日常編「川釣りとその頃の話1」
今日の私は気合を入れて早起きをして、いつものように雨戸を開けたりした後に、町内会の氷蔵へ行って朝食用に作ってあるちらし寿司の入ったおひつその他を持ってきた。
蓋付きのお椀に出汁粉を入れてあるので、お味噌を加えて、少し離したところに千切った海苔をいれて朝食作りは終了。香物はロイか義母が切るし、即席味噌汁用のお湯も二人のどちらかが沸かしてくれる。
「おはよう、リルさん。早起きだな。俺もこうして起きられた」
「はい。身支度をしたら出掛けられます。レイを起こしてきます」
二階へ戻って昨日寝たロイの書斎へ入って、隣で寝たレイの体を揺らして起こす。
「むにゃ……まだ眠い」
「釣りに行かないなら置いていくよ」
「んー。眠いからええ」
釣りに行きたいと言ったのはレイだけど、こうなる気はしていた。
「それなら置いていく」
後でぎゃあぎゃあ言いそうな気がするけど太陽や鮭は待ってくれないので無視。ロイには根回し済みなのでレイを置いていくことにする。自分の着替えを済まして玄関へ行って義父と手荷物確認。問題ないので出発して、海辺街方面へ出ている立ち乗り馬車の停留所を目指す。
今日の朝食は握り飯屋で購入と決まっていて、佃煮混ぜおむすびと、たくあん混ぜおむすびを購入してもらってほくほく気分。
そこから立ち乗り馬車に揺られて海辺街手前の山のところで下車。そこへ歩きのジンが合流して挨拶。
「あれっ。リルちゃん。レイちゃんは?」
「起きないから置いてきた」
「一週間、早起きの練習をしていたのにそうなんだ」
「昨日の夜、早く寝ようって言うたのに旦那様とお義母さんと花合わせに夢中だった」
「あー。ルルちゃんは龍歌に夢中だけどレイちゃんは絵が好きって花札に夢中だからそうなるのか」
「そうなの?」
そこへ別の区からの立ち乗り馬車がきてベイリー、エリー、それからシンバが合流してまた挨拶会。
「別にバレてもええんですけど、親に今日はガイさんとリルさんと釣りって言ってあって、ベイリー君が一緒だと知られていないので今後、今日の話題が出たらそういう事でお願いします」
「いや、エリーさん。しっかりご挨拶したから」
「そうなの?」
「エリーさんが華族の三男さんと四男さんとのお見合いを破壊して本性を出したので、お姉さん達が実はこうだと教えて、ご両親は諦めたようです。ご挨拶に行ったら末永く娘をよろしくお願いしますと言われました」
「へぇ。私のことなのにそこまで話が進んだとは知らなかったです。これでずっと一緒だにゃん」
「ちょっと! 人前でそのようにくっつかないで下さい! 慎みを持つように!」
エリーは猫の手で両手をベイリーの肩に乗せただけなのにとても慌てふためいた。
「あれっ。リルさん。レイさんはどちらですか?」
「昨日、我が家に泊まったのですが今朝起きないのでおいてきました」
「それは残念です」
こうして私達は山道を歩き出した。前から義父とシンバ、私とジン、ベイリーとエリーという並び。
「この辺りは山菜やキノコを取りに来るから道が分かってええな」
「うん。ルカとジオは元気?」
昨日、レイに聞いたばかりだけど確認。
「元気。赤ちゃんってこんななんだって毎日新鮮」
「他の家の赤ちゃんは見てなかった?」
「うん。そんなに。俺に家族が出来たっていうのも不思議だったのに、それが増えて、しかも自分の子どもって変な感じ」
「おお、そうだったジン君。お子さんの事で話があるから来てくれ」
「はい、ガイさん」
この義父の台詞でジンとシンバの場所が入れ替わった。
「お嫁さん、去年は栗拾いもしましたけど今年もしますか?」
「もちろんです」
「穴場のようなので釣り仲間にもここのことは黙っているんですよ。なぜ穴場なんでしょうね」
