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遊ぶ4

 チーズはびよーんって伸びて楽しいし焼いたら臭くなくて美味しかった。それから白ソースも良い。

 ご飯は白米にバターとほんのりニンニクの香り。

 ホタテグラタンだからちびホタテ3つ。星型の人参が乗っていて、白ソースには玉ねぎとほうれん草が混じっていた。


 シチューは鍋みたいなもの。人参、じゃがいも、玉ねぎ、ほうれん草に鳥肉。安いのは具材が少なめで小さいからだろう。

 白ソースもシチューも味の元、出汁が分からない。玉ねぎスープの出汁も不明。ミネスタローネと似ている気がするからコンソメというもの?

 海老フライは美味しそう。こうなると海釣りで海老をとりたい。


 味に集中したら喋らないかもしれないこと、普段の食卓もあまり喋らないと伝えたのでクララ、エイラ、クリスタは味の感想合戦をしたけど私は無言で過ごした。

 彼女達の話も聞いていたような聞いていないような。全員ミニデザートを食べるということで飲み物とミニデザートを追加注文。


 プリンは甘い茶碗蒸し疑惑。器に入っていないでお皿の上に乗せられて茶色いほろ苦いものがかかっている。

 砂糖とたまごと出汁の代わりに何か。たまごの色合い的にもしや牛乳?

 ほろ苦いものは何か不明。


 味盗みは仕事なので店員を呼んで奥さんに質問があると頼んだ。

 彼女の服装は店員と違った。かめ屋の料理人と似た格好。髪が茶色くて目が深い青色。異国の人だ。西風料理人だから西の国出身かな。奥さんは料理人だったのか。


「あまりにも美味しかったのでお礼を言いたかったです。ありがとうございます」


 私がお礼をするとクララ達も続いた。


「とても嬉しいです。わざわざありがとうございます」

「家庭料理の西風料理本を買って挑戦中です。今日もパンとマヨネーズを買って帰ります」

「まあそれはありがとうございます」

「コンソメは売れないものですか? シチューやドリアを作ってみたいです。本にはかつおと昆布の合わせ出汁と書いてありました」

「ふふっ。ご自宅で作られると来店が遠のきそうなので秘密です。その出汁ならお味噌を入れても美味しいと思います。シチューは魚介もおすすめです。ドリアにはトマトソースを挟むこともありますので当店のトマトソースを是非どうぞ。忙しいので失礼しますが、空いている時間帯に本を持ってきていただければ家庭料理、煌風のご相談に乗ります。ご自宅でも西風料理をなんてとても嬉しいです。ありがとうございます」


 コンソメ販売は拒否されてトマトソースの宣伝と親切にされた。

 本を持って質問しに来て良いならまた来よう。店員が親切なお店ではなくて奥さんが親切だから親切なお店なのかも。


「リルさんは西風料理を作れるのですか?」

「私も驚きました。西風料理の本があるなんて知らなかったです」

「私もです」

「それなら帰ったら本を見せます。アクアパッツァとムニエルとサンドイッチは作りました。旦那様とお義母さんは西風料理を好みます。お義父さんとは相談です」


 クララの家も我が家と似ているらしい。


(うち)は大お義母さんがいるから無理かなぁ。でもサンドイッチはええ気がします。母と作って大お義母さんはご飯でお義母さんと私はサンドイッチなら有りなのかな。お義母さんは西風料理を好んでいます。先月旦那様と鮭のムニエルを食べた、美味しかったと言うていました」


 クリスタも家で挑戦したいとなったので今度一緒に西風料理をしようと約束。

 お会計をしてお店を出る。次は私のお買い物。エイラおすすめの茶道具店へ向かって歩き出した。

 歩いてエイラとプリンの素晴らしさについて語り合っていたら少し先の道で白髪の男が兵官に襲われた。取り押さえだ。


「腹減りの辛さは分かるが食い逃げするなら物乞いか海釣りか日雇い仕事か何かしろ!」


 食い逃げらしい。ロイと仲間達の仕事がまた増えた。やめて欲しい。犯人を縛り上げて踏んづけた兵官と目が合って驚いた。

 仕事中のネビーに初めて遭遇。離れて歩こうとしていたけど思わず近づいた。拍手されているので加わる。

 食い逃げ犯は「金持ちが説教をするな!」と大騒ぎ。ネビーに「うるさい」とさるぐつわされた。

 実家は貧乏。最近もう腹減りはしないしこれから生活がさらに良くなりそうだけどまだ貧乏だ。

 でも家族は一度だって食い逃げをしたことはない。


「誰かと思ったらリルじゃねえか。兄ちゃん珍しくこの辺りで仕事だったんだけどお前は買い物か。ん? そのカゴの中身は食べ物か?」

「これは食パン。サンドイッチを作るの」

「サンドイッチ? 何だそれ。そうそうリルは漢字を書けるようになったんだな! それに茶道を習うって。今度サンドイッチが何か教えてくれ。ルル達と返事を書くからその返事」

