かなり未来編「リル、付き添い人になる7」
「レイの結婚後の話」のリクエストとは違う気がしますが、とりあえずこんな話が出来ました。
レイが警兵——正確には準官なので警兵のたまご——と結納して数日後、レイから手紙が来て、お出掛けするから付き添い人をと頼まれた。
居間でその手紙を読んで、首を傾げたら、義母にどうしました? と問われたので説明。
「付き添い人? 隣同士でとっくに夫婦みたいですし、レイさんは誰とでも二人で出掛けていたのに」
「男性として出掛けてきたけど、もう女性に戻るからと書いてあります」
「昔、お説教し過ぎたのでしょうか。あの時は元服したばかりのお嬢さんでしたし、ルルさんがティエンさんとの縁談をやめたから、家と家みたいな話が全部レイさんへいくから注目されるという頃でしたからね」
状況が変われば要求も変化する。
レイが我が道をいき、何度も死にかけるので、実家は毎回命の恩人になってくれたユミトに頭を下げた。
昔は拒否したのに手のひら返しだけど、レイ以外のことでは支援していたからか、彼は許してくれた。
さて、数日後の夜。
レイがいつもの男装で我が家に泊まりにきて、明日はよろしくお願いしますと私に頭を下げた。
なぜかユミトにわざわざ我が家に迎えに来てもらって、彩り繁華街でデートするらしい。
レイは仕事で疲れたぁーっと早々にお風呂に入って寝たのであれこれ聞けず。
翌朝、起きたらレイはもう朝食支度をしてくれていて、今日は平日なのでロイや子ども達のお弁当の準備も始まっていた。
朝の挨拶とお礼をして、あの小さかったレイがこんなに大きくなって、ようやく結婚するんだなぁと急に感激。
「どうしたの? その神妙な顔」
「家族よりもってエドゥアールへ行っちゃったのに帰ってきたなぁって」
「今⁈」
「ううん、改めて」
「まぁ、紆余曲折を経て、ユミトさんが帰ってきたからね」
「帰ってこなかったら、帰ってこなかった?」
「どうかな。諦めて帰ってきただろうね。それで実家やここを拠点に料理修行の旅」
両親が結納会の時にレイは渡り鳥のようで、おまけにあちこちで自ら事件に飛び込むので、鎖をつけたいけど、兄とは異なり家族では無理だったから……みたいに語ったことを思い出す。
レイは家族が嫌いではないし、むしろ好いてくれているけど、料理関係の知的好奇心が強いし、家を離れたら、家族がいないような人達にとても同情的になった。
振り返れば、身寄りのなかったユラと同居した頃から少しずつ変化していたと思う。
ユミトは昼前にレイを迎えに来てくれるそうなので、朝食とお弁当作り、朝食、家族のお見送り、片付けと済ませて、あとはお出掛け支度。
事前にレイに借りたいと頼まれているので、着物も小物も好きに使ってもらう。
付き添い人は地味で良いので私はさっと支度をして軽く家の掃除。
居間でのんびりしている義父母に、付き添い人の日くらい休んだら? と気遣われた。
そうしてお出掛け時間を迎えたけど、レイが二階から降りてこない。
様子を見に行こうとしたらユミトが来訪。
彼は兄のお下がり着物、かつて義母が私の実家に売った着物姿で、いつもはわりとボサボサ気味の髪を整えていた。
ユミトは兄を見習って、すぐ速く走れるように黒い足袋に草鞋ばかりだけど、今日は白い足袋に下駄。
その下駄は、兄と義兄弟達がお揃いにしている虎斑竹製のもの。
「そちらの下駄は兄の贈り物ですか?」
「いえ。レオさんとエルさんからです」
「両親ですか」
「ネビーさんは相変わらず怒ってます……」
「そうですか」
正官になってもいない未熟者に大事な妹を渡すか!!! と兄は激怒していたけど、家族に説得されて納得したと思いきや、まだ怒っているのか。