「ジンお兄さん曰く、村と村の合間らしいです」
ジン兄ちゃん、と言いそうになったけど上手くお兄さんと使えた。
「ジンさんはこの辺りに詳しいんですか?」
「奥の方の山の村が故郷なので少し知っています」
「へぇ。彼は山出身なんですか。色白めだしそうは見えないですね」
「今は職人なので室内で過ごす事が多いです」
「そうでした、そうでした。ジンさんは竹細工職人でしたね」
「はい」
「今日はお嫁さんの妹さんが来ると聞いていたので残念です。起きないから置いてきたって妹さんは今頃泣いていないと良いですが」
「お出掛け時に起きないと置いていくのは実家の規則です」
「あはは。それは厳しい家ですね」
一年間、お喋りの練習をしてきた成果なのか、シンバの会話の速度が早くないからか、今の私は普通に喋れていると思う。
☆★
その頃——……ルーベル家
リルが居ないとメソメソ泣くレイに起こされた。起きなかったら置いていく、とは聞いていたけどまさか本当に置いてきぼりにするとは。
「レイはリル姉ちゃんと釣りに行きたかったのに置いていったー! 全然起こしてくれなかった! 蹴飛ばされてないよ!」
「えっ? 蹴飛ばすって……」
「なんですか?」と告げる前にレイは俺に馬乗りになって抱きついてきて「うえええええん」と大泣き。二、三才ならともかくそれなりに大きく成長している女の子が、布団の上だとはいえ、男性の上でこのような体勢はしてはいけないと思う。
「レイさ……」
「なんでロイ兄ちゃんもレイを起こしてくれなかったの! リル姉ちゃんに蹴って起こしてって言わなかったの! レイも鮭をどりゃあって釣りたかったのに!」
「あの、レ……」
軽くお説教するつもりたが失敗。浴衣の合わせ部分を掴まれて前後に揺らされて戸惑う。
「ロイ兄ちゃんがレイを蹴らなかったから釣りに行けなかった! うえええええん!」
レオ家では家族を蹴って起こしているようだ。俺はリルにそんなことされたことがないが。
この後、俺はレイの言葉の間に中々入れず泣き続ける彼女に怒られ続けた。
☆★
——……話は戻ってリル達のところ。
昨年の秋にも来た目的の川まで到着したのでまずは腹ごしらえ。朝食用に買ったおむすびを食べながら皆でこの後、どうするかの作戦会議。
私とエリーは鮭の力に負けそうなので、それぞれ男性と組むことになり、鮭は重いので男性が補助役に回れると良いというのもあり、三人一組で鮭に挑むと決定。
目標は鮭、なおかつイクラだけど他の魚でもきっと嬉しいだろう。そういう訳で濡れなくて釣れそうな時に踏ん張れそうな場所を選んで釣り開始。私とジンはまず義父と三人一組だ。
「リルちゃん。レイちゃんは今頃ええ子にしてると思う?」
「してない」
「あはは。断言した。なんでそんな嫌そうな顔をしたんだ。昨日、俺が夕方家に送り届けた後に何かあった?」
「早く寝ないと起きれないって言うたのにずっと遊んでた」
「それでレイちゃんは寝坊したんだ」
「いやぁ。妻とロイが甘やかしてもう少し遊んでもええなんて言うたからだ。寝坊したレイさんが家に置いていかれたら彼女と遊べると考えたのか? 妻は時々、良く分からん」
「今日、旦那様は稽古です」
「そうなの? ロイさんが稽古に行ったらレイちゃんはテルルさんと二人? うわっ。それはなんか怖いというかすこぶる心配」
私は首を大きく縦に振った。
「この前もだけど、レイさんは昨日も大人しくええ子にしていたぞ。お喋りではあるが」
「旦那様はレイを稽古に連れて行きます」
「ロイが面倒を見るから母さんは気にしなかったのか」
「えっ。そうなの? ロイさん、大変じゃないかなぁ。レイちゃん、寺子屋に行く時もあっちにこっちにふらふらするから。レイちゃんはほら、花とか鳥とか好きだから」
