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お見合い結婚しました【本編完結済】  作者: あやぺん
日常編

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日常編「幼馴染3」

 ルゥスのお嫁さんのロミも増えて、その後は夜明け屋という酒屋と漬物屋に寄って、さらに雅屋というお菓子屋にも寄って、私達はようやく実家へ向かうことになって到着。私は皆に囲まれて周りがよく見えない。


「こんにちは! イオです。ネビーいますか?」

「あら、こんにちは。ネビーなら夜勤前にデオン先生の補佐仕事って午前中から道場へ行ったよ。多分そろそろ帰ってくる」

「それは気が合います。リルちゃんと会ったんで話していたら人が増えてこんな感じです。リルちゃんの簡単な結婚祝いをしようかなって。ネビーにはおめでとうって言うて宴会をしたけど本人にしていなかったなって」

「それはありがとう。あら、いたのリル。ちんまりしてるから囲まれて気がつかなかった」

「うん。用があってここに向かっていたらこうなった」


 前に出たら母は合間机でルル達とたけのこの皮を剥いていた。


「姉ちゃんお帰りなさい!」

「お母さん! 姉ちゃんが遊びに来てくれたから遊んでええ?」

「リル姉ちゃん!」


 ロカが飛びついてきたので抱っこしたらルルとレイには両裾を握られかけて母の「汚れた手で綺麗な着物を触らない!」という雷が落下。


「ロカも降りて手を洗いなさい! いきなり人に飛びつかない!」

「ロカの手はきれいだよ」

「洗ってない手がきれいな訳がないでしょう! レイ、ルルとロカに教えながら繕い物をしてきなさい。全員作法がなってないからリルと遊ぶのは禁止。そういう約束をしてるわよね。行きなさい」


 母は立ち上がってロカを私から引き離して嫌だとゴネ始めたルルとレイを叱りながら部屋へ連行開始。


(ルカと私はこうして育った……)


 私は叱るのが苦手で、ルル達の甘ったれたところは私が甘やかしたことも原因の一つなのでいつかお母さんになる時の為に観察。


「繕い物がしっかり出来ていたらリルと遊んでええ。早くてもダメだからね。騒ぐなら夕食抜きでリルとも遊ばせない」


 母はルル達を部屋に押し入れると戻ってきた。


「お祝いしてくれるっていうんだから祝ってもらいなさい。あの子達とは帰る前に少し話してくれたらええ。よく来たね」

「うん。たけのこ堀りに行ったの?」


 ご近所さん達と合同でたけのこのアク抜きをして冷めたから皮剥きに見える。去年は私が母の位置にいた。

 イオ達は「俺らも皮剥きします。代わりに空いているところで軽い宴会をさせて下さい」とご近所さんに話しかけている。


「いいよ、いいよ。そっちの空いてるところを使って! リル、今朝ネビーとジンがルル達とたけのこ掘りに行った。この間の雨でやたら出てきたしそろそろ我が家の番って。アク抜きし終わったらルーベルさん家に持っていこうと思ってた。あんたつまみ食いする程好きでしょう」

「もうつまみ食いしない。ありがとう」

「家のことはしっかりしてきたの? 勝手に来てないわよね」

「うん」

「じゃあ、私はたけのこの皮剥きをするからゆっくりしていきな。皆で食べられるように後でたけのこを焼いて持ってく」


 待ってと言っても去ろうとした母の袖を掴んだ。


「何? シワになるからそういう風に掴むなって前から言うているでしょう?」

「はい。でもお母さんはせっかち。待ってって言うた」

「そうなの? あんたの声が小さいからでしょう。でも私もせっかちだからどっちもどっちか。今みたいに大きな声を出しなさい。出せるんじゃない。待ってって言うたって言い返せるようになったわね。何?」


 ここへ来て母に会うと息を吸うように怒られるから懐かしい。でも少し言い方が変化した気がする。


「またすぐたけのこ掘りは難しい? お義父さんの同僚が金曜に来るから採れたてを使っておもてなししたい」

「金曜の朝ってこと。そんなのむしろ大旦那さんに頭を下げて期間が短いけど我が家の順番を早めて下さいって言う。菓子折りを持ってロイさんにお誕生日おめでとうございますは財布的に難しいし、向こうからも断られたから代わりにたけのこと山菜って思ってた。それは嬉しいから是非ってロイさんに言われたってネビーに聞いた」


