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お見合い結婚しました【本編完結済】  作者: あやぺん
日常編

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ネビー来訪編3

 義母は先にお風呂に入ることになった。ロイとネビーと私は3人で夕食。

 ロイのお腹はまだ少し旅行時みたいなのでネビーの毛むじゃらカニ汁を少しもらってロイの分にはお餅を入れてある。


「リルさんのカニ汁がないです」

「私は甘味でお腹がいっぱいです」

「確かにそうですね」

「カニだけにですか? なあリル。お茶漬けって俺が知ってるお茶漬けと違うんだけど。出汁2種類って何? 混ぜるの? 俺だけ何か色々多いけど良いのか? お客だからか? ロイさんとリルもどうぞというか足りないなら俺はいいんで」


 義母がお風呂中は楽にと言われたネビーはかなり砕けた感じになっている。義母と挨拶をした誰? 状態のネビーは消滅。


「兄ちゃん、少しずつ質問して」

「少しずつ? ああ、そうだったな」

「お茶漬けの説明をするね」


 ネビーに今夜のお茶漬けを説明。それから私とロイは昨日の夜までネビーが来る事を忘れていたのでサッと作れる物にしたことや、私達は朝と昼に沢山食べたから夜は少なくて良い話をした。


「サッて、なんか色々あるしこのお揚げさんうさぎだけど。そもそもお揚げさんって煮たり何かするんじゃなかったっけ?」

「出掛けるから事前に準備しておいた。うさぎはさっきだけど。朝ごはんがお揚げさんを乗せたおうどんだったの。うさぎはデオン先生から頼まれたから練習」

「ああ、俺も聞いていた話だ。リルが作るのか?」

「お義母さんの手の調子次第。2人でかわゆいお弁当を考え中」


 ロイがいただきます、ありがとうの挨拶をしてくれて食事開始。


「ありがとうございますか。両親に教えて我が家もそうします。良い挨拶です」

「むしろ違うんですか? 外はともかく家では言うものだとそう言われてきました」

「ええ。いただきますしか言わないです。この何とかっていう珍しい魚の佃煮、弁当の時と何か味が違う。うめえ」

「日にちをずらして3種類作ったの」

「同じカニ汁なのに味が全然違う。うめえ。かめ屋すげえ。料理人ってすごい。リル、こういうのって何で違うか分かるか?」


 味わって食べたいのにネビーがうるさい。家とは違って口の中に何かある状態で話さないのは礼儀を意識しているのだろう。

 実家ならネビーは他の人と話すけど今はロイと私しか居なくてネビーの体の向きが私の方なので私が返事をしないといけない。

 ロイは私と同じで落ち着いて食べるから教えないと。


「出汁の取り方とかそもそもの調味料とかの質。兄ちゃん味わって食べたいから私達は食事中にあまり喋りたくない」

「へえ。お前の無口ってそういうのもあるのか。味わってか。俺だって味わっているけどレイも今日少しそうだったな。もたもた食べてると冷めるぞってルルが言って、食べないならもらうとか言い出して少し喧嘩になった」

「自分は過剰にやかましく怒られてきたからなだけで節度があればどちらでも良いです」


 私と同じではなかったのか。モタモタ気味のレイにさえ「遅い」みたいに言われていた私はやはりモタモタなのだろう。


「リルさん。おかわりをお願いします。何だかんだ小食で終われなそうです」

「はい。旦那様のカニ汁にはお餅を入れたので固くならないうちにどうぞ」


 カニ汁を食べたらロイのお腹は膨れるかな。促したら「それは嬉しいです。いただきます」と食べ始めた。

 ご飯のおかわりは少ししてからにしよう。ネビーのお茶碗が空なので取った。


「兄ちゃん次はどのくらい食べる?」

「全部ドンって乗せたら美味そうだけど別々も美味そうだから悩むな。細かい食事も良いってこういうことなんだな。大家族じゃこれは難しい」

「お母さんがかまどを占拠出来た時は色々あるでしょう?」

「ああ、確かに」

「カニだけにですか?」


 ロイがネビーの真似をしたので私は吹き出してしまった。ネビーのしょうもない発言を無視したんじゃないんだ。無視して良いのに。


「ロイさんも冗談とか言うんですね。いや、言うていましたね。リルは聞いたか? ロイさんが長男は俺、次男はジン、3男は自分だって言い出してさ。おかしいよな。長男は絶対にロイさんなのに」

「気楽な3男の座は譲りません」


 何の話? ロイ達は3兄弟なの? ロイは兄弟が欲しかったからかな。


「えー、それなら俺は次男にします。ジンがよかです。しっかりしているし。いや、たまに抜けてるんだよな。あとあいつは何だかんだ末っ子体質。気がついたらおつかいを頼まれていたり雑用を押し付けられてたり。本人も当たり前みたいな顔をしてるし。それでちゃっかりしてるんだよな。ジンには末っ子らしい愛嬌があります」

