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お見合い結婚しました【本編完結済】  作者: あやぺん
日常編

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その頃の兄ちゃん編 3

 少し良くなってきたけど赤ちゃん返り中のロカに構う事が多い母の代わりに、俺とルカはなるべくルルとレイを甘やかしつつバシバシ鍛える予定。

 なので今日の茶屋へのお出掛けはルルとレイだけ。ロカにお土産もない。ルカには贈るつもり。

 ただしやはり懐妊疑惑で気持ち悪そうなので良くなってからの予定。

 と、いうわけで最初にやってきたのは茶菓子屋。母に「ルーベルさん家に手土産のお菓子を3人分と言われたのなら雅屋」と言われていたので雅屋。


 母に言われてロイにガイとテルルの好みを確認したら「招いたのはこちらなので要りませんがご両親が気にすると思うので指定します。予算が許せばリルさんが練り切り好きみたいなので練り切り3つ。母が好きなのでりんご3つ。練り切り優先で」と指定された。

 職場では言わなくて品選びで悩ませるのも要らないものや高いものを贈られるのも困るのでこういう付き合いをするそうだ。

 ご近所付き合いは違うらしい。その話はまだ聞けていない。


 雅屋はデオンへの新年の挨拶の際に菓子折りを買う店。ルルとレイは初来店だったようで俺の手をギュッと握りしめて不安そうな顔をしている。

 高そうな店構えだからだろう。俺もかつてはそうだった。

 練り切り3つ……3種類? 同じ物? 


「うーん。ルル、レイ。ルーベルさん家に練り切りを3つ買うんだけど違う物3つと同じ物どっちが良いと思う? 母ちゃんやルカと買い物をする時に何か聞いたことあるか?」

「兄ちゃん練り切りって何?」

「レイも知らない」


 まじか。そこからか。言われてみればそうか。世界が広い俺やルカとご近所周りばかりの生活の2人では知識量が違う。


「練り切りはこの綺麗なお菓子だ。食べたことがあるけど多分あんこだ。上品あんこ。そうだ。茶屋じゃなくて練り切りを買って帰るか? いや、茶屋はお団子以外もあるからな」


 お店で品良く食べる練習をさせたいが本音。


「これ食べられるの? きれい。兄ちゃん、梅の枝にはうぐいすが止まってほけきょって鳴くんだよ。だからこの梅とこっちのうぐいすは並べた方がかわゆいよ」


 レイが食い入るように練り切りを眺めている。ルルは「1番大きそうなの3つじゃない? 同じ値段で沢山がええよ」と口にした。

 へえ。ルルとレイの意外な違い。いつも2人1組で似たようなことを言っていると思ったけど違った。そりゃあそうか。それぞれ別人だ。

 そういえばルルの方が豪快弁当でレイの方がリルに少し似てきちっとしている。大きい握り飯だけど形が整っているのはレイだ。


「一花開いて天下の春って言うて、梅が一輪咲いたら春がきたって言うから梅とうぐいす2羽にするか」


 すみませんと注文。持ってきた手土産入れに練り切りを3つ入れてもらって風呂敷で包んでもらう。


「いっかひらいててんかの春って何?」


 食い付いてきたのはルルでレイはジーッと練り切り各種を眺めている。


「帰ったら筆記帳に書いてやる。他にも意味があった気がするからルルのためにロイさんに聞いておく。いや、寺子屋で先生に質問してみな。兄ちゃんが言うていたから知りたいですって。それで忘れている兄ちゃんに教えて欲しい」

「うん。ねえ兄ちゃん。茶屋には練り切りはないの?」

「どうだろう。デオン先生とか道場や職場の先輩達と行くのは食事処とか飲み屋だからなあ。先輩がお嫁さんに聞いてくれたお店にルルとレイを連れていこうと思っているけど場所しか知らないからお品書きは知らない」


 正確には知っているのは場所と予算だ。家計はルル、レイ、ロカの教育費とルカが産む子ども優先。

 変えなくて良いと言ったのにお小遣いを増やされたのでこうしてルル達を茶屋へ連れて行こうと思った。


「お客様、当店のお菓子を出して下さっているお店がこの通り沿い、右手に真っ直ぐ進んだ所にございます。甘味処まごころです。まごころさん用に作っているお菓子がございまして練り切りもあります。よろしければ」

