はここ行きましょ!」

「ええ~? 由利香さん、さっきまで一歩も動かないって感じだったのにい」

「まあまあ、許してやってよ夏樹」

 こういうときの女の子? は疲れ知らずだ。

 きつい坂道もなんのその。

 ゼエハア言いながら、

「可愛い~」だの、「素敵~」だの、笑ったり夢見たりお忙しいことだ。

 夏と秋と冬は平気な顔で、椿はそれなりに息を荒くしながら、あとを付いていく。


 ほぼ一回りして気が済んだ由利香から出て来た次のセリフが、

「楽しかった~。ああ、でも、お腹すいた~」

 だったのは、当然と言えば当然のこと。




 北野坂を降りてくると、三ノ宮にたどり着く。

 ここは神戸グルメやショッピングが楽しめる神戸の繁華街だ。センター街と呼ばれるアーケード通りや、さんちかと呼ばれる地下街をぶらぶらしながら楽しむのも良い。

 少し海側には旧居留地と呼ばれるおしゃれな一角もある。街並みを眺めつつそのまま元町や南京町まで散策するのも楽しいだろう。

 お腹がすいて凶暴になりつつある? 由利香のために、まずは神戸牛の店でランチを済ませ、アーケード通りをウィンドウショッピングしながらプラプラと元町方面へ歩く。ちょっと小腹が空いたので、中華街(南京町)に吸い寄せられるように入っていき、食べ歩きをしたり店を冷やかしたりしながらまたプラプラ。