ユミトを居間へ案内して、義父母へ「本日は大切な娘さんをお預かりいたします」と手土産付きで挨拶をして、義父母がにこやかに「そのように、ありがとうございます」と返事。
そこへレイが姿を現した。
「お姉さん」と私に声を掛けたレイは、ユミトがいると気がつくと、唇を結んで俯いた。
レイが女性らしい格好になるのは珍しくて、今日はそこに短い髪を少しだけ編み込んでさらに女性らしくしている。
装飾品がレイの顔の動きに合わせてキラリと光った。
我が家の中で、絶世の美女ルルに次ぐ美貌の持ち主レイは、このようにお洒落したらやはり美人。
ユミトの反応は……と様子をうかがったら、彼は無表情でレイを眺めて反応無し。
「……お待たせ致しました。本日はよろしくお願いします」
ちょこんと着席したレイが、小さな声を出して、ゆっくりとわりと雅に頭を下げて、誰? となる。
「あ、あはは。ははっ。レイさんだよな。別人みたいだ……あはは……はは……」
頭に手を当てて変な笑いを始めたユミトの日焼けした顔が、ボッと赤くなったように見える。
「……」
ペラペラお喋りのレイが何も言わないで、顔を上げて、視線を畳に落として困り笑顔を浮かべて喋らない。
「……」
頬を指で掻いて、斜め上の天井を眺めるユミトも喋らない。
「……出掛けますか?」
義父母に目で促されたので、二人に声を掛けてみると、レイは小さく「はい、お姉さん」でユミトは元気に「はい! リルさん! お願いします!」と叫んだ。
彩り繁華街へ行くということは決まっているので、家を出て歩き出したけど、レイは私に隠れるようにして隣を歩く。
ユミトはそんなレイに話しかけずに、私の隣でピシッと背を伸ばして、手足を同時に出している。
(何これ。散々二人暮らしみたいに生きていたし、何度もエドゥアールからこっちに二人旅をしていたよね?)
とりあえず天気の話題を振ってみたけど、二人とも「そうだね」とか「そうですね」で終わり。
次に「今日は買い物でしたっけ?」と話題を振ったけぉ、やはり「そうだね」とか「そうですね」で終了。
「二人とも緊張していますか?」
「……」
「……」
返事がない。
「うん、まぁ」
「ええ、まぁ」
「十年以上の付き合いなのにそうなんですか」
「うん、まぁ」
「ええ、まぁ」
相変わらずレイは私の影に隠れているし、ユミトは手足を同時に出してギクシャクしている。
お喋りは苦手なんだけどなぁと思いながら共通の話題を思案。
「結納したので、各方面に挨拶回りをしないといけませんね」
「はい」
「はい!」
これでは会話にならない!
必殺、私も黙って様子見。初々しい二人なら場を繋ごうと励むけど、この二人はそうではなくて旧知の仲。
レイをえいっとユミトの方へ押して、場所を入れ替えて、私が端で二人を並べてみた。
「……」
「……」
レイとユミトはお互いにそっぽを向いて俯いて話さない。
まあ、良いかと私はゆっくりと二人の後ろへ移動した。
縁結びの副神様は二人を祝福しているだろうから、何が起きても二人の小指と小指を結ぶ赤い糸は切れないだろう。
☆
全然会話が無いまま彩り繁華街まで到着。
私は二人から今日はここへ行きます、ということを聞いていないのでレイとユミトは相変わらず何も喋らないで歩き続けているなぁ、と傍観。
「リルお姉さん、混んでるだろうけど、昼食はミーティアでええ? なんだかんだずっと食べてないから行きたくて」
「もちろんええよ」
やはり混んでいたので、三人でミーティアへ並ぶ。ここでようやくレイとユミトが話し始めた。
「ユミトさん、十年以上経ってようやく来れたね」
