未来編「ルルの恋1」
私、ルルの初恋は11歳になったばかりの年末のお祭りの夜だった。相手は姉リルの夫のロイ。
威風凛々としていて最初は近寄り難かったけどうんと優しくて穏やかで、私にかわゆいサンダルとテディベアを買ってくれてこれが噂の皇子様だと思った。
私はかわゆいので皇女様みたいで皇子様は皇女様と結婚している人だから私達は夫婦。
母にそう語ったら違うと言われた。まずロイはリルの夫なので他の女性とは結婚出来ない。
そうなの?
今思うと謎だけど私は世の中をなぜか一夫多妻や一妻多夫だと思い込んでいた。
多分独身女性や独身男性の恋人が変わるのをお嫁さんが何人かいるとか旦那さんが何人かいると考えていたからだ。恋人という概念があの頃の私には無かった。
皇子様は皇帝陛下の息子。皇女様は皇帝陛下の娘。他の国の皇子様と皇女様は結婚することもあるけど兄妹みたいな関係もある。それは知らなかった話。
『結婚している男を奪うのは畜生だから山に捨てる。諦めなさい』
とにかく私はロイのお嫁さんになると騒いだらそのような感じで母にガミガミ怒られた。
一夫一妻を理解するのにも時間が掛かって姉のルカにもギャアギャア言ったけど母と似たような事ばかり言われて3日経過して「そうなのか」と急に納得して諦めた。これが初めての失恋。
二度目の恋は姉の嫁いだ家のある町内会で行われた桃の節句の小祭りで皆と遊んで転んだ私を助けてくれたオーウェン。
堂々としている感じなのに気さくで優しくて胸がドキドキしてまとわりついたらお嫁さんが現れて泣いた。
母に「もうお嫁さんのいる人に恋穴落ちは嫌だ」と言ったら中流層くらいからは結婚指輪というものがあると教えられて覚えた。
次はロイの親友のベイリー。一緒に海釣りに行って豪快なのに穏やかで優しいので惚れた。長年婚約中なんて知らなくて半年後くらいに祝言話を聞いて私は泣いて3日間引きこもり。
勉強しろ、働けと母に叱られて引きこもり終了。その後しばらくやる気も元気も出ない日々。
元気のない私を家族は心配してくれた。ありがたいことに構ってくれる家族達。リルは私を美味しいパンケーキ屋に連れていってくれた。
その時に一緒だったヨハネをナヨナヨ系だけど穏やかで優しくて素敵と思って新たな恋。
また会いたいとリルに頼んだらリルは私を西風料理店に連れて行ってくれたけどそこにヨハネの婚約者も登場。私はまた泣いた。でも1日で忘れた。
その次はリルが花見に連れていってくれてそこで出会ったロイの友人ジミーに恋をした。しかし縁談中だかなんだか忘れたけどとにかくあっさり失恋。
どんどん恋に落ちたと思ったら次々失恋。ベイリーは少し辛かったけどわりとケロッと忘れた恋の数々。
私はこの恋の数々でどうやら良いところの家の男性は基本的に素敵だと気がついた。
そうして16歳元服を迎えた私はのんびりゆっくり勉強や教養を学びながらその基本的に素敵な良家の男性との縁談を開始。
私は美人だしお見合いは乗り気な相手とするもので私は惚れっぽいからすぐ結婚する。そう思っていた。
世界が広がって知識がついてきたのもあって素敵な中流層の男性達の中から選べる。私はそう気がついた。
我が家がリルの結婚で成り上がっていったので結婚は家と家の結びつきという言葉通りなのも理解した。するとこの人は両家にどういう得があるのか考えるようになり頭でっかち化。
高望みの見合い破壊魔人ルルとは私の事。
☆
今日は土曜日で忙しいリルの息抜き日。本日午前中の私は家事担当でリルは朝から実家方面へ出掛けた。
レイスとユリアをテルルと私に預けて気ままにぷらぷらして午後はロイとネビーとウィオラとお出掛けで夕方から陽舞伎観劇などらしい。
ユリアとレイスは居間の隣の部屋で私とテルルから見える位置で習字中。お勉強だ。
私は明日がひゃっほい息抜き日で実家に帰って家族と遊んだり酒盛り予定。
私は居間の下座で正座。正座嫌い。母と同じであぐらが好きだ。でもかなり前に我慢を覚えた。
テルルは上座で正座。今日も竹を背中に入れたようにピンッとしている。
机の上にお見合い用の釣書が1枚。まず釣書なのは2ヶ月ぶりだ。
