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ネビー来訪編8


 義父の咳払いで赤鹿や旅行話は終了。ロイのおかげでビビりネビーが少し消えた。


「仕事関係のことは今後は2人で。このように直接話すか上司を通すか息子に手紙を持たせます。そちらは直接か手紙でお願いします」

「はい。ありがとうございます。お願いして良いのなら早く馬に乗りたいです。赤鹿も気になります」

「まずは馬です。そこで最低限の評価がないとねじ込めませんので。早く許可をしろ、は出来ないので馬に接する機会のある仕事を用意します。その時にはこうすると良いなどを教えます」

「おお。バカなので気がつきませんでしたけどロイさんが教えて下さってガイさんに頭を下げる前に招待していただき、このように話して下さるとはありがたいです。下心も分かったので遠慮しませんし期待に応える努力をします。ただ自分で気がつくことは苦手なので今みたいに赤鹿とか馬とか……もしや弓や槍もですか?」


 赤鹿に乗って弓を扱う地区兵官なんていないけどネビーはその訓練を出来るってことになる。そうなったら仕事には関係無いけど義父は嬉しくてネビーも興味があるみたい。


「ええ。地区兵官には必要のない事も可能です。そうすると配属先変更が出来るようになります。もしくは視察。地元で暮らして視察と言う名の旅行を出来るようになりますよ」


「働くけど旅行も出来るってことですか。それはまたすごいです。結果を出せば得がどんどん与えられるのはここまでの話で理解しました」


「公務員は他の仕事でもそうです。それでですね、地区兵官としての出世が少し遅れますけど視察が出来るようになってもらいます。この少し遅れるは他の者より早いです。ネビーさん次第ですけど半見習いからここまでと調査報告書の内容ですと追い抜かされる可能性は犯罪行為とサボりくらいです」


「そんなことしません。せっかく家族が総出で苦労して今の仕事を得ることが出来たと知ったのでさらに身を引き締めていたところです。さらにこの話。励みます。ガイさんに得はなんですか?」


「本来払う私兵費用なしでネビーさんを護衛にして旅費もくすねて旅行です。現地に着くまで屯所(とんしょ)で宿泊や農村地区を通るとか王都中央街以外の王都観光地へなど色々。息子夫婦や孫のためです。ネビーさんもご家族を連れて行けます」


 王都中央街?


「旦那様、王都中央街ってなんですか?」


 ロイにコソッと質問。


「ここです。地区外の農村地区から砦までが王都で街や村があります。自分達が通ったエドゥアールの反対側は王都ですけど王都中央街ではないみたいな感じです」

「ああ。分かりました。ありがとうございます」


 ネビーが「それはよかです」と口にした。


「誰かに何か言われたら息子のように煌護省のコネだと言うて下さい。妹を煌護省卿家へ嫁がせてコネを獲得とは野心家と言われるでしょう」

「まあ同じ剣術道場の門下生が妹に惚れたと正直に言います」

「ネビーさんの存在を知って調べて息子の惚けは天命だと思いました。いやあ、親孝行息子です。リルさん自体も親孝行。ロイ、お前は良くやっ……」


 大笑い中に義父は義母の冷ややかな視線に気がついて停止。


「それなら私にこういう話をして早々に説得するんでしたね」

「リルさんがどのような方なのかとかご家族はどうかとかその間のネビーさんを直接調査とか色々だ。いきなり仕事の縁結びは出来ない」

「話しやすくなってからちゃっかり。誰かも似てしまって困ります」


 義母は怯え気味の義父から視線をずらしてネビーを見てニコリと笑って軽く会釈をした。怖い。

 これでネビーに我が家は義父より義母が上だと伝わったな。そう伝えたかったのかな。


「コホン。職権濫用でネビーさんのことだけはこのようにかなり調べました。他のご家族は品行方正で可能な範囲で我が家の望みを叶えて下さい。手助けをするくらいですけどネビーさんにはまだまだお願いがあります」

「はい。なんでしょうか」

「ネビーさんは人柄の評価がとても高いです。推薦兵官にはいくつか種類がありますがそこは割愛します。合格時に志願出征禁止。凖官半年で木刀常時携帯許可。2年目で仕込み刀、それも常時携帯許可はかなり珍しいです。周りと扱いが違うと思いませんでしたか?」

「ええ。そう思って上司に尋ねたら期待していると言われるのでそうなのかと。期待されています」

「違います。信頼されています」


 この話は玄関でロイと聞いた。刀は人を傷つける危ないものだから兵官でも信頼がない者には与えないということだ。


「信頼ですか? ああ。お前なら問題無いと判断したから新しい許可を与えるので信頼を壊す行為を絶対にするなと言われています」

「そこに至るまでがかなり早いということです。木刀常時携帯許可や仕込み刀の携帯許可が出ないままの地区兵官もいます」

「……そんなやついるんですか?」

「主に豪家初代以降です。兵官系豪家の名家は少ないです。初代が偉大だと比較されて大したことないなとガッカリされやすいからです。地区兵官は表向き血筋職ですけど中身は完全実力社会。求められるのは腕ではなくて腕と信頼。その2本柱です。その2つが揃わない者はそれとなく追い出されます」