 そうなんだ。


「アク抜きがあるから木曜の午後に掘りに行きたい。ルル達と一緒にでもええよ。ただ、三人と私だけは疲れる」


 母は「ちょっ待ってて」と部屋へ行って戻ってきて「夜勤明けだったから本人がええって言うならネビーに頼むわ。仕事と妹の世話の気が済まないと縁談は何もしないってうるさいから好きにさせることにした。とにかく働きたいから家事は丸投げで脛をかじるって言う」とため息を吐いた。


「そうなんだ」

「空き部屋が出たけどまだ一人部屋は要らないって言うし困った息子だよ。だから学費のこととか言いたくなかったのに。でもルーベルさんが必要な事って言うしデオン先生にそこら辺をそろそろ色々話して成長させたいって説得されて」

「兄ちゃん、親戚会の時に私にごめんって言うた」


 その時、二人で話があると言われて話をされてしんみりしてしまった。ルカも呼び出されて似たようなことを言われたらしい。

 

「まあ、ルル達は嬉しそう。特にロカ。キエさん達が引っ越したからそこにネビーは一人部屋って私達の話をチラッて聞いただけで嫌々泣いちゃって。だいぶ戻ってきたけどまだ甘えん坊。家から人が減るっていうのが怖いみたいでネビーの夜勤前もぐずってる」

「そっか。私、兄ちゃんに迷惑をかけてるね」

「兄妹は全員足の引っ張り合いよ。代わりに仲が良ければ頼りにもなる。迷惑をかけられたいだろうからあれこれしてって頼むとええ。気が済んで自分の事を考えるから。だからそのたけのこ堀りはネビーに頼むことにする」

「うん。分かった」


 私が頼み事をした結果ネビーは自分の事を考えるようになるって複雑。

 目の前の家事に夢中で母親業について考えたことなんてなかったので子持ちになるまでに母も私の周りにいる母親という仕事をしている人達の考え方も知っていきたい。


「私もお父さんもネビーの為だけにあんたの教育方針を決めた訳じゃないのに視野が狭い息子。リルは家守りをしっかり出来るのが一番向いていると思ったからそう育てた」

「うん。厳しく言われて悪いところも沢山直されたから今は褒められる」

「色々足りなくて悪かったと思うところはあるからルル達にもその時その時の精一杯を与えてあげたい。自分の生活の足を引っ張らないなら構ってあげて欲しい。こっちに頼み事を色々言うてええからね。ただ、出来ない事は出来ないって言うから」

「それなら頼みがある」

「何かしら」


 私はイオが持ってくれていた荷物を探して母のところへ戻ってオーロラから預かったお金と少し壊れたザルを母に渡して事情を説明。


「このくらいなら私でも内職用の材料で直せるから直しとく。お金は多過ぎるから返してニ銅貨をあんたが貰って」

「分かった」

「いや。私が直して父親の腕がイマイチって思われたら困るからこれを我が家用にしてルカが最近作ったザルを渡して。似たようなものと交換ってこと。あれの方がこれよりも物がええ」


