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特別番外「尽未来際物語3」

 

『おむすび食べますか?』


 俺の新しくて素晴らしい人生はあの日、あの瞬間、とても優しくて可愛らしい女性のその一言で始まった——……。


 その頃の俺は新しい生活に無我夢中の子どもで、洪水のように浴びた親切を処理しきれずに、孤独や不安に襲われたり、幸運に感謝しながら、明るくて多忙な日々に流されに流されていた。


 それは延々と続いて、目標に手を伸ばして走り続けて、ようやく目標の開始地点に立てた時に、落ち着いて周りを見渡すことが出来た。


 地区兵官のはずが警兵で、おまけに赤鹿の世話係だけど、福祉班! と言い続けていたのも功を奏した。

 ついに警備兵官準官の地位を手に入れたので、担当上司に「なんでも雑用をするので、福祉班に入れるように鍛えて下さい。弱いし、弓矢以外は実戦で使えないので戦力にはなりません」と頼んだ。

 見習い担当やこれまでの職場から報告されているので、都合の良いようにこき使うし、福祉班は不人気だからやる気があって助かるので引き受けたと言われて歓喜。


 これからも目標を目指しながら、これからは少しずつ与えられた恩を返していく。

 深く、深く息を吸って、さすがにここまで来たら、理想の女性を探して一緒に歩いて、甘えたり甘えられても良い気がした。

 そして、今の自分なら理想の女性やその家族に、門前払いされないくらいになったのでは? と考えた。


 かねてより、大恩人にして兄弟子にして友人のネビーが、俺は君の仲人になりたいから縁談をしたくなったら相談して欲しいと言ってくれていたので、そろそろ頼ろうと決意。

 相談する時は条件や好みと言われているので、うーんと腕を組んで思案。


 好みはとっくの昔に決まっているというか理解している。

 女性と接点が無さすぎる生活から、女性が溢れている世界に放り投げられて、俺が次々惚れたというか、男の本能で惹かれたのは笑顔が素敵な品の良さそうな女性。

 肝っ玉溌溂元気な下街女性ではなくて、大人しめの下街女性の方が良い。

 それで、ネビーからとても大切な手紙を受け継いだので、それなりになって多分少しは区民を笑顔に出来ている俺を「桜の君」みたいに呼んでくれる人。


「ちょっと待て。つまり、それって自分で探すんじゃなくて見つけてもらわないといけないんじゃないか?」


 俺は頭を抱えて、悩んで、そんな経験は一度も無い。

 それどころか、誰かにお申し込みされたこともないと机に突っ伏した。

 

「んー! なんで今気がつく!」


 困ったら相談というか、俺が甘えると喜ぶらしいので、ネビーの家に突撃したらいたので相談があると言ったら笑顔で家にあげてくれた。彼の甥っ子達に赤鹿、赤鹿と絡まれたけど後でと説得して二人きりに。


「相談は仲人の件です。準官になったから頼もうと思ったけど、そもそも俺の理想の人は、あの桜の君みたいに、俺を見つけてくれる優しい見る目のある人です。誰も俺を見つけてくれないってことは、俺はまだまだしょうもないってことですよね?」


 俺のこの問いかけに、ネビーはため息をついた。


「女は要りません! って走り続けて、手紙を貰ったら読んだら余所見するから俺に捨ててくれって頼んできたのは君だろう」

「……あっ」

「今後、誰かに手紙を貰えたり、直接お礼に来てくれた相手とは縁があるかもしれないってことだな。家も、人も見る目はもうあるだろう。見つけてくれた人が良いのなら、知り合いに縁談を始めるくらい言えば良いか?」

「お願いします!」


 良くここまで励んだなと頭を撫でられた。いい大人なのに、まるで子どもみたいな扱い。しかし、父親無しで育った俺はこれが嬉しい。彼は俺の父親でもあると勝手に思っている。


 そうして、気がつけばその準官四年目に突入。

 その間に、俺は何回か「お礼の手紙です」と可愛らしい女性に手紙を貰ったし、職場で「結婚しないのか?」と女性を紹介されている。

 しかし、何にも心に響かなくて、気も乗らない。


 律し過ぎたのか、色欲は絵や本と妄想による自己処理で済ませられるし、誰でも良いではなくて「絶対にこういう女性」という理想があるので辛くもない。

 可愛らしくて、品が良くて、優しい女性と知り合っているのになぜこんなに心が動かないのか。

 

