感想より小話編「先輩の家の謎の若嫁さん3」
ガイ・ルーベルという先輩は仕事でもちょこちょこ邪道を選択して見事に成功させるのだが、それは仕事だけには留まらないようで一人息子を使って謎男を手に入れたようだ。
「火事に飛び込むなんて勇気がありますね」
タビスのこの発言にネビーは「火消し半見習いをしていたことがあるので少し火に慣れています」という返事をした。
(火消し半見習い? ん? 彼はどういう経歴で地区兵官になったんだ?)
商家や豪家の息子であの鬼道場の門下生なら通い続けてデオンの推薦で兵官半見習い。下級公務員試験を自力で突破が王道だ。
兵官採用試験免除者ということは半見習いの成績が優れているということなのでお金があるなら専門高等校を経由して経歴に箔を付けるのは有り。なのになぜそこに火消し半見習いという肩書きが出てくる。
「ああ、そうでした。火消しと言えばロイさん。イオと飲むのは月末土曜でどうですか?」
「予定は無いので空けておきます」
「ト班が三人揃うとうるさいし下手をすると人が増えるからイオだけ呼びました。あいつもロイさんに相談があるそうなので」
「自分にですか?」
「ええ。例の紅の送り主のことです。俺も今後の参考の為に聞きたいです」
「ああ、稽古の時に言っていた話ですね」
すまし顔で表情がずっと変わらなかったロイが微笑んだのでつい凝視。
(笑うと先輩に少し似ているな)
ト班、ということはイオという人物は火消し疑惑。
「皆、夕食は食べ終えたようだから一度挨拶をするか。ごちそうさまでした」
この後にガイはタビスに入浴を促してテルルが案内をしてリルは片付けを始めた。
嫁二人が入浴済みという様子なのは人数が多いので分かるが、その後の入浴順がロイ、タビスなのは変である。
考察しようと思ったら真剣な眼差しのガイに見据えられた。
「ヒヨン君、折り入って頼みがある」
急に笑みを消したガイに見据えられて緊張。
「はい。なんでしょうか」
「俺は勅任官を育てたと言いたい」
「……」
背筋を伸ばして損をした。酔ってるなこの人。
酔うとこういう雰囲気にはならないけどこの話は結構する。
「出来れば一等勅任官を育てたと言いたい」
「……」
またいつもの冗談を、と言いたいけど真剣な表情なので口にしづらい。
「長男は最等裁判官と言うつもりなんだがそれは俺の業務では後押し出来ない。せいぜい家でつつくくらいだ」
それはまた狭き門を望むというか、南地区で二人しかなれない地位について欲しいとは過剰な欲望だと思う。
「父上、裁判官になってもいないのにやめて下さい」
「それで次男は南地区総隊長だと言いたい」
この人、この為にネビーを養子にしたのなら彼は中々優秀な人材ということた。
鬼道場からは定期的に名のある兵官が輩出されているので息子を通して目星をつけて祝言で家と家の縁結びってこと。
ロイとリルのあまり親しくなさそうな空気がそれを物語っている。
「こっちは少し仕事で援護射撃出来る。しかしまぁ、年寄りだからいつ死ぬか分からない。だから手を組まないか?」
長男は最等裁判官で次男は南地区兵官総官って強欲だな。万が一その夢を果たせてもガイはもう死んでいるだろう。
いつ死ぬか分からないって、むしろ百歳まで生きる気がある勢いではないか。
「ガイさん、またその話ですか? 長男は最等裁判官で次男は総官だーって、既に耳にタコです」
「ですよね、ネビーさん。長男は裁判官、次男は番隊長で我慢して下さい」
「そんな格差兄弟は許さん。長男なんだからネビー君に負けるな」
「長男はネビーさんです」
「長男はロイさんですよ」
「ネビーさんです」
「ロイさんです」
「何を言うているんですか。ネビーさんです」
立派に育ったのだな、と思っていたロイが急に子どもっぽくなった。
「ロイさんって決まりましたー! 自分で言うたし年齢も戸籍もそうです」
「戸籍は次男です。なので長男とは決まっていません」
「あっ、そうでした。俺も戸籍は三男です。どちらにせよ俺は長男ではありません」
言い合いをしながらお酌をし合って張り合うように呷るって仲良しだな。
「ガイさん、俺は地区本部へは行きたくないですって言いましたよね?」