「ああ~食べた~。苦しいからちょっとカフェで休憩しましょ」

 南京町の食べ歩きで大満足の由利香が、またとんでもない提案をする。

 すぐそばの元町商店街には、神戸のおしゃれなカフェが点在しているので、ゆっくり座って一息つくにはもってこいなのだ。

「うえっ由利香さん、まだ食べるんすか? 」

「違うわよ、お茶しましょうって言ってるの。ほら、食べてばっかりで喉渇いたでしょ」

「いや、俺はあんまり渇いてないっすけど……」

「え? なに?」

「ひえっ」

 ギロッと睨まれてうろたえる夏樹と由利香の間から、店を検索しつつ椿が言う。

「はいはい、じゃあどこにしようかな~。へえ、カフェや喫茶店ががすごくたくさんあるよ、ひとつ向こうの通りにある商店街」

「さすがは椿ねえ、ねえ、ちょっと見せて」

「はいはい」

 画面に見入る由利香の後ろで、椿が夏樹に親指を立ててみせる。夏樹は笑いながらこっそり頷いている。

「そう言えばさあ、バウムクーヘンで有名な店があるのって、このあたりじゃなかったかなあ」

「バウムクーヘンですって? 大好き! 行きましょ!」

 冬里の策略にまんまとはまった由利香の一声で、急遽、場所が神戸の老舗喫茶店に決まったのは言うまでもない。

 日本で初めてバウムクーヘンを焼いた人物の名前がそのまま店名になっているそこは、1階が販売、2階がカフェになっている。

「わあ、素敵~」

 店に入るなりショーケースに引きつけられた由利香が、

「甘い物は別腹よ」

 と、お茶だけのつもりが、やはりバウムクーヘンに舌鼓を打ったことも付け加えておこう。

 そのあとも腹ごなしを兼ねて、徒歩でメリケンパークにあるホテルへ向かう。

 朝からかなり歩いているはずだが、なぜか由利香でさえ疲れも見せずに、どちらかと言えば楽しそうだ。旅という日常をかけ離れたシチュエーションのせいだろうか。

 徒歩十分ほどで、ホテルにたどり着く。

 とりあえず、もう部屋が使えるとのことだったので、チェックインを済ませて一休みすることにした。

 今回も椿と由利香が一部屋で、あとの3人が一部屋を予約している。

 ホテルの厚意で同じ階の近い部屋が用意されていた。

「じゃあ、とりあえず時間までゆっくりしましょ」

「はいはい。けっこう歩いたから、うっかり爆睡しないでね」

「失礼ね、寝たりしないわよ」

 そんな会話をしながら部屋へ入った由利香だったが、椿に揺り起こされるまで爆睡したのは、頑張って早起きしたから、と言う事にしておこう。



 約束の時間に部屋を出ると、ちょうどドアが開いて夏樹が出て来るところだった。

「お、爆睡しなかったんすね、由利香さん」

「えーっと、当たり前でしょ」

 ちょっと言いよどむ由利香の隣で、椿が笑いをこらえている。

「ははあ」

「なによ」

「なんかすっきりした顔してるんで、やっぱ爆睡したんすね」

「なにを!」

 デコピンしようとした由利香を押さえて椿が言う。

「まあまあ、今日は朝早かったんだからさ。ところであとのおふたりは?」

 そうなのだ。部屋から出て来たのは夏樹だけで、そのあとも誰もドアを開く気配がない。

「シュウさんと冬里はもう降りてますよ」

「そうなんだ、じゃあ急ぎましょ」

 ロビーに降りると、ソファで優雅にお茶を楽しんでいる2人の姿が見えた。

「はあ、やっぱあの2人は絵になりますねえ」

「なんだよ、今さら」

 夏樹がつくづく感心したように言うのに、椿が可笑しそうに聞く。

「なんか俺たち3人と違って大人って言うか、落ち着いてるって言うか」

「落ち着いてるのは、まあ認めるとして。でも大人なのは鞍馬くんだけでしょ」

 その由利香のセリフに顔を見合わせる椿と夏樹。ふたりとも大いに納得しているのだが、ここで頷くわけにはいかない。

「お待たせ~、落ち着いたおふたりさん」

 由利香が声をかけるまでもなく、シュウも冬里もとうに気づいていて、ソファから立ち上がるところだった。

「あれ? 大人なおふたりさんじゃないの?」

 冬里が面白そうに言うと、由利香が驚いたように聞く。

「え? 聞こえてたの?」

「ん~? 何がかな」

 ニッコリ笑う冬里に、今度は引きつった顔を見合わせる椿と夏樹だった。

 聞こえるはずがないのに、やっぱり知っていた! あのとき頷かずにいて正解だった!

 もし頷いていたりしたら、どんな目にあっていたか……考えるだに恐ろしい~……。

「じゃあ行こうか」

 そんなやりとりに、いつものように苦笑気味のシュウが言って、一行はホテルの玄関へ向かった。


 今日の夕飯は、船の上で。

 神戸港を遊覧しながらランチやディナーを楽しめるクルーズ船が出ているのだ。

 ホテルのあるメリケンパークから、船着き場のあるハーバーランドへは徒歩圏内だ。海辺に広がる神戸のウォーターフロントを堪能しながら歩いて行ける。

 ただ、残念ながら、神戸のランドマークであるポートタワーは現在大規模リニューアル工事中だ(令和3年9月~令和5年5月頃まで)その間は覆いで囲われているポートタワーだが、そこはそれ、改修中も楽しめるようにと夜にはプロジェクションマッピングが行われている。

 今回は完全な夜ではなく、時間の早いトワイライトクルーズのコースを予約してある。本日は風もなく空気も澄んでいて、絶好のクルーズ日和になりそうだ。

 さて、時間になって船に乗り込むと、ピアノの生演奏がお出迎えしてくれた。

 案内された席に着くと、夏樹は早速本日のディナーメニューに熱心に目を通している。

「さあさあ夏樹、そんなに見てるとメニューに穴が空いちゃうわよ。ほら、ドリンク先に決めましょ」

 由利香が夏樹の手からメニューを取り上げて、代わりにドリンクメニューを渡す。

「あ、まだ見てたのに……、仕方ない、先にドリンクドリンクっと」

 改めてドリンクメニューを見始めた夏樹の横から冬里が言う。

「ん? シャンパンで良いんじゃない?」

「あ、そうよね、じゃあシャンパンで決まり!」

 冬里と由利香の提案に、せっかくドリンクメニューを手にした夏樹が文句を言うかと思ったが、なぜかすんなりOKしてしまう。

 そうこうしているうちに、いざ、出航。

 凪いだ海を進むので、ほとんど揺れもない。

 海から眺める神戸の街並みもまた良いものだ。


 そうこうするうち、ディナーの提供が始まる。夏樹は料理が運ばれてくるたびに、目を皿にしてと言う表現がぴったりなほど真剣に盛り付けの確認をする。

「もっとリラックスして、今日は料理を楽しんで」

 シュウが苦笑しつつ言うが、夏樹は「はい」と返事はするものの、真剣さは少しも変わらない。ただ、そう言うシュウも、料理が運ばれてきた一瞬はプロの目になるのだが、もうこれは職業病としか言い様がないだろう。

