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お見合い結婚しました【本編完結済】  作者: あやぺん
日常編

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未来編「因果は巡る糸車9」

 これはきっと1週間は短くてあっという間なのに人によっては長いという話。


「ウィオラさんも譲った。ウィオラさんなんて最初は全部だよ。家に帰れるようになったのに兄ちゃんを取った」

「2人は半分こしたね」

「半年ずつとか1年ずつは半分なのかな。兄ちゃんは出世街道終了。余所者扱いの場所で仕事。区民の信頼もゼロから積み上げ直し。一度も実家から離れた事がない。家族親戚友人は半分だね」

「ウィオラさんも色々なくなるよ」

「皇女様みたいな家でお嬢様生活。才能を生かして家業で花という未来。家族親戚友人。でもさ。家出した時点で全部捨ててる。ウィオラさんが望んだのは帰れるようになったから家族で過ごすって事。それだけ。望んだというか兄ちゃんが察しただけど」


 そうか。ウィオラは自分で一回全て捨てている。家業と門下生を背負って言われた通り破門隠居。母親の実家だと意味が薄くなるし腹も立つから海がある南地区に家出した。

 実家に戻せない事情があるから家族は帰ってくるなと言われていて5年も帰れず。見張りはいたけど何も知らないウィオラとしては自力生活。


「でも捨てたくて捨てた訳じゃないよ。自分の為じゃない」

「そうなの。家業や門下生を背負って地位も名誉も財産も家族友人も全部捨てた人がさ、全部取り戻せるのに兄ちゃんと南地区を希望だよ」


 問題解決をしたのは義父とネビーでムーシクス家に大感謝されている。

 ジュリーは持っていて背中に荷物が沢山あったけどその時のウィオラはとても身軽。逆にネビーは沢山持っている。


「待てないなら全部捨てて自分を信じて大貧乏に飛び込んで欲しいと思った事のある兄ちゃんにまた似た人が登場。しかもこの人は今回は持っている人じゃない。何も悪くないのに全部捨てさせられた人」

「つまり捨ててくれじゃなくて持たないでくれになるね。それで昔と違って今の兄ちゃんなら皇女様みたいなお嬢様暮らしは出来なくてもそれなりに色々与えられる」

「でも兄ちゃんはすんなりそのままありがとう。なるべく家に帰れるようにするとは言わなかったね」


 ルルは完全にうどん踏みをやめてプクイカを眺めている。複雑そうな表情だ。


「日曜に何か参考になるかなって考えていたらこんな話。水曜は兄ちゃんの過去。日曜は2人の事。今の兄ちゃんならそれなりの家や地位や名声を与えられる。皇女様みたいには戻れなくてもそこそこになるよね」

「うん、そうだね」

「でもウィオラさんはそれは望んでない人だよ。兄ちゃんが与えられるものは与えてもらわなくてええもの。不要とは言わなくても望んでない。望んだのは家族だけ。兄ちゃんは何も譲ってない事になる。半々って難しい」

「ああ。成り上がって地位を確立させて稼いだのに無意味だ。背中を向けるか自分が捨てるか相手に捨てさせるっていう選択がまた登場したってことだ」

「そうなの。水曜に私の中で話が合流した」


 身分格差はあまりなくなってもロメルとジュリー。しかも家同士の問題のせいではなくて相手に与えるか与えないかという問題だ。

 今回のネビーは誰かのせいに出来ない。何かのせいに出来ない。

 捨てさせられて何も持っていない人が欲しいと思った1つの物を自分が身を切って与えるか与えないか、どうするのかと突きつけられたって事になる。

 縁結びの副神様が嘲笑ってそう。縁結びの副神様は意地悪だから。


「私は捨てさせられて何も持たなくなった人が1つだけ欲しいと思ったものを持つなとは言えないな。言いたくない。凄く嫌。沢山持っている自分が渡す」

「大切な程そうだよ。それで日曜に試しに兄ちゃんに聞いたの。過去の話はまだ思いついてない時ね。なんですんなりありがとうじゃなかったのって。あの時の私はウィオラさんが捨てる物と兄ちゃんの捨てる物の差が激しくて兄ちゃんの方が負担だって気がつかなかったって」