「ルルさん。卿家の3男です。あなたの破天荒さを聞いても会ってみたいそうです。理想の高過ぎるあなたの希望に少しずつ似たところがある方かと。探しました」
「そのような奇跡のような、それでいて奇特な方がいらっしゃるのですか!」
「ちなみにほどほどにお酒好きな方です」
「まさか甘味好きでもありますか?」
「ええ。卿家ですから教養は保証します。それで地区兵官なので逞しさもあります」
ひゃあー。テルルすごい。私がことごとく見合いを破壊して後処理で迷惑をかけまくっているのにまた縁談を探してきてくれた。
家族に探してもらうか自分で探せとか理想は幻想だから妥協しなさいと言わないのはなぜなのか。
私は母似の美人だ。子を売るなら家族全員で餓死する! という母親だったので売られなかったけど、花街へ売られたらそこそこ出世したり、太夫への道もあると言われたことがある。
5、6歳の頃に人攫いに攫われかけて「親切な人が握り飯をくれた」と握り飯を食べていたらそこにネビーが来て男性達をボコボコにして取り返してくれた。でもネビーは結構怪我をした。
太夫になれる、は高く売れそうな女の子を買うためのお世辞だとしても友人知人の中では明らかに抜きん出ている容姿だと自負している。
「また顔で釣れました?」
卿家で地区兵官は高嶺の花疑惑。お嬢さん達との取り合いで私が使える武器は顔だ。
「まだです。顔で判断する男は嫌は諦めなさい。世間一般的に不細工だろうが天女だろうが、好みがあるので誰かには天女で誰かには不細工です」
「はい。それは分かっています。この顔で得です。私が嫌なのはこの顔ならこうだろう、淑やかお嬢さんだと思い込んで勝手に幻滅されることです。あと顔が良ければ体は? と値踏みする人。綺麗、かわゆい、美しいと褒められるのは他の娘と同じで好きです」
「そこなんですよ。なので先に伝えました。あなたは見た目詐欺。リルさんと違って生粋の母親似です。元気溌溂で……」
私がニッと笑うとテルルは肩を竦めた。
「ガサツで大雑把。両親に似てペラペラお喋り。ベンベン琴やドタバタ茶道に破天荒花道です!」
「茶道はそこまででもないです」
「気をつけることは出来ても根っこは変わりません。リル姉ちゃんは父の職人気質を受け継いだのか慎重で丁寧で細かいこと好き。母の口先だけ教育を素直に聞いていたから小さい頃から淑やかでした」
「その歯に衣着せぬところや観察分析上手は長所で短所です」
「はい。誰の長所も短所です。間違った環境に入ると浮いていじめられて私の性格なら食ってかかって大喧嘩です」
私は嫌味や小言を言われたらリルのように「はい。直します」や「すみません」と言えない。
「喧嘩を売ってるのかい! やんのかこのやろう! 買ってやるよ!」という母似は脱出したけど「どこかの誰かの娘さんはなんとからしいですけど教育をした方に似たのでしょうか。その方は凡民でも四角く拭ける廊下に埃を積み上げたとか。誰の娘さんかご存知ですか?」と本人や親に言い返す。
交流を持つようになって尊敬するようになっていったテルル似になった。良くも悪くも。
「それも母親似ですね」
「テルルさんで強化されました」
「私が悪い手本になりました。でも私はもう少し抑えますし根回しもします」
「そうなんですよ。裏権力者? みたいな感じに私もなりたいけどテルルさんと私の違いは客観視をうんと出来るかとか教養などの特技? 考えているけど分からないです」
「本当にもう、あなたは小賢しいです。まあ単に賢いとも言います。勉学ではなくて根本的な意味で。私が悪い手本になったのは謝ります」
そう。私はわりと頭の回転が早い。言い訳や論破をする性格。代わりに根回し察し上手にもなれる。
「むしろ手本に追いつけていないので叱って下さい。リル姉ちゃんの真似は無理です」
「リルさんはあれが性格です。嫌味を嫌味と思わないのは才能というか、何ですかあれは」
「テルルさん、時々イライラしていますよね。嫁イビリのはずが親切にとらえられて懐かれて。結局テルルさんは嫁に激甘。それで私にも甘々。ぶつくさ文句を言いながらすこぶる親切。私は変にハマった2人に感謝感激雨霰。だからお相手の母親の性格も気になってしまいます」
