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異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと  作者: アニッキーブラッザー
第十四章 男たちは征く

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第600話 真の愛

「そう……私もディズムもラブ・アンド・ピースの罠にハマり、当時奴らと結託していた『大深海賊団』に敗れ、逃走を試みるも結局捕まり、深海世界で幽閉されていた……でも……その深海世界で私たちは『あの方』と出会うことができ、そして決心した!」


 シンカイゾクダン? ああ、深海族の海賊か。あの、クレオを十年前に襲ったという奴らか。

 かつて、ラブ・アンド・ピースと手を組んでいたようだが、そこらへんの情報を全然マニーから聞いてなかったな。

 んで? 不機嫌な顔から突如恍惚な表情で語りだすこの雌竜は、他に誰と出会ったって言うんだ?


「あの方は、遥か昔の大戦でその肉体を深海世界に封じ込められ、意識のみでしか私たちに語り掛けることができない。でも、言葉だけで十分に伝わる。その思想、魂、エロスヴィッチ様の愛やエロスすらも霞んでしまうほど……そう、あの方こそ、真の愛の伝道者!」


 いやいやまてまてまて。この雌竜、今とんでもないことをサラッと言ったぞ? エロスヴィッチが霞む存在?


「って、そんなの居るわけねーだろうが! あの変態女が霞むとか、どんな変態に心を奪われているんだよ、テメエらは!」


 エロスヴィッチ以上とか、そんなの居るはずがねえだろうがと俺が叫んだ瞬間、雌竜のトリバが俺を見て、突如驚いたように目を見開いた。



「………朝倉…………」


「……………なに?」



 …………俺………そして、江口ことフルチェンコも、思わず目を丸くしちまった。いま、間違いなくあの竜は俺のことを「朝倉」と呼んだ。



「かつて、あんたはあんたなりの愛に生きる男だと思っていた。不器用ながらも想いを貫く男だと思っていた。でも、違った。あんたはただの女好きだった」


「…………おい、テメエ………一体……」


「あの方は言ってくれた! 男と女が交わるのはただの生理現象に過ぎないと! 動物的本能に過ぎないと! 子孫を残そうという無意識な想いに過ぎないと! だからこそ、それは愛ではないと。しかし非生産的だと理解しながらも、それでも交わることを求める心。常識から外れ、周りから奇異な目で見られても抑えきれない想いがあるのならば、それこそが本当の愛だと! そう、つまり私たちのこと!」



 いや、そういう主義主張はどうでもいい……そんなの好きにしろよ……でも……


「おい、テメエは今、俺のことを朝倉って……」

「深海世界に捕らわれていた私も、半年前の戦いのすべてを知っている。あんたの正体もね。そして、その嫁事情もね」

「ッ、まさかテメエは!」

「ふざけてるよ、本当に。偽愛の安売りをするあんたが世界の支配者? 冗談じゃない!」


 そのとき、サファイアドラゴンが翼を大きく広げて咆哮した。


「ちょうどいい。あんたがここに居るのなら色々と利用できる! 聖騎士のようにボコって、そしてあんたは人質にしてやるよ!」


 その振動が海上を揺らして、船が傾きかける。


「愚弟。テメエまた例のよくわからねえ事情か?」

「ぶひいいい、どどど、ドラゴンが怒っちゃったんだな! ヴぇルトくん助けてなんだな!」

「ぐわははははは、なんじゃ婿よ。やけに嫌われておるではないか。何かあったか?」


 正直な話、どうして俺が嫌われているのかはよくわからねえ。

 そして、このサファイアドラゴンの正体もよくわからねえ。


「フルチェンコ、こいつは……」

「だろうね、ヴェルちゃん」

「だな。んで、心当たりは?」

「……綾瀬華雪や鳴神恵那に続く、校内女生徒写真ランキングでも売り上げトップクラス……思春期男子を悩ます……最巨乳に心当たりが……」

「はあ?」


 でも、それでも俺とフルチェンコは理解した。

 こいつも、「俺たちと同じ」なんだと。


「まあ、いいや。……んで? 宝石ドラゴン。こうして再会しちまったクラスメートをぶっ殺そうとしてまで、テメエは何をやりたいんだ? つか……誰だお前」

「ふん……決まっている。あの方を復活させ、そして私たちだけの……女だけの国を作るため! 現状の法律に縛られることなく、真に愛する人と結ばれて家庭を築くための世界を!」

「おお、そうかそうか。この世界じゃ法的には同姓婚は認められてねーわけか…………で? だからどうしたってんだよ!」

 