 ネビーの方が負担という視点にしてみて質問したのか。これに対してネビーはなんて答えたんだろう。


「今私が言ったみたいな話だった? それともまた違う視点だった?」

「違った。出世街道って俺は広い地域で教育者がええって」

「えっ?」

「余所者の話も地区本部に警兵や各種訓練に海辺街や私兵派遣とか色々経験してる。特になにもだって」

「そうなのか。そっか」

「友人は歩いていたら出来る。金も持っていける。捨てるって家族親戚友人関係は帰ってくるから捨てる訳じゃない」

「兄ちゃん視点だと譲ってないってこと」

「そうなの。全然譲ってないの。俺の息子は南地区でも東地区でも活躍してるってガイさんも喜ぶ。自力でそれなりになったから東地区でもまたそうなる自信があるって」

「そう言われたらそうだね」

「ウィオラさんと同じで家族と過ごしたいって事くらいだろう。俺が譲ったのはって。同じだって」


 さんざんルルと考察したのに全く違う答えや考えだった。やはり推測って当たらない。


「そこでさ、もうこの家族は嫌で寂しくて実家に帰る。一緒に東地区で暮らしてってウィオラさんが言うたらどうするって聞いてみた」

「彼女は短期しか帰れないのにその質問をしてどうするの」

「家族に恩は返したし思い出も沢山ある。一緒に東地区に行って間を取り持つしかない。帰れるのに寄り添ってくれているからお前らイビるなよ。仲良くしてくれてありがとうって言われた。帰る方法はあるんだって。いざって時とか里帰り出産とか気になるからコソッと調べたって」


 意外。ルルとティエンの話で気になったのが防犯面だったりネビーは色々意外。


「コソッてことは言われてないってこと?」

「そう。チラッて探ったら必要がないから調べてなかったけど調べた方が良いですか? だって」

「それで?」

「まあ色々話したって。連絡日記もしてるよね。兄ちゃんの友人達がお嫁様って呼ぶのはその通り。なんかもうとっくにお嫁さんだよ」

「連絡日記?」

「ああ、知らないんだ。ネビー、ルカ、ジンでしてる連絡日記の真似だって。上3人がそんな事をしていたのも知らなかった」

「私も今知った」


 東地区に帰れるなら最初の2人の結納条件の東地区と南地区に交互に暮らしてみるという案を試せるということになる。長期出張禁止のネビーが短期間滞在になるけど。

 話し合いをした結果今の暮らしがお互いに半分こってこと。私達は半分ですとか、半分ずつとよく言っている。


「ムカつく! 私達の兄ちゃんだったのになんなの! ポッと出なのに! もう兄ちゃんは何も背負ってないんだよ! いや励んだから背負ってあちこちに行けるの! それは嬉しいけど悔しい! 1年もしないで家族親戚友人師匠同僚全員がたった1人に負けたんだよ!」

「まあまあ。こういう事は勝ち負けではないでしょう?」


 義母の私へのイライラはこういう事だと思っている。手塩にかけて大事に育てた息子をポッと出の女性に取られたから。


「でも違った。このイライラは見当違い。木曜にチラッとウィオラさんに聞いてみたの。兄ちゃんとは違って唯一望んだ家族との生活をたった6日でどうして捨てるって決められたんですかって」

「ウィオラさんはなんて言ってた?」

「その時は深く考えずに頭を下げたけど、少しして分かったって。皆さんは最初から歓迎してくれましたねって。素性が分からない嘘つきかもしれない人を単にネビーさんが気に入ったというだけでって」


 私達!

 ネビーの話が出てきた訳じゃないんだ。


「私達?」

「私が結納宴席で言ったって。私は酔って覚えてない。家族親戚一同、同じ気持ちを抱けるから家族が増えます。1年後にそうなりましょう。父親が3人になる。姉妹は7人みたいに言ったって」

「へえ、それは良い酔い方をしたね」


 兄バカでぶーぶー文句を言った、ではなくて良かった。結納お申し込みについて行ったのはルルとレイだ。


「捨てたり捨てさせたようで我が家は遠く離れてもずっと家族でしたって。私とネビーさんはお互い1番大事なのは家族だから増えたら更に幸せになれます。今はその途中です。仲良くしてくれて嬉しいですって言われた」

「ウィオラさんはそんな風に言ってくれたんだね」

「話し合いを色々してる2人だからこういう話をしてるはずだよ。酔って私が言った時にも何かあったと思う。兄ちゃんは絶対に嬉しかったよ。だからきっと今の最初の約束が守れていない状況でも自分の為に捨てさせたなんて思わない。思ってない。もし思ってもウィオラさんがまた違うって言う」