「家から通えたり結婚した後ならええって言うたじゃないか。だからこう、手順その他を考えている。その為のヒヨン君だ」
「自分ですか?」
「ヒヨン君、次男の支援を助けて欲しい。君の担当業務に絡めると良い評価が跳ね返ってくるから一等勅任官に近づく。ネビー君は第三部推薦兵官だ。これだけで君なら意味が少し分かるだろう」
「彼は第三部推薦兵官なんですか」
第三部ってことは俺達煌護省が人柄を保証している。一部の人間でないと得られない情報なので娘がいたら奪い合う人材だ。
息子が嫁にしたい相手の兄は地区兵官、地元の評判はどう、で終わらないできっちり調べ上げるのは煌護省の人間として当然だけどこんなの偶然とは思えない。絶対に息子と親しげな兵官候補を調べて、という逆算の方だ。
「それでいてネビー君は第一部にも片足を突っ込んでいる。特別養子縁組の特例制度でそのうち実子扱いだから跡取り認定を取得してもらう予定だ」
第一部にも片足ということは次男は総官、というのは多少本気ってこと。こんなのもう本当に偶然だとは思えない。
跡取り認定取得という単語で息子自慢以外のガイの得は何か判明。
特別養子縁組に特例制度なんてあったか?
推薦兵官は一代卿家みたいなところがあるからもしかしたらあるかもしれない。
学校に通って態度評価優良がついていないと無理なのでそのあたりもこのネビーは満たしているということ。
(単なる剣術道場だと記録がないけどデオン道場だと違うから学校評価以外があるのか。第三部って時点で態度評価は最優良……。この人、職場で見つけると争奪戦だからもっと前に捕まえる為に鬼道場に一人息子を密偵にしたってことか⁈)
俺達の部署は推薦兵官管理の部署ではないから詳細は入手困難。
ガイの年齢まで勤め上げて、彼のように人付き合いを大切にしていれば情報集めも資料閲覧も出来そうだけど息子に頼んで師匠経由の方だと範囲は狭くても発見は早い。
提示されたら目的と方法は納得だけど俺にはこのような発想も手段も思いつかない。
「そういう訳でまずは年末の試験の試合担当に選んでくれ。基準は満たしているから後は知られているか、いないかという話になる。父親に推薦された、というよりも息子に評価がつくし君にもええ人材を見つけたという評価がつく」
推薦打ち切りもあるし推薦兵官だからといって出世していく訳でもない。むしろ期待外れだと駒不足のところへ送られる。
完成品は争奪戦だから育てようというのはガイくらい仕事が出来ると堅実な道かもしれない。
「先輩なら既にその資料を準備してありますよね」
「資料どころか君が疲れないように書類を作ってある」
相変わらずやる気があると仕事が早い。
「書類を写すのは作るのよりも楽だから早く終わる。空いた時間はタビス君に教える時間にしてくれ」
自分の教育指導時間を空けてその時間でこの人は何をする気だ。どう考えても新次男関係のことだろう。
「損はないので引き受けます」
「……あっ。よろしくお願いします! ガイさんに言われて師匠に依頼もしてくれたので試合担当用稽古はもう始めています!」
ガイは気分屋なので手助けを頼もうにも人を選んで「こういう理由て忙しい」と上手く逃げるけど気に入られている俺はこのように得をする。
自分の傘が出世街道から逸れても裏切らないで「どうせそのうち上はいなくなるから有能な部下が多いと後からひっくり返りますよ」と言って下を育てて援護射撃をするような人なので信用もしている。
それで出世するよりも他の得、と別なことを持ってきたりもする愉快な人だけどまた驚かされてしまった。
「へぇ。父上ってこのように仕事をするんですね」
「このようにって何だ」
「少し説教を聞いてもよかだな、と思いました」
「少しって何だ。お前は人の話を聞きなさい」
「先輩。どういうことですか? きっちり調べたら跡取り認定を取得可能な人材なんてこんな偶然はないですよ。これは何年計画ですか?」
「そう言われても偶然なんだから仕方ない。ネビー君は棚からぼた餅だ。腐ったりカビが生えないように俺と師匠とロイで育てる」
「棚からぼた餅というよりも一挙両得では?」
いつの間にかテルルがいて俺達にお茶と少し歪な形の茶色い棒が乗った小皿を配ってくれた。
「こちらは自家製のキャラメルです」