 誰かに相談するか……と考えながら仕事に行き、仕事中は思考を切り替えて業務に集中。

 前から気にかけている引きこもり青年の様子を見に行ったら、玄関扉が開け放たれていて、女性の悲鳴が耳に飛び込んできた。

 一緒に来た女性兵官と慌てて玄関の中を確認したらまた叫び声。


「たまごが、たまごが割れています!」


 脱力……。


 何かと思ったらたまごが割れた程度。

 半泣きなのは、この家で暮らす引きこもりギイチの婚約者。


 福祉班で勝手に登録している、引きこもり青年ギイチが呆れ顔を浮かべて、冷めた瞳で婚約者マリを見下ろしている。

 二人は親同士が利害の一致で婚約させたという関係。

 マリによれば、彼女の家にはお金が入り用で、かなりのお金を無利子で貸してくれると申し出てくれたのが彼の父親。

 四男に良縁は難しいけれど、お金で解決できるお嬢さんを発見して万々歳で、我が家は格上と縁結びに加えて借金返済支援で万々歳らしい。

 ギイチも父親が勝手に借金泥沼の家に金を積んだと証言。


 マリはまだ未成年なのにもう同居結納で、破格の結納金の代わりに暴力、暴言、その他どんな扱いも許すなんてゾッとする契約をさせられている。

 監視しないと何が起こるか分からないというか、こんなの奴隷契約みたいなもの。

 なにせ、ギイチは「薄くても華族の血を引く上流層に片足を突っ込んでいる美少女。しかも国立女学生。こんなに素晴らしい玩具にはそりゃあ金を積む。息子の嫁を痛ぶりたいとは父上は崇高な趣味をお待ちだ」と愉快そうに言い放った。

 ただ、マリに悲壮感がないし、この広い屋敷にはギイチ以外いないし、人も訪ねてこない家なので、引きこもりの息子――病人疑惑――が心配で、嫁を用意しただけかもしれない。


 犯罪をしていないからと身分証明書の提示を拒否する、一部廃墟のような広い屋敷で暮らす引きこもり青年ギイチには、彼を心配するアザミという押しかけ中年住み込み奉公人がいたが、先日追い出されて俺達の長屋暮らしになった。

 アザミの協力の元、少しずつ調べて、それなりの商家の四男で、体が弱いから療養中だが、色・酒・喫煙に溺れて自堕落で、仕事は物書きらしいがその内容は嗜虐性(しぎゃくせい)の強い春本。

 小説家と名乗るにはおそらくそんなに売れていない。そこまで調査する程の権限がないが、ようやく発見した二冊の内容が内容だったので。

 何も知らない振りで懐に入ろうとしているけれど、人間嫌いで勘も鋭いのでこれがまた難しい。

 支援の優先順位はかなり低いので、彼をこのままにしておいてはいけない気がするという俺の我儘(わがまま)で福祉班登録をしてある。

 ギイチという青年は、監獄にいたころにたまに見た、水に写った自分の目と同じ瞳をしている。あの目はこの世の全てを恨んでいる、悍ましい目だ。

 上司も同僚ももっと優先すべき者がいるから放っておけというけど、俺は譲らない。ギイチを放置すると、必ず人が死ぬ。これは確信に近い。


「そんな叫ぶことか?」

「棚から置物を払ってしまったようです。愛くるしいカニの置物が憎らしく見えてきました」


 しょんぼり顔のマリは木彫りのカニを持ち上げて「たまご……」と呟いた。


 実に平和な光景にさらに脱力。

違和感を感じて、あっと気がつく。ギイチは前髪を長く伸ばして顔の半分を隠していたが、かなり短く直線的に切っている。

 猫のような変わった形の瞳孔に、左目回りに盛り上がった鮮血のような色のあざ。これが彼が髪を伸ばしていた理由だと判明。


「割れたのは一つだけです。一番下に入れておいた着物は無事でした」

「着物はいくらだった? 必要経費は払うから言え」


 引きこもりだから婚約者に買い物を頼んだようだけど、お金は払うようだ。

 借金のある家に、援助をする代わりに息子に介護人——多分夜込み——を寄越せという結納なら、経済搾取まではしないか。


「他人が着た着物は嫌だと申していましたが、あの古物屋には、一度も使わずに売られたものもありまして、交渉に交渉を重ねてこちらを買いました」


 ほら、とマリがギイチに見せた着物は薄灰色の無地の着物。

 ギイチはそっとそれを受け取って、恐々という様子で触れて沈黙して、なぜか首を捻った。

 酷く荒んだ目をしていた引きこもり青年の瞳が、これまでとは異なる光を帯びている。


「灰桜色は花咲おじいさんが幸せを作る色です。シンさんの本を買う方の目的がなんであれ、売れているということは、買い手が沢山いるということです」


 マリはにこりと満面の笑みを浮かべた。婚約者なので彼が口にしない本名を知っていて、そちらの名前を呼ぶのか、小説家ギイチは春本作家なのでそのことを知らないかのどちらか。


