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お見合い結婚しました【本編完結済】  作者: あやぺん
日常編

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未来編「リル、皆で見学に行く」

リクエストでリル達姉妹が稽古を見に行くというようなのかありましたので、ちょっと違う気がしますが書けたのはこういう話でした。

 とんでもない話なのだが、兄は数年前の出張中に大狼と遭遇して、沢山の人を助けた英雄の一人だったらしい。新聞に名前が載ると家族にバレて心配されるから義父に頼んで隠したそうだ。

 しかし、祝言をきっかけに南西農村区に住む兄に感謝している人達のお礼したい熱が再燃。元々役所にあの人はどこに住んでいると問い合わせがあったらしいけど年々減っていたのに、その数がまた増加したので役所から兄に情報解禁命令が出たそうだ。一緒に活躍した赤鹿警兵が異動から帰ってきた事も理由の一つだという。

 それから、南三区から南西農村区へ行って事件に遭遇した人が命の恩人である兄をついに見つけて友人である浮絵屋の若旦那に話した結果、浮絵屋その他の組合がこれは商売になると兄に「もう何年も経っているから情報解禁して欲しい」と圧をかけてきたそうだ。


 何も知らなかった私のところにクララが兄の浮絵を持ってきたのでこういう事が発覚。

 クララが大狼から親子を助ける兄の浮絵を我が家に持ち込んで、その浮絵は町内会を旅をして、あちこちの家が浮絵を買いに行き、今日は兄の稽古見学会と記名握手会である。義母と私が町内会の女性達の圧に負けた結果だ。

 ロイがデオンに相談したら、特別に試合日にしようとほいほい了承してくれて、代わりに稽古後に軽いお茶会をして、その日参加する門下生をもてなして励まして欲しいと言われた。


 お茶会は薄茶席で、費用はデオンが出してくれて、お菓子は現在雅屋で働くレイに依頼済み。

 今日は道場ではなくて、小規模な剣術大会が行われる所で稽古するそうなので場所は野外だ。秋が始まったけど、まだまだ残暑があるので日焼け防止対策と水は必須。現地には屋根がある座席があるけど要注意。

 町内会の希望する家には記名握手会用の札を配布済みなので各々現地へ向かう。そういう訳で我が家は義父母、ロイと私、ユリアとレイス、それから住み込み中のウィオラの七人で家を出た。

 ウィオラにすっかり懐いているレイスとユリアは彼女と手を繋いで一緒に歌って楽しそう。

 ロイは昨年の兵官激務の煽りを受けて、昨年夏過ぎから多忙。春からは家にまで仕事を持ち込むことになってしまっていて、子ども二人にたまに人見知りされる程なので少々悔しそう。


「お父さん、ユリアもしっぷうけんをしたいです」

「えっ?」


 ウィオラから離れた娘が自分の手を握ってくれて嬉しそうだったロイの表情が崩れた。


「お父さんのしっぷうけんも見たいです!」

「いやぁ、レイス。それは……」


 レイスも来たので一瞬嬉しそうだったロイが困惑している。ロイは仕事で疲れていてここのところ稽古を二週に一回にしていて、今日は家族が来るから同等くらいの相手と試合はするけどネビーと対戦や特別稽古には参加しない。


「レイス。疾風剣はネビー叔父さんの特技で他の方には難しいです。ユリアは剣術よりもお料理を頑張りましょう」

「ユリア、おりょうりきらーい」


 今の言い方はルルそっくり!