 そんな2人にはお構いなく、

「わあ、これ美味しい~」

「盛り付け方も素敵ねえ」

 と、由利香お姉様はいつもの通りだ。


 食事が始まると同時に、ここでも生演奏が始まる。日替わりで催されているそれの、本日はピアノとジャズボーカルのコラボだ。

 小気味よいピアノと心地よいボーカルに耳を傾けながらの食事は、もうそれだけで至福の時だ。

 さて、メインが終わり、デザートが提供される時になって、今までとは違う聞き慣れたメロディが流れ始める。

「ハッピーバースデー♪~ トゥー♪ ユー♪」

 ボーカリストがハッピーバースデーを歌い始めたのだ。そして途中で、

「本日はこのトワイライトクルーズのお客様の中で、なんと3名の方が今月お誕生日を迎えられます」

 そのナレーションとともに、花火が添えられたバースデーケーキが3つ、運ばれてきた。そしてなんと、そのひとつが彼らのテーブルへやってきたのだ。

「椿さま、おめでとうございます」

「え?」

 そう、ちょうど今月は椿の誕生日のある月だったのだ。

 由利香と、そして夏樹が何かお祝いをしたいと言いだし、色々調べていたところこのクルーズを見つけ、椿にサプライズプレゼントを贈ったのだ。


「ハッピーバースディ♪ トウ♪ ユー~♪♪ おめでとうございます」

 歌が終わり、ボーカリストからお祝いの言葉が述べられると、ディナーを楽しんでいた乗客から惜しみない拍手が起こる。

「さあ、椿。ローソクの火吹き消して」

 由利香の声に、本当に驚いたのだろう、少し心ここにあらずだった椿が、「あ、ああ……」と、ローソクの火を吹き消す。

 嬉しそうに拍手する由利香に、珍しく椿の瞳が潤んでいる。

 普段はシュウの次くらいに感情を表に出さない椿が、だ。それを見た夏樹がなぜか目を潤ませ、おまけに盛大に鼻をすすっている。

「なに泣いてやがる」

 ポカ、と、軽く椿に腕を小突かれた夏樹が、鼻をすすり上げながら言う。

「だって椿が、椿の目に涙が……」

「うるせー、あんまり突然でビックリして嬉しかったんだよ」

「だそうだよ。はいはい夏樹、これで鼻拭いて」

 見かねた? 冬里に渡されたティッシュで、すぴ、とおとなしく鼻をかんで(いちおう食事中なのでね)改めて夏樹が言う。

「喜んでもらえて何よりだよ。誕生日おめでとうな」

「ありがと」

 椿は今度は本当に嬉しそうに言う。そして、シュウと冬里の方にも改めて礼を言うのだった。

「ありがとうございます。こんなサプライズを用意して頂いて」

「言い出したのはこの2人だから。2人に思い切りお礼言っといて」

 冬里が由利香と夏樹を交互に指さしながら言う。シュウはいつものごとく微笑みながら頷くだけだ。

 椿はまた嬉しそうに頷いた。


 食事が終わったのは、ちょうど夕暮れが夜に変わる頃だ。岸辺ではイルミネーションが瞬き始めている。海から見る神戸一千万ドルの夜景もなかなかものだ。

 乗客たちはくつろいだ様子でデッキや室内で残りの時間を過ごしている。

 ご一行様もデッキへ出て来たのだが。

 椿と由利香は寄り添って移り変わる海の景色を眺めている。

 それに水を差すほど、3人は野暮ではない。少し離れたところで思い思いに夜景を楽しんでいた。


 船を下りたあとは、ハーバーランドのumieと名付けられたショッピングモールで夜食になりそうなスイーツを物色し(神戸はスイーツやパンも美味しい!)、ホテルへ戻る道すがら、《てんじん》おすすめの BE KOBE がライトアップされた写真を撮ったり、ポートタワーのプロジェクションマッピングを楽しんだりした。



 そしてホテルへ帰ったあとは。

 夏樹が待ちに待った、バーの時間!