「次の作品も世間の方々を楽しませるでしょうから、この色はシンさんにピッタリかと」


 この発言だと、マリはギイチを普通の小説家と思っているかもしれない。

 マリは実に優しい笑顔で、本心ですというような澄んだ瞳でギイチを見つめている。

 可憐な笑顔に優しい言葉なので、ギイチは明らかに照れて、見惚れて、狼狽(ろうばい)


 俺は人が恋に落ちる瞬間を、初めて目撃したかもしれない。


 急に心臓がバクバクととんでもない音を鳴らし始めて、なぜこんなに照れると動揺。


『ずっと苦労しているようなので幸せな日々、つまりこの世の春が来ますようにということで桜色が良いですが、男性だから灰桜色にしましょう』


 もう十年以上前の台詞が脳内に響き、ギイチとマリに結納祝いと思って買ってきた、夫婦茶碗を結んでいる紐が手から滑り落ちた。


 ガシャンッと茶碗が割れた音と共に、弾けるように記憶が蘇る。


 かつて、十年以上も前に、俺はレイに鱗文様が所々に入った灰桜色の着物を買ってもらった。

 鱗文様は龍神王様の鱗のことなので魔除けや加護がありますようにという意味。

 ずっと苦労しているようなので幸せな日々、つまりこの世の春が来ますようにということで桜色。しかし俺は男性だから灰桜色。

 灰桜とは価値のないものが桜になるという意味。桜を咲かせて皆を幸せにする花咲おじいさんの色でもある。

 俺の記憶の中では、自分の幸福を祈って選んでくれた着物として定着していて、今まさに着ているのだが、嬉し過ぎて続きの言葉の印象が薄かったと発覚。


『桜を咲かせて皆を幸せにする花咲おじいさんの色でもあるから、ユミトさんに似合いますよ』


 ほぼ同時に、あの頃の彼女の満面の笑顔が浮かんで、そこからは次々とこれまでのレイの笑みが咲き乱れる花のようになって、脳裏を駆け巡る。


 ……なんだこれ。

 

 今は仕事!

 まだギイチことシンとマリは結納だし本人達は不本意。なので夫婦茶碗は安物で、訪問の口実として用意したもの。仮祝い品だしかつかつで生活しているからと金を惜しんだので、きちんと包装してもらわずに、紐で簡単に縛ってもらっただけの茶碗が、無惨なことに粉々。