 私は慌ててユリアと話そうとしたら、その前に隣にいる義母に軽く睨まれて「時に悪影響の叔母を嗜めていないのですか?」という叱責をされてしまった。

 

「そうかそうか。苦手なら料理が上手い婿をもらおう。ジオ君は料理好きだから大丈夫だ。ユリアは女性兵官になるか? 疾風剣は難しくても身を守れるようになるし、人の役に立つええ仕事だ」

「ちょっとお父さん。嫁の貰い手がなくなります」

「そんなことはない。女性兵官はそれなりに縁結び出来ている。それにジオ君は賢くて礼儀正しいからこのまま卿家一直線。出世はあまりしないでもらってのんびり働いてもらって、二人で家守りをしたらええ」

「そうですね。ジオ君がいました」

「ユリアはジオのおよめさんです」

「何を言うているんですか! 許しませんよ!」


 いつものやり取りがはじまったので無視。しかしレイスが一言「ぼくはサラちゃんをおよめさんにします」と告げたので、ロイのように「許しませんよ!」と叫んでいた。


「あら、レイス君。サラさんとはフォスター家のお嬢さんですね」

「はい、そうです」


 レイスは叫んでしまった私とではなくて、自分に笑いかけてくれたウィオラと手を繋ぎにいって嬉しそう。


「愛くるしい方ですものね」

「ヨハネさんから娘を奪うのは悪い気がしません」

「ヨハネさんと親戚になるのはええ案だな」

「ついに華族の親戚も手に入れられるわ」

「お義父さん、お義母さん、二十年くらい先の話をしないで下さい!」

「あはは。リルさんが涙目」

「旦那様まで!」


 そんな風に雑談しながら会場へ到着。今日の野外稽古は一般公開しているので凄い人だかり。しかし、ありがたいことに私達は関係者席なので通行止めのところから空いているところへ入り関係者席へ。

 実家の家族はもう到着していた。初夏と夏はつわりが酷かった母は落ち着いて来たので彼女もいる。ユリアとジオが仲良く並んで座ろうとしたのをロイが止めようとしたので、私はすかさず邪魔をした。

 家族と一緒に来ていたのはレイの同僚でウィオラの友人であるユラと、ラオ家族とティエン家族である。他のネビーとかなり親しい友人達家族は別の関係者席だけど、ラオ家族はティエンの南三区での後ろ盾火消しだからここらしい。


「ウィオラちゃん! 今日もかわゆい君にはこのバラだ。似合うぜ」


 着席したらイオの息子が勢い良く私達の方へ駆け寄ってきた。手に秋明菊(しゅうめいぎく)を持っている。


「テオ。だからそれは菊だ。あきあけ菊。このエロガキ。女の足の上にほいほい座るな」

「イオさん。秋明菊(しゅうめいぎく)ですよ。ウィオラさん、いつもすみません」

「いえいえ。ミユさん。テオ君もナオ君もまた大きくなりましたね」


 イオの息子テオがウィオラの膝の上に着席して親に怒られてウィオラの前へ移動させられた。彼はウィオラの方を向いたままウィオラを口説くような台詞を続けている。顔もちび時代のイオと似ているけど、相変わらず言動もイオの子だ。

 こういう流れでイオ家族は自然とウィオラの近くへ移動。その前にラオ家族でその並び、その後ろにティエン家族となった。そうしたら、ちゃっかり者のルルがランとアンの間に腰掛けていてある意味感心。

 そんな感じで軽く席替えになり、ウィオラの隣はユラだと思ったけど、彼女はレイとロカに挟まれた。

 ユリアとレイスはジオとナオと四人で楽しそうにしていて祖父母達の近くへ。ユリアとジオをロメルとジュリーにすることは許さないと遠ざけたロイは渋々イオとジンの隣。私はルカと共にその後ろ、ロカ達の並びに腰を下ろした。


「なーんかさぁ。俺は成り上がるぜって言うていた頃はサッパリだったのに、言わなくなってからどんどんだねぇ。今日はネビー大会みたいなものなんでしょう?」


 ルカがのんびりした声を出した。


「うん。上に言われて、記名握手会をしないと収集がつかなそうだからだって」

「ルーベル家は落ち着いた?」

「まだ見張り兼対応係の兵官さんが来てくれてる」


 兄は昔は単にネビーだったけど今はネビー・ルーベルなので、彼に会いたいと考えた者が公表された情報である南三区六番隊ネビー・ルーベルを頼りに屯所に行くとそこで終わりだけど、直に会いたいと居場所を調べると我が家に辿り着く。

