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お見合い結婚しました【本編完結済】  作者: あやぺん
日常編

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特別番外「雲外蒼天物語6」

 俺が住む長屋は狭い部屋で安いから家族暮らしよりも一人暮らしが多くて、同じ長屋にはごろつきみたいな人もいるし、俺のように目標を掲げている人もいる。

 最初、隣の部屋の気さくな男と親しくなりかけたけど、ネビーに「挨拶程度にして、彼とはあまり付き合うな。良く観察してなぜそう俺がそう言うのか考えろ」と指摘されたので隣人と距離を保った結果、借金取りらしき男が来たり、女と揉めたりする姿を目撃して、地区兵官が彼に何か言いに来て追い払われたのも見た。


 一方、俺の部屋と反対側の端から二番目に住む男と君は多分気が合うから積極的に話しかけてみろと言われたのでそうした結果、多分俺達は友人になった。

 ユウは親にぶたれて育って、お金をちまちま貯めて仕事を安定化させたので南幸せ区から南三区まで家出してきたそうだ。日雇いで色々な仕事をしながら大好きな勉強をして、寺子屋の先生になろうと努力中。

 俺は自然と仕事量を少し減らしてユウと勉強するようになり、二人で一つのうどんを食べて他のおかずを増やしたり、一人部屋に帰ると寂しいからお互いの部屋に交互に泊まってみたり、息抜きでたまに花札をして遊び博打——金や物以外を賭ける——をしたり、少しだけ酒を飲んだり息抜きをしている。


 隣人と少し親しくなりかけた時はネビーにあれこれ言われたけど、ユウとつるむようになってからは何も言われない。つまり、そういうことなのだろう。

 

 季節が冬に変化したとある長めの休憩時間、休日のレイと二人で市場へ向かっていたら、年末はどう過ごすのかと問いかけられた。

 ユウは年末年始は稼ぎ時で荷運び仕事を入れたそうで、俺は逆に同僚やネビー達に年末年始くらいゆっくりしろと言われて、ユウ以外に少し親しくなった同じ長屋の年が近いアザミと二人で年越しをする予定。自分も一人で年越しであれだからと誘ってくれた。彼も俺も上京してきて初めての年末年始だから、お祭りを観に行こうと約束している。


「ネビーさんは年末年始は東地区へ出張だってさ。だから誰かと過ごせって。地区兵官ってそんな遠いところにも出張するんだな」


 俺はユウやアザミが、どこの女と二人で歩いていたと言うから説明した結果、あんな美人のお嬢さんがかわゆい笑顔で一緒にいてくれるなんて奇跡だから年末年始に会うなんて許さない、ズルい、抜け駆けするなと言われている。

 ネビーが俺と年末年始に会ってくれるなら、そこにレイも来たりして、ユウやアザミが言う年末年始の女性の晴れ着姿である振袖とやらを見られたかもと期待していたけど、残念なことにネビーは出張だそうだ。


「ううん。お兄さんは特別」

「番隊幹部だから? あっ。地区本部所属だからか」

「義理のお父さんが煌護省本庁勤務で兵官関係だから。出世しやすいようにって仕事を振ってくれてる」

「ああ。ルーベルって苗字なのは養子なんだ。昔、手紙をくれた時はひくらし奉公人レオの長男地区兵官半見習いネビーって書いてあったから気になってた。平家のはずなのに苗字があるなぁって」

「お姉さんがルーベル家に嫁いだんだ。それでお兄さんに良い影響だからって養子縁組してくれたんだって。職場でお兄さんの人柄は調べられたし、義理のお兄さんは私のお兄さんと幼馴染なの。息子が良く知っているから安心って」

「ロイさんだ。俺、年が明けたらかめ屋の無期限奉公人になれるかもしれない。ネビーさんにその時の給与を伝えたら、週に一回は同じ剣術道場に通えそうだって。兵官育成もしている厳しいところ。前に義理の兄、ロイさんもいるって言ってた。早く入りたいからとにかく貯金してる」