 それで良いと思えないと思ったけど母が持ってきたザルとオーロラに渡された物を見比べて母の言う通りだし言われた通りにすることにした。

 お祝いしてもらえて良いわね、行ってらっしゃいと促されたので私は母から離れてイオ達と合流。

 イオにリルちゃんは主役だから、と言われてメグとロミの間に挟まれる席になった。

 彼らが家から持って来てくれた食器や徳利に買ってきた物などはもう準備済みでイオの挨拶で皆で乾杯。


「リルちゃんの嫁ぎ先の家の大工って決まってる? 俺らは腕がええから呼んでくれ。親方はネビー割りをするからリルちゃんもそうなると思う」


 ネビー割りって何かと聞きたかったけどルゥスが先に口を開いたので会話に入れず。


「宣伝するなよ。それなら俺も宣伝しよう。俺が作る豆腐が一番美味いから店にきたら指名して買って欲しい」

「お前の豆腐は美味いぞルゥス! ハ組の豆腐はお前のじゃないと嫌だからそこそこ偉くなって贔屓(ひいき)出来るように待ってろ。店からの給与があがるぜ」

「大工は義父母に聞いておきます。どこの豆腐屋か知りたいです」


 場所を確認したら我が家からはやはり遠めだったので棒手売りはどのあたりまで来ているか確認したら分からないそうで確認しておくと言われた。

 メグとロミと彩り繁華街について私が知っている情報を話していたらネビーが帰ってきた。


「よう、ネビー! 待ってた! 俺はお前に話があって来たんだ」

「イオがお前がいたら一緒に飲むって言うから俺とルゥスも来た。なんかイオがリルちゃんと一緒でリルちゃんは情報通だから嫁も呼んでこんな。お前にお祝いはしたけどリルちゃん本人に結婚祝いをしてなかったから簡単な持ち寄り宴会中」

「それはありがとう。良かったなリル。結婚祝いっていうかもはや誕生日祝いだな」

「リルちゃんって、今日誕生日なのか? それで実家に来るところだった?」

「いや、リルの誕生日は月末。前後に家族で集まって喋ろうって話はしてるけど今日は関係ない。ずれてくれガント。イオ、話ってなんだ?」


 ネビーは荷物を空いている合間椅子に置いてから私の前の席に腰を下ろした。私が使った手拭きを渡す。


「全然話してくれないんだけど。今日も本を読んでて俺の話は無視。海辺物語っていう題名なのは分かった。火消しっぽくない服で来たけどどうって聞いたのにそうですか、で終わり。ここから俺はどうすればええ?」

「それならその本を買うか図書館で借りて写本屋で写本してもらえ。それで読め。読んだら話題になるだろう。火消しっぽくないって髪がまさにチャラそうじゃねぇか。短くした上で多少格好つけろ」


 イオはネビーにらぶゆ話をするようだ。気になる話題なので耳を傾ける。


「なんだイオ。新しい女か? 珍しいっていうか初めてだな。自分に興味のない女を気にかけるって」

「まぁな。恋人にしたい女を見つけた。だけどこう、俺と世界が違そうっていうか多分違う。火消しのようなにぎやかな方は苦手なので気の合う方と過ごして下さいって門前払い状態」

「だから俺が散々言うてきたんだ。火消しは火で遊ぶものなんて言うて遊んでいるといざって時に潔癖系のかわゆい女に相手にされないぞって。自業自得だ自業自得」

「ネビー君もっと言え。この人も目を離すとイオさん達と遊ぼうとするからネビー君が居ないなら夜遊び禁止って言うてるの」

「そんな新婚早々何もしないって」

「新婚じゃなくなったら何をする気なのよ。悪さをしたら実家に帰るからね」

「メグさん、ガントは今のところ惚気てばかりなんで大丈夫。イオ達が強めに誘わなければ。ロミさん、ルゥスが女にバカな時は俺が説教をするんで母に伝言して下さい。こいつ、モテない癖にかわゆいお嫁さんをもらえて勘違いしてるんで」

「あはは。ぜひ」

「このやろうネビー。何もしていないのに仲を邪魔するようなことを言うんじゃねぇ」

「うるせぇネビー。お嬢さん狙いなら練習だと思って俺に協力しろ。髪を短くしてってどのくらいだ。あっ。でも俺は顔がええからどの髪型も似合うからええか。切ろう。誰か切って。不器用ネビー以外な」

「どの髪型も似合うって自惚れ発言をしたから不器用ネビーに切らせようぜ」

「えー。髭剃りみたいになら出来そうだから……坊主か? イオの坊主を見たい人!」


 私だけ会話に入れない。ネビーの掛け声で男性陣は全員挙手。


「イオさんは目の保養だから坊主なんてやめてよ」

「そうそう。ネビー君はガント君を坊主にして。既婚者はモテなくてええもの」

「あっ! 役人さん! リルちゃんの旦那さんは役人さんだから火消しっぽくない髪型かつ流行りも分かる?」

「そうだイオ。リルの旦那のロイさんにお前から預かった予算でええものを買ってきてもらったから渡す。あっ、ロイさんにお礼の酒があるから持って帰ってくれリル。イオ、リル、持ってくるから待ってろ」