「うん。あとサンドイッチを作る」

「それは楽しみにしてる。じゃあな。兄ちゃんが見回りをするけど気をつけろよ」


 笑顔で手を振られたので手を振り返した。ネビーは食い逃げ犯を引きずりながら遠ざかっていく。


「おおっ! 転んでも泣かないとは強い男だな! 気をつけろよ! 母ちゃん美人だから強くなって守ってやりな!」


 ネビーは途中で転んだ男の子を起こした。それでまた走っていく。よおネビー! と呼ばれて挨拶を返している。よく見る光景。


「リルさん」


 クララに呼ばれて振り返った。


「ロイさんと同じ剣術道場のお兄さんが今の方なのですね。兵官さんだったとは。食い逃げ犯にみるみる追いついた足の速さに驚きました。それにあっという間に捕まえて」


 兵官って言ってなかったっけ?

 言っていない。


「お兄さんは兵官かあ。ルーベルさん家の旦那さんは煌護省だから兵官の親戚はええと思ったんですねぇ」


 クララの隣にエイラが並んだ。私は小さく頷いた。それからネビーの宣伝だ、と思い出す。


「兄ちゃんは昔から親分肌で強かったので周りの人に兵官になると良いといわれてうんと励みました。長屋の人気者です」

「でしょうね。あの感じ。色々な人に声を掛けられて挨拶をしている先程の姿はまるで人気火消しや人気兵官の人気が出る前です。そのうち追っかけや取り囲みされるんじゃないですか?」


 そうなの?

 私は忙しくて街をそんなにプラプラ出来なかったからネビーの活躍も人気火消しや人気兵官にも疎い。


「兄ちゃんは旦那様が10歳の時からの知人です。旦那様は兄は昔から強いと言うていました。後輩門下生の面倒見も良かったそうです」

「ロイさんとリルさんの縁結びはあちらのお兄さんか。お兄さんの性格からリルさんの性格を推測したんでしょうか。そのうちご近所の娘さんと縁談とかあるんですかねぇ。クリスタさんはああいう方よりヨハネさんですか?」

「は、はい。あの、すて、素敵な方ですが……。いえ、お話ししたらドキドキするのでしょうか。分かりません」


 ネビーとクリスタが喋ってもクリスタはドキドキしないと思う。

 そういえばネビーの色恋話って聞いたことがない。友人は沢山いるけど女性には人気がないのかな。足くさだけど洗えば大丈夫だし優しいけどな。手紙で聞いてみよう。


 私達は再び茶道具店へ向かった。義母に言われたものをエイラに説明してもらいながら購入。


「リルさんは青色系が好みなんですね」

「はい。宝物中の宝物の(かんざし)と同じ色です」


 エイラに問いかけられて私は大きく頷いた。春生まれなのもあり桜色やたんぽぽ色が好きだったけど去年から違う。


「その(かんざし)はロイさんからの贈り物ですか。ランプに行ったときも外で見かけた時もいつも同じですよね」


 ふふっ、とクララに悪戯っぽい笑顔を向けられた。


「結婚お申し込みの時にいただいた品です」

「ルーベルさん家は鬼灯が家紋でしたね」

「あの絵はそうなのですか? 知らなかったです。勉強不足です。旦那様に聞きます。魔除けと幸福をもたらすと贈られてそうなのかぁ、嬉しいと思っていました」

「あなたに降りかかる厄災を祓って幸せにしますとはええ贈り物ですね」


 そういう意味もあるのか。ますます嬉しい。

 クララも家紋の菊の(かんざし)を贈られたそうだ。大事にしまって節目のお祝いで使用している。クララの実家の町内会の男性は飾りクシを贈るそうだ。

 エイラはオーウェンから結婚お申し込みではなくていきなり半結納を頼まれたので現金を包まれた。旅行中に何か買ってもらうと良いという話で盛り上がる。

 次はうらら屋へ行きクリスタに似合う髪型、最近の流行りを教わった。

 以前沢山買ったしその後も買ったので今日何も買わなくても気兼ねがない。


「ルーベル様。セヴァス様をご紹介していただきありがとうございます。あちらのセヴァス様は副神様のような方でご紹介で来店されたという方が多いです」


 ホクホク顔のミミに耳打ちされた。そうなんだ。今日クリスタが無料で髪型を教われたのはクララのおかげということ。お店は儲かったしクリスタは助けられたし良いことだ。

 私達はその後に茶菓子屋、魚屋と八百屋へ行った。

 ロイと街を歩くのとはまた違った楽しさがある。

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