 歩けば老若男女が声をかけてきて——たまに〇〇をどうにかしろという文句だけど——手を振られたり、握手を求められたり、浮絵に記名を頼まれる有名人。

 婚約者がいて春には祝言で、優しくて美人な妹がいて、後輩に慕われている出世頭でおまけに良い家の養子になったとは、ネビーは羨ましいくらい持っている人だ。

 家に恵まれて生まれて更に良い家と縁を結んで、仕事も勉強も出来るから彼の人生は順風満帆。ズルいなぁと思う気持ちはあるけど、他人を羨んで妬んでも何にもならないと監獄で言われて育った。

 俺よりも辛い人生の者も、俺よりも素晴らしい人生の者も、貧乏人も金持ちも、この世にはうんといる。俺は俺以外の何者にはなれなくて、他人が持っているものを持つことは難しい。努力で手に入らない物がこの世には沢山ある。でも、やはり少し妬んでしまう。


「デオン先生の弟子になったらユミトさんの稽古の様子を見に行こうかな。頑張れーって応援する。見学中に声は出せないけど終わった時とかさ」

「それは頑張れそうな気がするけど、怖い師匠って聞いたから慣れてからかなぁ」

「そのせいかお兄さんも時々怖いよー。ロイさんも同じく。普段は甘々なのに本気で怒らせたらお父さんやお母さんよりも怖い」

「どんな風に怖いんだ?」

「とにかく容赦ない。何を言っても無駄なの。ロイさんは賢いし、普段はバカなお兄さんも時々賢いから次々叱られる」

「それは怒らせないようにしよう」


 バカなお兄さんってどういうところなのかと聞こうとしたら、レイは「ねぇねぇ、あのお店に寄りたい」と小物屋に入った。それで彼女はその後に「いつもお世話になっているのでお礼に仕立て済みの私が買える値段の着物を贈る」と口にした。


「えっ。いや、ネビーさんへのお礼だからそのお礼をされたら変なことになる」

「ならないよ。私に親切にしたのと、いつも頑張っているからご褒美ってこと。どれが良いかな。着物は二枚じゃ足りないし、寒くなってきたのに薄着のままだから詰め物をしないと。年明けは雪が降るだろうから寒いよ」


 こうして、俺はレイに鱗文様が所々に入った灰桜色の着物を買ってもらった。鱗文様は龍神王様の鱗のことなので魔除けや加護がありますようにという意味。ずっと苦労しているようなので幸せな日々、つまりこの世の春が来ますようにということで桜色。しかし俺は男性だから灰桜色。

 灰桜とは価値のないものが桜になるという意味。桜を咲かせて皆を幸せにする花咲おじいさんの色でもある。花咲おじいさんの話は母が語ってくれたので知っている。


 着物を買ったレイはその着物を持ち帰って、数日後に俺に渡してくれた。着物に何か詰めてくれたから厚みが出来ていて、帰って着てみたらとても暖かかった。

 この日の俺は自分の部屋に帰って、勉強をしながらユウの帰宅を待って、それでこの着物を見せたので無駄遣いだと怒られて、そうではなくてお礼に貰ったと教えたら軽く蹴られた。


「何なんだお前は。女に着物を貰って応援されて、デレデレ顔で自慢するな! 畜生!」

「自慢していないけど……。これが自慢なのか」

(かんざし)でも渡してキスとかするつもりか。貧乏男に女は贅沢品だから自重しろ。ズルい。絶対に抜け駆けするな。一段階か二段階生活が良くなってからにしろ。その時に俺に女がいなかったら俺は諦めて花街へ行く」


 レイとキス? と想像したら心臓が破裂しそうになった。世の中にはかわゆい女で溢れていて、たまにあの人と話したいとか触りたいと感じることがあるし、覚えて使うこともあるけどレイは別。

 ネビーの妹を妄想で使うなんてしてはいけないという理性と罪悪感が働くので、俺はレイのことを女ではない何かしたらバチが当たる存在、天女ということにして常に心の中で「あの人は人ではない」と唱えている。


「金に余裕が出来るまで行くなって教わって育ったけど、そもそもどこにあるのかとか、どんな街なのか気になってる」

「行くだけなら無料だから行くか? 流行り物とか珍しい小物が売っているらしいから、着物のお礼品が見つかるかもしれない。たまたま老舗旅館で働けたとか、美人が世話してくれるとか、ユミトはええなぁ」