「うん。疲れる時は見える範囲で花を摘ませてた」
「昨夜、レイさんは母さんと花の本を読んで楽しそうだったぞ。やっぱり母さんはレイさんともっと接したかったのか?」
私も義母が何を考えているのかはよく分からない。私が何度言ってもすぐ敬語を忘れるので、義母はレイを叱るか私に何か言うと思ったのに今のところ何もない。
「旦那様がええ子じゃなかったって言うたらしばらく泊まりは無しって約束になっています」
「うーん。レイちゃんはしばらくルーベル家に宿泊禁止で母さんに説教されるな。その後はルカさんとネビーにもガミガミ言われる。俺はそれに一銅貨。あっ。リルちゃんと賭けをしたことはないか」
「してみる。でも同じ方だから意味ない」
「それなら俺が逆に賭けるか。ジン君、これはお金しか賭けられないのか?」
「いえ。家だと金以外が多いです」
「それなら俺が勝ったらジン君は俺と将棋で勝負で、リルさんは弁当にいなり寿司を頼む」
「はい」
「分かりました」
話題は逸れて、ジンから最近の家族の話をしてもらったり、我が家のことを話して、反応があったから期待に胸を膨らませたけど結果は木が引っかかっただけ。
しかし、しばらくしてエリーの釣竿に反応があったというので私達三人は釣りを中止して移動。エリーが釣ったのは鮭ではなくてアユらしき魚。
「鮭ではなかったけど幸先ええですね」
シンバが笑顔でそう告げた。それなら歌って踊ろう。
「それなら私も」
私は下街の小祭りの踊りをしたけど、エリーは扇子を出して美しい舞を始めた。難しそうだけど私も扇子を出して真似してみる。
「舞付きの釣りとは高貴な方の行事みたいだ。これはええ」
「うわぁ。天女みたいです。ベイリーさんって果報者ですね」
「まあ、いや、はい。自分には勿体無い方です」
「これだとリルさんは天女の弟子だな。いや、天女に懐くリスか? ええぞ、ええぞ」
「お嫁さんはええご友人をお持ちですね。ロイ君はええお嫁さんをもらいました」
女学校に通っていないから皆のような舞は出来ないけど、代わりに舞える友人がいるだけで褒められるとはほくほく気分。
鮎だけではなくて、いくら持ちの鮭も釣れる気がしてくる!
☆★
——……少し後のロイ。
普段、出稽古のない日曜日は稽古には行かないけど、今日はリルが居ないし母の通院日でもないので事前に稽古に参加したいとデオンに頼んである。
レイが寝坊したら置いていく。遊びに付き合わせると母が疲れてしまう。だから稽古へ連れて行って修行だと告げて道場の隅で正座をさせておいて欲しい。それがリルから聞いた彼女の両親の意向だと聞いている。なので俺はレイを連れて家を出たのだが、母はレイと話したいようでついてきた。
結果、そんなに速く歩けない母と、鳥がいるとかリスがいたとか、どんぐりがあったと前に進まないレイがいるから、デオン剣術道場に到着するまでにかなりの時間を要した。元々、途中参加や途中帰宅も可能なので支障は無い。
道場に着いたら、母と共にデオンに挨拶をして見学をさせて欲しいと依頼。なんでもない日なので予想通り許された。
「レイさん、お久しぶりです。挨拶をしたことがあるけど、私を覚えているかい? 君のお兄さんの師匠だ。こちらのロイ君の師匠でもある」
「……覚えてないです。こんにちは。レイです! 兄ちゃ……お兄さんがお世話しています。ん? 兄ちゃんは皆にお世話されてばっかりだから……お兄さんがいつもお世話されてます」
レイは内弁慶なのか急に大人しくなった。
「レイさん。兄がいつもお世話になっています、と言うとええですよ」
「はい。兄がいつもお世話になってます」