「……ああ、そっか。一緒に行こうって言って行けてないお店ってここのこと。去年食べたきりの蕎麦屋かと思ってた。それかカラド料理」
「ここは記憶になかった?」
レイがそっぽを向いているのは照れなのだろうか。
逞しく成長したレイが大人しいのも、照れているっぽいのも新鮮。
「……なかったけど、言われたら思い出した。安いのに美味しい西風料理店。男性客は少ないから私と一緒に行くのが良いって言ってたな」
「あの時の新しいお品書きは食べられなかったけど、今は今で昔はなかった品があるだろうから楽しみ」
レイはいつものように大きく口を開けてにこやかに笑うのではなくて、はにかみ笑いを浮かべた。
それをユミトが食い入るように眺めている。
「……」
「……」
また喋らないみたいだけど微笑ましいので余計なことは言わないように注意。
☆
頼まれて三人で昼食をとり、呉服屋へ行くというのでついていく。
途中、ユミトが軽い咳払いをして、レイの名前を呼んだ。
「初でぇとだからその、なにか買いたいって思っているからちょっとそこの店に寄っていかないか? 軒先にも色々出てるぞ」
おお、ようやくユミトが一歩踏み出したと心の中で拍手。
「貧乏人は散財しない。今日買うのは浴衣用の反物でしょう。あんなボロボロ浴衣じゃ風邪を引くから。風邪を引いたら薬代がかかるよ」
「貧乏は貧乏でも、その時のためにそういう用の貯金はしていたから買える。誰か分からない人用の資金だったけど今後はレイさん用。遠慮するなって」
「遠慮じゃないから。私は自分が欲しいものは自分で買えるよ」
「ふーん。俺からってものは、逆立ちしたってレイさんには買えないけど」
「貧乏人なんだから、大人しくルカお姉さんに簪を作りたいって頭を下げてきなさい。家の裏の竹林に材料が沢山ありますって言うて」
それってつまり、私のために簪を作ってってこと。
ほらほら行くよ、とレイがユミトを手招き。
「それはつまりさ、髪を伸ばすのか?」
「この頭で白無垢は着れないでしょ」
「そっか。なんの簪が良い?」
「レイさんは美人だからなんでも似合っちゃう」
いつものレイとユミトっぽくなってきたなと眺めていたら、ユミトが照れた様子で「うん、そうだな」と告げて、さらに「今日は綺麗だから直視しにくい」と口にした結果、またレイは喋らなくなった。
このぶすくれ顔はルカと同じ照れ顔である。
私の妹がかわゆい。
☆
浴衣選びで二人は大喧嘩。
安いからこっちと譲らないレイと、そこまで貧乏じゃないから結納記念の浴衣はこっちのこの柄! と譲らないユミトがギャアギャア言い合う。
「そんなに貧乏じゃなくて余裕があるならみっともない着物を捨てて新調しなさい! またお兄さんに借りて! お出掛け用くらい自前で用意しろ!」
「これはもしも今日ネビーさんと遭遇しても激怒避けになるってウィオラさんが貸してくれただけだ」
「そうなの? なんで激怒避けになるの?」
「ネビーさんがウィオラさんと最初に出掛けた時の着物だから、私が験担ぎの為に貸したって言えば多分逃げられるって言うてくれた」
「ああ、そういうこと」
「大体、俺が持っている着物は貰い物しかないから捨る訳がないだろう」
「全部じゃなくて、もうみっともないボロボロ着物を捨てなさいって言うてるの」
「例えば?」
「あの小汚い鼠色の着物。裾を何回も繕ったからかなり短いし色褪せも酷いでしょう。鼠男になりたいの?」
「あれはレイさんが俺に花咲おじいさんの色って贈ってくれた一番大事な着物だろう!」
「……そうだっけ? いつ? 着物をあげたことなんてあったっけ。破れたのを繕った記憶しかない」
ユミトが呆れ顔で天井を見上げて片手で目元を覆った。