テルルは呆れ顔をした。利口ぶっていて生意気とは確かにその通り。
義母はもう少し抑えられるしうんと根回しが上手い。私はそれが苦手。
つまり良家の集まりで暮らすのは中々厳しいというか無理そう。この町内会にわりと馴染めているのはテルルとリルのおかげ。
「あなたもリルさんに似ているところがありますよ」
「そうですか? 分析屋の私にも分からないことは沢山あります。まだまだ小娘で人生経験が足りな過ぎだからです。だから夢見る乙女から脱出出来ないんでしょう。私はテルルさんの世話好きや愛情深いところが好きです。母と同じ。面倒な娘のお世話をありがとうございます」
義母はまた呆れ顔をした。私はわがまま娘で数々の縁談を破壊した。まあ、正式にお断りしただけだけど。
最初は遠慮していたけどそれだと似たようなことを繰り返しそうなので遠慮をせずに「ここが嫌」と口にするようになった。
その度にテルルは私の条件に合う相手を探してくれた。テルルの調査能力と知り合いの多さはすごい。リルも同じくうんと協力してくれている。
合間に男性側から各種お申し込みがあり、街中でこちらからするお初めましての男性や実家周辺の男性からも口説かれる。お断りしまくり。
逆にこいつは見た目詐欺だぞと思った男性に袖にされる。私が珍しく好印象だった相手や相手の親に限ってそれ。次も会ってみたいと思ったのに縁なし。
私は同じような格の家にも格上の家にもはまらない中途半端な中間女性。半お嬢さん。
テルルはわがまま高慢ちき娘の私にまたすこぶるええ縁談を用意してくれた予感。
ルーベル家の格、親戚の娘がゴロツキの嫁になるのはダメ、可能ならルーベル家に良い親戚と縁結びなどの理由があるとしても優しい。
「酔っ払って火消しがええと言ったのでお父さんに頼んで火消しを探し中です。ネビーさん系の兵官に憧れているはずなので似た方を探しました。今回見つけた方は地区兵官で中官です」
「えー。テルルさん。卿家中官は高嶺の花です。文武両道の花形人気火消しか卿家が奪い合う補佐官系ですから」
「よく勉強していますね。その奪い合いに参加してみたらどうかという提案です。最初は遠慮。次は自己分析不足。その次はこのように及び腰。そもそも考えてみたらルルさんの好みの方、ネビーさん系を及び腰で除外していましたよね? 嫌ですと。なぜでしょうか」
指摘されたら私も同感。
「なぜでしょう? ……ああ。失恋です。数々の失恋で心を痛めてきたから恋穴落ちを嫌がっているんだと思います」
「リルさんに酔って泣いた時にそのような事を聞いたと教えられました。それで頭でっかちで縁を結ぼうとするけど出来ない。先程自分で言いましたね。夢見る乙女から脱出出来ないと」
「ああ。言いました。確かに言いました」
「このように時々とぼけている所がリルさんのようです」
「私はぼ者ですね。すみません」
「ぼん者です。ルルさんは度々とぼけていますよ。時に愛嬌になるのでええ事です。今回探してくれたのはほぼお父さんです」
そうなのか。私は自分をしっかり者と思っているけどそうでもないのか。
ガイもテルルも私を「娘」と呼ぶくらい優しいというか甘々。そのガイは「まだまだお嫁に行かないで我が家でのんびりしていたらええ」と言ってくれていたのに探してくれたのか。つまり私はガイに何かしてしまった?
釣書を差し出されたけど読む気にならない。取り合いに参加なんて傷つきそう。気乗りしない。なにせ失恋は辛い。もう1回会ってみたいなという男性か親からの袖振りでさえ少々悲しい。
その何倍もの男性達を袖振りしてるからバチかもしれない。
「この方はまだ準官です。卿家補佐官を目指してではなくてネビーさんのように地区兵官を目指して成した方です。南幸せ区の5番隊にいました」
「ん? つまり私の縁談相手として探した方は兄ちゃん系って事ですか? 文武両道幹部候補系。管理職特化で少し現場系の良家兵官ではなくて」
ネビーは卿家に横入りしたけど逆からってとんでもなくない?