「ありがとうございます。最近流行りのキャラメルを自家製ですか。こちらもかめ屋で教わったのですか?」
「いえ、娘が友人から教わりました」
失礼します、とテルル撤収。義母が嫁を娘と呼ぶのはあまり聞かないから驚いた。
人見知りで大人しいのに流行りはじめのお菓子をもう作れる人物と友人にしているという、人付き合いは得意な女性。
家族の為に卿家の跡取り息子と政略結婚したようだけど、ガイとテルルの口ぶりだとロイがリルを望んだ結果おまけがかなり使えそうなネビー。
情報がチグハグで上手く繋がらなくてやはり謎。
「いただきます」
甘いものを好まない息子のロイはお茶だけ飲んでいる。
家で作れるのなら作り方を聞いたら妻や娘が喜ぶな、と考えながら一度しか口にしていない既製品のキャラメルよりも柔らかくて溶けるなと味わう。
「ロイ。ヒヨン君と書斎に行くからタビス君が出てきたら例の件をよろしく頼む」
「はい」
「ネビー君、風呂から出たら呼びに来てくれ」
「はい」
ガイと移動して書斎の机の前に向かい合って腰を下ろした。もう、小さな台に書類が積んであるからここへ俺を呼ぶことは決まっていたということ。
「ヒヨン君」
「はい」
背筋はもう伸ばしているけど真剣な眼差しにさらに背筋がグッと伸びた。
「先程言うた通り手を組みたい。仕事の後押しになることを頼むし、このようにたまに美味い食事をご馳走する」
「他にも何かあるんですか?」
「いつ死んでもおかしくない年だから君を次男を育てる計画の後継人にしたい。なのであれこれ頼むし俺が死んだら計画書のようなことをして欲しい。我が家に恩を売っておくと得だと自信がある」
「彼を本気で総官へ、ということですか」
「総官は大きく言いたいだけで、どちらかというと師匠さんの願いだ。といっても彼もそこまでではない。師匠さんも俺も番隊長はかなり狙っている。長男は最等裁判官は尻叩きとして裁判官にはなるだろう。本人の目標だしロイは努力家でいつも結果を出している」
裁判官と番隊長候補の組み合わせだけで仕事でも家にも使える駒だろう? とガイの顔に書いてある。
「同期や親しい同僚ではなくて後輩の自分を選んだのは年齢ですね。それで俺の予備はタビス君ですか? 教え方がかなり丁寧で、しかも変わりダネも教えていますよね」
「年齢と信頼と聡明さだ。年齢と聡明さ、まではいるけど信頼は中々難しい。タビス君はまだそこまでの判断はつかない」
これまでの仕事で褒められたどの言葉よりもこの提案が嬉しいのは、俺は本当にガイという上司が好きだからだな。
「そのようにありがとうございます」
「ネビー君の経歴書その他に計画書だ。先程の件は俺が教えたから、ではなくて君がなにかで見つけて調べたら俺の息子になっていたから頼んだ。そういう風に根回ししてくれ。バレバレでも裏付けがあればそっちが表になる」
「拝見させていただきます」
「いや、持ち帰って読んでくれて。自作の極秘資料だけど凝り過ぎて多くなって写すのに疲れた。家に保管して他の人には見せないように。横取りはもう無理だけど妻が彼の縁談は私が、と言っているからあまり広めたくない。浮かれて自慢して怒られた」
ガイは書類を風呂敷に包むと俺へ差し出した。
「使えそうな次男で家をさらに盤石にってことですか」
「料理と同じく見栄っ張りだから華族のお嬢様が欲しいんだろう。長男で失敗したから次男で再挑戦。俺の息子ではないから本人が良くて向こうの親が納得すればなんでもええ」
やる気がないとこういう顔をするのでガイは次男については仕事関係の事でしか興味がないってこと。
「なんでもは良くない。リルさんみたいに釣り好きがええなぁ。将棋は教えるからええけど最初から出来たら嬉しい。でも家のことは妻に任せないと疲れる」
「お嫁さんは釣り好きなんですか」
「去年の秋に一緒にこんなに大きな黒鯛を釣ったんだ! 鮭釣りも行ったし冬にはタコとかヒシカニが大漁でそろそろまた海釣りに行こうという話をしている」
ニコニコ嬉しそうなのでリルを気に入って嫁に迎えたのはガイで息子はそこまでっぽい。
(兄の為、家族の為って言われて嫁いでテルルさんには厳しくされてそうでロイ君には興味を持たれていなそうでガイさんはこれ。良いのか? 悪いのか?)