 でも、だからってなんで俺がこんな奴に殺されなくちゃいけねーんだよ。



「ふわふわ天罰レーザー!」



 雲を突き破り、天より降り注ぐ極太レーザー光線を、サファイアドラゴンめがけてぶち込んでやった。

 何の前触れも、気配も感じさせず、一瞬で大気中の魔力を掻き集めて、凝縮して放つレーザー光線。

 いくら、数年前までは世界に名を馳せたドラゴンとはいえ、避けることなんてできなかった。


「お、おおおおお! ヴェルトくん、すごいんだな!」

「ほほう。前戯もなくいきなり極太のものをぶち込むとは、婿も容赦がないの~」


 巨大なドラゴンが勢いよく海に落下。巨大な水しぶきが上がり、男たちからは歓声が上がる。

 船上の忍者や、上空のドラゴンの群れも突然の出来事に動揺しているのが分かる。

 そう、人をナメてるからそうなるんだよ。

 つっても……


「おい、あんた…………なにすんのよ!」

「へえ~、硬い鱗だな。手ごたえはあるが、傷ついてねーみたいだな」


 そう、まともに攻撃を食らわせることはできた。だが、相手を粉砕した感触はない。

 とはいえ、本人は激オコ状態だけどな。


「男嫌いとか、女同士がどうとか、そんなのに口出す気はねえ。俺なんてついこの間は腐女子軍団と遭遇したんだから、別に驚きはしねえ。それも一つの文化ってもんなんだろ? 勝手にやってろよ、俺は興味ねえ。でもな……」

「……………あんたッ!」

「とりあえずお前ら攫ったやつら返せよ」


 トリバは海の中からズブ濡れになった状態で飛び出して、今にも俺たちに噛みつこうとしている。

 来るか? まあ、とりあえず、この雌竜がクラスの誰で、んで何があってこんなんなっちまったのかなどの話は、この場を抑えてからにするしかねえな。

 すると…………



「ひどい………ひどいよ~、トリバちゃんになんて酷いことするの~……朝倉君~……」



 あさっての方角から、なんとも情けない泣きそうな女の声が聞こえてきた。いや、「女」というより「少女」のような声。

 その情けなさは、一瞬、幼馴染のペットを彷彿とさせた。

 そして、その声のした方角には無数のドラゴンに紛れて……なんか、透明なキラキラ輝く鱗を散りばめた、犬猫のように抱きかかえられるぐらいの大きさのドラゴンが、半泣きで俺を見ていた。


「おおお! ほほう、あれもまた懐かしいのう……ぐわはははは、相変わらずちっこいのう」

「ヴェルトくん、あっちに、すごく小さいけど宝石の鱗のドラゴン居るんだな! でも、泣きそうなんだな! ファルガ王子は知ってるんだな?」

「…………あれは……三大宝石竜のダイヤモンドドラゴン…………そして、あのクソ小さい体ながらも、ドラゴンの群れを率いることができる存在……例のクソ百合竜のもう一人か」


 百合竜! アレが? あんな抱っこできるぐらいの大きさのドラゴンが、こっちの巨大サファイアドラゴンのコンビっていうのか?

 いや……それよりも……


「ヴェルちゃん……あっちの子も……『朝倉くん』……って、呼んだんじゃない?」


 ああ、フルチェンコのいう通り、あのチビドラゴン、間違いなく俺を「朝倉」と呼びやがった。

 おいおいまさか…………



「それに、トリバちゃんもダメだよ~、こんな怖い人たちを相手に無闇に飛びかかって、もしトリバちゃんに何かあったら………私………生きていけないよ~……」


「ディズム………うん、そうだよね、ごめんね、泣かないでよディズム。私はあんたの笑顔だけが見たいんだから。ねえ、私に何かあってほしくないなら笑ってよ。それだけで私は、なんでも出来ちゃうから」



 ……なんか、いろいろと、どうすりゃいいのかよく分からなくなってきた……

 ……とりあえず、まとめてボコって捕虜っておくか。



祝! 600話! 更新しまくってついにここまで来ました。

そして本年も大変お世話になりました、来年もよろしくお願いいたします!!


引き続きもっと多くの方に読んでいただきたく、今後ともよろしくお願い申し上げます。


つきましては、本作の作品のブックマーク登録及び下記の「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」にご評価いただけたらと思います。今後の励みになりますので、何卒よろしくお願い申し上げます!



また、下記の新作もお願いします。閑古鳥すぎて涙目です。


『ループした悪役かませ炎使いが真面目に生きたら勇者覚醒イベント潰してしまって世界はピンチ?』

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