「それならルルのおかげだね。きっかけを作ったって事だよ」

「兄ちゃんが東地区に行くのも同じで家族を増やしに行くってこと。そこに私達の幸せもあるって。だからしれっとしてるんだって分かった。私達は負けじゃなくて勝ちかも。自分が酔って言ったのに1年近く分からなかった」


 今後ルルはウィオラとネビー争いをしなくなるかな。争っているのはルル、レイ、ロカだけでウィオラはどうぞって譲っているので1人相撲。たまに3人相撲。

 愚痴を言われる私とルカが疲れる話。しかも争いの内容が自分達の扱いが皇女様風ではなくて雑とか東地区と南地区は関係ない時もある。


「1粒で2度美味しいだ。半分こは減るんじゃなくて倍楽しめる。そうか。知っている事なのに気がつかなかった」

「うん。お互い捨てないしむしろ幸せを増やそうって。そんなの嬉しいよ! そうやって前向きに考えたらええなって思える。それでさ、兄ちゃんの過去について思い至った後だったから。あれ? って思った」

「あれって何を思ったの?」

「今度は譲れる人だ。自分はこの女性が大事なんだなってきっと感じたと思う。なのに全部は譲れない。痛み分け。ごめんって思ったかもしれない。兄ちゃんは優しいもん。痛み分けでもきっと傷つく。大切な人の事だからなおさら。なのに倍の幸せが待っていますねって返事だよ!」


 ルルの妄想した過去のネビーがいなくても嬉しい話だけど悲恋があるとまた違う。

 比較して今度はうんと大切な人だとか、それでも譲れないとか、大事な人に捨てさせるのかと色々考えたのに全く別の嬉しい解答が飛び出てきたら余計に嬉しくなる。


「兄ちゃんは実際に幸せで楽しそう。我が家に馴染んでくれて兄ちゃんも向こうに行った時は楽しいみたいだし」


 2人が結納後からどんどん仲良くなっていったように見えるのは単に結納して交流を重ねたからだけじゃなくて根っこにこういう信頼関係や絆の土台があるからか。

 この土台は2人だけでは作れない。だからウィオラは私達の話をしてくれたのだろう。


「そうか。もしも本当に傷ついた過去があるならその答えは嬉しいね。相手にさせたくない嫌な事をしなくて済んで自分も大事なものを捨てないから」

「そうなの。それでさ。私の今も同じだったんだよ。帰る家が二つなの。私は楽しいし幸せでしかも間に立っているから両家の架け橋じゃん。私はもう知っていたんだって思った。そうしたら姉ちゃんがさっき家が三つになるって言ってくれた!」

「えっ? 私はこんなに深く考えた訳じゃないよ」

「そこがええんだよ。姉ちゃんのええところ。ウィオラさんも多分同じで深く考えてなさそう。欲が少なくて根っこが前向きで人を嬉しくさせる言葉をポンって言える。苦労した分重みがある。ほっこり癒し系に癒されるからロイさんも兄ちゃんもデレデレ」


 ルルに褒められるとはびっくり。ほっこり癒し系はたびたび言われているけど違う理由でそう言っていると思っていた。


「あ、ありがとう。ルルはそう思ってくれてたんだ」

「うん。だから私はリル姉ちゃんにひっつき気味。兄ちゃんもわりと似てるから兄バカ。ルカ姉ちゃんは私がメソメソしないとそういう面が出てこないの。ジン兄ちゃんは捨て奉公人だから時々無意識にしょぼくれる。するとルカさんはほっこり癒し系に変身」


 ネビーを考察しまくった次は姉妹分析が始まる? いやもうしているの?


「ウィオラさんも傷ついて苦労したから癒し系兄ちゃんにほっこり。ルカ姉ちゃんは長女であのしっかりした性格だから甘え下手だけどルカさん、ルカさんってジン兄ちゃんが甘やかしてくれる。ルカ姉ちゃんとジン兄ちゃんもお互いほっこり」


 姉妹分析ではなくて兄姉夫婦分析をしたの。多分このまま私とロイも何か言われる。


「自分達の事は分かるよね。これが噂の縁あり。お互いの過去からの全てが繋がって噛み合うこと。不幸も苦難も全部続いてて過去がないと繋がらない」

「本当、ルルの頭の中を覗いてみたい。宇宙は夜空よりも星が沢山あるから綺麗だろうね」

「ウィオラさんが言うてくれたの。命や生活はどこまでも繋がっていて始まりも終わりも存在しないっておばあ様に教わった。ルルさんは優しいので良い繋がりにいます。だから悪いことがあっても形を変えて幸せや優しさが訪れますって」