「俺はええのか。へぇ。なんか不思議だ。っ痛」

「自慢するんじゃねぇ!」


 ユウが特別寺子屋に行かない、仕事も早めに終わる息抜き日が四日後だと言うのでその日に花街見学に行く事にした。

 

 新しい大事な着物を汚したくないから、たまにしか着ないぞと部屋の端に置いて毎日拝んで、明日は人生初の花街という異世界だとワクワクしていた夜に俺に予想外の来客が登場。

 ネビーとレイと二人の父親が部屋に来て、俺は告げられた言葉に衝撃を受けた。

 レイのお出掛けの護衛は一人で判断したもので、ネビーとレイは家族だから情報共有しているだろうと思い込んでいたけど、そうではなくて落とし穴だったと判明。

 

「娘がお世話になっていたようだけど、世間一般的には家族の許可もなく男女で二人で出掛けるのは非常識だと思われる行為なので、今後は何もしなくて良いです」

「俺、非常識だったんですか……。すみません」


 いつも優しい眼差しで笑いかけてくれるネビーが、真逆の冷めた怖い顔をして俺を睨んでいる。その事が一番辛い。


「息子が世話をしているそうで、今日少し事情を教わりました。あまりにも困ったら俺や息子達が世話するけど、そのお礼はこちらが言わない限り何もしなくてもええです」

「そもそも俺は言うたよな? お礼の気持ちがあるならこうしてくれって。なのに別のことをするって、俺の妹は中々美人でかわゆいから、俺に世話されているっていうことを使って近づいたのかと邪推するぞ」


 こういうことを確か、余計なお世話と呼ぶ。良かれと思って悪い結果になることはこれまでにもあったけど、よりにもよってネビー相手にそれをするとはしくじった。全身から血の気が引いていく。


「えっ……。あの、そういうつもりは全然無いです! お礼になるかと思って……」

「俺はそこそこ君と接しているから信じるけど父上や他の家族は何も知らない。俺は仕事の話は全然しないし、妹も君の話をしていなかったからすれ違った。俺以外の家族から見た君は不審者に近い。知識不足や考えが足りなかった結果こうなる。誤解されるような事はするな。失敗して色々覚えろ」


 怒っているのかと思ったけど、ネビーは優しい笑顔で俺の肩を叩いた。


「本来気をつけるべきなのは女性側なので今回のことはレイが悪い。しかし、娘贔屓、妹贔屓だと君を非難する。似たような事はあるから気をつけなさい」

「だからそんなに悪くないって言うてるでしょう! 帰ろう。私のせいでユミトさんは悪くないんだから、後は家族の話。ムカつくけど他人に迷惑をかけたからもう少しお説教を聞いてあげる」

「おい、レイ。聞いてあげるってなんだその態度は」


 レイの父親は娘のレイを睨みつけた。彼の顔立ちはネビーに良く似ているので、あの顔で俺を睨まれるのは嫌だな。いつもニコニコかわゆい生物のレイが、恐ろしい怒り顔で父親を睨み返した。


「それで今日、どこの誰かも分かったし、お兄さんが担当している人なら安心で、しかもかめ屋の旦那さんが無期限奉公人にするから別にええってことで。私の趣味を奪わないで!」


 この数日後、過保護な家族との話し合いが終わって俺なら良いと許可されたとレイに言われた。

 世間は変な噂を作ったり、相手を知らないで悪口を言ったりする事もあるので少しコソコソする。またよろしくお願いしますと言われたので少し迷った。あの様子から「許可された」というのは何か変。

