未来編「兄ちゃんの祝言3」
挙式の日に音楽や舞を披露するのはルシーの挙式以来に見る。ルシーは上流華族の風習だったけど今日はムーシクス家が琴門総宗家なので集まってくれた祝い客達への御礼として芸披露。
親族用に用意された朱色の布の敷かれた長椅子に腰掛けて舞台を眺める。舞台の前は見学客だらけだ。
上手なクララと比較しても次元の違うウィオラの祖父、父、義兄、弟の琴の演奏に母と姉の三味線の音色。
そこに雇った笛などの演者も加わっていて開始時点でこれは本来高いお金を払って聴くものだと感じた。曲は文学万年桜から「万年桜」でとても美しい調べだ。
「旦那様。昔観劇した万年桜の万年桜と違って聴こえます」
「そうですね。ヨハネさんが難曲で易しくしたものしか弾けないと言うていますけどこれが本物でしょう。あの陽舞伎の演奏も少し難易度を下げていたようですね」
「レイス、ユリア。お歌を歌っても良いですからね」
「はい」
レイスからは返事なし。食い入るようにウィオラの祖父や琴を見ている。レイスは音楽が好きだからな。
レイスの熱心な視線が動いて私は息を呑んだ。瞬間、拍手喝采が巻き起こる。曲が万年桜から桜吹雪へ変化。
春になるとあちこちで聴く曲なのに初めて聴いたみたいに感じる。
シャラン、シャララランと鈴を鳴らして歌い出した満面の笑顔の新婦ウィオラがゆっくりと踊りながら舞台の中央へ花嫁衣装のまま舞台中央へ歩いてくる。彼女の甥っ子が桜の花びらを撒いていく。
万年桜が恋をしたのは心優しい男性。戦で傷つき丘の上で死ぬと思った青年は刀をいくつも刺されている枯れ木桜から刀を抜いて傷だらけの幹を撫で、もう自分は死ぬから自分用の包帯は要らないと枯れ木桜の幹に巻いてあげる。
傷の痛みと疲れで眠った青年は辛くて苦しい戦争の夢を見た後に目が覚めて驚く。傷がすっかり治っているのだ。
文学や舞台のお約束で少々事件があるけれど麓の村から通って世話をして語りかけて事件も解決。嫌な地上げ屋は蛇達が川底へ連れ去る。だから蛇は地域や家を悪人から守る副神様の遣い。
万年桜は徐々に美しくなり枝に蕾が現れ、ある晩一気に咲いてそこに桜の精が登場する。
その場面で桜吹雪が流れるので今のウィオラはその桜の精だ。
歌も舞も美しいけれどそれ以上に幸せが伝わってきて私まで幸福気分。人に叶わぬ恋をしたと嘆いていたけど人になれたという歓喜の気持ちが伝わってくるようだ。
瞬きをするたびにロイと2人で並んで歩いて眺めた大量の桜の花びらが舞い踊る桜並木の景色が浮かぶ。
おめでとうの声や冷やかしや感想の言葉などなど全て消えてみんな私のように聴き惚れて見惚れている。
「桜の吹雪は恋たより」
風に乗ってきた桜の花びらに気がついた青年は丘の上へやってくる。
そこで彼は天女のような女性と恋に落ちて2人は村人達と共に幸せになりました。それが万年桜の結末。
ネビーが登場してウィオラへ向かっていく。雰囲気ぶち壊し。夢うつつで万年桜の世界に浸っていたけど一気に現実に引き戻された。ネビーは転びそうになったし手足も一緒にでたし顔が強張っている。
「リルさん。ネビーさんでぶち壊しですね」
「はい。でも本物の方々の中で素人ですから仕方ないです」
見学客達からネビーへの叱咤激励や冷やかしの言葉が飛び始めた。それから沢山の笑い声。
「笑う門には福来るですからええことですね」
「はい」
2人は舞台中央で向かい合ってネビーがウィオラの手を取って舞台前方へ移動してきた。ネビーはまるでウィオラに支えられているみたい。ウィオラは仕事で人前で芸披露に慣れている。
「皆様、本日は自分達のお祝いに集まっていただきありがとうございます。日頃の感謝を込めて本日は小祭りにしましたので振る舞い物や野点など楽しんで下さい」
ネビーがご挨拶をしてウィオラも会釈。彼女はみるみる顔を赤くしてネビーの陰に少し隠れた。