「そこからさっきの話が頭の中に浮かんだんだね。木曜はわりと元気に見えたけどそういうこと」

「うん。話がいくつも合流した。しかも桜吹雪(おうふぶき)を弾いて歌ってくれたよ。春便りって。ウィオラさんは弾き方で曲の印象を変えられるけど木曜はきらきら光る桜並木や前に一緒に見た農村区の桜の花びらの吹雪が見えた気がした」


 ルルは木曜に稽古じゃなくて話をして演奏をしてもらったのか。


「ルル、良かったね」

「長年結婚しない訳だよ。兄ちゃんは仕事柄人を見過ぎて目が肥えたんだね。お嬢様を選んだって言っちゃいけない」

「兄ちゃんならお嬢様じゃなくてって言うてそう。ペラペラ褒めるから」

「いやお嬢様感も好みにどハマりだからそれも惚気るよ。いつもそうじゃん。でも話をあれこれ聞いてたらバカじゃなきゃそれだけじゃないって気がつく。ウィオラさんにありがとうって言うたら最初は宴席時のルルさんですねって。ありがとうございますって」

「ルルの言葉がルルに還ってきたんだね。私も何か悩んだら相談してみようかな。予想外の返事をくれそう」

「うん。辿ればもっと前にも続くけど分かりやすいのはその日のその言葉。真の見返りは命に還るですね、だって」


 ルルはにこやかに笑いながら足踏みをやめてプクイカ水瓶の前の椅子に腰を下ろした。


「だから明日実家に帰る。木曜日にさ、ウィオラさんは慌てて帰ったよね。今日は雑務仕事だった。仕事中にそういえば遠くを見ていたなって。寂しいとか何かあるのかな」

「もし寂しかったら喜ぶよ」

「うん。ウィオラさんってさ。いつも兄ちゃん優先。兄バカの私達にも譲りまくり。だから怒れない。喧嘩をしても絶対に兄ちゃんに味方してもらえないのが分かっているから。それがムカつく。あの人たまに凄く鼻につく」


 ルルは足を少しぷらぷらさせ始めた。良い話をしてニコニコしていたのに膨れっ面でこの台詞。

 

「お嬢様だからじゃないよ。お嬢様感にデレデレしてるけど本質はそこじゃない。あの人と話しているとそれがどんどん分かる」

「私達に素敵な頼りになるお姉さんが出来るって事だね」

「なんなのもう。私達の兄ちゃんだったのに。しっかり者のようでそうでもないし、住み込み閉じこもり系だったからまだまだ世間知らず。考え方が変わってるというかズレているのも心配。ムカつく! 兄ちゃんを完膚なきまでに取った!」


 この流れで怒るの。取ってないって結論付けたのに取ったって言うの。

 ネビーも未だにロイやジンに突っかかるけどティエンにはどうなんだろう。ハ組ならちょっと顔を出して睨みをきかせられる。


「私の愚痴を聞いてズケズケ質問されたのに優しくしてくれてさ、自分は何も言わないって何⁈ 私は役に立たないの⁈ 兄ちゃんは何してるの! お母さんやルカ姉ちゃんもだよ!」


 そういう怒りになるの。

 ティエンからの返事がどうこうとか将来の不安は消し飛んだのかルルはウィオラについてブツブツ言っている。

 心配、ムカつく、ああいう人は相手の逃げ道をなくす、反感を買って嫌味を言われている、自分もイラつく時がある、心配、などなど同じ事の繰り返し。

 早く洗い物を終わらせて逃げよう。


「ハ組で疲れるってお父さんかな。それも探ろうと思って。ラオさんの家に居候ってお父さんに見張られてるみたいなもんじゃん。兄ちゃんかも。しなそうだけど意外な事にするかも。妹バカだし」

「えっ?」


 父はジンからルカへのお出掛けお申し込みを半年も握りつぶしたしな。ハ組には父も顔を出せる。


「半年働いてからとか言うてないよね。私は私のせいで返事が遅いっていう考えが悲しいから人のせいにしだした」

「疲れか工夫に悩んでるんだよ」

「もうその考えだけだとモヤモヤするの!」


 ……2人、いや父は何もしてないよね?


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