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お見合い結婚しました【本編完結済】  作者: あやぺん
日常編

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花見編2「謎の女性リルさん」

 中等校時代からの友人ロイが破天荒祝言する。6人でつるんできた学生仲間内で先頭だ。

 母親が猛反対した結果だからなのか披露宴は親族のみで行うそうだ。

 仕切り屋というか仕切ってくれるベイリーが挙式を行う神社で宴会と披露宴後の2次会を開催して祝おうと提案。

 反対者はゼロというか全員食い気味で「すぐ動こう」と一致団結。

 これに対してロイは「急で大変なので簡単でええです。挙式をチラリと見に来てくれるとかで十分です。新しい生活が落ち着いたらリルさんの見せびらかしはします」という返事をしてきた。

 ロイの祝言祝いに1番張り切ったのは予想通りヨハネで仕出し弁当も酒も2次会会場も家族のコネとツテで質良く安くどうにかするとあっという間に手配。

 こういう時に前に出たことは全然無かったヨハネのこの張り切り方は理解出来る。

 進学して皇居官吏も狙える頭脳があるのに「ロイさんと同じ職場」を優先したのを俺とアレクは知っている。

 中央裁判所希望者にベイリーまでくっついたから「他は考えない」となったことも。

 表向きの理由や他に別の理由があるのも知っているけど尋ねたらコソッと教えてくれた。


 俺はベイリーと同じ柔道道場でアレクはベイリーの幼馴染。

 6人いると自然と3人ずつ歩いたり分かれたりするのでロイ、ジミー、ヨハネと俺達3人になることが多かった。

 あとはヨハネがやっかみで何かさせるとロイ、ベイリー、ヨハネである。

 でも俺はヨハネと甘味探しやお茶会に2人で行く仲であるし「煌護省は性格が合わない」とか「ウィルさんの保険の財務省は父の職場で入れない」というのが俺とヨハネの進路の分かれ道で「ウィルさんと同僚も考えた」と言われた。

 お世辞かもしれないけど嬉しい話だ。なおアレクさんとも、ジミーさんとも以下略。

 1番ロイと付き合いの長いジミーは出向研修の激務や兄2人が縁談反抗期でしどろもどろ中らしくて「本当は仕切りたいけど無理そうだからヨハネさんに任せます」だしアレクは「ロイさんの紙婚式のお祝い関係の主導は自分」と遠い未来の話を持ち出してヨハネに対抗してきたり、俺達は6人それぞれがロイ——というかお互い——に思い入れがある。


 さてこうして俺は8月に入ってようやく家族にロイの祝言話をすることにした。夕食後にしれっと話題を提示。

 家族ぐるみで付き合っているけどロイの両親から話が無さそうなのは結婚経緯のせいだろう。なにせ親族のみで披露宴だ。理由は「母の体が心配」となっているけど建前だろう。


「母上、ロイさんが今月祝言することになったのでその日の支度を手伝って欲しいです」

「……えっ? ロイ君が? 今月? まさか。2月にご挨拶をした時にテルルさんに1、2年後から簡易お見合いをさせるから町内会のお嬢さんの動向を気にかけて欲しいって言われたのよ」

「自分で探した方に5月に結婚お申し込みをして1週間後に結納して今月祝言です。ご両親のお許しは得たそうです」


 食事後の俺のこの発言に両親と兄と妹は4人同時に「えっ?」と目を丸くした。さすが家族。そっくりな表情。


「自分で……テルルさんを無視して? あのロイ君が? 母が渋るのでその文通お申し込みはお断りしますとかまだ時期が早いから紹介されても母が嫌がりそうなのですみませんってあのロイ君が?」


 こう言われるとロイってモテてるな。器用貧乏なところはあるけどなんでもそつなくこなせるし見た目は俺から見たら平凡やや上で卿家跡取り息子の中の跡取り息子みたいだし何より友情に熱い男。