芸妓中は集中しているから平気だけど終わると恥ずかしくなってくると言っていてその姿は何度か見ている。今よりもう少し平気そうにしていたから祝言日は特別なのだろう。
チラリと彼女を見たネビーがようやく笑顔を浮かべていつもの彼らしくなった。頼りなさそうではなくなったので安堵。
係の人達が座布団や屏風などを持ってきてくれて新郎新婦はそこに着席。2人はここで小一時間お祝いに来てくれた方々にお酒か桜茶を振る舞う。
ウィオラの前の勤め先の雇った若い芸妓達が2人の代わりに動いてくれる。まずは親族なので義父母を先頭にして私達は移動して順番にご挨拶。
「ウィオラさんおめでとうございます。兄を末永くよろしくお願いします。ネビーさん、すこぶるよかな舞台がぶち壊しでしたよ。あはは」
「はい。こちらこそよろしくお願い致します。ありがとうございます」
「ロイさん、まだ兄っていい加減諦めたらどうですか? ロイさん以外に誰も言いませんよ。付け焼き刃ではどうにもならないからぶち壊しておけってラルスさんに言われてこの様です」
そのウィオラの祖父ラルスは少し向こうの方でめそめそ泣く息子を慰めている。義父が元気でいてくれたら義父とロイは将来ああなる。
「ウィオラさん1年間お世話になりました。今後は姉妹としてよろしくお願いします」
「はい。最初からご親切に優しくしていただいてありがたいです。ありがとうございます」
「お兄さんおめでとうございます」
「リルがお兄さんって言う場面は少ないから痒いな。お前は図太いから泣かないと思ったら泣くのか。ありがとう」
ホロリと嬉し泣きをしたらネビーに軽く頭を撫でられた。これでは私もルル達みたいだ。
ロイと私は朱色の盃でお酒を飲んでレイスとユリアはお猪口で桜茶をいただきルル達と交代。
振る舞いは事前に2人が紙を配った者達が優先で後は居合わせた参拝客や2人と縁が薄いけど祝いたい者達——他の兵官や火消しの挙式時と同じで主にネビー関係だろう——や見学客達にも時間が来るまで続く。
その間、私達親族は自由時間なので小祭りを楽しむのと挨拶回りだ。
義父母と両親にムーシクス家は全員であちこちに挨拶回り。私とロイはネビーにデオン剣術道場関係者への挨拶と御礼配りを頼まれている。
御礼の菓子折りや紅白饅頭の入った袋を持ってくれる係の人に声を掛けて疲れて抱っこというユリアを抱いて、ロイはレイスを抱いて私達は野点をしてくれているデオン剣術道場の宴席へ向かった。
並んでお酒を飲むデオンとリヒテンにまずご挨拶。勉強になるのでレイスとユリアにロイの真似をさせる。
デオンの妻が気を遣って「こちらで配ります」と御礼品をそのまま受け取ってくれた。
「やはり地元でそれなりに名前を知られている兵官や火消しの挙式は賑やかで派手だ。まあ自分もそうだった。そこにあの舞台。わざわざ前方に座り席を用意してくれていて目の保養だった。彼で雰囲気ぶち壊しだったけどな」
「来年の花見でまた彼女の琴と歌が聴けると思うと楽しみですね」
「そこにリルさんがまたテルルさんと雅な料理を用意してくれるしな。長生きして弟子が沢山だから何度も祝いに参加出来る果報者だ。2人が私を挟んで親戚付き合いを始めた頃が懐かしい」
「先生。その節はご迷惑をお掛け致しました」
しばらく雑談して門下生やその家族にお礼を告げて野点に割り込みをさせてくれたので一席楽しんだ。
他の宴席には御礼配りはしない。地区兵官になれていなかったらネビーに今の人生はないのでデオンは特別。
でもロイと私は個人的に御礼品を購入してあるので今度はベイリー達探し。
ネビーと親しいのは海釣りに一緒に行くベイリーと私達のご近所さんになったヨハネだけど他の友人達も多少交流があるので全員半日休みを取って飲み会をしてくれている。
私達は後はそこで時間まで楽しむ予定だ。探して見つけてご挨拶をして御礼品を配って輪の中に混じった。
