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お見合い結婚しました【本編完結済】  作者: あやぺん
日常編

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未来編「因果は巡る糸車7」

 これは昨日の話。昨日の朝食中にロイがルルに昨夜知ったティエンの話を教えた。

 簡単な経歴となぜ南地区へ来たのか。そこから二年後に三等正官になったら上地区本部へ転属なので引っ越す話。


「ひゃあ。北地区から南地区に来て欲しい、最初から少し特別扱いの仕事がある。しっかり働いたら上地区本部なんてとんでも火消しさんです」


 ルルの大きな目がさらに大きく見開かれた。驚くのは当然だ。引っ越し話には引っかからないのかな。


「そっかあ。テルルさんが私は高望みだから奪い合いに参加したらどうかと言ったけど、何も知らないのにそういう人を気にしたって本能って凄いですね」


 ルルは少し俯いて顔をしかめた。


「ルーベル家は人手がなくても構わないしお父さん達には兄ちゃん達がいるから私が寂しいのを我慢したらどこにでも行けますね」

「どこにでもって私はルルがあんまり遠くに行くのは心配だよ。上地区本部辺りはうんと遠くはないけど遠い」


 思わず反対みたいな事を口にしてしまった。応援する気持ちはあるのに。


「心配なのはリル姉ちゃんだよ。でもしっかり者のロイさんがついてる。私は人見知りしないし友達作りも得意だからどこでも大丈夫。北地区にだって行ける。最初は旅行気分だろうなぁ。心底嫌になったら帰れる家があるってええ」


 あっさり選んだ!

 私はルルにあっさり捨てられた!

 ルルにこう言われたら私もこの家や今の生活を捨ててルルの近くに住む! と言えないから何も言えない。

 帰れる家か。新婚当時の私はそれで悩んだな。ロイに要らないと言われても帰る家はない、と。


「そっか。そうだね。私でさえ知り合いのいなかったこの土地で楽しく暮らせてる。寂しいし心配だけど。ルルには帰ってくる家が2つもあるね」


 そうか。私も同じように誰も縁者のいない場所へきて新しい暮らしを始めた。

 1時間程度で帰れる距離だけど寂しさで家を飛び出したことはなくて逆に毎日楽しいから家族を忘れ気味。薄情だったな。


「そうだよ。ありがたいね。まあ選ばれないとそうならないよ。あと今は嫌だな。今の私は家族といたい。天秤にかけたら家族親戚の勝ち。文通はしたいけど結婚して下さいは白紙。間違えたって言うて良かった」


 しんみり帰宅したりルーベル家会議をした結果、当の本人はあっけらかんとしているという。

 北地区でも構わない、とさえ言われてしまった。私はルルに悩まれたかったのかな。


「生粋火消しは遊びそう。でも学校に通って自分が思っている以上に見習いをさせられたなら遊び回る暇はないか。地味だよね。背は低めだしモテ顔色男じゃない。好みがあるとはいえ容姿で選ぶ人は選ばない」


 辛辣。恋するルルは大人しい時もあるけど中身に大変化はなし。そりゃあそうか。


「歳を取ったら消えるのに、雰囲気とか目の光に笑顔の感じとか色々大事なものはあるのに見た目重視の変な人って多いよね。まあつまり問題は浮気性にならないかって事だよ。出世とか付加価値がついてモテるのはこれからだから」


 さすが頭の回転が早いルル。会議で出た内容をバシバシ発言していく。


「遊び回って落ち着く系。時期が合わないね。私が年上なんだもん。変な女で困ったみたいだったけど美人だから照れていた気もする。文通くらいだし美人を確保しとくぞ、かな。ロイさん、リル姉ちゃん、何か言うてました?」