「ありがとうございます」


 それは高そうな店。練り切り3つも高い。高いけどルーベル家に手土産にしては安い気がするし予算内。

 コソッとデオンに確認したら「ロイ君ならきっと何も要らないと言うたのにありがとうございますと受け取るだろう」と言われたのでこれ以上は気にしない。

 なのでロイに甘えて練り切りとりんご3つ。雅屋の次は八百屋。


「美味いりんごが売っているのはどこだっけ。母ちゃんに聞いたけど仕事で疲れて忘れた。ルルとレイはりんごが安い……安くてまずいのは困るな。まあ、りんごのお店を知ってるか?」

「えー。昨日お母さんが向こうの八百屋、もう頼んであるからそれを値切って買えって兄ちゃんに言うてたよ」

「おお、ルルありがとう。連れてってくれ」


 買い物関係はサッパリ。ルルに連れられて八百屋へ来て「ネビー君、エルさんから頼まれたりんご3つだ」と売られた。

 ルルとレイが「高い!」と騒いで安くなった。誰々の八百屋ではいくらと言われたとか大騒ぎ。

 買い物後にレイが「りんごの値段なんて知らないけど安くなったね」と口にして脱帽。

 食材は常に値切るものだけど相応しくない値段まで下げろも悪手らしいとルルとレイから教わった。値切ってはいけないものもあるという。これは俺は学んでいない世界。俺にようやく余裕が出て来たという証だろう。

 予算より安くなったのでりんごは4つ買って1つを家族用にした。


「りんご、りんご、りんご」

「ルル、ルカ姉ちゃんにうさぎにしてもらおうね」


 ルルもレイも鼻歌混じりで嬉しそう。くだものは母や俺へのお礼で貰うけど買ったことってあったか?

 俺は値段もロクに知らずに受け取っていたと自覚。両親は御礼の御礼はしなくて良いと言うし俺の人間関係でもそうだけど卿家ではどうなのかロイに聞いてみよう。


「えー、レイがする。いつもリル姉ちゃんがするからってさせてくれなかったからレイがする。兄ちゃん知ってる? リル姉ちゃんはりんごを剥く係をして盗み食いしてゲンコツされてた。その後は皮を厚く切ってまた独り占め。また怒られてやめた。でも皮を1人で食べちゃう。ルカ姉ちゃんはしないしレイもしないよ」


 最初の盗み食いしか知らない。リルは素直と思っていたけどそうでもなかった。母がルルとレイとロカに接する機会が増えるのは大事だな。


「あー、盗み食いは次の日の朝に屋根から雪が落ちて転んでランツさんに踏まれた時だな。リルのやつバチが当たった、2度と盗み食いをしないと言っていたな」


 そういえばリルって昔からバチが当たる女だ。占いオババの台詞は当たっているかもしれない。


「まごころって店はここか。うーん、あんまり高かったら別の店にする。いや、ルルとレイは回数が増えるのと高いお店に1回とどっちが良い? 2回お出掛けの方がいいか?」


 店前のお品書きを確認して「予算内だけど評判を知らずにこの値段は挑戦したくない」と思った。雅屋が関与なのでそこは安心感がある。


「ルルは兄ちゃんが遊んでくれるなら2回がええ。同じ値段ならたくさん食べられる方」

「レイは1回でええから練り切りを食べてみたい」


 真逆の意見。雅屋での会話でそんな予感はしていた。


「よし。今日は2人一緒の日だ。兄ちゃんが行こうと思っていた茶屋に行く。それで今度ルルだけ、レイだけの日を作る。レイはその時に練り切りを買おう。ルルは沢山か。まあ2人で考えような。レイも兄ちゃんと次はどこに行くか決めよう」


 兄ちゃんありがとう、と2人とも小躍り開始。ルカは隣、リルも近所なのでルル達3人も遠くへ嫁に出すのは断固反対。

 貧乏から徐々に脱出する予定というか脱出が始まっているので16歳元服で嫁に出す必要はない。なるべく長く楽しく暮らす。ルルとレイが歌うから俺も鼻歌。


(俺がバカじゃなければ1年早く正官でリルもここにいたんだよな。まあサボッてないから後悔しても無駄か。いや、ロイさんが乗り込んできたのか? 普通にお見合いしますという返事だったら普通に何度もお見合い、お出掛けと言うていたからその場合リルはロイさんを気に入ったのか?)