 つまりネビーが「俺は疾風剣って呼ばれるくらいそこそこ強いし才能があるから期待されている」という台詞は見当違いということになる。

 長屋やご近所さん達の人気者。クララに「人気兵官になりそう」と言われたり漁師に好かれていたとかネビーあるあるが評価されているってことだ。

 ネビーの妹だからと兵官に助けられたことは結構ある。

 家事が嫌になって街をぷらぷら歩いて目で楽しんでいたら「迷子?」と気にしてもらえたり、こっそり飴をもらったり、家まで送ってくれたり。

 代わりにぷらぷら歩いていたことが送ってくれた人経由でバレて両親その他に怒られるというバチ当たり。


「そうなると兵官で豪家になる得ってありますか? 子どもが親の見習いになれる以外でです。稼いだら拝命なのは知っていますし今と違って寄付や納税の義務が発生するのは分かっています。公務員だと給与範囲内の義務ですよね。出世の可能性が高めなら知っておきたいです」


「周りにそこそこお金持ちと思われる。苗字があるという優越感。他の商家や豪家と同じでその家ならではの贔屓(ひいき)を得られるかはその家次第です。寄付と納税の義務が給与や報奨金以内なのは他の豪家や商家より得です」


 これは現在お勉強中の話だ。煌国の身分は皇族、皇族の血脈である華族、豪家と商家、平家。

 豪家は「お金持ち」が定義で家業を問わないから茶道の先生で稼いでいる人なら豪家。

 商家は何かを売る家業の家で父がどんどん稼ぐと商家。奉公人を商家に沢山すると勤め先の店主は大商家になって得があるから従業員にはどんどん払った方が良い。

 それは豪家も同じ。豪家の上は大豪家。

 商家と豪家は似たような家柄。この家は商家ではないの? とか豪家ではないの? と思うことがあっても大差ないから誰も気にしないと義母に教えられた。

 勉強した範囲の生活の知恵とかは義母がそういう風に追加してくれている。それを学校でするからだ。


 そこに特殊な立ち位置、国の犬と呼ばれる役人家系の卿家、苗字はないけれど平家とは呼ばれない農家と漁家。

 平家は納税も寄付をしなくて良いけど奉公先がないと身分証明書がない。つまり国に存在しない人になる。

 平家の奉公人の子どもは「いつ生まれの子ども」みたいに奉公先に管理されて死んだり売られたり行方不明になったら棒線。他の家より亡くなりやすいし売られたりするかららしい。

 つまり私はロイと結婚するまで父の職場に「レオの子ども」みたいに書かれていただけの男なのか女なのかも名前も無い存在。戸籍管理の簡素化と「国の役に立つ可能性が低いから特典を与えない」らしい。

 なので平家の子は成人になれる可能性が高くなる8歳になると親の仕事の見習いになって少し特典をもらう。

 12歳からは奉公が可能。そこからは商家や豪家を目指す。

 卿家を目指したりコネで農家や漁家もたまにいるし、女性なら私みたいに嫁入りであっさり肩書がついたりすることもある。


「子どもか孫の代で平家落ちだと子孫は仕事に苦労しますね」

「それは他の家と同じです。平家落ちに備えて縁者を増やしておく事は大切です。ご両親がネビーさんを火消し半見習いに出来たように。お金を払うだけではそういうことは出来ません」

「自分で気がつくのは苦手で説明されたり指摘されてから疑問が湧く性格なのでありがとうございます」

「家の話が出ましたので提案があります。我が家は卿家。卿家とは同じく仕事と信頼です。3代かけて条件を満たして拝命します。3代続けて上級公務員試験突破だけではなくてその間の仕事ぶりも評価されて拝命です」


 地区兵官って卿家に似てるのか。つまり得は本人次第の卿家ということになる。


「はい。親戚になりましたので卿家について学び中です。テルルさんに本日共栄と言われましたから役に立つことはなんでもしたいです」

「共栄ですか。共に栄える。その話になります。つまり地区兵官とは得は本人次第の個人卿家みたいな存在です」

「出世するほど、活躍するほどルーベル家のためにもなるという理由がようやく分かりました。細かく解説していただきありがとうございます。上司の卿家の方やガイさんやロイさん達から学んでより卿家の親戚らしくなります」


 義父が大きくゆっくり首を横に振りその隣で義母は軽く頭を下げた。何?

 しばらく沈黙でネビーは困惑でロイは無表情で私はソワソワ。

本編時は雑でしたけど考えているうちに煌国はどういう国なのか徐々に出来上がってきました。

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