 色々的確に思える。ルルはペラペラ喋っていたけど声が小さくなっていってとても不安げな眼差しになった。


「特に何もです」


 ロイが正直に答えたからルルはしょぼくれ顔になってしまった。


「そうですか……」

「明日、つまり今日、挨拶など非常識ではないか心配ですとは言いました。新生活に集中したいから問答無用で却下ならそのような心配はしないかと」


 ロイの発言でルルはピンッと背筋を伸ばしてへらっと笑った。かわゆい。


「ごちそうさまでした。ガイさん、テルルさん、今日はよろしくお願いします」


 お膳を持ってルル撤収。私はロイと顔を見合わせた。


「親ではないけど親の心子知らずとはこの事です。北地区でもええって。確かにルルさんならどこででもやっていけそうですけど……。ええ……」

「思ったよりも打撃を受けた。うわあ……」


 義父とロイは少し茫然としているけど義母は逆でクスクス笑い始めた。


「2人は他所様の大事な娘を奪った側では?」

「あっ、ああ。言われたら耳が痛い」

「まあ、はい」

「天秤にかけたら家族親戚の勝ち、だそうですよ。今は。相手や家や条件に負けた時に泣く泣く送り出すのが親です。父親だけではないです」

「私は誘拐婚です。ルルのあの表情の変化や発言だと今は反対する理由が思い浮かびません」

「ゆ、誘拐婚⁈ リルさん!」

「旦那様。お父さんがこの間酔って旦那様を沢山褒めた後にそう言いました。1度くらい謝った方がええです」

「レオさんが……。えー、はい。はい。そうします」


 義母は吹き出して珍しく大笑い。品は良いけど大笑い。ロイはタジタジっぽい。

 これが昨日の朝食時の話。この日は雨で海へのお出掛けは中止。そわそわしながら髪型を変えたり廊下を掃除していたルルは「恥ずかしいから実家に帰ります」と逃亡。

 ルルは引っ越してきたばかりの人に変な事を言ったから、目撃したネビーとウィオラは仕方ないけど他の家族にはまだ言いたくない。文通してくれるとなったら話すと土曜日の時点でそう言っていた。

 でも義父母は今朝のうちに今の状況を書いた両親宛の手紙を「エルさんに頼み事です」としれっとルルに持たせた。

 そうしてティエンは我が家へやってきて義父がティエンに特殊な文通お申し込み。私はその間家事をしつつレイスとユリアの教育。

 驚いた事にその直後にルルに華族の三男が結婚お申し込みしにきた。こちらも私は不参加。


 我が家は何も無かった顔をしてティエンをおもてなし。ロイと一緒にレイスとユリアと遊んでもらったり、試しに勉強を教えてみてもらったり、義父とティエンで将棋をしながら川釣り話とか。

 ロイを目指していたと言ってくれるくらいだからか時々似ている気がして私はふと思った。

 酔っ払いルルはロイが初恋だったと口にしたのでティエンを気にしたのはそういう事なのかな。


『兄ちゃんの顔と声を変えて変なド忘れが無い人がええ。姉ちゃん探して。兄ちゃんくらい優しくて人助けして逞しくて強くてなんだかんだ雅さも学んでて勉強も頑張ってる人。どこにもいないよ!』


 ネビーと顔と声が違くて優しくて人助けして逞しくて勉強も頑張っている人まではルルの願望に合っている。

 どこにもいない、ではなくて少しロイが作った。義父が探したようにルルの望みのような兵官もいた。ティエンに雅さが加わったらルルはさらに惚れる?


 ティエンからルーベル家関係に手紙を送る方法は3種類提示してある。

 おそらくティエンは6防本組所属。なのでその近く住まいの可能性があるから同じく近い屯所の事務所にネビー宛。もしくはルーベル家の郵便受けに直接投函か郵送。その3つ。

 釣書交換時にティエンはネビーにビビりつつも興味津々そうだから1番目を勧めたそうだ。

 ネビーの何を怖がるのか謎だったけどロイに「彼の考察だと野心家で派手な活躍をしてそうな意味不明なところもあるお兄さん。怖い」と説明してくれた。ネビーって文字だとそう思われるんだ。

 そう思ったらティエンが質問をして義父の返答や関連知識があったかららしい。

 私はティエンの考察力を学びたいので昨夜、寝る前に筆記帳に書き付けする準備をして義父に尋ねてみた。


「いつも勉強熱心で感心だがリルさんはそれよりも彼の母親の手紙を読み直して家族や性格が分かるところを書き出して欲しい」

「はい」

「あの会話はロイでも出来ない。俺と彼の職業的に出来た話なのと彼が聡かったからだ」

「旦那様でも難しいですか?」

「ああ。ティエンさんがロイなら釣書を元に友人知人ツテで気になるところを調べる。不足知識を他の者で補う。あの賢さや思慮深さは欲しい。使ってみたいから南地区が奪ったんだろう。使えなければ返せばええ」


 ティエンはやはりとても立派に育ったみたい。


「しかしまだまだ青い。顔に出まくりだ。ネビー君を怖がったのに蛇投げに興味を抱いて最後はルルさんの手紙に惚けた。ありゃあとりあえずルルさんをのらくら確保して同時並行でネビー君調査だな。俺ならそうする」