 俺達の母親はベイリーとロイがいるなら大丈夫みたいな様子なので息子の友人自慢を絶対にしている。

 なお時と場合によってはジミーがいるなら、アレクがいるなら、ヨハネがいるなら以下略。俺は友人に恵まれた。

 ロイは人見知り無愛想などの欠点はあるけどベイリーがいると本来の人柄が見えてくるからこの組み合わせは良い組み合わせ。

 なので彼がモテなかったら世の中狂ってる。

 俺はそういう「時期は早いと思うけど早くと思って」みたいな話はまだ来たことがなくて2回自分から文通お申し込みしただけだ。

 お茶会に一緒に行くヨハネの母親が「ウィル君の仲人は私がしたいのよ」と言ってくれていて母が感激しているので俺はこの言葉を鵜呑みにしてわりと将来を楽観視している。

 卿家かつ強いコネがないと滑り止め受験出来ない財務省を受験出来たのも本命はやはり無理で財務省に入れたのもヨハネの父のおかげだ。

 

「お、お、お相手は? お相手はどこのお嬢さんなんだ? 同僚のお嬢さんとかそれこそこの町内会のお嬢さんと簡易お見合いをさせたいというか仲人になりたいくらいだったのに……。えっ? 自分でってテルルさんを無視したってことだよな? いや許したのか。ロイ君だから自分でもしっかり判断出来るか」


 父も動揺。両親の動揺は当然というか俺も話についていけてない。噂の恋狂いになって暴走したなんて言えない。彼の為に黙秘!


「お相手は剣術道場の兄弟門下生の妹さんです」

「まあ。そちらから話が。皆さんロイ君の仲人になりたいと思うものね。仲人はどなた?」


 ロイに「竹細工職人の娘さんで兄は地区兵官で仲人はデオン先生」ということにされたと言われたので俺はその筋書きをなぞる。

 それで俺こそ「リルとの出会いその他」を知りたい。ロイの頭の中は以下略。


「剣術の師匠であるデオン先生だそうです。お相手のお父上は竹細工職人でお兄さんは地区兵官だそうです」

「親戚が少なくて1人息子だから手堅く卿家と縁結びみたいな話を聞いたことがあったけど商家のお嬢さんとは思い切りましたね。あら、職人商家生まれから地区兵官?」


 貧乏気味の平家の次女だけどこの誤解は放置するしかない。ロイが手紙で母の意図はこうだろう、と説明していた通りの誤解発生。


「ロイ君の通う剣術道場って確かかなり厳しくてその理由は手習以外に推薦兵官育成を担っているからだ。ガイさんの為に出世頭の地区兵官と縁結びってことか。お相手の女性と気が合ったは前提として」


 へえ。

 そういう考えはなかったというか俺はその推薦兵官とかロイの師匠がそういう剣術道場を営んでいるなんて知らなかった。

 趣味の手習で「才能が無くて落ち込みます」なのにずっと厳しいらしい剣術道場で剣術に打ち込んでいるのは格好良いけど謎と思っていた。

 どうせ王都戦場なんてないけど兵役義務があるしな、とのらくらダラダラ柔道を続けている俺とは姿勢や熱の入れようが異なる。

 熱か。

 リルに熱中したのもそういう性格だからか?

 ヨハネに借りた小説にかなり夢中になって進路を決めたり好きな龍歌関係や将棋にものめり込み気味だ。


「父上、推薦兵官とはなんでしょうか」

「詳しくは知らないが兵官家系ではない逆風の立場から一転、優秀だから煌護省に後押しされた兵官だ。学費免除や兵官試験免除に場合によっては下級公務員試験贔屓(ひいき)。地区本部幹部候補や番隊幹部候補などになる。お前が災害実働官か兵官になりたいと騒いだ小等校の頃に煌護省勤務者に色々話を聞いた」