ロイがリルを見染めた、という感じが二人からしないからどうしても偶然とか棚からぼた餅結婚とは思えない。
「ロイ君とお嫁さんにも共通の趣味はあるんですか?」
「あの二人は何をしても楽しそうだ」
「息子さん夫婦は親しくしているんですね」
「デレデレする息子を見るのは痒いからやめて欲しいけど自分の親もそうだったんだろうな、と。別に何かしている訳でないのにダダ漏れっていうか。ヒヨン君にも息子がいるからそのうち分かる」
「ロイ君とお嫁さんにそういう雰囲気はないけどそうなんですね」
「最速出世したら夫婦旅行を贈ると言ったら猛勉強をして、お前は普段からこのくらいしろと思った。いつもいつも剣術以外はのらくら平均狙いの面倒くさがりで。次も嫁で釣るつもりだ」
容姿はそんなに似ていないけどロイの中身はガイに似ていそう。
嫁が餌になるならロイが話した縁とネビーは棚からぼた餅というのは本当なのだろう。
「次の話なんだがタビス君の件だ」
「はい」
ここからしばらくはタビスの話になり浴衣姿になったネビーが風呂をどうぞと伝えに来たのでその前に彼の仕事話になって、終わったら風呂。最後の方なのにお湯が綺麗だなとぼんやり。
(あっ。もしかして俺で仕切り直してくれた? お湯の量も多いから掃除して不足分を汲んでくれたとか。ロイ君、タビス君、ネビーさんで俺っていう変な順なのはそれか?)
そうなると一番風呂は嫁達のどちらかで俺にもなる。そうでないと説明がつかない。
湯上がりは居間と言われていたのでそうしたらロイとネビーは不在でリルとタビスが将棋の二面打ちをしていてガイは近くで酒を飲んでいた。
「ヒヨン君、好きに楽にしていてくれ。酒を飲むならそこのお膳は君のだ」
「ありがとうございます」
新しいお膳に徳利とお猪口、昆布が乗った皿が置いてある。
「リルさん。ヒヨン君は囲碁派だけど将棋もそれなりだから悩んだら助言を頼むとええ」
「はい」
居間に客二人と嫁を残すとは少々可哀想な気がする。謎嫁リルと話してみたい気がするので飲みたいけどお酒は無視して二人の横に腰を下ろした。
「お嫁さんは将棋が得意なのですか?」
「いえ。練習中です」
「始めて半年くらいだそうですけどそうは思えないです。ここまで駒落ちにしなくても、という感じです」
「タビス君が負けそうな勢いじゃないか」
「言い訳しますけど駒落ちに加えて君は自分の手番時間は十秒って縛られているんで」
「ははっ。それは厳しい戦いだ」
謎嫁の謎は本人に問えば解けるだろうからこれは好機だ。
「お嫁さんはロイ君に見染められたとうかがいました。お二人はどのような始まりだったのですか?」
「旦那様は結婚お申し込みをしてくれました」
「あの、始まりです」
「はい。お義父さんと旦那様が我が家に来ました」
きっかけですって、ロイは文通を申し込んだとかそんな言い方だったのにこれだと殴り込み結婚お申し込みということになる。
「殴り込み結婚お申し込みをされた、ということですか?」
「はい」
「お兄さんと知人なのに根回しせずにですか」
「旦那様は兄に話しかけづらかったからです」
「お二人は親しそうですけどそうだったんですか」
「急に仲良しです」
「そういえばお二人はどちらへ?」
「二階です。兄が旦那様に勉強を教わっています」