「ロイさん。美女達が芸披露をしていたんですけどお嫁さん関係ですか?」
「ええ。前職の置き屋で親しくしていた方や退職者です」
「バレルさん達が浜焼きを売っているけど自分の顔を見たらこの通り。もってけ泥棒と全部無料です」
サザエ、ホタテ、海老、焼き魚、蛤、大きなカニの甲羅。これは毛むじゃらカニな気がする。それにお刺身もある。汁物もバレル達からだろう。
「お刺身もありますね」
「自分とロイさんの為に捌いて持ってきてくれたそうです。ネビーさんは俺達の卿家兵官だから6月に漁師達で祝祭をするので来て楽しんでくれって誘われました。そういう話があるんですか?」
「いえまだ知らないです。初夏の大豊漁祭りで小宴席を用意してくれるとかですかね」
「エリーさん達が餅つき振る舞いに行ってくれています。あの餅つきはどちらの方々なのですか?」
「ネビーさんの友人達です。無料のお餅で人を集めてお酒や甘酒をじゃんじゃん売ると」
今日はそこに父の同僚達が子どもに簡単な玩具作りを無料でしつつ出店で商品売り。
賑やかしだけどお祝いに乗じた商売。でも人が集まって祝福されると福がつく。
もうお昼時なのでお腹が減っているけど私達は披露宴に参加するので少しだけ食事をした。特に毛むじゃらカニ疑惑は食べておかないと。
レイスとユリアにも「披露宴で食べるから少しですよ」と食べて良さそうな量だけ食べさせる。
「いやあ。地蔵のネビーさんがついに結婚。自分の深い仲の友人だと未婚はジミーさんだけです」
「ジミーとネビーで名前が似ているし少し性格も似ているからなんて言っていたけど差をつけられましたねジミーさん」
「今日運命の出会いをしたので問題無いです!」
「美しい芸妓に一目惚れだそうです。ご両親はもう余程でなければええみたいな感じらしいのでまた袖にされたり袖にしたりでなければ良いですね」
「アレクさんだって昨年ようやくじゃないですか!」
「訃報などが重なって遅くなっただけで相手は変わっていません」
袖にしたり袖にされたりのジミーに幸あれと私は彼にお酌をした。なんだか既視感。
エリー達が帰ってきたので皆でワイワイ喋っていたら餅つき集団が舞台の方へ移動を開始。気になる。
「ウィルさん。あれは何なのか気になりますね」
「係の方に頼んで荷物番をしてもらって皆で見に行きますか?」
こうして私達は皆で舞台近くへ移動。私とロイが親族なので皆で近くへいける。
父やネビーの幼馴染が働いている大工屋の者達が餅つきの道具を舞台前へ運んだ。
「すまし顔で座ってねぇでお前が餅をつけ!」
ネビーの幼馴染で私も顔見知りのガントが大笑いしながら杵をネビーに差し出した。
「そうだそうだ!」
「新郎がついた餅で似た男と出会えるって女性を集めるからつけ! 親方が弟子達に良縁をご要望だ!」
「親方さんに頼まれたらつくか。ありがたい事に後ろに人が沢山いるから少しだぞ」
ネビーは席から立ち上がってヒョイっと舞台から飛び降りてきた。
「さすが下街文化というか賑やかでですね」
「ロイさん。これは自分達にはない発想です。ジミーさんの時に餅つきをしますか?」
「案に入れておきましょう」
「ヨハネさん! ベイリーさん! そんな嬉しいことを言ってくれるなんて嬉しいです!」
「ジミーさん。早くしないと祝言祝いのお返しが祝言祝いでなくて残念でした金になるのであと2年以内ですよ。自分とリルさんが鈴婚式を迎えます」
「……早っ! もうそんなに月日が経っているんですか⁈ ロイさんが花見で自分達に土下座をしてからもう何年ですか⁈」
「よーしネビー、まず1回!」
ジミーの大きめの声を消すようにガントの大声が響き渡った。
「おっしゃあ!」
大盛り上がりだ。ウィオラが頬を赤らめた照れ笑いで鈴舞に使った鈴をシャンシャンと鳴らしている。
どう見てももう臼の中のお餅は完成している。だからかネビーは軽くついてガントも触る真似だ。
