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ネビー来訪編5

 りんごを食べながらの話題はルル達の礼儀作法をどうするかになった。ネビーが義母に相談したからだ。

 それで義母は私に台所で話したことをネビーに伝えた。ネビーはしばらく義母を見つめ続けた。静かになるネビーは珍しい。

 おまけに真のお辞儀の手で軽く頭を下げたので動揺。


「3女は今年12歳です。今後は特別寺子屋経由で女学校編入という手があります。4女はお金さえ用意出来れば間に合うという年齢です。6年間通えなくても必ず本人のためになります。5女はあまり心配していません。その頃には自分が妹の学費を全て払えると思います」


 まさか義母にお金か何か頼むの?

 女学校は11歳になる年の1月から入学出来るのはクララとエイラに教わった。長くて元服になる年までの6年間通える。

 お金があれば誰でも通えるところと違うところがあって100歳でも通える寺子屋とは異なる。その年齢でないと入学出来ない。つまり私はもう女学校へ通うことは不可能。


「ええ、先日はそういうお話を致しました。そのご様子だと聞いていないようですね」

「いえ、話は聞いています。今のは個人的な希望です。家へうかがう際にご近所のご夫婦にお会いしまして妹達がそちらの奥様のように品良くなって欲しいと思ったもので」

「そうですか。それで私に何か頼みでしょうか」

「費用があるとして、そのように女学校へ通わせるのと手習で勉強させるのとどちらが良いのか知りたいです。女学校に通われた方に聞かないと何も検討出来ません」


 お金とか何かではなくて質問だった。


「費用も考慮して私ならそちらの生活環境ですと上のお2人は手習。下のお子さんはまず寺子屋。次に特別寺子屋経由で小等校編入。それで1年生から女学校にします。女学校は1年生からの方が良いです」

「両親が了承して予算を決めてからですが手習先をご紹介していただきたいです。デオン先生にも相談中です。寺子屋でどの程度学んでからどのような手習がこの家や妹達に役立つか両親や自分には分かりません」


 ルル達に関する頼み事。私は慌ててネビーの隣に並んで同じ体勢になった。


「リルはルーベル家の仕事があるから関与しなくて良い。並ぶならテルルさんのお隣だ」


 ネビーの発言で私はロイから「貴女はもうルーベル家の人間です。それをしかと認識すること」という伝えられたことを思い出した。


「はい」


 義母の隣に移動。今夜はネビーの知っている姿と知らない姿の両方を見ている。

 披露宴の食事の練習の件をデオンに相談する時はきっと今のようなネビーだったのだろう。ルカやルル達も絶対に見た方が良い。


「こちらからは言いにくいことをありがとうございます。ご両親からそう言っていただきまして我が家は既にリルさんが居ないと生活に支障が出る状態ですのでありがたいです」


 そうなの?

 そうなの? ではなくて聞かないと。


「そうなのでしょうか?」

「そのぼんやりは時々疲れるから自分で考えるかロイに聞きなさい」

「はい。すみません」

「妹がご心労おかけしてすみません」

「もう我が家の娘ですから当然のことです」


 少々沈黙。静かなネビーってやはり珍しい。私が励んで喋るようにネビーは励んでこのように静かになるんだろう。


「それなら少々うかがいたいのですが推察家計とリルさんから聞くご実家のご様子がどうも噛み合いません。何かご存知でしょうか。両家共栄の話なのに御礼と遠慮ばかりでご両親で苦労しました」

「デオン先生に似たような事を教えていただきましたので両親に話をしました。次からはご苦労をお掛けしないと思います」

「前提としてお父上に仕事に専念していただきたいという理由もあります。息子に親戚付き合いを学ばせたいです。そちらはご両親ではなくてこれまでのようにデオン先生や貴方が信用して頼れる方、こちらは私達でお互いの家の要求にどう折り合いをつけていけるか考えたいです。もちろんご両親にも相談して下さい」


 またしばし沈黙。ネビーは私をチラリと見て少し俯いてから義母を見据えた。


「本日長女と家計について少々話しました。両親に尋ねて良いものなのか長女と婿と自分で話合いをする予定です。両親はおそらく自分が渡している給与、長女夫婦の給与を生活費に使用していません。どうしてもの際は使ったと思います。最近理解してきた両親の性格だと使用した分は余裕が出来た瞬間に戻すでしょう」

「何かそういう事が分かることがあったのですね」

「長女が偶然盗み聞きです。先月から送ることにしたリルの結納品代にも自分達が渡した分は含まれていないのではないかと思います」


 ……私の結納品代を1月から送ることにした?