「出た。レイさんのド忘れといいうか物忘れ。そうやってすーぐ自分の良い行いを忘れる」
「ええ行い? そうだったっけ?」
「そういうところは本当、ネビーさんそっくり。顔は全然違うのに」
「前にも言ったけど私に一年以上前のことを言わないで。物覚え悪いんだから」
「レイさんが覚えているのって、料理のことくらいだもんな」
和やかに笑い合い始めたので、いつもの二人だなぁと嬉しがっていたら、このままでは決まらないので私に選んで欲しいと頼まれた。
予算はレイとユミトがじゃんけんをして、ユミトが買ったので彼が提示した値段。
「それなら、おしどり夫婦になるようにおしどり柄にする」
「……」
「……」
「「……夫婦」」
急に照れ出して二人はまた無言。
買ってしまえ、と反物を購入したいと店員に声を掛けて、ユミトとレイでお支払い。
二人はもう帰るそうで、私を我が家へ送って義父母に挨拶をしたら二人で去っていった。
二人だけで同じ建物に帰るって、付き添い人は必要あったのだろうか。
私は珍しいレイを見られたし、久々のミーティアを堪能できたし、二人の浴衣の柄を決められて嬉しかったけど。
☆★
レイと結納したけど特に何も変化がないと考えていたら、今度のお出掛けはルーベル家に迎えにきて欲しいと頼まれて、行ったら彼女はとても美しく着飾ってくれていた。
結納会の日と同じく、心臓がずっとバクバクうるさくて仕方がない。
彼女も緊張しているようで、今日俺達は過去一番くらい会話出来ていない。
呉服屋でいつもみたいな話をしたけど、ルーベル家を去ってからまたわりと無言。
「徒歩で帰る? 立ち乗り馬車?」
「レオ家にケルウスを預けているから乗せる」
「そんな気はしてた。ありがとう」
自覚したらあっという間にめちゃくちゃ好きなので、結納して恋人になったはずだから、手の一つや二つ繋ぎたいけどレイは品良く前で手を合わせている。
「あのさ」
「なに?」
「やっぱり今日はその、綺麗だ」
「……。ふーん。今日は、なんだ。私は毎日綺麗なはずだけど」
また言葉選びを間違えたようで、すこぶる不機嫌そう!
「そりゃあそうなんだけど……今日は特別って意味」
レイはますます不機嫌になってしまった。
彼女がこんな顔をする時は中々機嫌が直らないので、無言で歩き続けて様子見。
レオ家でレイの家族に挨拶をして、赤鹿と遊びたいという彼女の甥っ子達と少し遊び、ケルウスと共に帰宅。
レイが不機嫌なのと、何度もしてきた二人乗りが今日は恥ずかしいので彼女だけをケルウスに乗せて手綱を引く。
道行く者達が赤鹿に乗るレイに注目して、男性達は鼻の下を伸ばし、子供が「お姫様?」みたいに指をさす。
親が子供に「そうね。きっと華族のお嬢様よ」みたいに教えるのも耳に届いた。
(中身は全くもってお嬢様じゃないけどな)
しかし、凛と背を伸ばして空を見上げて微笑むレイは確かにどこかのお嬢様みたいだ。
「ユミトさん、景色に飽きたから早く帰りたい」
「えっ? ああ」
「ありがとう。久々にのんびり世界を眺めた気がする」
さっきの不機嫌顔からいきなり満面の笑顔は心臓に悪い。
二人乗りは心臓に悪いと思いつつ、ケルウスに飛び乗って走ってくれと頼んだ。
「私がお嬢様みたいって聞こえた? 従者がいないのになぜなのかな。駆け落ちにでも見えるのかな。きゃあ、攫われるー」
緊張の限界なので「抱きつくな!」と怒りたいけど、言ったら「二度としない」と怒って触れなくなりそうなので黙っておく。
「おい、そこの赤鹿屋! 止まれ! 観光客を誘拐なんて所属赤鹿屋の営業停止にするぞ! またこら!」
海辺街方面への大通りにはたまにいる、騎乗兵官が怒鳴って俺達を追いかけてきた。
……っていうか。
「あっ、お兄さんじゃん」