 リル、と呼ばれたので「うん」と言えたから大人数でも会話をする練習! と私は少し大きめの声で間をあけないように続けた。


「兄ちゃん、木曜は夜勤明けって聞いたけど午後にたけのこ堀りに行くのは難しい?」


 立ち上がりかけていたネビーは着席した。


「たけのこ掘りに行きたいのか? リルはたけのこ好きだもんな。でも母ちゃんがあそこで皮剥きしているたけのこはルーベル家の分もあるぞ。今朝、堀りに行った」

「うん。聞いた。ありがとう。あのね、金曜にお義父さんの同僚が来るから採れたてでおもてなししたい。堀りに行ってええかお母さんがひくらしに頼んでくれるって」


 早めに喋ることを意識。


「それなら当日の朝に掘りに行って届けるぜ」

「それだとルル達と会えない。私と三人だと疲れる」

「ああ、そういうこと。もちろんええ。確かにあいつらと三対一は疲れる。俺ならええけど大人しいリルだと手は二本しかないから一人がどっか行くからな」

「兄ちゃんも手は二本だよ」

「俺は二人まとめて持ったり出来るから。母ちゃんも出来るか。木曜の午後、好きな時に手ぶらでこい」

「ありがとう」

「じゃあちょっと待ってろ」


 ネビーは立ち上がって荷物を持って我が家の部屋の方へ向かった。


「あの、イオさん!」


 質問されていたので頑張ってイオ達の会話の隙間に入った。


「ん? 何?」

「髪型です。旦那様の友人は半結納した女性とのお出掛けでここで分けて、こう、おでこを出していました。兄の倍くらいの長さです」

「おー! 役人さんの友人がしてた髪型ってええな」

「トランプを貸します。静かに遊べます」

「トランプ? トランプって何?」

「西の国の遊び札です」

「えっ、西の国? なんかすごく貴重なものの気がするんだけどリルちゃんはそんなものを持っているのか?」

「一区で売っています。商品の宣伝を頼まれた旦那様が私に贈ってくれました。妹達と遊ぶのに持ってきたからどうぞ。使う日があるから今月中に兄に返して欲しいです」


 私は横に置いてある手提げからトランプ入れを出した。誰も知らなかったので札を並べて見せたらネビーが戻ってきた。


「あっ。トランプだ。イオ、ロイさんが選んでくれたのはこれ。理由とかの手紙も書いてくれた」

「手紙もってすこぶる親切だな」


 私が勘違いしたかわゆい器の紅はイオがネビーに頼んでロイが買ったってことがここで判明。

 恋文と一緒にあった小さな木箱が気になりすぎて中身を見た私はさらに激怒したというあの紅。

 ロイは「ネビーさんが一番親しい友人の為にお願いしますと頼んだ」と言っていたのでネビーの中で一番親しい友人はイオってこと。

 ネビーには友人が沢山いて誰とも親しげだし誰が一番なんて言わないので知らなかった。


「まっ、持ちつ持たれつ。俺はロイさんに掛かり稽古を優先して欲しいって頼まれているし、昔から憧れだった火消しと話してみたい、今度紹介して下さいって言われた。つまりイオ、この礼に俺とロイさんに奢れ」

「これが役に立ったらな」

「役に立たなかったら渡す人間のせいだ。リル、これはロイさんにお礼の酒」


 ネビーは私にお酒の大徳利を差し出したので受け取る。


「それで何? これからトランプをするのか?」

「リルちゃんが静かに遊べるから口説くのにどうぞ、貸してくれるって言うた。一区で売ってるとか、西の国のものなんて失くしたら怖いから断ろうかと」

「ルル達に買おうと思ったけど値段を聞いたら高かった。でもお前の貯金ならそんなに痛くなさそう。確か十銀貨。西の国で作ったものじゃなくて真似してあんまり高くなり過ぎないように作ったものだからってロイさんから聞いた」


 高いものな気はしていたけど高い。でも大勢と一生遊べるから高いけど安……くはない。高い。


「思ったよりだったからリルちゃんに借りよう。失くしたり壊したら弁償する」

「口説くのに使うなら……ジョーカー抜きとか神経衰弱か? どう思うリル。ロイさんと二人でしたりするのか?」

「うん。ジョーカー抜きゲームが多い。勝ち負けで小さいお願い事をしたりする」


 ジョーカー抜きゲームをイオに教えよう、ということで皆に教えて、ネビーがルル達も混ぜたいと言って了承してもらえたのでルル達も呼んでゲーム開始。

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