「レオさんとエルさんの稼ぎだけで生活している可能性とは腑に落ちました」

「自分達が突然亡くなった際に長男長女夫婦が妹達のことで苦労しないように積み立てしているようです。大家から部屋を1部屋買って貸しているようで何かあった時用かと」

「そのしわ寄せを最も受けたのがリルさんなのでリルさんには高望みの良縁探しということですね。まあ息子が行きましたけど」

「はい。装飾品を用立てないのは貧乏だけではなくて3女が目立って危険な目に遭うからでした。実際に人攫いにあって取り戻さなかったら今頃花街送りです。他の娘はそれで一蓮托生。長女は知っていました。これまでうんと困った時は絶対にお金も服も薬代もお米も野菜も炭も出てきています」


 (うち)は貧乏で優先順位がある。お洒落は贅沢。そうなのか、と諦めたことは何度もある。

 この話って私達娘に話しても良いことだったんじゃないかな。


「そういった教育方針を伝えていないと言うことですね。家計の事は別として。お2人とも忙しいでしょうから。自分達の子は自分達だけで育てるものと思っているんでしょうかね。過剰な気がします」

「自分もそう思います。本人達なりの理由があるかもしれません。なので貯金や自分達の給与の話が勘違いだったら恥をかかせるのでまずは3人で話合おうと思っています。そもそも母が伝え下手で天邪鬼なんです。心配が叱責へ向かう性格でして」

「それではこの件はこちらが直接聞きます。財務省を通して少々調べました。頼みたいことがあるので余裕があるか知りたくて娘さん達や息子さん達に家に入れている給与を聞きました。お子さん達からうかがった生活ぶりと家計が乖離していますが違法な借金は無いですか? と」


 ネビー達の疑問がこれで解決するということだ。


「ありがとうございます」

「ネビーさん達の推測が真実ならこちらはそのまま新たな要求が出来ます。我が家の貯金配分を教えて息子にも家計を担ってもらい残りは自己管理しつつたまに相談するようにと育ててきましたと伝えてて予算確保です」

「おお。ありがとうございます。相談して良かったです。我が家の給与を財務省で調べられたんですね」

「まさか。そのような事は出来ません。ご両親が話易いようにです。お店でそれとなく探りを入れました。ネビーさんの事は夫のツテで分かります」

「ああ、そういうことですか」


 2人ともすごいのでしっかり学ぶというか今学べている。


「そのお顔、リルさんは負担になるのでこの件には関与しなくて構いません。夏から町内会参加でロイの職場関係からも何か声が掛かります。剣術道場の花見関係もそろそろ話があるかと思います。私の体ではそちらは不安なのでお願いします」

「私も話を聞いて学びたいです」

「ですからこの場に座らせています。家計の話を聞いたのですからロイに聞いて我が家の家計について考えてみなさい。食費は知っていますね」

「はい。励みます」


 元服したら成人だけど私は今大人になった気分。ネビーやルカはもっと前からこういう事を考えていたということだ。


「我が家は貧乏だからの一言で煙に撒かれていたかもしれないなんて全然気がつきませんでした。元服してもう何年にもなるのにやはりまだまだ子どもですね。正直自分のことでいっぱいいっぱいでした。リルが嫁ぐまで家事を丸投げ。仕事をしながら家事は苦手だししんどいので余裕があるのかな、と感じるとすぐ甘えます。母を尊敬します」 

「正官になってもう安心だから苦手な事をさせて世帯を持たせたいと思っているんでしょうね」

「脛かじりは出て行けって言われるのでそうかもしれません。俺は両親の補佐が出来ると思っていて末っ子が嫁ぐまでは結婚は頭にないです。ロイさんみたいにしたい! と思ったら別ですけど。成り上がって淑やかお嬢さんをお嫁さんにしたいです」


 立派ネビーが少し崩れた。照れ笑いして「いやあ。俺は出世すると思うんで。疾風剣なんて呼ばれています」と自慢を始めたからだ。

 お嬢さんをお嫁さんにしたいとか疾風剣のことを義母にも言うんだ。


「手習の件は先送りします。家計把握をして両親が妹達をどうしたいのか長女夫婦と共に両親に確認します」

「門松雛でお忙しそうですし妹さん達は寺子屋に通い始めたばかりなのでこのあたりの事はまずは息子に任せようと思っていました。話が出来て良かったです。今の話は私が息子にしますがそちらからも話をお願いします」

「はい。ありがとうございます。ちなみに俺は自分で気がつくことは苦手です。そういうことは長女の方が得意です」


 ネビーと義母がほぼ同時に頭を下げたので私も下げた。ネビーとお辞儀し合ったことってあったっけ?


「他にもありますが本日は夫がこの辺りについてお話する予定でした。直接お話ししたい内容だからです。それが海釣りの件で娘自慢をしたくて忘れたようで飲みに行ってしまいました。すみません」

「娘自慢? リルですか?」


 表情がいつものネビーらしき姿になってきた。


「例の海釣りの件に最近のハイカラ料理です。明日はお休みとうかがっていますのでご予定がなければ帰宅を待っていただきたいです。夜遅ければご宿泊していただいて明日お話したいです」

「宿泊ですか⁈ ガイさんの帰宅を待って欲しいという話はロイさんから聞きました」

「おそらくですけど飲み会中にネビーさんの事を思い出すと思うんです。理由が思いつくので。なのでそろそろ帰宅します。急な来客はお断りと言うているけどまた誰か連れて来るでしょう」

「リルにもそんな感じの話を聞きました。俺を見せびらかすと。俺が何で見せびらかしになるんですか? 俺はそんなに名が売れていますか? それなら嬉しいです」


 そこにロイが登場。私達の様子を見てロイは無言で義母と私の後ろ、2人の間に正座した。

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