 ロビー階にあるそのバーは、さすがは神戸老舗ホテルのバーと言えるような、上品で、落ち着いていて、接客も学ぶところの多い場所だった。

 もちろん夏樹はジントニックを頼んで「うわ、最高っす」と感動していた。

 最初は5人、テーブルでカクテルを楽しんでいたのだが、由利香がさっき買ったスイーツの袋を持ち上げながら言う。

「ここのカクテルすごく美味しいんだけど。これ、早く食べてみたいし、先に部屋へ帰るわ。ごめんね夏樹」

「あ、じゃあ俺も」

 立ち上がりかけた椿を由利香が押さえる。

「椿はもっと楽しんでよ。せっかくこんな素敵なバーに来られたのよ」

「え? でも」

 すると、うーんと伸びをして立ち上がった冬里が「僕も帰ろーっと」と、のほほんと言ったあと、慇懃に胸に手を当てながら言う。

「お姉様のエスコートはお任せ下さい。大丈夫、ちゃんと部屋まで送り届けるから。あ、もちろん手は繋いだりしないよ」

 ぽかんとする椿。

「えーと」

「ここは冬里の厚意に甘えれば良いのでは?」

 迷う椿の後押しをしたのはシュウだった。

「そ。酔っ払いを部屋まで1人で帰らせるわけには行かないもんね」

「ちょっと、誰が酔っ払いよ。まあ、……それなりに、飲んだけど」

 そんな会話を聞いていた椿が、ようやく納得したように言う。

「おふたりとも、ありがとうございます。……だったらあとちょっとだけ、楽しんでいくよ、由利香、ごめん」

「いいわよ~」

「じゃ、部屋へ帰りますか、お姉様」

 と、冬里が腕を組めるようにひじを曲げて待っている。

「手は繋がないって言ったじゃない」

「うん、手は繋がないよ? 腕を組むの」

 また屁理屈をこねる冬里に、「ふざけないの」と言って軽くその頭をはたくと、由利香がバーの出入り口へと向かう。

 そんな由利香に面白そうに肩をすくめる冬里。

「ふふ、また怒られちゃった。じゃあおやすみ、椿」

「はい、おやすみなさい」

 冬里がバーを出て行ったあと、しばらくは3人で過ごしていたのだが。

 どうにも椿に落ち着きがない。

「? どうした? 椿」

 夏樹に聞かれてハッとした椿が、頭をかきながら照れたように言う。

「えっと、うーんやっぱり俺、部屋へ帰るわ」

「由利香さんが心配なのですね」

「ひゅうひゅう~」

 珍しく夏樹が冷やかしたりしている。

「うるせー。……はい、えっと、寝落ちして風邪でも引いたら皆さんのご迷惑になるので」

 すると今度はバン! と椿の背中を叩いて夏樹が嬉しそうに言う。

「早く帰ってお上げなさい」

「いってえーなにすんだ。今度倍にして返してやる」

 言いながら立ち上がって、シュウに向かっておやすみなさいを言う椿。

「おやすみなさい、よく休んで下さいね」

 シュウが優しく微笑んでそれに答える。

 頷いて次は夏樹の方を向くと、彼はご機嫌であいさつをしてくれる。

「おやすみい」

「おう、あんまり飲み過ぎて朝食に遅れるなよ」

 言いながら、夏樹と片手ハイタッチをかわし、椿は部屋へ帰って行った。


 そのあとは2人で色々話をしていたのだが、いつもよりかなり饒舌になった夏樹に首をかしげるシュウ。

 夏樹がこのくらいで酔うはずがないのだが。

「雰囲気に酔う、と言う事もあるからね」

「え? なんすかあ、シュウさん。で、さっき言ってた店の話なんすけど……、あ、その前にもう一杯」

 メニューを確かめだした夏樹に、しばらく時間がかかりそうだったので、シュウは窓から外を眺める。

 ここからだと月は見えない。

 今頃、神戸港の凪いだ海を照らしているのだろうか、それは、月とそれから、シュウのみが知っていること。


 こうして第1日目の夜は更けていった。







この物語はご存じでしょうが、フィクションです。

実際とは違うことが多々ありますので、そのあたりはどうかご容赦を。

もし、こんなつたない物語を読んで神戸に行ってみようかなと思われた方は、ご自分で何度もきちんとお調べになって、ご自分の中で納得してからお出かけ下さいね。

旅は計画を立てるところから始まっています!

さて、まだ、お話は続きます。


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