「私は現時点ではルルを応援したいので少しつつきました」

「逃した魚は大きかった、は困るからそれでええ。今朝考えていたけど上地区本部らへんにルルさんが住むなら別荘に出来るかもしれない。俺は隠居している」

「別荘ですか」

「レオさんは何て言うだろう。誰でも嫌だから袖振りしていればええって言うてるけど初めてルルさんからお申し込みだからな」


 こうして私はロイと寝る前に軽くこの話をしたら義父と似たような事を言われた。


「兄ちゃんが怖い……。兄ちゃんのせいでって事もありますか?」

「自分のせい、リルさんのせいって事もあります。卿家で裁判官だと点数稼ぎをしないといけない時に過剰裁判をされそうとか平家妻は色目を使って卿家に入り込んだのか? みたいに」

「前半はともかく後半は衝撃的です」

「それが不思議。自分とネビーさんは約20年同じ剣術道場です。その話で幼馴染婚説が出てきて掌返し」

「ああ。ロイ君はテルルさんの為に家事重視にした。商家の娘さんにしたのね、と同じです」


 我が家がわりと放置した噂はこの町内会に定着している。今よりぼんやりだった私は「お父上は職人さんなんですってね」に普通に「竹細工職人です」と答えていた。

 それから特注品のなになにを引き受けているので興味があれば我が家に商品本があります。

 商家と言っていないしそう思われていると知らないのに相手は相手で奉公人とは気がつかず。


「事実は1つなのに人は見たいように世界を見ます。真っ直ぐ育った気がしますけど打算的なら家族の世話をしてもらうから、のらくらルルさんの機嫌を取っておこう。卿家の親戚とこの兄は家に使えるかも。詳細が分かるまで逃すのは損ってところかと」

「えー。そうは見えないですけど。えー。それはルルが可哀想というかなんだか嫌です」

「そうですか? ルルさんがしてきた事です。それでルルさんの好機でもあります。門前払いされたら口説けないですから。さすが父上。ルルさんの為に釣書で餌を撒きました」

「親戚は卿家、使えそうな兄、蛇投げですね」

「他にもチラホラ。学費支援された火消しの子。そのくらいは覚えていたから父上は自分が前に出たんでしょう。面倒くさがりですけどやる気がある時は今回みたいです」


 ルルの縁談は義母と私と母中心で義父はチラッと確認くらいだったけど虎視眈々と自分的おすすめ物件探しをしていた。

 義母に頭が上がらない義父はキレ者だけどぼ者でもある。お互い支え合いで足りないところを補う関係。私の両親もそうなので私とロイが目指している夫婦像はこの2組。

 

「華族から結婚お申し込み⁈ 自分もします! だったら愉快ですけどそれをしようにも家族が居ません。こちらの家族親戚の素性もまだまだ不明。あの慎重さだと縁があってもゆっくりそうです」

「こちらも海へのお出掛けは許しませんでしたしね。理由をつけてルルを実家に帰すって。雨でしたしそうする前にルルは自ら実家に帰りましたけど」


 私達が日曜日にティエンと海に出掛ける話を聞いたルルが「行く!」と言ったけどダメ、却下は反抗しそうなのでのらくら逃げる作戦——発案義父——だった。

 でも雨は降るしルルは恥ずかしいと逃げた。


「生粋火消しの事はレオさんとエルさんの方が分かっていますからね。話をしてからでないと。ネビーさんが謎の沈黙だったのでそこは聞いてみよう」

「思ったんですけど兄ちゃんは上地区本部周辺なんて遠いなんて言えないですよね。東地区から南地区です。言うとしてもウィオラさんの居ない場所でかと」

「ああ。とても単純な理由がありましたね。そうでした。一昨年のネビーさんなら嫌がったかもしれませんけど今はそうです。それで本人の気持ちと覚悟の問題か」

「ルルは兄ちゃんの結納お申し込みに参加しています。見本があるからしっかり考えると思います。皆ぼ者忘れですね」

「このように時間は大切ですね。ネビーさんは自分が言われた事やした事でティエン君を評価か。気に入らなければ首を縦に振らなそう。あっさりの逆。父上や自分よりも厳しいなこれは」