 迷ったら相談、という言葉を思い出したので俺は「忙しくて疲れまくっているから、お兄さんに私の話はしなくて良い」というレイの言葉を無視してネビーに報告しようと決意。

 翌日の夜、彼が俺の部屋へ来たのでその話をしようとしたら、不機嫌顔の彼に「正座しなさい」と睨まれた。


「はい」


 どんな事を言われるのかと怯えつつ正座。


「そっちは上座だから下座に座れ。基本だ。それとも俺はお前よりも格下で蔑ろにしたい相手か?」

「……えっ。あっ、はい! 何も考えていなくてすみません」


 慌てて場所を移動。


「その前に、親しくしている友人がいたら呼んできなさい。ユウさんとアザミさん。あの二人も聞いておくとためになるでしょうから」

「はい。分かりました」


 ユウは丁度帰宅して花街に行くならと着替えていたところで、アザミは遅番なのか不在。ユウと二人で並んで正座してネビーの言葉を待つ。


「まず最初に、君達を気にかける地区兵官としてではなくてレイという女性の兄として話しをします」

「はい」

「お申し込みもせずに連れ回すとはどういう了見だ。お見合いもせずに、付き添いもなくデートをするとは非常識にも程がある。二度と近寄るな。挨拶以外するな」


 慕っていて尊敬している相手に恐ろしい程睨まれて辛い。とんでもなく胸が痛む。


「何か反論はあるか?」

「いえあの、デートって何ですか?」

「気のある男女が出掛けることだ」

「な、ない、無いです! 俺はお礼になると思って、不自由なレイさんの護衛をしていただけです。お互い気のない男女です!」

「続けて君達を気にかける地区兵官として話しをします。まず第一に、立場を利用して自分の我儘を通したり、利益を得ようとする女にこき使われるな。ろくでもない女からは逃げなさい。レイのような女を悪女と呼びます」

「……」


 俺は耳を疑った。


「な、何を言うているんですか!」

「家族ではない男と二人で出歩くなと教えて育てたのに非常識だし、警戒心もないバカ娘だ。しかも怒られたのに不貞腐れるし反論する大バカ娘。悪い女と付き合うのは人生の無駄です」

「そんな言い方、ないと思います。色々教えてくれたり、手助けしてくれたり親切なのに……」

「本人に自覚が乏しいけど、君をこき使う為に多少世話しただけだ」

「俺、俺が言いました。俺が護衛になれば沢山市場に行けますって俺が提案しました」

「どうせ行きたいのに行けないの、みたいにレイが誘い受けしたんだろう。まんまと罠に引っかかってこき使われるな。あの納得していなそうな様子だと、どうせ家族に許可を得られたのでこれからもお願いしますとか言うただろう」

「……言われました。ネビーさんはとても疲れているから自分の話はしなくて良いとも言われました。変だと思ったのでネビーさんに伝えないとと思っていて……」


 不機嫌なネビーの顔がさらに悪化した。言わない方が良かったようだけど後の祭りである。


「常識を守らない上に、他人に嘘をつかせようとする女性を世間一般的に悪女と呼びます。自分の利益のために相手の善意を利用するのも同じく悪女。見た目がかわゆくても、親切でも、悪女は自分の足を引っ張る。二人とも、女には気をつけなさい」

「……悪女、悪女ってネビーさんの妹ですよ」

「だからすこぶる腹が立っている。散々教えてきたのにこれだ。人は失敗して痛い目を見ないと変わりません。妹が懲りていないから時間をおいて痛い目に合わせます。親と相談するけど賛同してくれると思う。放っておくと一人でぷらぷら出歩きそうだから、引き続き護衛をお願い出来ますか? 今度はレイではなくて父や自分からの依頼、監視役ということです」

「は、はい! 頼まれます!」


 少ししたらレイは叱られるらしいので可哀想だけど、必要な事のようだし頼まれたので引き受けることにする。


「俺に頼まれると嬉しいんだろう。一つ忠告。俺の妹はあの通り性格にバカなところもあるけど根は優しいし美人だ。君とレイだと一筋縄ではいかないからきっと苦労する。だから惚れないように気をつけろ。他の女の方が、すんなり縁結び出来る事が多いと思う」

「……えっ? 惚れる? 俺なんかがかわゆい生き物となにとかあり得ません!」

「男が好きじゃなければ自然と女ってなるものだ」


 このままレイとだけ交流を重ねると刷り込みみたいに惚れるから、同年代の女という女と交流しろと言われた。その上でレイなら仕方ないけど、その前に自分に誰かなんてあり得ないという気持ちを消せと言われた。