「す、すみません。あの、つい」


「お怪我はありませんか?」


 ハッとしたら、マリの声がして、女性兵官カナミには「ついって、何に驚いたんですか?」と問いかけられた。


「いや、あの。本当につい……。あーあ。せっかくギイチさんの結納祝いに買ったのに。カナミさんもマリさんも怪我をするから近寄らないで下さい。俺が片付けます」

「マリさん、私とユミトさんで片付けるので大丈夫です。約束通り生活の様子を見に来ました。優先度が低いのでやはりこのように夕方になりました」


「ほう、箒をお持ちします」


 なぜか扇子を出して顔を半分隠したマリが玄関から家にあがった。彼女は何に照れているのだろう。


「何が夫婦茶碗だ。泥棒でもしにきたんだろう。平均より少し美しくて、上品なお嬢様だから欲しいだろう? 土下座するなら使わせてやっても良い」


 俺はこの発言に耳を疑った。ギイチは憎悪に染まったような目で、薄ら笑いを浮かべている。

 髪の隙間から少し覗いて見えただけでもゾッとしたのに、この目はやはりかつての俺と同類だと痛感。それなのに、同僚の誰も気にしないとはどういうことだ。


「……はぁ?」

「ギイチさん。それはどういう意味ですか?」


 カナミが渋い顔でギイチを見据える。


「昨夜話したように、彼女は父が勝手に寄越して勝手に契約した婚約者だ。誰と何をしようが俺には関係ない」


 ゴミを見るような目で睨まれて、先程マシになった目はどこへ消えたと考察。

 この目には憎悪だけではなくて敵意も含まれている。一年以上通って、そこそこ信頼を得たと思っていたけど、まだまだその信頼はかなり小さそうだ。


「そう言わず、せっかく夫婦になるんですから努力して親しくなって下さい」

「そうですよ。そのように壁を作って嫌な言葉を投げると、相手の好意は消えていく一方です。お互いにとって良くないですよ」

「この偽善者め。説教ならもっと底辺の者達にし——……」


 そこへマリが戻ってきて「シンさん」と声を掛けた。

 本人が来ないのでどこにいると探したら、彼女は廊下の角から手に持っている箒だけを出していた。


「何をしている」

「婚約者でも無い方に浴衣姿を見せられません」

「君の思考回路はどうなっているんだ。その格好で街中を歩いただろう! しかも二回も」

「家の中だと長襦袢を着ていても浴衣だと意識してしまって、恥ずかしくなりました」

「そろそろうんこ着物が乾いただろう。着替えてこい」


 うんこ着物ってなんだ。


「そういえばそうですね。あーっ! シンさん! 泥着物を洗濯屋に出し忘れました」


 泥着物ってなんだ。


「やかましい! この時間からだと襲われてヤラれるから家にいろ。俺が行ってくるから持ってこい」


 俺は「引きこもりが家から出ると言った!」と衝撃を受けた。しかもさっきまで、あんな女はどうでも良いと言っていたその口で、彼女を心配するような台詞である。


「ありがとうございます。その間にお夕食を作りますね。せっかくですので、結納品の着物を使って下さい」

「君が鈍臭いせいで面倒だ。また不審者だなんだと不愉快な目に合うからその着物を着られるようにしろ」

「はい。かしこまりました」

「たまごは何にするんだ?」

「明日の朝、たまご焼きです。甘いのとしょっぱいのはどちらが好みですか?」


 廊下の角で二人で会話して、俺達の存在を忘れているっぽい。

 俺はカナミと顔を見合わせて、どちらともなく「大丈夫そうですね」と言い合った。それで、割れた茶碗を全て手拭いでくるんで回収。


 ギイチとマリが親しげに話しているうちに、そうっと玄関から出る。


「口が悪い天邪鬼なだけで、マリさんに優しくしているようですね」

「ええ。それにしてもマリさんは、あっという間にあの気難しいギイチさんの懐の中という感じです。俺は人が恋穴落ちする瞬間を初めて見ました」

「あれはそう見えますよね。私もそうかも。人があんな風に心を動かす瞬間は、滅多に見られなくて、それが恋感情なのは初。初といえば、ユミトさんの初恋っていつですか?」

「……えっ?」


 今、俺はカナミの視線にたまに仕事で会う知人以外の色があることに気がついて、即座に申し訳ないけど俺はレイと頭に浮かんで愕然。


「……はぁああああああああああああああ!!!」

「ユミトさん? どうしました?」


 レイってなんだ!


 しかもさっき思い出したのは、もう十年以上前のレイの台詞である。

 その後の記憶は曖昧で、俺は気がついたら赤鹿警兵の師匠テオの前にいた。ここは彼の家の玄関前なのだが、なぜここにいる。

 

「突然どうした。まぁ、いつも突然だけど。手紙より赤鹿の方が早もんな。いつでも歓迎なのにたまにしか来ないから嬉しいな。俺もついついそっちに行き忘れるし」

「俺、なんでここにいるんでしょう」

「はあ?」

「ああ、聞きに来たのか。テオさんなら分かりそうだから。あの、俺ってレイさんに惚れてますか? ネビーさんは妹バカなので多分無意識に避けてこっちに来たんだと思います」

「……散々違うって言うから、そうなのかと思っていたけど、急にどうした! 何があった!」


 確かにその通りで、俺はレイと親しいから、彼女を女性だと知っている人に「実は恋仲?」みたいに問われても、違う、あり得ないと答えていた。

 レイは俺の副神様で、妹みたいな存在だから、俺と何かなんてあり得ない。

 あり得ないから、俺は自分の恋心に蓋をしたようだ。なにせ俺の身分証明書は犯罪者。


 卿家の親戚とかなり親しくしているレイと俺は、決して結ばれない。


「うわああああああああああああ! だからだ! だから俺、レイさんは違うって否定し続けてたんだ!」

「だから説明しろ!」


 ネビーの妹を妄想で使うなんてしてはいけないという理性と罪悪感が働くので、俺はレイのことを女ではない何かしたらバチが当たる存在、天女ということにして常に心の中で「あの人は人ではない」と唱えていた時期がある。


 意識しまくりじゃねえか!


「うわあああああああああ!」

「意味が分からないから説明しろ! うるせえ!」


 あの頃から心の奥底で慕っていたから誰にも惹かれないのか?

 しかし、俺はあの頃次々に恋をした。軽くて浅い、色欲や憧れも混じった恋の数々にレイは入っていない。いや、あの頃のレイは俺の聖域――大恩人ネビーの妹――だった。

 今はどうだろうか。今のレイ、と考えようとした瞬間、表立った友人でいられなくなった後に遠くから見た保護所で暮らす彼女が孤児達に囲まれて笑っている姿が蘇る。

 そうしたら、ギイチの家で起こったことと同じように、ひたすらレイの笑顔が浮かんで、どんどん咲いていく。


「うわああああああああ!」

「突然来て夜にうるせぇ! 冷静になれ!」


 俺はテオに思いっきり頬を平手打ちされた。

 

 ★


 こうして、彼は十年以上かけて自身の初恋を自覚。

 出会った頃は有象無象ですぐ忘れるような淡い憧れや性欲の範囲だったが、年月を重ねると共に、静かに静かにかさを増した水流は、気が付いた時には流れに逆らえず、決して泳げない程の激流である。

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