「ええ。昔からずっとお世話しています。だから妹さんの話は色々聞いていますよ。レイさんは器用だそうですね。稽古着が破れたらレイさんが直してくれると聞いています」
「はい……」
デオンは優しい笑顔でレイの頭を撫でたけど彼女は俺の後ろに少し隠れた。
この後、見学場所を指定されたので母とレイをそこへ案内。今日はネビーが夜勤明けでそのまま来るらしいので、連れてきた場合は彼はレイを引き渡すことになっている。
しかし、昼前までの稽古の間、彼は現れなかった。事情があると来ないのは知っているので母とレイと三人でリルの実家へ向かうことになった。
その前に昼食を、ということで街中の方へ向かって三人で歩く。母もだが、自分も自然とレイに手を繋がれたので三人で横並び。
「ひらひらひらりと落ちる。だ、か、ら、落ち葉〜。落っこちる葉っぱ〜。ひらひらひらり、ひゅるりらり〜」
レイが歌い始めたけど何の歌か分からない。
「レイさん、これは何という歌ですか?」
「落ち葉の歌だよ。ルルが作った。ひらがなだけでも大変なのに何でどんどん漢字を覚えられるのって聞いたら何かと繋げるとええって言う。ルルはうんと頭がええ。どんどん覚えてく」
「ルルさんがつ……」
「それにルルは嫌な男の子も追い払ってくれるの。レイは男の子嫌い。長屋の男の子はそんなにだけど、寺子屋に来る男の子は意地悪なの! 貧乏人〜とかボサボサ髪お化けって言われてイライラしたけどお父さんとお母さんが美人は怖い目に遭うからお姫様の格好はダメっだって」
「意地悪はい……」
「でもルカ姉ちゃんはたまにはお洒落して、見返してやりなって言うてかわゆい髪にしてくれたの。この着物も着たんだよ! そうしたら髪を引っ張られたし蛙を投げられた」
「それは嫌な目に……」
「だからレイはアキ君とは口をきかないの。もう秋だからアキ君の名前と同じで嫌。うんと嫌い。大嫌い! レイはジン兄ちゃんと結婚するんだ。でもロイ兄ちゃんでもええよ。レイ〜、寒い〜ってくっついてくるから兄ちゃんでもええ」
「レイさん。結婚とい……」
「だんだん寒くなってきたからレイはあったかい兄ちゃんと寝たいのにロカが片方を独占してるの。だからいつも私とルルで喧嘩してる。お父さんは手足が冷たいから嫌。なんか臭いし。ルカ姉ちゃんがお父さんをなんか臭いって思うのは自然のせついって言うてた。お父さんとは結婚出来ないからだって」
「せつ……」
「だからたまに兄ちゃんと臭い気がする時があるの。でもそれを言うたらルカ姉ちゃんにそれは疲れて本当に臭い方だからせんいとは関係無いって。兄ちゃんは臭い足袋は自分で洗うよ。照れ屋で気にしいなんだって」
俺は全然、レイの話の間に入れないまま蕎麦屋へ到着。母がレイを叱らず、敬語とも言わないのが気になっている。母は「それで?」とか「そうなんですか」というような相槌ばかりだ。
蕎麦を食べ終わってリルの実家へ着いてエルに部屋へどうぞと促されて、ふと母はここへ来たことも、部屋に入ったことも無かったようなと気がつく。
「お母さん、兄ちゃんは? ルルは? ロカは?」
「手洗い、うがい。それから下駄は揃える!」
部屋に上がろうとしたレイの襟を掴んだエルは低くて大きな声でピシャリと告げた。
「ねぇねぇ。兄ちゃんは? ルルは? ロカは?」
レイはそう口にしながら手洗いを開始。
「テルルさん、ロイさん、娘はもうそれなりの年なのにすみません」
「ええ。言葉遣いや所作など、あれこれ身につけた方がよろしいでしょう」
困り顔のエルに向かって母はにこやかであるが目が笑っていない。我が母ながら怖っ。
「うるさいなぁ。おいルル。俺は夜勤明けって言うてあったよな? なんだうるさいのはレイか。母ちゃん。腹減った。なんかめ……」
