かなり未来編「街で噂の剣術小町と火消しの祝言」
「連恋輪廻応報草子」がもうすぐ完結。
デート編前に、上記作品で出来たユリアの祝言話をこちらにも投下。※内容は一緒
確か本作初登場の人物
ジオと何やら? ナナミ(ナナミ・カライト)
レイスと何やら? アズサ(アズサ・クギヤネ)
二人の詳細は「連恋輪廻応報草子」にて。
「お見合い結婚しました」は、この後にリル&ロイやその友人達のデート編を投稿したいので、この二人はしばらくかずっと出てきません。
(いつも気まぐれなので予定は未定です)
【8/22追記】
操作ミスで上記作品を削除してしまいました。
読者さんの協力もあり、データをかき集めて再投稿しました。
今日は初恋のお相手、幼馴染のテオとついに結婚する日。
テオは生粋火消しで特殊平家なので、子供が男の子なら火消しにしたい、私もそれに賛成ということで私は卿家の肩書を捨ててテオに嫁ぐ。
ユリア・ルーベルから苗字無しのユリア、ハ組の火車一族の仲間入り。
生まれた子供が火消しっぽい性格でなければ、親戚達の戸籍に籍だけ入れて、卿家の肩書を獲得する。
従兄弟のジオのように。
母と同じく白無垢を着たかったので、自宅で支度をしてテオ家族が我が家に迎えにきて、挙式する小神社まで列になって移動して、火消しが崇める火と水の副神様が住まう社内で火消しのお嫁さんの伝統衣装に着替えてから普通の火消しの祝言を行う。
二週間くらい前から気分不快や熱っぽさや怠さがあるのは挙式の準備疲れだろうか。
早起きをして日課の素振りをして、いつものように朝食をとり、それから白無垢にお着替え。
支度が出来た後は父がメソメソ泣いているので呆れながら同居ですよと慰めた。
カラコロカラ、カラコロカラと玄関の呼び鐘が鳴り、双子の兄レイスが応対してくれて、迎えが来ましたということで皆で出発。
ハ組の火車組の男性が使う伝統的な婚礼衣装に身を包んだテオと並んで、手を取ってもらい、先頭を歩くので非常に照れる。
ド派手な衣装のテオに白無垢の私だからかなり目立つし、町内会の皆さんは今日が祝言日だと知っているから、お見送りをしてくれて、お祝いの為に列の後ろについてきてくれる。
世界で一番綺麗、この世で一番可愛いとテオに褒められて嬉しくてならないのだが、背後で父がぶつぶつうるさい。
なんで火消し、いつこうなると決まった、どうしたら回避出来た、浮気をしたら社会的に抹消するとぶつぶつうるさくてならない。
「旦那様、晴れの日にやめて下さい」
三は神聖な数字なので、私とテオの隣には母がいてくれて、私に日傘を傾けてくれている。
その母が振り返りながら私の父、母の夫に苦言を呈した。
「お義父さん、俺は父上と同じで浮気なんてしません。義父も浮気しない人間だから絶対にしません」
テオが振り返ってそう言ったら、父はまだ義父ではないと怒り、一生ロイさんと呼びなさいとぶすくれた。
父の左右にいる兄と弟が呆れ顔を浮かべている。
その父達の後ろで、テオの父イオが、
「ユリアちゃん、俺は今後もずっとお父様でよろしく。いやぁ、父親同士って兄弟だよな? これで俺はついにネビーと本物の兄弟か。どっちが兄だ?」
後ろを振り返りながらにこやかに笑った。
イオの隣は妻で、その隣は戸籍上は父の弟であるジオだ。
そしてその後ろに叔父ネビー夫婦がいて、叔父は三男を抱っこしている。
「イオさん、どう考えてもネビーさんですよ」
「なんでだよ、ミユ」
「昔からお説教されてばかりではありませんか」
「長男ロイ、次男俺、三男ジンって決まっているので増えるなら三男か四男争いをして下さい」
「何年も言っていますがネビーさんが長男です。ここは仲良くイオさんに長男の座を譲りませんか?」
「イオの弟はしっくりこないからそれは無理です。ジンの弟になるのがしっくりこないのと同じで。もう跡取り息子が成人したからその長男から外れたい願望はやめたらどうですか?」
こういう会話が始まったので、兄レイスが自分とテオはどちらが兄かと議論を開始。