 我が家に兄は住んでいないのに来客だらけになった。お兄さんは恩人ですという人達からはお礼の言葉や手紙に品物を受け取るのだが、単に野次馬みたいな人達もいるし、記者も来るので義父が対応者を番隊に頼んだ。

 対応者は実家にも一人派遣されているけど、兄の名前は卿家ルーベル家で広がっているので実家はわりと無風だ。兄は「ありがたいけど、街中で記名や握手をせがまれると仕事にならない」と日帰りや短期出張仕事や馬で見回り業務を増やしたり、教育班として屯所に引きこもったりして、来訪者から逃亡気味らしい。自慢屋の兄が自慢の逆なので変な感じ。

 たまたま大狼と遭遇して、運良く生き残っただけで何もしていないようなものだから自慢出来ないと愚痴っていた。しかし、南西農村区からわざわざ我が家まで来る人達から聞く話とは兄の発言はかなり違う。


「皆さん、失礼します」

「旦那様、行ってらっしゃいませ」


 最初に門下生同士の試合をいくつかして、兄はその間に一般来訪者と記名会だと聞いている。なのでロイは今から準備して試合だ。

 私は兄のことも楽しみにしているけど、それよりも久々にロイが試合をする姿を見ることをすこぶる楽しみにしている。


 デオンと息子、門下生一同が挨拶をした後に試合が行われて三番目にティエンが登場。

 ティエンにはまだまだ試合をするような実力は無いけれど、彼は煌護省や六防から「馬に乗れるようになること。兵官補佐官資格も得る事」などの辞令を受けることになったので、本日はその教育成果の御披露目だ。ティエンは優秀だから色々な仕事が降ってくるみたい。代わりに我儘を言う予定で、その一つは降格以外での南上地本部への転属撤回である。

 ティエンの試合相手は我が家に忖度で、ロイ、ユミト、クルスの三人。最初はクルスからで、私はそうっとロカの様子を確認。彼女はユラに「恋人の出番ですね」と揶揄われて赤くなっている。


「誰が誰の恋人ですか!」


 普段は地獄耳ではないのに振り返った父が怒鳴った。


「うるさい! 腹の子にさわるから喋るなって言うたでしょう!」


 ユラの発言に腹を立てた父が母に雷を落とされた。ティエン対クルスはあっさりクルスの負け。彼は運動が苦手で剣術の才能はまるでない。一方、ティエンはそこそこ筋が良いし火消しなので組手など元々運動をしてきているから当然だ。


「きゃあ! ティエンさん、今のはとても格好ええ!」

「ルル、はしたないからやめなさい!」


 末っ子の妹に注意される姉ってどうなのだろう。


「ロカさん、貴女も何か言うたらどうですか?」

「さ、叫ぶなんて無理です。うんと苦手なのに、お父さんのせいでこうやって晒し者にされたのに逃げれなくて……です」

「ロカさん。お父様の近くではやめましょう。可哀想です」


 ウィオラの指摘通り、父親心が限界の父が泣き出した。息子が沢山が良かったとメソメソして、母に「娘が五人だから五人息子を増やしてくれるじゃない」と背中をバシバシ叩いている。


「近くでって離れているのに聞いてるって、お父さんはまったくもう」

「まぁまぁ、ロカさん。お父様とはそういう生き物です」


 ロカとウィオラの話を聞きつつ、私はルカに話しかけた。


「私と旦那様の時はあっさりだったのにね」

「まさか。稼げないから娘をあっさり奪われたってメソメソしてたよ。稼げないじゃなくて金食いネビーと全員にとにかく貯金だったけど。あと私が未熟なジンと結婚したせい」

「メソメソしただけでしょう?」

「あの頃の生活でロイさんに許さないって怒ったら狂ってるよ。調べてもなーんの埃も出なかった人だもん。ティエン君は火消しってだけで、クルス君も未成年ってところしかない。お父さん、最近は同時に嫁に行くのは嫌だってぶつぶつ言ってる。つまり結局、口先だけで認めてるんだよ」