「そういえばジン兄ちゃん、お義父さんに身分証明書を預けられてタコ売りのお遣いに行ったよ」


 確かにジンは何かとおつかいを頼まれている。ジンはたまに抜けているんだ。そうなるとぼ者3兄弟になる。

 旅行から帰ってきた時はロイとネビーならロイが兄と思ったけど今日ネビーの知らない一面を知ったら何とも言えない。


「リルもそう思うよな? ロイさんが長男だって。ジンが3男。ジンはどう考えても俺の弟分だから……いやあいつの歳はロイさんの1つ上なんだよな。長男ジン、次男ロイさん、3男俺? 俺がジンの弟分っていうのは納得出来ないな」

「間なんて面倒な立場は嫌です。長男と次男はそちらで決めて下さい」

「真ん中なんて楽じゃないですか。兄貴だからよろしく。弟にはやってくれって命令。気楽です気楽。つまり……やっぱり長男はロイさんで俺が次男ですね」


 私は真ん中でルカからはよろしく、ルル達からは姉ちゃんやってだから面倒だと思うけどな。

 ちなみにこれを決めて何がどうなるんだろう。ロイが「お願いします」とお猪口を差し出してきたので熱燗を注いだ。ロイはいつもお礼も言ってくれる。

 カニ汁もお餅も食べ終わったっぽくてチラッと私が預かっているお茶碗を見たのでおかわりをよそった。

 我が家の米がロイにどんどん食べられてしまう。義母が「また成長期なのかしら」とボヤいてお米代を増やしてくれた。


「そういうものなんですか? 友人は上を見習えとか下の世話をしろと言われて大変だって言うていましたけど。それなら次男です次男。そもそも自分はルーベル家の次男です。ネビーさんは長男。ジンさんは元々3男。決定ですね」

「次男? ロイさんって次男なんですか?」

「自分が生まれる前に亡くなった兄がいます。姉も」

「そうなんですか。決定ってまるで納得していないですけど、そもそもこれを決めてどうするんですか?」

「両家の今後は3人で相談なので常に長男が気働きです。発案から予定調整など。次男と3男は補佐や文句やその他です。つまり次男と3男は同じ家ではない方がよかですね」


 そういうことなのか。そうなの?

 ルーベル家の代表はロイで実家からはネビーとジンだから違う気がする。


「何大事な仕事から逃げようとしてるんですか⁈ 気働きに発案に予定調整なんて俺やジンに出来るわけがないじゃないですか。俺よりジンの方が少し出来そうだけどロイさんと比べたら出来ません」

「お断りします」


 2人が食べながら会話してくれるから私は黙々と食事を出来る。

 昆布出汁にメジガロの佃煮とたくあん乗せが好きだな。

 それにしてもロイとネビーって本当に友人じゃなかったの?

 ベイリーやヨハネとまではいかないけど仲良しに見える。まあネビーだからな。


「俺は妹4人に甥だか姪が増えるしばあちゃんや両親の補佐もあるから手一杯です」

「それは大変ですけど代わりにしっかり家族の様子を把握しているということですから長男に相応しいです」

「ジンだジン。年齢順です。あいつこそ自分のことばかりだからあいつを長男にしましょう。ロイさんがルーベル家、俺が我が家でジンが取りまとめ」

「ジンさんとはまだ交流がないので何とも言えません」


 ネビーは交流した上で「兄」なの?


「2人が会ったら明らかに兄がロイさんでジンは弟分です。俺が独立するかもしれないから婿なのに妹教育やら何もしていません。ロカと遊ぶくらい。なのにちゃっかり両親に褒められて日頃何をしているんだか。これだから末っ子は」