「ユリア、俺が兄だよな?」
「ユリア、自分ですよね?」
「兄がどちらになるとどうなるのですか?」
「家族親戚行事を仕切る……テオ、ジオ兄さんにしましょう」
「おお、そうだな。家族親戚行事を仕切る役が長男ならジオにしようぜ」
そのジオは会話の関係か従兄弟と参列順を入れ替えたようでかなり後方にいるので、こうして勝手に両家長男を押し付けられた。
そもそも、両家長男ってなんなのだろう。
見学人達に、たまにお嫁さん綺麗ですねと言われて幸せいっぱい。
「……お待ちなさい! 私の晴れ舞台なのにスリなど許しません!」
スリがいると目についたので思わず走り出して成敗。
私の突きと叔父の突きは同時でスリが吹っ飛んで、財布がいくつか地面に転がった。
私の財布、俺の財布と被害者が集まる。
叔母と共に入っていた日傘で隠れていた叔父が区民の前に派手に姿を現したので、副隊長、ルーベル副隊長と始まり私も大注目。
気がついたら囲まれていて、白無垢にも木刀とは、白無垢でも悪人成敗とはさすが、副隊長の娘は勇ましく頼りになると褒められた。
「自分には息子しかいなくて、娘ではなく姪です」
これから挙式なので失礼しますと叔父が道をあけてくれて一緒に列に戻った。
走ったせいか気分の悪さが増してしまった。
「ユリア、顔色が悪いけど大丈夫か?」
「多分この格好で動いたのと緊張です……」
「無理するなよ」
これはとても照れるけど、テオに抱っこされて移動することに。
背の小さい母では日傘が届かないので自分で待つことに。
無事に目的地へ到着して、小神社の社内で母達やハ組の奥さん達に手伝ってもらってお着替え。
それで火消し伝統の挙式が行われて、次も火消しの祝言独特の練り歩き。
運んでもらって回復したのと、ついにテオと夫婦になれたという感激もあり、わりと回復したので、テオと共に自分の足でハ組をぐるりと周回。
もう私はハ組のテオの妻ですよーと叫びたい気分。
ここに来るまでも便乗商売が沢山行われていたけど、ハ組の中もそうで、小祭りどころか中規模祭りの勢い。
新郎のテオがハ組の火消し兄弟や兄達と共に餅つきを取り仕切り、老若男女をどんどん参加させ、手伝ってくれる女性達がおもちをどんどん丸めて餅包みを作ってくれるので、新婦の私はお祝いに来てくれた人にどんどん配布していく。
私を手伝ってくれるのは母と義母だ。
お餅包みのお餅の中身はあんこか何もなし。
しかし、わさび入りも作られたらしく、テオから新妻へと一覧表が来た。
わの人には、渡したらその場で食べてもらうように促すようにという指示が書いてある。
義母のミユが、父親と全く同じこと……と呆れつつクスクス笑い、母が懐かしいですねと笑顔を返す。
一覧表に載っているのはテオの友人のうち、かなり親しい者ばかり。
そこに従兄弟ジオの名前も発見。
そうしたらそのジオが早速登場して、縁起良しの新婦餅を下さいと満面の笑みを浮かべた。
「ジオ〜! お前もついてくれ! 俺にも餅! 動きまくってお腹が減ってきた!」
「今持っていきます!」
母がすまし顔でジオはこの特製餅、新郎はこっちのお餅とさっさの葉に乗せて渡した。
ジオが餅つき場所へ移動して、テオに餅で乾杯だと促される。
「君が自分で食らえ! 火消しの遊びくらい理解しているんですよ!」
あーんとお餅を食べようとしたテオの口に、ジオが自分のお餅を突っ込んだ。
わさび餅でつーんってなったテオが悶えて暴れて、お餅を飲み込んでこの野郎と大笑い。
「うえーい、ジオ!」
「いえーいジオ!」
ジオが幼馴染の火消しに両手を持ち上げられて讃えられている。
「ジオ! お前は兄弟になった早々、俺に喧嘩を売るのか!」
「わさび餅があるぞと密告してくれたのはレイスです」
「おいレイス!」
「食らえテオ! 俺の妹と祝言しやがって!!!」
レイスもテオの口にお餅を突っ込んだので、テオはまたつーんっとなってしまった。
母が今日くらいお行儀が悪くても許しますと私とミユに微笑みかける。