 縁とか家とか人生って不思議。ルルやレイにロカにも予想外のことが起こるかも。

 ルカが本当に子どもを宿したのなら無事に出産出来るか不安。出産は命懸け。母の血を濃く受け継いでいますように。

 母が出産に立ち会って出産時に亡くなった妊婦や赤子はいないらしいからその謎のご利益がルカにもしっかりありますように。

 茶屋に到着して2人の行儀練習のためと寒いので外の長椅子ではなくて室内希望。少し待たされた。


「今日は兄ちゃんがお品書きを読むけど勉強したら自分達で読んで選べるぞ」


 お品書きは団子数種類、餅数種類、ようかん、名物白玉おしるこ(冬)だった。夏は何なんだ?


「ルルはお餅! きなこ餅!」


 餅は家でも食べていて団子は作れないか作らないのに餅?

 あとみたらし団子はどうした。ルルはずっと「みたらし」と歌っていたのに。


「レイは知らないから白玉おしるこがええ。あんこならきっと好き」

「ルルはレイより安いから団子も頼んで良いぞ」

「兄ちゃんきなこ団子!」


 みたらし団子は?


 茶屋に入ったのは初めてだけどお茶は無料だった。薄い緑茶。思ったより安かったので2人に約束通り次のお出掛けもしてやれそう。

 拾った皿を売ってリルと2人で食事をしたなとか、ルカの祝言前にこっそり2人で食事をしたなと思い出した。

 名物おしるこが高かったのは白玉が3色で、あんこをかけて食べる餅米少しとたくあんまでついていたから。

 ルルにきなこ団子を追加して良かった。


「兄ちゃんお金足りない? お団子食べる?」

「ありがとうルル。お金が足りないんじゃなくて、兄ちゃんこれからルーベルさん家で夕食をごちそうになるからさ」


 ルルは「レイが好きなきなこだよ」とお餅もお団子もお裾分けしている。それできなこだったのか。レイはおしるこに夢中。


「今日はルカ姉ちゃんとカニのお味噌汁を作るんだよ。干した殻でまたカニの味がするんだって。宴会でお野菜沢山もらったから具沢山」

「お米も沢山もらったしジン兄ちゃんが釣ったイカも食べるよ。お母さんと干物にしたの」

「ジンを海に連れて行ってくれたロイさんのお義父さんに沢山お礼を言ってくるからな」

「リル姉ちゃんに遊びに来てって言うて。兄ちゃん忘れっぽいけど忘れないでね」

「ルルの言う通り兄ちゃん忘れっぽいけど絶対に忘れないでね」

「はいはい」


 毛むじゃらカニは幻の縁起カニらしくてそれは我が家では俺とジンだけの秘密。

 長屋と父の職場の人達に声を掛けて大宴会。

 こんなに美味いカニをお裾分けとは大感謝と我が家はあちこちの家から米に野菜に酒に調味料とあらゆるお礼を受け取った。

 しかもルーベル家の生簀(いけす)にまだ我が家のヒシカニと高級食材のイーゼル海老がいるとか。

 小さめのカニを1匹売って大きなカニを6匹も買えて、他にもうんと安く買ったり交換したリルの強運には驚き。


(今回の規模は大きいけど昔から綺麗な皿を見つけたり、リルが仕掛けたらやたら川海老が大漁だったり、財布を拾って届けたら米屋の店主の財布で米を贈られたり色々あったしな)


 リルの玉の輿もそういうこと?


(蛇に噛まれたり蜂に刺されたり意味不明な難癖に絡まれたりもリルだけだから心配だな)


 俺はルルとレイが美味しそうに餅やおしるこを食べるのを眺めながらそんなことを考え続けた。

 ルカにお土産という名目でみたらし団子を購入。ルカに渡してルルを褒めてお裾分けしてやってくれと頼むつもり。多分ルカは気分不快で食べられない。

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