表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お見合い結婚しました【本編完結済】  作者: あやぺん
日常編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

175/379

特別日編「ルーベル家と異文化交流4」

 洗濯物や布団の取り込み後にセレヌを離れに案内。場所によっては皆で寝ているからヴィトニルと一緒の部屋で良いと言われて離れの2階は2人、1階はネビーにすることにした。

 

「私はきょか? の生活体験もしたいわリルさん。私からしたらここに泊まるのも近くのお店に行くのも全部観光息抜きよ。旅人ではないとどういう生活なのかなって」


 レージングは白銀月国出身で数年前にセレヌ達と知り合って仲間になったそうだ。

 白銀月国と変わった薬草の多い流星国にたまに長めに留まるのでその生活を知っているけど他の国は短期間宿に滞在なので興味津々らしい。

 

「寺子屋のことや茶道体験も合わせてお義母さんに相談しましょう。優しいから一緒に考えてくれます」

「お体が痛んだみたいな話を聞いたから代わりに診察するわ。薬師は前からだけど医者の卵としても頑張りなさいって勉強中なの」

「それはありがたい話です。生活体験なら一緒に夕食を作りますか?」

「したいです!」


 セレヌを台所へ案内して衣装部屋から予備の割烹着を出してきて彼女に渡した。


「エプロンより守られているわ。着物や浴衣って袖が特に素敵だからこれは画期的ね。見たことなかったのはなぜかしら」


 私がワンピースが珍しくてはしゃいだけどセレヌから見たら割烹着がそうみたい。


「いつ来られるのか分からないだったのでわりといつも通りの夕食ですけどその方が楽しいかもしれないですね。苦手な食べ物はありますか?」

「ありません! 何でも……あったわ。虫は苦手」

「……虫⁈ 虫は食べません!!!」

「そう? それは良かったわ。煌国では食べたことがないけど外食とか宿だけかもしれないと思って」


 私としては虫を食べる文化がどこかの国にあることが驚き。


「そうだわ。蛙も苦手よ。食べてみたら美味しかったけど料理はちょっと。魚だって同じようなものなのに平気なのに変って言われたわ。むしろ兎をさばくなんてって」

「……蛙? 兎? 兎を食べるのですか? 私達はほとんどお肉を食べません。兄みたいな兵官の屯所で出るお弁当とか農家や漁師さんみたいな国の中でかなり大事な力仕事の方々優先です」

「前にレージングに聞いたわ。海水の湖でかなり豊かだから畜産より魚みたいって。国によって全然文化が違くていつも驚いてる」


 セレヌは私の話が珍しいと楽しそうで私は彼女の話が衝撃的過ぎる。

 彼女が食べたことのある蛙は私が知っている蛙よりもうんと大きかった。そんな大きさの蛙がいることも驚き。

 今夜の夕飯はつみれのすまし汁、もしかしたらと思って奮発したカキの炊き込みご飯、公園で採ってきた山菜のおひたし、朝煮ておいた大根と厚揚げの煮物、香物。


「このかつお節削りって楽しいわ!」とか「お米ってこう炊くのね」とセレヌは何をしても楽しげ。


「まるで美術品みたいだわ」

「花見の季節なので花の練習です」

「私は上手く出来ないわ。力はあるけど色々不器用なの」


 一緒にキュウリを削っていたら義父母が帰宅。

 ロイ達がいつ帰宅するか分からないのでそろそろお風呂の準備をしたい。セレヌを義父母に紹介しないといけないので割烹着を脱いだ彼女と居間へ移動。

 義父母は寛いでいなくて食事時の席にピシッと正座していた。それを見てセレヌは下座に正座をしてとても美しい礼をした。


「近々来訪するとご連絡していて本日こうしておもてなしいただいている旅医者一行の薬師セレヌと申します。素性証明も出来ませんのにおもてなししていただきありがとうございます」


 付け焼き刃嫁より余程美しい形の礼でびっくりした。義父母も少し驚いた様子で順番にご挨拶。

 セレヌは兄のヴィトニルが私とロイに親切にされたと感謝してくれた。

 それから父親達が東の方へ行く間、女性に厳しい国疑惑なのでこの国で休憩と医学勉強を少しする話もした。おそらく1週間くらい。セレヌ達はなんと赤鹿乗りだった。

 大きな国だとそのままは入れなかったりするから近くの村などに赤鹿係だけ残すらしい。


「噂で聞いたことがありますが大陸のあちこちへですか。そのような一族なのでしょうか」


 義父は少し人見知り時のロイみたいになっている。


「他にも旅医者一行がいて会うこともありますが私達は両親が旅医者達を尊敬して祖国を出て戦地や森で兄や私を拾ったり苦学生だった夫を誘ったり危険もあるから傭兵仕事をしていた兄を誘ったりして、それで家族として旅をしています」