「うわっ! ネビーさんだ! あの感じはこれから出張か?」
振り返った先にいる騎乗兵官は六名で先頭はネビーでウィオラと二人乗り。
「ユミトじゃねぇか! おいこら! 俺の妹を嫁にするって言っておいて華族のお嬢様と赤鹿デートとは切腹覚悟だな! 介錯してやる!」
「ち、ちがっ! こ、怖っ! レ、レ、レイさんですよ!」
「お兄さーん! お仕事頑張ってー!」
「危ないから身を乗り出すな!」
ひょいっと体を伸ばしたレイを慌てて落ちないように支えてケルウスに速く走るように指示を出す。
鬼のような兄弟子に追いつかれたら恐ろしいことになる。
「付き添い人もなく他所様の大事な娘を連れ回すとは切腹覚悟だな! 介錯してやる!」
「付き添い人はリルさんで、もう解散したからこうなってます! 同じところに別々に帰る方が、可愛いレイさんは危ないです!」
「俺の妹を褒めるんじゃねぇ!!!」
逃げろ、逃げろとレイに笑いかけられたけど、俺はその前に既にそうしている。
「面白いからもっと怒らせてみようか」
「やめてく——……」
突然唇を唇で塞がれて頭真っ白。
ケルウスから落ちそうになり慌てて体勢を立て直す。
「お兄さん、私からなんだから怒るな! ようやく初恋が叶うところなのに、邪魔したら一生口をきかないから!」
レイは真っ赤な顔だけど堂々としている。
大通りはやめて細い道を行くことにした。
後が怖いけど、きっとウィオラが味方をしてネビーの手綱を取ってくれるだろう。
途中、我慢出来なくて確かあの辺りに向日葵の群生があったはずとそこへ行き、照れて逃げようとするレイを離さずに好き勝手した。
思い出が出来たし、レイは太陽みたいな周りを照らす人で、ずっと俺だけを見てくれていたそうだから、彼女に作る簪は向日葵に決定。
ケルウスに頑張ってもらってかなり早く帰宅したら、俺達が暮らす長屋が所々壊れていた。
「うわぁ、何これ」
住人達によれば突風が吹いて俺の部屋とレイの部屋あたりにあれこれぶつかったそうだ。
貴重品を全然置いていない俺達の部屋は大体いつも鍵が開いているので片付けてくれていたという。
ご近所のシン・ナガエ改めシン・アルガが腕を組んで俺達にこう告げた。
「こんなボロ長屋はこのまま壊して全員我が家に引っ越してくるか? マリの足があんなだから、使用人は何人いても良い。人がいれば防犯にもなる」
「……全員?」
「身寄りのない男女なんて信用ならないが、警兵の見張りがいれば安心だ。こんなボロ長屋で新婚なんてすぐ離縁だぞ」
相変わらず口が悪いけど、幽霊屋敷に引きこもっていた男がこんな提案をするとは。
「どこかの誰か達のおかげで資金が浮いたから、新しい長屋を建ててやる。どうせ増やすんだろう。今の住人以外は、我が家への出入りを断固拒否する。風呂は有料で貸してやっても良いぞ。掃除もさせるけどな」
シン君がデレたとレイが大騒ぎして、他の住人達も囃し立てたらシンは逃亡。
それをレイが皆を誘って追いかけていく。
家族のいなかった俺にはこんなに家族が増えて、家族に捨てられたシンにも、レイが家族を作った。
(ずっと監獄で良かったのにと思った未来にこんな世界が待っているなんて誰にも予想出来ないよな)
こうして、俺達七地蔵竹林長屋の住人達はシン・アルガの屋敷へ引っ越した。
まもなくそこはオケアヌス神社附属の寺子屋となり、俺みたいな辛い人生を歩む子供達の拠り所になる。
俺達がそうする。
わりと波瀾万丈で変わった人生なので、死ぬ前にシン・アルガに小説にしてもらいたいものだ。
題名は人情物なら「雲外蒼天物語」で、恋物語や夫婦の物語なら「尽未来際物語」で頼みたい。
もちろん結末は大団円で。