 私も小さく頷いた。


「ルルが反対されても家族を説得するかどうかもです。今朝あっさり家族親戚の勝ちって言いました」

「ネビーさんとウィオラさんはある意味答えか。本人同士と両家で話し合って落とし所。本人達の武器や覚悟と意志。そりゃあ今は何もですね。自分もそうでしたし他の縁談でもそうです。庶民は縛りが緩い分悩みますね」

「……真の見返りは命に還るです。ロイさんがティエン君に話した説法。私の両親と兄ちゃんは単に卿家だからではなくてデオン先生のお墨付きだからでした」

「リルさんも素直に両親の教育を身につけて毎日健気に家守りと育児だったからです。ちょこちょこサボったり盗み食いとか色々あるみたいでもあの年で大変立派です」


 ロメルとジュリーは家同士が天敵だったし紅葉草子はあまりにも差がある身分格差。

 商家と豪家みたいに家業が噛み合わなかったり商家と商家で敵同士など家のしがらみがあると悲恋も生まれやすいけど我が家は奉公人平家。親戚は卿家。

 ルルが背負う家業は何もない。ルルの縁談が家の役に立ったら嬉しい、はあるけど絶対的なものはなし。ルルが突進した相手が卿家の足を引っ張るなら悲しいけど最悪ルルごと縁切りという道もある。取捨選択でそれぞれの覚悟の問題。

 そういう話をしながら私とロイは眠りについた。


 そうして本日は月曜日。ルルは午後帰宅だと思っていたら朝早めの時間に帰ってきた。

 洗濯後の少し息抜き時間に私と義母は居間でルルからティエンがハ組になったと教わった。

 義母の予想通り世話焼きネビーは日曜日の出勤前に友人知人が沢山いる実家地域担当のハ組に顔を出して軽くティエンの新生活探り。

 どこでも大丈夫な気がするけど気になるから前評判や噂がどうなっているかを確認したらしい。

 ハ組幹部がティエンの事を知っているか分からなかったけど知らなかったら屯所近くの6番隊防所と思って行ったらハ組幹部はティエンの事を知っていた。

 ティエンは本組以外に所属して単なる準官として下積み後に本組へ移動。それがティエンの最初の教育の流れ。

 6防所から遠くない組所属の予定だけど、噂が変だったから押し付け合いになってクジ引きでイ組。クジ引きってそんなことある?


 ネビーと幹部達がそういうティエンの話をしていると人が集まって「噂と違う。その火消しはハ組が欲しい」と騒ぎになったそうだ。

 ネビーは仕事があるから「どこの組でもたまに気にかけて欲しいです」と出勤。

 勤務後にハ組に顔を出したらティエンはハ組に変更になっていた。

 イ組もハ組が欲しいなら欲しいと騒ぎになって喧嘩をして勝ったハ組が獲得。

 ルル曰く「俺は新生活の邪魔をしたかもしれない」とネビーは困り笑いをしていたそうだ。

 逆境を自らの力で跳ね返す事をしたかったかもしれない。期待が大きくて後でガッカリされるのは辛い。そういう事もあるかもしれないからだ。

 私はネビーは良い事をしたと思ったのにそういう考え方もあるんだ。


「祖父が来るまでお父さんと仲良しのラオさんの家に居候。世話をする班はイオさん系列。ティエンさんは私の為に調査や見張られるハ組になったみたいな状況です。嫌がられないかな」


 ルルはお茶を飲みながら「ハ組かぁ。調べ放題だけど出入りしたら私の取り合いで困らせます」とニコニコ笑った。


「この経緯なら我が家が何かしたとかネビーさんがどうこうした訳ではないです」

「そうです。兄ちゃんは単にきっかけ。ちょっとした親切心を逆恨みするような人ならしょうもないです。琴の練習をしてきます」


 ふふふん、とルルは鼻歌混じりで湯呑みを持って居間を去った。なぜご機嫌なんだろう。


「リルさん。ルルさんには言えませんがレオさんが娘は今までは誰にも興味なさそうで嫌々袖振りだったから少し放任だったけどこれからは見張り生活だそうです。過剰な扱いですが火消し相手だから嫌だと」


 義母は両親からの手紙を私へ回してくれた。


「えっ? つまりどういう事ですか?」

「1人で外出禁止だと」

「まさか。どこのお嬢様扱いですか」

「エルさんが手紙で無視して下さいと。立派な肩書きで特別仕事がある予定でも最初はハ組の下っ端なので半人前が遊ぶなと言われるから何も問題ないと。それで平家娘なのでひょいひょいハ組に行って交流でも構いませんって」


 真逆!