「兄弟門下生が妹に殴り込み結婚お申し込みだなんてお兄さんはさぞ驚いたのでは?」
「はい。寝耳に水です」
「自然と仲人はお兄さんになりそうですね」
「仲人はデオン先生ということになっています。あっ、仲人です」
嘘をつくように言われているようだけどこれは下手過ぎる。
「お嫁さんはロイ君のどんなところを気に入って結婚しようと思ったんですか?」
「評判の悪い私をうんと欲しいと言うてくれました。ルーベル家の嫁の仕事をしてもらうのにピッタリと言われました」
「へぇ。評判が悪いような方には見えません。ご謙遜を」
「話すのが苦手で諦めて話さなかったです。ぬぼーっとして何を考えているか分からないのっぺり凡々顔の私よりも明るく元気な美人の妹の元服待ちです。そうでない方もいてくれました」
自己卑下、という感じはなくて自分のことをこのように客観的に淡々と語ったという感じ。
「両親がお願いしますと頭を下げたし兄が昔から知っていてうんと人柄がええと言うたので安心です」
これまでほぼ話さなかったけど喋る時は喋るようだ。
「それで実際そうでした? 自分はロイ君のことはそんなに知らないですけどガイさんの息子さんなのできっと好青年でしょう」
「旦那様はすこぶる優しいです」
本日、リルは初めて満面の笑みを浮かべた。これだけで答え合わせというか、リルはどういう思惑があってもこの結婚やこの家の嫁で幸せだと伝わってくる。
「お義父さんもお義母さんもすこぶる優しくて楽しいです。家を離れたら家族の話も色々知って親心も知りました」
「改めてご結婚おめでとうございます」
「ありがとうございます」
ガイが出てきた後は二人でリルとタビスの勝負を肴にして晩酌をして勝負の終わりを合図に離れへ案内されて寝支度をして就寝。
気になるので持ち帰る予定のネビーの資料を読んで苗字が無かったので彼は平家だと発覚。
(卿家に区立女学校卒とは大胆というかなんというか。いや、六人兄妹って長男のこの教育費にさらにって可能なのか? 仕事用の資料だからこれだと全然分からないな)
ロイがリルを発見して親しくなってと言っていたので、密通していたのではないだろうか。
棚からぼた餅や一挙両得と言っていたからロイがある程度調べて父親に頭を下げて、ガイが細かく調べなら万々歳という可能性。
縁の有無というけれどこういうものを縁があるというのだろう。
☆★
数年後、娘に付きまといが現れてどうしたものかとガイに相談したら二人の息子があっさり解決してくれた。
娘は一時避難でルーベル家でお世話になり、その時に娘はリルと彼女の妹と親しくなり、帰ってきてからは文通をしていて楽しそう。
妻は最近、ヒヨンさん家の娘さんは情報通ですねと近所さんに言われるそうだ。
ガイがかつて俺に告げた我が家に恩を売っておくと得だと自信がある、というあの発言はどこからどこまでが計算なんだか。
俺は未だにロイとリルの結婚経緯や馴れ初めを信じていない。
しかし次男の結納話の際に、隣に引っ越してきた家出人がそれなりの琴門のお嬢さんで奉巫女になったと聞いた時にこれまで聞いたことは全部本当な気もしてくる。
俺とガイは単に仕事で同じ部署になって先輩後輩として少し親しくなったところから始まった。
なのにその人の息子達が娘を助けてくれたりするなど人と人の縁とはとても不思議だ。
 