 それからセレヌは大きな国には旅医者は必要ないので情報を仕入れたり行商をしたり息抜きの為にたまに、という話もした。


「そうでしたか。それはまたご立派と言いますか、お医者さんや薬師さんという時点で尊敬致しますが小国や村を中心にですか。むしろ大きな国の支援を受けるべきかと思います。そういうお話はないのでしょうか?」

「私は今の生活しか知りませんが両親は昔何かあったようで権力に縛られたくないと。人の欲……なんだっけ。なんとか欲、悪い人達に付き合いたくないそうです」

「色々お尋ねしてしまいますがとても気になります。生活資金などはどうされているのですか?」

「行商や宝石の原石など珍しいものを売ったり治療代などです。たまに偉い方達と関わることがあるのでお金のある方達からはガッポリ貰います。あるところから貰って無い方達からは貰わずみたいな生活です」


 私はそこで青薔薇のお姫様とセレヌ達は喋ったことがある話をした。


「私は握手していただきました。フィズ様とコーディアル様はほぼ毎日教会で握手をして下さるそうでそのご利益もあると思って頼みました」


 その話も義父母に説明。


「そりゃあ我々も握手していただきたいくらいです!」

「西の方では握手はご挨拶なのでぜひお願いします」


 セレヌは立ち上がってヴィトニルと似ているような別のような会釈をして腰を落として義母、義父の順に手を差し出して握手をしてくれた。


「お体が痛むことがあるとうかがいましたのでもし良ければ軽く診察させて下さい。役に立たないかもしれませんが役に立てることもあるかもしれません」

「それはありがとうございます。母さん。そうするとええ。何とまあ……旅行先でこのような方々と会うとは……」

「リルさん、我が家に宿泊のお誘いはもうしました?」

「はい」


 私はセレヌの希望を義父母に教えた。寺子屋、茶道が気になる、この国の刺繍を知りたい、私の生活を知りたいなど。ヴィトニル基金のことは義父母も知っている。


「白銀月国はセレヌさんの夫のレージングさんが暮らしていた国でしばらく滞在していたからエレイン編みは得意だそうです。編み物セットを売って貰いました」

「迎えが来るまで1週間程度とおっしゃっていましたよね。それなら迎えが来るまでよろしければ我が家へご滞在下さい。ねぇお父さん」

「えっ? お、おう。そうか。そうだな。立ち振る舞いからしても……あのお姫様と働かれたとかフィズ様に少し支援されたとか……当然だ。そんなの当然だ」


 するとセレヌは部屋の隅に置いてある鞄から何かを出して少し何かして、それから異国の封筒を持って義父の前に正座してそれを差し出した。


「両親と夫から預かってきました。旅医者の話をして信用されるとこのように長く滞在して良いと言って下さる方が多いので準備してきました。ご宿泊代です。この国の平均的な宿代で数日分です。息抜きのために来訪しまして遠慮したくないのでお受け取り下さい」


 立派な旅人は立派だ。セレヌなこの国の人間では無いのに扇子に封筒を乗せて義父に差し出すという礼儀正しさ。これは私がつい最近知った方法だ。


「この国の礼儀作法まで学ばれているのですね。平均的な……少々拝見させていただきます」


 義父は封筒を受け取ってセレヌに扇子を返却した。


「両親が大きな国の礼儀作法を少し知っておけば東西北部の小さな国や街でも大体通じるというのでご挨拶や礼儀は練習しています。ただその国独自のことは分からないです。義理の兄が博識なので練習しました」

「平均的ではなくて多いですので多いと思う分はお返し致します」

「いえ。多い分で私に観光案内やおすすめのカフェ……じゃなくてこの辺りだと甘味処。甘味処でごちそうしていただきたいです。その分も入っています」


 えへへ、みたいにセレヌは無邪気に笑った。


「リルさん、あちこち案内して差し上げなさい」

「はい」

「この国の掃除洗濯などの家事もしたいです! 気が変わって両親との旅をやめて夫と暮らすかもしれないので。なので台所にお邪魔していました」


 それでセレヌは義父母の部屋で義母の診察。私はお風呂の準備と思ったけど家事もしたいです、だったので少し待つことにした。居間で義父と2人きり。


「塀から落ちてきた方と朝食を食べたらこうなるなんて縁とは不思議だな。どう考えても悪い方には見えない。上品だし顔立ちに人柄が滲んでいる。そりゃあロイも住所を教えたり誘う」