ガイの養子ではなくてガイの息子と紹介されるネビーは「そんな方も存在するのですか……。お父上孝行で」みたいに驚愕される。ガイは鼻高々。
ガイが用意した縁談相手はその鼻高々を増やすためなのかな。大人気物件で取り合いな気がする。そこに参戦するのは更に気後れ。
「珍しい方です。縁の下の力持ちや事務みたいな地区兵官は嫌。それで中級公務員試験突破をしたけど補佐官の下に就く事を拒否。幹部候補になったら補佐官業務をすると希望して現在はかつてのネビーさんのように単なる地区兵官準官として揉まれまくりです」
ネビーの経歴だと中級公務員試験をいきなり受験することは出来ない。
元服年からや準官で受験可能なのは兵官系豪家や卿家、それからネビーの経歴系で補佐官が向いているというような推薦状を取得した者だ。
贔屓されたのに憧れを目指して逆風を行く男性。私の価値観では格好良い。つまり他の家や女性もそう思いそう。
「本物のロマン卿家男性です」
「ロマンはルルさんの口癖ですよね。それも早く気がつけばよかったです。幹部候補になれるかというと無理そうだそうです」
「それは兄ちゃん系ではないです。でも出世して欲しい訳ではないのでええです。文武両道を目指しているロマン男性は素敵な気配です」
テルルにもリルにもネビーと比較するなと言われる。世話焼き兄のせいで兄バカになってしまった。
「心が折れたら通常業務から補佐官系業務です。補佐官は常に不足気味。既に中級公務員試験を突破していているから上層部はいつでも補佐官特化に配置換えしたいので誘惑します」
「煌護省的には適材適所に配置したいけど本人は憧れを追っている最中なのですね。まあなににせよ普通の卿家補佐官みたいに卿家のお嬢さんというか卿家に人気ですよね? 半お嬢さんは負けます」
「ルルさんは及び腰でしたがお父さんとネビーさんの組み合わせにロイが裁判官です。兵官や火消しの奪い合いに勝ちやすいですよ」
「そうなのですか?」
「分かっていないから及び腰だったのですか? 賢いのに賢くない時があるから分かり難いです」
「リル姉ちゃんの補佐役、将来のユリアの縁談勉強のために考えてみます」
ユリアなら本物卿家のお嬢さんなので彼女が私の立場なら負け難い。ガイは間も無く退職だけど煌護省の父親持ちになればネビーのように業務に融通——ネビーは主にガイにこき使われだけどそれがネビーの役に立っている——してもらえる。
ガイが退職しても親しくしている部下達に頼める。ガイは平均少し上まで出世して仕事が出来るし慕われている。私は雑務仕事をしながらガイの仕事振りや部署での評判を見聞きしている。
でも私はガイの娘ではないからその婿や私が嫁入りした家にガイの権力を発揮することは厳しめ。雑務仕事をしながら興味本位で調べたりガイに教わった。
ネビーは自慢の義兄で家の役に立つ。ロイも犯罪被害者になったときにやはり役に立ってもらえる。
そこは他の卿家のお嬢さんよりは強いけど卿家は全方向にツテがあるものだから私だけに特化した得ではない。
「うーん。家族親戚条件で卿家のお嬢さんと肩を並べられるくらいな気がします。そうなると問題はやはり私です。半端お嬢さんで溌剌長屋オババ」
嫁姑問題なんて嫌だし私は家族親戚から離れない。特に我が家を支援してくれてリルに激甘で私にも甘々のルーベル家は最優先。私はリルと共にガイとテルルの老後の世話をするつもり。
両親にはネビー、ルカ、ジンがついているから話し合って私はこの方針でいく。今後ルーベル家との関係が破綻したり私に裏切る気持ちが芽生えない限り。ネビー達も今のところというだけ。
変わる予感はあまりないけど人生は長いし我が家の状況も数年で激変した。
「提案してもネビーさん系やモテモテ火消しは高嶺の花だとか遊ぶから嫌々言っていたのに結局兵官や火消しかな? と最近言い出しましたよね。自分で理解、納得する事が大切なので良い経験をしてきましたよ」
笑いかけられて戸惑う。リルは少々呆れたり「私はええけどお義母さんに迷惑をかけないで」と怒ったり叱るのにテルルはこれ。