「うん。ティエン君やクルス君を認めないのは狂ってるよね」

「火消しは嫌、も自分がラオさん達と軽く遊んでいたからってお母さんが呆れてる」


 ルカはそのまま、父と同じくネビーもイオ達と少し遊んでいたらしいけど知ってる? と私に耳打ち。ルルから聞いたので知っていて、とてもガッカリしていると返答。


「ウィオラさんに知られたら離縁されると思う?」

「あっさり別居してくれたから実はそういう話で喧嘩してて離縁の危機なんてことはないよね?」

「ネビーはのめり込みまくりだけどウィオラさんはそうでもないから怖いよね」


 次はティエン対ユミトで、二人はあまり入門期間に差がないからか親しいらしく、今のところ実力は拮抗しているらしい。聞いていた通り、二人は互角に見えて、長いから終了、引き分けと告げられた。

 ユミトに淡い恋をして、あっさり袖振りされたようなものであるレイの様子は……と確認したらユラと二人でロカをからかっているだけ。

 ルルはどうだと思ったらニコニコしながら「格好ええですね」と惚気ていた。相手の母親に向かってこの発言って、彼女は鋼の心を持っていると感じてしまう。


「ブサイク気味の息子がそんなに格好よかに見えるだなんて、本当、ルルさんはありがたいです」

「そうですよ。アン。よかなお姉さんが出来そうで嬉しいわね」

「はい! ルル姉さんって早く呼びたいです」

「もう呼んでくれてええよ。妹が増えるのは嬉しいです!」

「そうなれば、とっとと祝言して北地区で大宴会じゃあ!」


 薄情ルルは、ティエンさんの家族となら楽しくやれそうだから引っ越しても良いと言い出している。ティエンの祖父とすっかり酒飲み友達状態だし。父が「誰が火消しの嫁に出すか!」と叫んでまたしても母の落雷を食らった。


 さて、次はロイの番。彼はティエンと対決後に昔から一緒に稽古をしている門下生と試合だ。経験の差は歴然で、ロイはあっさりティエンに勝利。


「きゃあ、旦那様格好ええ!」

「私の旦那様はすとてとき」

「旦那様、すときです!」

「ひゃあ、格好ええ!」


 ルカ、ルル、レイ、ロカが私をニヤニヤ見ながらそんな事を言ってきた。


「出遅れました。えっと、旦那様は格好良いです」

「ウィオラさんまで、やめて下さい」


 この後、ロイは次の試合でも美しい面で見事な勝利を手にして、私は久々にうっとりしてしまった。最近、仕事でくたびれたロイしか見ていなかったので余計に胸がキュンッてする。


「私の息子は煌国一!」

「私の息子は立派ですこぶる格好ええです」

「あんなに大きくなって。テルル、袖を濡らしてしまうわ」

「ご覧下さい。あちらは私の自慢の息子です」

「えっと、私の息子はこんなに立派になりました」

「ふふっ、今度はテルルさんなのですね。私の息子はこんなにすとてときです」


 ルルが始めた揶揄いは、今度は義母に向けられた。私とウィオラは少し遅れて参加。


「ちょっと、貴女達。ふざけるのはやめなさい」


 と、言いながら義母はご機嫌でとても嬉しそう。


「お母さん。お父さんかっこうええです」

「格好ええからユリアはお父さんとあくしゅします」

「必殺、ルーベル剣だぁ! 親父! 俺も剣術したい!」


 いつの間にかテオはジオの近くに移動していて、立ち上がって右腕を大きく振った。


「あはは。テオ、お前は火消し訓練をこなせるようになったらな。あとお父さんか父上と言いなさい」

「お坊ちゃんじゃない火消しの子が父上なんて呼べるかー! ジオ! ちゃんばらしようぜ!」


 子ども達はロイに感化されたみたい。この後、しばらくは知り合いの試合はないので私達はお喋りを楽しむことにした。

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