一番奥の襖だけ閉じてあるなと思ったら、その襖が開いて浴衣の上半身をはだけていて、半袖肌着姿というネビーがあくび混じりで登場して、母を見てみるみる顔色を真っ青にした。
「テルッ、テルルさん! ロイさん! うげっ。あー。母上、兄上、おはようございます」
その場で正座したネビーが慌てた様子で浴衣を直して道場で教わっているようなお辞儀をした。
「ネビーさん。貴方は我が家の次男になりました。ルーベル家の家訓はお守り下さい。もう暗唱出来ますよね?」
母が低い、いつもの叱責用の声を出したので俺まで耳を塞ぎたくなる。
「は、はい! 今関係あるとのだと、礼儀作法はその場限りではなくて、日々の積み重ねで体に染み込ませるものです!」
「ロイ。兄として貴方がしっかり指導しないからこうなるのです。ネビーさん。家に年頃の娘さんがいるのにそのようなはしたない格好でそれでも卿家の地区兵官ですか!」
やっぱり、流れ弾……。
「気の緩みは己の弱さです! 身を引き締めます!」
部屋に上がった母は俺とネビーを自分の前に並べて正座させて説教を開始。ネビーが怒られて、それは俺のせいだと怒られて、ネビーは話をしっかり聞いて反省の言葉を述べるのに、俺はまるで聞き流しているような態度だと続いて終わらない。
「ロイ。レイさんが寝坊したからこんなことになるというような顔はやめなさい!」
「えっ。ロイさん。それは違いますよ。せめて俺のせいって言うて下さい」
「どちらも言うてないし思ってもいません」
「顔に全て出ています」
「いえ。自分はそういう顔立ちです」
「そういう反省の色がないところを毎度直しなさいとお父さんに指摘されているでしょう。直しなさい」
「ロイさんって昔から高みの見物というか、自分への叱責なのに興味無さそうな顔をしていますよね。他人のことだとなおさら」
「ですからそれは顔立ちです」
「いや、目だってデオン先生に怒られていたことがありましたよね?」
「ロイ。先生にそのように教えていただいているなんて聞いていませんよ。報告しなさい」
俺はとっくの昔に成人なのにそんな報告をするか。なぜ、せっかくの一日休みにこんな目に遭う。この母がレイには甘かったのはなぜなのだろう。
兄弟のくせに背中を刺すなとネビーに文句の言葉を投げたら、そこから言い合いになって最終的に彼に「表に出ろ!」と叫ばれて、俺は「受けて立ちますよ!」と言い返していた。
受けて立ちますなんて、口にするのはいつ以来だ?
☆★
……その頃、釣りをしているリル達。
私の釣竿は全然反応しなくて、それならそろそろ栗を拾いに行こうかと思っていたら義父が何か釣れそうな疑惑。
「お、重い。重いぞ」
「一緒に持ちます」
「俺は棒付きカゴで補助します!」
義父と釣竿をしっかり持って、どんどん川から離れていくと魚の姿が見てた。
「鮭だ! 鮭な気がする! リルさん踏ん張るぞ! ジン君頼んだ!」
「はい! ガイさん、リルちゃん、転ばないように足元に気をつけて下さい!」
鮭があっちにこっちに泳ぐのでよろよろしながら転ばないように気をつけて、川岸の方まで鮭を引っ張ってきて、ジンがすくい上げて、それをベイリーも協力して持ち上げた。
シンバとエリーは私と義父が転ばないように常に助けられる体制でいてくれたので、この鮭は皆で釣った!
「ガイさん。魚拓、魚拓を取りましょう! いやあ、これは大きいですよ!」
「ええ。大きい鮭を釣れました! うわっ。跳ねる、跳ねる。いくら持ちかなぁ」
「いくら、ありそうですよ」
大きめの鮭で皆で釣ったから捌いて分けるけど、いくらは私が義母と漬けて義父とロイ経由でベイリーやエリーに渡す予定なので、いくら漬け大会が出来るぞと、今日一番のほくほく気分。




