吸血鬼の幼馴染に血を吸われる日常
初投稿なので多目に見てください。
朝の電車を待つ駅のホーム
「ねぇコウ、ちょっと吸わせてね」
そう言って花凛は僕にゆっくりと抱きついてきた。
そして僕の首筋に口付けると「チュウチュウ」と10秒ほど血を吸った後、とろけそうなほど緩んだ顔で頬を紅潮させて、目をトロンとさせながら
「ありがとっ♡」
と言いながら僕から離れた。
僕は「う、うん」と言いながら花凛の目を見つめられずに斜め前のサラリーマンの後ろ姿を、頬を赤くしながら見ていた。
花凛に抱きつかれている間、女の子の柔らかいすべすべの肌の温もり、そして女の子特有の甘いいい匂いを嗅いで、もう心臓がバクバクしすぎてどうしようもなかった。
花凛には毎日吸血されるし、もう何百回も吸血されているのに、このドキドキはいつまでたっても慣れなかった。
花凛はとても可愛い。これは幼馴染補正ではなく誰が見ても美少女だと思うレベルだ。花凛は可愛いだけでなく、いつも笑顔で誰とでも分け隔てなく会話するし、優しいし気がきくし、常にみんなの人気者でみんなから信頼されていて、愛されている。
そんな花凛は実は吸血鬼である。
そしてその事を知っているのは花凛の両親と僕と、僕の両親だけだ。
吸血鬼と言っても、人を襲うわけでもないし、人間のご飯も食べられるし(味は感じるが栄養は吸収できない)見た目も人間となんら変わらない。
ただ、生きていくために必ず人間の生き血を少量吸わなければならないというだけだ。
吸血鬼は100万人に1人の割合で誕生すると言われている。しかし吸血鬼だと知られて良いことは何もないため、吸血鬼は吸血鬼であることを隠して生きている。
そのため世間ではあくまで、ドラゴンとか天狗のような空想上の生き物としてしか、考えられていない。
だから吸血鬼に関する論文や研究データなどはほとんどないが、僕は幼馴染が吸血鬼ということで、花凛のことを想って数少ない論文や古い研究結果などを調べ尽くした。
それによると、吸血鬼の吸血は1日1回で十分だし、それどころか数日に1回でも平気だという。
また血の繋がっている家族以外の人間の血を、一定以上摂取すると、吸血鬼本人と吸血されている人間はリンクしているような状態になり、お互いとても強く惹かれあって愛し合い、一生の伴侶になるという。
そして、この一定以上の吸血量というのは、数日に1回のペースなら30年かかる量らしい。
でも、今の僕と花凛のように毎日2.3回、恐らく僕の体から抜けていいギリギリの量の血を毎回吸われているとなれば、その時間はとても短縮されるだろう。
僕はそれを知っているが、花凛にそれを話したことはない。
というのも、僕は花凛が好きだからだ。いや、好きとかいうレベルではなく愛しているし、花凛の為なら命さえも捨てられるくらいには花凛のことを想っている。
花凛とはもう10年以上一緒にいるが、嫌いになれる所がひとつも見つからないし、どんどん愛が溜まっていくだけだ。
でもこのままではダメだ。
今の僕は花凛が無知なのをいいことに、ある意味騙して花凛と結ばれようとしている。
花凛が一定以上僕の血を摂取してしまえば、花凛は問答無用で僕のことを強く愛してくれるだろう。しかしそれは花凛の本当の本心ではないだろう。
このまま無理矢理騙して花凛と結ばれるくらいなら、花凛に告白してフラれた方がマシだ。
僕は花凛に本当に幸せになってほしいから。
今日の放課後、花凛にこのことを話そう。そして今まで黙っていたことを謝り、愛していると伝えよう。
放課後、みんな居なくなった教室で僕は1人で外を眺めていた。
10分ほどたっただろうか。扉が「ガラガラッ」と開いた。
花凛は「ごめんっ、待った??」と言いながら僕に近づいてきた。
僕が「待ってないよ」というと花凛は「ふふっ」と口を手で隠しながら微笑み、僕の目を見て「ありがとっ」と言った。
可愛すぎてとても目を合わせられない。。
「ねぇ、早速だけど吸っていいかな?」
花凛が僕に抱きつこうと近づいてきたところをぼくは花凛の両肩に手を置いて、「大事な話があるから待って」と言った。
花凛は僕に初めて断られたのにびっくりしたのか「えっ?」と一瞬不安そうな顔をした後、柔らかい笑顔に戻って「何かな、、?」と微笑んだ。
僕は、花凛から手を離して伝え始めた。
「実は、、吸血鬼は家族以外の人間の血を一定以上吸ってしまうと、その人と強く惹かれ合い一生の伴侶になるんだ。
そして今のペースで吸血していたら僕と花凛はいつ惹かれ合って伴侶になってしまうかわからない。
僕はこのことを前から知ってたんだけど、花凛に伝えていなかったんだ。本当にごめんなさい。」
花凛はびっくりした様子で何か言おうと口を動かしたが僕はそのまま話を続けた。
「伝えなかったのは花凛のことが好きだったから。ずっと一緒にいたいと思ったからなんだ。
でもそれでは花凛のことを騙しているのと変わらない。だからちゃんと花凛に伝えます。
大好きです。これからもずっと一緒にいてほしいです。」
花凛は涙を流しそうなぐらい瞳をうるうるさせて、しかし微笑みながら
「知ってたよ。
いっぱい吸血したら伴侶になること知ってたよ。
だから私は毎日ギリギリのいっぱいいっぱいまで、何回も吸ってたんだよ。
私もコウが大好きだし一生一緒にいたいと思ってたから!
コウは私のことなんて好きじゃないと思ってたから、血をいっぱい吸って無理矢理愛し合って伴侶になって一生一緒にいようとしてたの。
騙そうとしてたのはむしろ私の方なの。コウ、伝えてくれてありがと♡大好き♡ずっと一緒にいようね♡」
いつのまにか花凛の瞳からは涙が溢れていた。
僕がゆっくりと花鈴を抱きしめると花凛も手を回し、お互い強く抱きしめ合った。
「花凛と両想いだったなんてほんとに幸せ。大好き」
「私も大好きだよ♡ねぇ♡吸っていい?♡」
「うん、いいよ」
「ここは口でしょ♡、もう♡」
花凛は目を赤くしながら少し口を尖らせて笑ってみせた。
初めてのキスは少しチクッとした。
「おはよ!今日からはもっと吸血の量とペース上げて早く永遠の愛を絶対のものにしよう!」
「これ以上、ペース上げたら貧血なっちゃうわ!」
「愛があれば大丈夫だよ!♡チュッ♡」
「ほんとにダメだってば〜!」