人生の荒波に揉まれて年を重ねてきた女性は器が違う。リルが尊敬して目指している大黒柱妻の長所をまた発覚。
「テルルさんは世話焼き過ぎです。優し過ぎです。見合い破壊をさせて人生の経験値上げですか?」
「結果的にそうなったのもあります。それでこの方への提案はこうです。ネビーさんの部下として働ける。幹部候補の下につくことは中々難しいです。しかもネビーさんは教育系の幹部に望まれています。指導されたいでしょうね」
「働ける……ガイさんですか? でも私のお相手には権力行使出来ません」
「お相手の為に動くのではなく別の方向から動いて補佐官候補を幸せ区から強奪だそうです。お父さんに策があるそうです。補佐官候補は奪い合いなので6番隊幹部に感謝されるから縁談が上手くいかなくてもネビーさんの立場が良くなります」
私との縁談が上手くいかなかったら彼はかなり圧をかけられて実務職で上を目指すことを諦めさせられて補佐官特化にされそう。実力実績社会だから仕方ないか。
「地区兵官として心が折れたら補佐官業務系。その前に夢を与えるということです」
「ふむふむ」
「食らいついて成長したら幹部候補です。無理そうなら普通に補佐官特化ですがここに煌護省職の贔屓を与えます。お父さんが退職してもしばらくは影響力があります」
「煌護省職へ贔屓は私の相手なのに出来ますか? 6番隊に強奪話みたいに裏技ですか?」
「息子扱いでないと厳しいので養子に下さい。ネビーさんと同じく特別養子縁組です。卿家同士でこの方は跡取り認定を取得しているのですぐ実子扱い。跡取り認定取得者との養子縁組はよくある話ですし安心。我が家に跡取り予備が増えます」
その方法は頭からすっぽり抜けていた。
「それはルーベル家に得です。それで相手に得が多いからルーベル家を優先してと言えます」
「ルルさん。それに加えて貴女はルル・ルーベルになるのですよ」
……。
⁈
「その発想は無かったです!」
「お父さんは貴女を娘と呼ぶようになったので多分これが目的です。離縁しても貴女の戸籍はルーベル家に残ります。特別養子縁組扱いでですよ。単に貴女を今から我が家に招いても特権がないけどこの場合は異なります」
ひゃあ! 私はガイに何かした? と後ろ向ききな事を考えたけど逆だ!
本気で私を娘にしようとしている!
「ルル・ルーベル。ルが沢山です」
「3男は独立を促されるものなのでこの家の離れに招く。我が家はルルさんという人手を減らさなくて済みます。2人は独立資金が貯まります」
「ここまで計算して探したなんて凄いです」
「その凄いですの言い方はリルさんそっくりです。そのうちこの町内会で独立。ネビーさんは大家族が良いそうなのでその家暮らしでも良いです。そうやって色々援助するから我が家とレオ家に従って欲しいと言えます」
「ルーベル家と兄ちゃんに絶対服従くらいの勢いです。びっくり仰天です」
私は自分をそこそこ賢いと思っているけど知識豊かで人生経験の長い年長者と比べたら弱々だな。
ガイって凄い。ネビーが結納する際に大活躍してネビーを後押ししてウィオラと実家を助けたそうだ。現地にはいたからその格好良い現場を見たかったな。
「私も驚きました。お父さんってやる気を出すとこうなのよね」
「お酒も甘味も好きで卿家で得が沢山で私の性格をもう聞いている。それでも会うと言ってくれている。条件では勝率が高い。袖振りされても袖振り魔人なのでバチです」
「バチではなくて縁なしで無理矢理結婚しても上手くいきません。まあ妥協したのに案外上手く行ったり円満縁談からすぐ離縁もあります。それでは彼と会う日を調整します。ルルさん、ユリアとレイスと遊んできてくれますか? 遊んで機嫌が良くなったらまた勉強させます。そろそろ嫌そうなので」
あれこれ説明されたから釣書を読む気になった。でも後回し。
「はい! ユリア! レイス! くだけてええって! 遊び時間だよ! 何する⁈」
テルルに声が大きいとまた怒られた。何年経ってもついつい。レイスとユリアは公園を希望したので私達3人は近所にお出掛け決定!