「2回!」
「お前がまた嫁に逃げられませんように! あはは」
「うるせぇ! すぐ帰ってきたっつうの! 3回!」
ガントはお嫁さんに家出された事があるのか。ほんのり初恋のニックを見つけて父の作った指輪をしていると気がついた。
4年前に結婚してもう子どももいる。ニックはガントの背を叩いて大笑い中。
「来福!」
ニックに何かしろ、と言われたネビーは杵を素振りみたいに扱ってくるりと回して肩に乗せた。
この格好つけに拍手喝采やお祝いの言葉に冷やかしや黄色い声が飛び交う。
「リルさん」
「はい」
「ニックがいますか?」
「えっ?」
「目が泳いでる」
「また誤解の嫉妬だと驚いているんです。兄ちゃんの友人達を敵視しないで下さい。兄ちゃんの妹として少し喋ったとかそのくらいです」
まさかここでロイの嫉妬発生。話しかけられて嬉しくて楽しかったからお見合いをする男性にニックが居たら良いな。
そのくらいの小さな恋であっさりロイに深い深い恋をしたから私の初恋はロイ! と思っているのに勘が良いのかロイはしつこい。なにが気に入らないのだろう。
余計な事を口にしたネビーのせいだ。でも妬いた日のロイはいつもと様子が違うらぶゆになるから許す。
「よしお前も食っとけ」
ガントがそう告げると彼の後ろの方から現れた若い男性がネビーにお餅の乗ったお皿を差し出した。
「いやこの後披露宴があるから」
「まあまあ。そう言わず。小さいし」
「他も断ってるから。全部食べてると何も食べられなくなる」
「俺は幼馴染の中でも特別だろう?」
「それもそうか」
ネビーは一口だけだぞ、とつきたての小さい丸餅を口にした。
「げほげほっ! わさびじゃねえか! しかもこの量はなんだ!」
「うるせぇ!」
「お嬢様なんて羨ましくないからな!」
「よくやった先輩!」
「男の中の男だ!」
「いいぞガント!」
ネビーは慌てた様子で舞台上に戻っていった。
「あはは。ジミーさんにしたいけど見てしまったから出来ませんね」
ネビーは大笑いしている。普通の挨拶になったので席に戻ってエリー、クリスタ、リア、ユウナとお喋り。
エリーとクリスタとリアは今日は義両親達や両親に子どもを預けてきたので久々に子育てから解放でのびのびだと笑った。
楽しく過ごして12時の鐘の音が鳴ったのでそろそろ終わり。皆にお別れを告げて集合場所へ移動。舞台の上に酒樽が運ばれていた。
「これは聞いてないですね」
「私も聞いてないです」
「ネビーさん達も少し戸惑っていますね」
「この感じは多分酒屋関係者の祝宴時のお酒撒きです」
ネビーとウィオラが同じ柄杓でお酒を一口飲んでその後からはその柄杓でネビーがお酒撒き。ウィオラはすくい係。やはり酒屋関係者の祝宴時のお酒撒きだ。
多分酒屋達だろうという男性達が声を掛けてお酒がかかっても良い人達だけが前に集合。かなりの人だ。
ネビーは「飲んでから撒け!」とたびたびお酒を飲まされている。披露宴もあるけどかなり飲まされているので心配。披露宴は家族親族のみだから良いのかな。
「ガントじゃねえか! くらえ! わさびの恨み!」
ネビーはわさびを自分に食べさせたガントにおりゃ! と思いっきりお酒を投げかけた。
「イオはいねえのか! ガントの次はイオだろう! 誰か探して連れてこい!」
「俺はここだ! 縁起酒だからかけろ!」
イオが少し後ろの方から現れた。火消しの格好なのは勤務中だから?
「イオと見せかけてルウスだ! 唐辛子の恨み!」
唐辛子も食べさせられたの?
「縁起酒だから俺にもかけろ!」
「恨み酒なのにいいのかよ!」
ニックもネビーに「リルに近づこうとした恨み! くらえニック! お嫁さんと末永く仲良く暮らせ!」とお酒を思いっきりかけられた。
「こっちだ!」
「俺にかけろ!」
「俺だ!」
「親方にもかけろ!」
……ネビーはまた余計な事を言った!