ここにマリが夫のシンとお祝いに来てくれたので二人にもお餅を振る舞う。
一覧表によればシンもわさび餅なので、可哀想だけど実行。
わさび餅の人は新郎のところへ行くようにするという指示もあるので、新郎に一礼してから食べるようにお伝え。
「おおー! シン! マリさん! 二人も餅つきをしてくれ!」
テオが皆、皆、彼があの小説家シンイチだ、俺のユリアのことを楽しい小説にしてくれていると自慢を開始。
「俺ら火消しの小説も書いてくれるんだ。俺を原型にした火消しが主役なんだぜ!」
「まだ編集と会議中でどういう話にするか決まっていないので、今日は皆さんにどういう火消し話が読みたいかうかがいに来ました」
もちろん、友人のお祝いが第一ですが。
シンはそう丁寧な挨拶をして、テオに促されてお餅を食べることになり、新郎と同時だと縁起良しだと聞いたのでと微笑み、せーのの掛け声で、
「食らえわさび爆弾! 最近火消しについて研究しまくっているから引っかかるか!」
またしてもつーんってなったテオはむせたあとに大笑いして、なぜわさびだと分かったとシンに問いかけた。
「レイスさんが教えてくれました」
「またお前かレイス!!!」
結果、テオとレイスはジオを巻き込んで喧嘩を開始。
「もっちつきは〜、とーん、とん、とんとんとん!」
「もっちつきは〜、とーん、とん、とんとんとん!」
なんの喧嘩かと思ったら歌と決め姿勢が格好良い方が勝ち。
似たような遊び喧嘩は何度か見てきた。
審査員はいないし、一番手のテオは決め姿勢後に、今この瞬間、この世で一番幸運なのはユリア・ルーベルと結婚したこの俺だ! と笑顔で大絶叫。
照れる。
二番手の兄は、幼馴染達を囃し立てた後に、副隊長の疾風剣! と叔父風に動いて大人気。
目の上のたんこぶと嫌がっているのに、こんな時だけ見た目が似ていることを利用して盛り上げたり、歓声を受けるからちゃっかりしている。
「もっちつきは〜、とーん、とん、とんとんとん!」
ジオはわりと大人しめな決め姿勢をして、柔らかく微笑んだ。
日頃、こそこそしている下街幼馴染達が黄色い声を出して、せーのジオさーんと呼びかけ。
すると町内会の幼馴染達や女学校の友達のうち、ジオを気にかけている女子が負けじと「ジオさーん!」と声を出した。
鈍感ジオは気がついてなさそうだけど、女子達の視線の間でバチバチと火花が散る。
そこへ、
「ジオさーん!」
間も無くオケアヌス神社の奉巫女になる絶世の美女ナナミが登場。
兄とお見合い予定の、文通相手のアズサも一緒だ。
「ナナミさん! 良かった、これから探そうと思っていたんです!」
デレデレ顔になったジオはあっという間にナナミの前へ。
「私を探すって、会いたいと思ってくれたんですね」
「女性に目がない野郎共ばかりなので護衛しないとって思っていて。もう親族行事は宴席までないから、レイスと一緒にハ組内を案内しますよ」
混んでいるから餅つきは後でしましょうと告げたジオの顔に「ナナミさんが可愛い」と書いてあるので、お祝いの場なのに死屍累々というように雰囲気が悪化。
兄は自覚があるし、わりとやんわり好意を避けているけど、ジオはモテ自覚がないし、恋をしている自覚もないのでタチが悪い。
「あー、恋が叶う、次の恋こそ叶う新郎餅つきを開催する!」
テオが歌いながら皆と共に餅つきを再開しようとしたその時、叔母レイが小腹が減ったでしょうと、カニ汁を持ってきてくれた。
大好きなカニのお味噌汁の匂いがした瞬間、どうしようもなく気持ち悪くなって私は呻いて両手で口元を覆った。
「ユリア、ちょっと。大丈夫?」
「ユリアさん?」
叔母レイと母に心配されたら、テオもすっ飛んできてくれた。
テオが桶に入っている餅包みをバッと出して、ここに吐けと差し出してくれて、体を支えて撫でてくれた。我慢しようとしたけど出来ずに嘔吐。
「……テオさん。あなたもしかして、祝言前にユリアさんに手を出しました?」
ミユがテオにこう問いかけると母が私を凝視して、