「そうなるとそのお兄さんからデオン先生に頼んだのかしら。ガイさんに得より逆な気がします。妹の父は煌護省ですとかガイさんに気に入られて出世の後押しをしてもらうとか」


 ロイからこの兄の話なんて全く聞いてないけどな。ロイはリルリルだ。


「自分はロイさんが先生に頼んだと聞きました」

「道場の行事関係で親しくなったとか? あらやだ。私が頼んだ文通や簡易お見合いをテルルさんを理由に避けたのはお相手がもういたからだったのね。水臭いけどお年頃だから言いませんね」

「ロイさんは祝言関係で頭がいっぱいなのでその辺りは会った時に聞きます。挙式をする神社でベイリーさん達と華添え宴会をしてその後は2次会をしてロイさんを呼びます。テルルさんのお体が不安だから披露宴は親戚のみで行うそうです」

「私達も挙式を見に行かないと。もう早く言ってちょうだい」

「いやロイさんの行動が早過ぎて。卿家の方ではないからかめ屋で花嫁修行だそうです。お相手の方が優秀で不安が無いからそれなら早く祝言したいと」

「家柄が違うからわざわざ花嫁修行って家同士歩み寄ったの。幼馴染のセイラさんに任せた結果優秀だなんてお体の不安もあるからかなり安心したでしょうね」

「忙しい両親や職人の姉の代わりに家事をこなして下の妹さん3人の面倒も見ていた方で働き者だとロイさんがそう手紙に認めていました」


 ロイはそれをどこでどう知ったのか謎。

 兄弟門下生の妹だからその友人に紹介されたのかと思って尋ねたら「彼とは知人程度の仲で稽古関係くらいしか喋ったことがありません。強いし人に囲まれているから近寄れません」と手紙に書いてあった。

 リルは既にテルルに嫌われていそうなのでせめて色々判明するまで俺の両親の印象くらいは上げておいてやりたい。

 ロイが選んだのならきっと悪い女性ではないだろうからリルに幸あれ。


「ガイさんの為でもありテルルさんの為でもある方なのね。それは許すというか嬉しかったでしょう。でもそれにしても早いわ。5月にお申し込みして1週間後に結納して今月祝言。まさかテルルさんのお体が急に悪化したのかしら」

「知らせないということは話したくないのだろう。新生活が落ち着くのがちょうど年明けだろうから私達はその時にご挨拶しようか」

「そうですね。特技で趣味の料理が出来なくなって辛いとか出掛けて急に体が痛んで迷惑を掛けるから外出は家族とだけにしますとか……。テルルさん、親孝行祝言だなんてきっとうんと嬉しいでしょうね」


 ……誤解が増えた。

 親孝行祝言ではなくて真逆の親不孝祝言。ガイが反対していなそうな理由は父が解説してくれて判明したけどテルルは結婚を許したと言っても絶対に腹を立てている。


 その後両親はロイの両親宛に手紙を認めて挙式を見に行くと約束。

 返事はロイの父ガイからだけで新生活が落ち着いた頃に自宅に招きたいみたいな話だったそうだ。

 それで最後に「妻は手の調子が悪くて何も書けずすみません」と添えられていたので両親はますます「テルルさんのお体は大丈夫かしら」と心配。

 ロイと同僚のベイリーに柔道道場で会った際に確認したら「ロイさんが家事を手伝い出した頃とお変わりないそうだ」らしい。

 俺は両親に言わずに誤魔化したけどロイは猛反抗して母親を脅迫して結婚に持ち込んだのでおそらくまだ冷戦か内戦状態疑惑。

 ただベイリーから「かめ屋の女将さんとテルルさんでお嫁さんを取り合ったらしいから身分差の偏見が消えたのでは?」と聞いたのでそこは胸を撫で下ろした。

 ただこの事実で謎の人物リルの謎はさらに深まった。老舗旅館の女将と卿家の大黒柱妻が取り合う貧乏気味の平家の次女。


 リルという人物像がまるで思い浮かばない。

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