ロイが私をジト目で見据えている。
「リルさん」
「知りませんでした。兄ちゃんが遠ざけたらしいですね」
「リルさん」
「旦那様。しつこいです」
「リルさん」
「私の桔梗は旦那様です。違ったら嬉しいのですか?」
「いえ」
「何もかも旦那様が最初です」
ロイはユリアに「こんどはおとうさん抱っこ」と言われて破顔した。この後まだ振る舞いをするようでネビーの依頼で酒撒き係がロイとジンに移行した。
舞台の近くに台や長椅子が運ばれて酒樽は台の上でロイとジンは長椅子の上。人見知りのロイとわりと大人しめのジンで大丈夫なのかな。
そう思っていたら父が来てロイの隣に並んだ。これならきっと大丈夫。
「お前ら! 息子の祝いをありがとう! 1人飲んだらロイさんとジンが撒くぞ! 縁の無い方も来福酒を飲んで下さい! 夜明け酒屋の酒は絶品です!」
私の知らない人達もいるけど父やネビーの友人達が集まっていて歌って踊りながら「お前が飲んでこい!」みたいに人をこちらへ押し出す。
「ネビーのお兄さん! こっちにお願いします!」
「ジン! お前はこっちだ!」
「縁起酒をかけろ!」
気がついたベイリー達も集まってきてベイリーが「すみません。ロイさんの友人なんで!」と前の方へ移動してきた。
「俺達が飲むのでロイさんはジミーさんにかけてください!」
「おお。よかですね。かけましょう!」
ベイリー、ヨハネ、ウィル、アレクと順番に飲んでロイは思いっきりジミーにお酒をかけた。頭からお酒をかぶったけど良いのかな。
「っしゃあ! これでついに自分も来年結婚です! 勇気を出してナンパだ!」
「それはやめた方がええです」
「文通お申し込みしましょう」
「ジミーさん枝文にしましょう」
「桜は芸がないから他の花を探すか!」
ジミー達はそう言いながら去っていった。
こちらもわりと大騒ぎだけど舞台の前で火消し音頭が始まってもっと大騒ぎ。これが最後と聞いているので父は酒撒きを友人に明け渡して私達は集合場所へ移動した。
ユリアとレイスとジオが踊るのを「かわゆいな」と思いながら眺める。
この後私達はかめ屋へ移動。その時に誰か——多分漁師——がネビーとウィオラの前に鯛、海老、毛むじゃらカニを投げてきたり桜の花びらに混じって養殖光苔が事故なのかなんなのか混じって幻想的な光景になった。
青白い光はやがて虹色みたいに変化。
「綺麗ですけどなんですかね」
「ルシーさんが皇居では祝いの時にたまに虹雪が降るって言っていました。風が強いのでおこぼれでしょう」
「虹雪ですか。溶けないですね。光苔みたいです」
「龍神王様の鱗から生まれる光苔らしいです」
こうして私達は綺麗な景色の中かめ屋へ到着して披露宴。私とロイの時は静かだったけど毎年桃の節句の祝日に行う親戚会のように賑やかな宴席になった。
ウィオラからネビーへの結納金で家族親戚は全員かめ屋に宿泊する。
事前に荷物を預けていたし衣装返却の人手も手配済みだったので宴席後はわりとまったりだ。
かつて働いた憧れの旅館になんだかんだ1度も泊まっていなかったので大感謝。
部屋にネビーから私への手紙が置いてあって「お前とロイさんが親父や俺達を働かせて稼いで大宴会旅行って言うていたから代わりだ。色々お前の結婚のおかげだからありがとう。プクイカの育て方を教えろ。持って帰ってくる。あれは我が家でも食べまくりたい」と書いてあってまた少し泣いた。
とっくに教えているけどプクイカはなぜか他の家だと同じ方法でも増えない。
私やロイは休みや子育てや資金などで義父母がまだ動けるうちにカゴや馬屋を使って2人の思い出の地に連れて行くことは無理だと諦めていたけど「兄妹3人から贈る親孝行旅行だからしっかり守って帰ってくる」と認めてくれていた。
ロイは今日ずっと涙は見せなかったけどネビーからロイへの手紙を読んで少し涙目。鼻をすすっている。
私とロイはネビーとロイがデオンの兄弟弟子になった瞬間に運命の赤い糸で結ばれたような関係。
異国の伝承で運命の赤い糸で結ばれた男女はその後はどのような事があっても巡り合って惹かれて夫婦になって末永く共にいられるそうだ。
私達が夫婦になった瞬間からネビーは義父母の養子になると決まって義父の頼み事などで出世が遅くなったからネビーはウィオラと出会った。
おまけにルルはティエンと何かあるかもしれないのでこちらも私とロイが結婚したから発生した縁。
人生は合縁奇縁って言うけど不思議。
☆★
もう1人子どもがいても楽しいなと思っているルカや私、親父似ならすぐに子持ちになりそうだと言っていたネビーを押しのけて翌年祖母と入れ替わるように私達に妹が生まれた。
両親の年齢ならたまに聞く話だけどまさかである。
今さら7人兄妹になるとは人生って何があるか分からなすぎる。
出番は今のところなさそうですが妹の名前は決めてないのでラリルレロでどなたか命名してもらえると嬉しいです。
ルシー出産事件編1話、ルル一目惚れ編を改稿して投稿したいなぁと思っています。全く別かもしれません。
レオ家とルーベル家の未来の状況はネビーとウィオラの恋物語、お見合い結婚します「紫電一閃乙女物語」にもう少し詳しく出てきます。
暇つぶしやリル達探しや本作とは違うガイさんの魅力などに興味があればお願いします。