 何ってネビーが勉強で居なかったり友人達に誘われてちょこちょこ消えるから薪割りとか重たい買い物とか私達がお風呂屋へ行く時の付き添いとか色々だ。


「末っ子体質なら結局自分達に仕事が回ってきませんか? 末っ子の友人がそういう感じでした。友人が教室長なのに副長の自分が教室長みたいになったことがあります」

「そりゃあ諦めて長男の座に落ち着くことですね。それは長男体質ですよ。事前に考えて気を回せるからバカな俺とは違います」

「ネビーさんに譲ります。リルさんお願いします」


 またロイにお酒を頼まれた。今度は升なので冷やを希望みたい。

 私は食べ終わったしロイ達もおかわりはもう要らなそうなので自分の分ともう使わなそうな食器をお片付け。

 おむすびを作っておいて明日の朝ご飯は焼きおむすびにしたい。あとは具沢山のお味噌汁。人数が多かったら具が少なめのお味噌汁になる。

 洗い物をしておむすび作りの前に居間を確認。


「デオン先生に言うので試合で俺が勝ったらロイさんが長男です」


 まだぼ者3兄弟の話をしている。


「それは卑怯です。それなら将棋で自分が勝ったらネビーさんが長男です」

「つまりロイさんは強いんですね」

「うーん。分かりません。なんとなくネビーさんより強い気がするだけです」

「つまり卑怯者です。俺と試合をしたいって言うていたから試合です試合」

「他人を卑怯者と非難して自分はしれっと卑怯を継続とはなんですか。対局です対局。長男の座は要りません」

「バカな俺が発案とか無理に決まってるじゃないですか。次男は俺。ロイさんは長男。いや、何で3男ジンって決まったような感じになっているんですか?」

「これが末っ子体質ですよ。恐ろしい」


 失礼します、と義母が居間へ入ってきた。ネビーは正座してピシッとなった。どちらさま? ネビーの登場。


「賑やかですけど長男やら何やらと何の話をしているのですか?」


 愛想笑いなのか本当の笑顔か分からないけど義母は笑顔をネビーへ向けてくれた。


「聞いて下さいよテルルさん。ロイさんがおかしいんです。両家の事を相談していく上で3兄弟みたいなものだから指揮官を決める、それは自分ではないと言うんです。どう考えてもロイさんなのに。気楽だから次男が良いとか3男だとか。バカな俺に長男の座を押し付けようとするんですよ」


 ネビーの口から「聞いて下さいテルルさん」という台詞を聞くとは思わなかった。まるで以前から知り合いですよね、みたいな雰囲気。

 しかしネビーだ。私とは真逆で人見知りをほとんどしない。ロイと沢山喋ったからもう緊張感が失われているのだろう。


「ネビーさんはお父上の補佐として大家族を背負っているではないですか。披露宴前にデオン先生に作法を習ってご家族に教えたり、親戚付き合いがありそうだから着物はどういったものが必要か、妹さん達の作法の練習はどうしたらよいかなど根回しをして頭を下げています」

「それは俺が言い出したことではなくて両親に高等校でのこととか普段の道場や仕事付き合いで分かるかって相談されたからです。発案したのではなくて頼まれたからです。つまりお遣い係の次男が3男です」

「ロイ。少しいいかしら?」

「母上。自分がしっかりとお礼をしています」


 これはどういう意味?

 ネビーもきょとんとしている。義母の笑顔が曇って眉間にシワが出来た。


「ロイ、流石にお父さんにはその話をしていますよね?」

「まさか」

「貴方はまた姑息な手を」


 姑息?


「あー、ロイさん。それは悪いですよ。親にわざと恥をかかせようなんて。デオン先生は笑い飛ばすでしょうけど……笑っていました。そうでした。言うていました。俺が悪いです。デオン先生に菓子折りを持って新年のご挨拶に行った際に先生に相談は嬉しいけど直接相談もするべきだって叱られました。話した方が良いって言われていたけど疲れで忘れていました。気が回らなくてすみません」


 義父母にわざと恥……。ロイの結婚関係や親戚付き合いのことだから義父母もデオンにお礼やご挨拶をするのが礼儀ってことだ。

 ロイは分かっていて義父母に隠していたということになる。


「ネビーさんはこうして来たじゃないですか。デオン先生に流石に長いとか親不孝をやめなさいと説教されました。浮かれたり試験や旅行で忘れかけていたというか忘れていました」

「ロイさんが俺を招いたのってデオン先生のことがあったからですよね。俺とロイさんが先生を挟むのは良いけどお互いの両親が先生にお礼のご挨拶くらいしないといけないと。ほら、長男はロイさんです」

「忘れていたと言うたじゃないですか」

「俺だってすぐ忘れます。もっと忘れます。バカには無理です。ロイさんにも言われたじゃないですか。ガイさんやロイさんのお勤め先を気にしなかったこととか。リルは元気かとか、ロイさんなら大丈夫とか、リルが去ってグダグダの我が家のことで頭がいっぱいでした」


 2人はまたぼ者3兄弟の話を開始。洗い物を回収して2人の升にお酒を注いで居間を出た。すると義母が追いかけてきた。


「リルさん……」


 ネビーも追いかけてきた。


「すみません。気がつくのが遅くなりましたけどお体は大丈夫ですか? 披露宴の日も特に大丈夫そうに見えましたけどデオン先生から見た目では分かりにくいけど家事は大変そうと聞いています。リルが不在で何か困ったら誰かに言うてそこらの兵官に伝言してもらえれば少しは役に立てると思います」

「ありがとうございます。そういう場合はご近所さん達が助けてくれると思います」

「ご近所さんの事でも力仕事は自信があるのでいつでもどうぞ。この辺りは見回り範囲ですし正官だと少々融通がきくみたいですので。リル、少しいいか?」


 義母に会釈をするとネビーに肩を抱かれて廊下の端へ移動させられた。


「厠借りていいか? どこ?」


 食事中に「俺うんこ行くわ」とたまに言い出すネビーとは思えない発言。


「……どうぞ。ネビーさんこちらです」


 ネビーに「ネビーさんって急になんだよ」と笑われた。

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