「ユリアさん、月のものはありますか?」と質問。
「……」
「……」
テオと二人で顔を見合わせて、私はもしや、もしかして……と唖然。
私の様子が変だと薬師の叔母が来てくれて、症状を確認されつつ着物や帯を緩めにしてもらって、触診されて、身近にこういう症状の人はいないか尋ねられたので特にいないと回答。
「ロカ、多分、新婦時のミユさんと同じ」
「お姉さん、それ、どういう意味? 新婦時のミユさん?」
「ロカは小さかったから覚えていないかな。誰かに聞いとことない?」
「その……私、祝言日におめでた疑惑となり、その通りでこちらの息子が生まれました」
ミユが恥ずかしそうに息子のテオを手で示した。
「……ユリア。テオ君。心当たりあるの?」
「……」
こんな大勢の前でその質問に答える度胸はない。恥ずかしすぎる。
「……ロカさん。子どもの可能性もあるってことですか⁈ ありますね。可能性ありなら薬はなるべくやめておいて安静第一。お腹が出てきたり胎動が分かるか、月のものが来るまで薬は控えておく。そうなりますよね⁈」
「心当たりがあるんですね」
祝言日にこれはとんでもなく恥ずかしい事態。
「一回なんですが。ロカさん、一回なのにありますか?」
そんな話、ここでしないでと私は顔を両手で隠して、声を出そうとしたけど恥ずかし過ぎて「やめて」という声は出ず。
「あなたは父親と全く同じ事をして、おまけに同じ台詞を言うなんて! あれ程、未婚女性に手を出すなと言って育てたのに!!!」
「祝言直前は嫁だから未婚女性ではありません! 母上! 新婚早々、父親になれます!」
「お嫁さんには新婚旅行をしてもらおうと思っていたのに!!!」
なんだなんだと人が集まってきたと思ったら、いつの間にか父がいて、青ざめた顔で立ち尽くしていた。
「……この野郎!!!」
テオが殴られてしまうと焦ったけど、父が掴みかかった相手は義父のイオだった?
「あはは、見た目だけじゃなくて中身もそっくり。あはは、俺とロイさん、もう祖父になりますね」
「何を笑っているんですか! どういう教育をしてきたんですか!」
「本命が現れた時に苦労するか相手にされないから、俺と違って女遊びはするなです!!!」
もうすぐ結婚だと盛り上がってつい一回、それも祝言日の夜を記念にしたいから途中でやめたのにまさか懐妊疑惑とは。
言われてみれば新婚旅行どころではないと、私はまた我慢出来ずに嘔吐。
ハ組から近い、テオの腕でイオの兄の家へ運ばれて休むことに。
この日の夜は、ルーベル家と縁があるかめ屋で両家の宴会後に宿泊だったけど中止。
宴会は私とテオ、母と義母抜きで行われた。
この数日後、月のものがきたので単なるお腹の風邪だったと判明。
祖母存命のうちに花嫁姿を見せたいと思っていて、懐妊ならひ孫が間に合うかもと喜んだけど残念。
しかし、これで憧れの温泉街へ新婚旅行を出来るし、国の行事でエドゥアールにいるミズキとアリアにも無事に会えると歓喜。
親孝行の為に、新婚旅行にはお互いの両親も参加。
旅の護衛と困った時の移動手助け、そして二人も新婚旅行かつかつて住んでいた街に友人知人がいるので秋に祝言した叔母レイと赤鹿警兵ユミトも一緒。
「いやぁ、テオが出来て行きそびれた新婚旅行がようやくだー。ありがとう息子。お前のせいで行けなくなって、お前のおかげで行ける」
義父イオがテオと肩を組み、朗らかに笑った。
「リルさんとまたエドゥアールへ行けるとは嬉しいです」
「テオ君のおかげですね」
「ユリアのおかげです」
「皇居外苑を希望したユリアにエドゥアールをおすすめしてくれたのはテオ君です」
「……ユリアのおかげです」
もう私達は夫婦になったのに、父はまだ「許しません」みたいにぶつぶつうるさい。
でもテオにそれなら今夜も酒盛りしましょうと誘われて、仕方がないから飲みますかと嬉しそう。
空が青くて気分良し〜。
さぁこれから新婚旅行かつ家族旅行。楽しみ!
おめでとうユリア&テオ!