「それは真逆です」

「レオさんとネビーさんが俺の娘や妹達に火消しを近寄らせるなと昔々から火消しの友人に言っているからルルさんがうろついても別にと」

「そうらしいですね。昔は知りませんでした」

「それに火消しは家族の身内の女性には勝手に手を出さないと。遊ぶなら他の女性。レオさんとネビーさんは半家族だから娘達を誘う時は必ず誰かを通すと。でないとボコボコにされたり色々あるそうです」

「へえ。そのような規則があるんですね」

「ええ、分からない世界ですね。なのでエルさんは娘を見守って下さいと。急ぐ話ではないから木曜日の稽古日にウィオラさんに手紙を渡して転属の可能性の事だけ追加しましょう。木曜日ならお父さんが少し職場で探った後でしょう」

「はい。我が家の会議結果も書きましょう。別荘案や大事なのは覚悟や気持ちなどもです」


 それはどういう話なのかも義母に話してから私は掃除を開始。今日はレイスをお手伝いさせる日。ユリアは義母と遊びつつお勉強。

 話し合いが必要な時はたびたびあるけどなんだかんだ私達は日常生活だ。

 

 殴り込み結婚お申し込みはルルにしれっと袖振り。釣書的に気が合わなそうだし家業や兄弟の仕事が我が家と噛み合っていないから役に立たない。

 私の傷口に塗る傷薬縁談は義父が用意してくれた両家にも相手にも得がある超優良物件の兵官。

 相手は煌護省勤めなので義父の顔を立てるために1回目のお見合いをして溌剌オババ振りで袖振りされる、らしい。

 いつもと違って「傷つくのは辛いよね……」としんみり顔をしたけど「お見合いは戦争だから仕方ないよね」と笑顔。でもまた「悲しいよね……」と落ち込み。

 

 火曜日はいつもの日常でルルは義父と出勤して雑務仕事。義父によると照れ笑いしたりため息をついたり忙しかったらしい。

 このルルは周りの職員が気にかかるから一時休職をして余計な虫を除けるか悩むと義父は私達に話した。文通開始で本人が良いと言えばそれもありかもという結論。

 雑務仕事は職員にお嫁さん候補を、だから縁談中に休職という制度があるらしい。

 水曜日の義父は休み。義父はルルと将棋を指している時に「文通します、くらいならそろそろ返事があるよな。殴り込みを知っているから焦りそうだけど何もないのか」と呟いてルルの地雷を踏んだ。

 そこでルルが最初の手紙なのに少し長くして工夫をしたと判明。それなら最初の返事に工夫など悩むから遅いかもな、と義父はルルのご機嫌取り。ルルは落ち込んだ顔で義母と茶道教室へ去った。


「ティエンさんは平家でもお嬢さん教育みたいだから文字が綺麗みたいに見惚れたのかと思っていたけどいきなり何か仕組んだとは」

「お義父さん。またルルが落ち込むような事を言わないで下さいね」

「おう。気をつける。それにしてもハ組に突撃したりはしないんだな」

「お義母さんがチラッと探ったらルルは恥ずかしいからしばらく文通しか出来ないって言うていました。その後にそもそも返事はあるのかなぁと落ち込みです」


 照れる人をちょこちょこ揶揄(からか)うルルの意外な一面。モテモテでその自覚があるのに自信なしというのも意外。義父と私は意外、意外と言い合った。


 木曜日のルルは琴教室後にいつものようにラルスとウィオラと帰ってきて萎れ顔。ルルは郵便受けをちょこちょこ見る。

 ラルスとウィオラがレイスとユリアに琴と礼儀作法の稽古をしてくれる間、ルルは私に「忙しいのかな?」とか「兄ちゃんがハ組に顔を出してくれたら元気か分かる?」とまとわりつき。

 私はウィオラに頼んでネビーにルルの為に余裕があればティエンが元気なのか友人ツテで確認して欲しいと依頼。

 そう思ったのに彼女は珍しく稽古後に急いでいるからとお茶も飲まずに帰ってしまった。

 金曜日のルルは雑務仕事の日で義父によれば火曜日と同じ感じ。


 お申し込みから6日経過しても便りなし。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ティエンくんの慎重さに焦れますね~! でも今まで袖振りまくりのルルには良い経験だとも思うし… そもそも、ティエンくんは今までルルと何の交流もなかったんだし、しかも新環境にも馴染んでないんだ…
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