「お義父さん。言われないと気がつかなかったのですがセレヌさんに教えてもらいました。辿ると大陸中の人に繋がるんです」

「どういうことだ?」

「私、旦那様、ヨハネさん、華族の方、そこから別の華族の方で皇居に繋がって皇女様や皇帝陛下です」

「おお、辿るとというのはそういうことか」

「先月お礼のお手紙をくれて返事にまた返事をしてくれたお嬢様はソアレ様と会う方です。私、ルシーお嬢様、皇女ソアレ様。短かったです!」

「ん? ルシーお嬢様? どちら様だ? お礼の手紙?」


 ……話していなかったっけ?

 義母には話した。だから義母から義父に伝わっていると思った。


「旅行で接待したお嬢様です。2月の次新年月から春霞の局で働かれています。なんとお礼のお手紙をいただきました」

「手紙なんてきていたのか。それは知らなかった。ええっ⁈ いや、ああ。とりあえずロイに聞いておく」

「はい。それから私、セレヌさん、青薔薇のお姫様、病気の方々です。これも短いです。お医者様達と会うことはあってもお姫様とはもう会わないだろうけどうんと優しいお姫様だからもしかしたらまた労ってくれるかもしれないと。あの冠はお姫様の体から離れると枯れてしまうそうです。見たそうです」


 義父に世界は衝撃的な話で溢れている話をした。


「虫? 虫なんて食べる国があるのか?」

「衝撃的でした。セレヌさんはかつお節削りや大根おろしを初めて見て楽しいとはしゃいでいました。我が家はあれこれ面白いと。セレヌさんから見た私達はハイカラ家族です!」

「そうかあ。そうなのか。確かに他の国の家に入ったらそうなるだろう。他の国なんて見たことないが西風料理とかナイフやフォークにサンダルと違うからなぁ」


 すると義母とセレヌが居間へ戻ってきて私達の近くに座った。


「お医者様と同じ見立てみたいです。他の国にも沢山いて薬や治療法を探していると。徐々に動かなくなる話も同じだけど、お医者様の話と違って最近の様子からすると死ぬまで動くかもと言ってくれました。発症から今くらいでもっと悪くなっていたらお医者様の言う通りだけど私は軽いそうよ」


 義母は安堵みたいなお顔で義父は目を丸くした後に少し涙目で微笑んだ。

 これは朗報!


「症状からするとこの国で1番多い胞病みたいなので今飲まれている薬草の粉薬で良いと思います」

「石化病と聞いていたけど死の森の毒が大陸のあちこちで悪さをしていて胞病っていうそうよ。違う国だと違う胞病が多くなるから見た目とか症状が違うから名前も変わるみたい」

「どの胞病もその国で根治法はなくて私達も見つけられていません。医学をまとめたいとか教えて広げたいのもあるけど両親は他の旅医者達同様に胞病をどうにか出来ないか治療法を探しています」

「そういう話をお医者様にされたな。国をあげて調べているし属国や交易先とも情報交換をしているからいつか急に何か見つかるかもと」

「塗り薬が効くかもしれないので庭に種を蒔きます。たまたま持っていたので。この国で使った方が良いのにこの国だとなぜか育ち難いから育つか分かりませんけど願いを込めて」


 セレヌは鞄から紙と万年筆——なんと蓋を開けたら書ける!——を出して育ち方やどういう風に育つかを書いてくれた。


「すり鉢で潰して塗ったり、お風呂に入れて体を揉むと次の日楽になることがあります。効果は薄いですが日によっては劇的なこともあります。明日の朝庭に埋めても良いですか? 無事に育ったら通われているお医者様にお裾分けして欲しいです」

「それはぜひお願いします。なぜ育ち難いかを調べるために育ったら役所に話をしたりしても良いですか?」

「役所? 役所とは何でしょうか」

「国をあげてこの植物を調べたいということです」

「それなら確か前にお父さんがそういう話をこの国のお医者様にしたのでもう何かしているかと」

「そうですか。既に話が役所にあがっていそうです。育ち難いから栽培したり実用化出来ないのですね」


 こうしてセレヌは我が家に滞在決定。お風呂を沸かすけど体験するか聞いたらセレヌは満面の笑顔で「気になるからお願いします!」という返事。そこにロイ達が帰宅した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