 かめ屋ならこの女性と何人かの名前や部署を言われて、どこどこの店の看板娘とも言われて、老若男女に親切にするのは当然だけど若い女には特に優しくしておけと謎の助言。これは俺にだけではなくてユウに対しても言われた事である。


「えー……。そんなの無理そうです」

「女と話したいけど同じく難しいです」

「世の中には常識的な縁談というものがあって、そこから外れるとそれを理由に縁を逃す。この人は他の女性とは異なると思ったらまず俺に言え。二人とも半人前でおまけに家族がいない。よってどの女を気にかけたとしても勝手に突撃するな」

「えっと、はい……」

「はい。分かりました!」


 覚悟したよりもネビーは怖くないと思っていたら、半人前で自分の生活も不安定なのに女を作って二人して苦労したいのかとか、ヒモになる気なのかと叱責されて、あまり考えていなかったと口にしたら常に色々な事を考えて生きなさいと怒られて、ぼんやりしていると色欲に負けて痛い目を見るぞと怒られて、心は辛いし足も痺れてきた。

 レイが言っていた怒らせると怖いって多分このこと。足が痺れてもぞもぞしたら、話を聞けと怒られて、その不貞腐れた顔をやめろとも怒られて、痺れて集中力が無くなったんだろうから反論しろと怒られて、とにかく延々と怒られる。全部正論に聞こえるのだが、よくもまぁ、こんなに指摘事項が出てくるものだ。頭の回転が早いのだろう。


「女を使う犯罪者もいるから金をむしり取られるぞ。あと特別視していない女とのこのこ二人で出歩いていると、本命に誤解されて失恋したり袖振りされるからな」

「俺なんかを好む女は居ないと思うんですけど……」

「またそうやって言う。その発言はこんなに気にかけて世話している俺に対する侮辱と取るぞ。俺はロクデナシを育成しているって言うのか⁈」


 このように何か言うと怒られるという悪循環が続いて、色欲と財欲を制御出来ないとこうなるという具体例も聞かされて、二度鐘が刻を告げるとようやく彼の終了の気配。二時間怒られ続けることなんてこれまでなかった。

 悪く無いことで頭ごなしに怒られた訳ではないので最悪な気分ではないけど、グッタリだし、自己嫌悪が凄い。

 とりあえず、破産しそうなので花街には行きたくなくなった。女を取っ替え引っ換えしたり、調子に乗って遊ぶと結婚出来なくなり俺に家族は出来ないそうなので本命としか交際しない。あと、かわゆい生物の中身はかわゆくないっぽい。怖い女がそんなにいるのかと怖くなった。


「レイさんと出掛けていたら、もしも本命が出来た時に誤解されて袖振りされますか?」

「すかさず、お世話になっているルーベルさんに頼まれていると言うて俺に会わせろ。説明するから。挨拶や世間話の時にさり気なくそういう会話を織り交ぜなさい」

「はい。レイさんはネビーさんの妹なので何かしたらバチが当たりそうだから天女だと思って、人ではないと考えるようにしています。まぁ、他の若い女もほとんど全員かわゆい生き物で同じですけど。その人だけが特別ってどんな感じなんですか?」


 ネビーは現在婚約していて春に祝言らしいのでこれに対する答えを有しているだろう。


「一言では難しいし人によるけど……俺はまぁ、自分の中の優先順位の高さだな。上位を占めているのは大体彼女。彼女の為に譲れないものはほぼない。人生の目標も家族も金も全部投げ出せる。彼女がいれば、きっと人生の目標も家族も金も残るから」


 ずっと怒った顔をしていたネビーが、へらっと笑った。


「投げ出すのに残るって何ですか?」

「俺が捨てたら拾ってくれるし、手離そうとしたらその手を握らせてくれる。飯でも食いに行くか。ご馳走する。何が食べ……夕飯は要りませんって言うてないからダメだ。お前らが来い。帰りは送るから」


 こうして俺とユウはネビーの家に招かれた。彼はたまに俺達にご馳走してくれるけど家に行くのは初。嫌な気分はどこへやらで踊り出したい気分。

 市場で良い買い物が出来たり発見をするとレイはたまに歌って踊るから、俺にも少しうつっている。

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