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異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと  作者: アニッキーブラッザー
第十三章 幼馴染メモリアル

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第574話 ざまあ!


「い、意外に……直球勝負じゃねえか、ヴェルト。なんで、それを面と向かって言わねーんだ?」

「ヴェルくん、良かった! ちゃんとお嫁さんたちのことを想っていたのですね。すごく安心しました」

「ふっ、そういえばラブが言っていたな。確か、こういうのをツンデレと呼ぶのだったな」


 先生とカミさんにバスティスタ……


「い、言うじゃない、ヴェルトくんも」

「やっていることはゲスなのに、ちょ、ちょっとドキドキしちゃった……」

「く、反則ってやつだね……」


 聞いてて恥ずかしかったのか、顔を赤らめている、ホーク、サンヌ、ハウ。


「……ニート君、面と向かって私に言うことはないですか? かも~ん」

「ないんで」


 羨ましそうにしているフィアリに、一つ仕事を終えたぜみたいなニート。


「ほ~~~~う、たまには言うね~、愚婿も」

「う、ぐううう、き、聞かれちまった」


 ただ、その何とも言えないような甘酸っぱいような、恥ずかしいような空気の中、俺の言葉を聞いた嫁三人は、ママの尻に敷かれている俺を抱き上げて、感極まって飛びついてきた。



「ヴェルト! そうですわ! そうなのですわ! 昔も今もこれからも、ヴェルトのことをこの世の誰よりも想っているのはワタクシですわ」


「私を幸せにするだと? まったくもう……もう……とっくに幸せなのに……、と、とにかく! お前のやることは私を幸せにするのではなく、私と幸せを築くことなんだからな! もっと、ら、らぶらぶ、して、こ、子供とか、な?」


「何が重くて引くのよ。言っておくけど、この程度の重さで引いてはダメよ? 私の想いはこれからももっともっと重くなるんだからね♪」



 もう、さっきまでの怒りはどこかへいったのか、俺を起こしてはモミクチャにしながら抱きついたり擦り寄ったり……



「むふふふふふふ、むふ~~~~! ヴェルトったら、本当に素直じゃありませんわね」


「えへへへへへへ、えへ~~~~! ヴェルトの恥ずかしがり屋め。父上をいちいち引き合いに出さなくても、素直に言えばいいものを」


「うふふふふふふ、うふ~~~~! ヴェルト君ったら、なんだかんだで、私たちのことを、ちゃ~~~んと考えてくれていたのね。照れちゃって可愛い! マイダ~リン♪」



 くそ、こいつらの顔……「勝った! ついに勝った! 主導権はもうこっちのもんだぜ!」みたいな顔してデレデレニヤニヤしてやがる。


「ふん、全く、デレデレして情けないわね」

「おやおや、クレオ姫。あんたも人のことを言えないと思うけどねえ」


 つまらなそうな顔をしているクレオと楽しそうにしているママ。


「くそ、もう、いっそ殺してくれ……」

「ダメですわ、ヴェルト。世界一あなたを想う私が許しませんわ♪」

「私ともっともっと幸せを築いていくのだろう?」

「安心しなさい。殺すことはできない代わりに、死ぬほど愛してあげるから」


 殺される心配はなくなった。でも、何だか死にたくなった! 

 このすべての流れを、ニートの野郎にコントロールされているのかと思うと、無性に腹立たしくなる。


「く、くそ~、ニ~~~~トォ~~~」

「いや、そんな顔で睨まないで欲しいんで。めでたしめでたしに導いたのは、俺の功績なんで。死ななくて済んで感謝して欲しいんで」


 畜生、ニートにも天罰を! それでなくても、一発ぶん殴りたい!

 なんかリア充爆死しろとか呟いているけど、恥ずかしくて死ぬぞ!

 だが、この時……


「しっかし、まさかタブレットとは懐かしいですね~……こんなのが向こうの世界に……」


 俺の痴態を晒したタブレットを、興味深そうに弄っているフィアリ。

 するとその時、ニートも知らなかった、そして想定していなかった事態が起こった。


「動画もいっぱい入ってますね~、これとかこれとか、ん? これは……」


 実はニートは、そのタブレットの中身は俺の痴態を録画した動画だけが入っていると思っていたようだ。実際俺もそうだと思っていた。

 ニートは、ブラックからお土産にもらったというタブレットのデーターフォルダを、そこまで詳しくまだ見ていなかったこともあり、ニートは『その動画』ファイルを知らなかった。



『え、えへへ、やっほー、ニート! ビックリした?』



 ―――――――――――ッ!


「えっ? な、なんで?」

「……ん? ニート君、この子、誰ですか?」


 ニートの体がビクンと跳ねた。俺もちょっとビックリした。


「……ぶ、ブラック?」


 フィアリが何気なく弄って再生した動画。そこにはブラックの姿が映し出されていた。



『へへ~ん、タブレットにコッソリとメッセージを残しちゃったんだから! これぞまさしく、ブラックサプライズ~! どう? 嬉しいでしょ? か、感謝しなさいよ! この、スーパーアイドル、みんなのブラックちゃんから、ニートだけにメッセージ贈ってあげるんだから、な、泣いて喜びなさいよ!』



 ブラック……そんなことをしていたのか? 確かにサプライズだ。ブラックサプライズだ。

 でも、泣いて喜ぶのは無理かもな。だって、今のニートは普通に泣きそうだから。



『そ、そのね、ニート、み、短い間だったけど、まあ、楽しかったわ。それに、あんたって、私が可愛こぶっているキャラクターなんか簡単に見破って、素顔の私と接してくれて、そ、その、うう、う、うれし、ちょ、ちょびっとだけ嬉しかったかな? まあ、あんたも、私みたいな超可愛い女の子と話をできたんだから、天にも登るほど嬉しいでしょ?』



 天に登るほど? 今のニートは地獄に落とされたような顔をしているぞ?



『だ、だからね、その……ちゃ、ちゃんとまたこっちに来なさいよってこと! いい? 約束だからね! だから、いつもはファンの人たち皆に向けてやることだけど、今日は特別に、ニートだけにやったあげるから!』



 何をやるつもりだ? まあ、ニートはられそうだけどな。

 すると、ちょっと恥ずかしいのか、照れているのか、顔を赤くしたブラックは一度深呼吸をして、目をカッと見開いた。



『ラブラブラックのブラックちゃんは~、今日もラブラブラックなの~♪ だからニートとラブラブラック♪ それじゃあ、ニートも一緒に、ラブラブラック~! ニートの色が、どんな色でも、私と混じればどんな色でも黒くなる! ブラックカラーであなたを私色にそ・め・ちゃ・う・ぞ♪ ニートに届け、ラブラブラック!』



 ……………………くはははは


「お~い、ニート、やらねえのか? 言ってるじゃねえか、ニートも一緒にラブラブラック~、だろ? くはははははははは!」


 やべ、わ、笑いが堪えきれねえ。もう、俺は冷やかす感じで思う存分言ってやった。

 すると……


「……………なるほど、これが向こうの世界のスパムメールのようなん―――」

「動画ですニート君」


 早いッ! 抑揚のない声でフィアリのカウンターツッコミが入った。


『それじゃあ、ニート、またすぐこっちに遊びに来なさいよ! そ、それとさ、あ、あんたってば、か、彼女居るみたいだけど、どうせあんたなんかすぐに振られるに決まってるんだからさ、そ、そうなったら、か、可愛そうだし、ま、まあ、私が―――――』


 ―――ブチッ!


 まだブラックが話しているのに、ニートがタブレットを強制シャットダウンしやがった。

 そしてニートは、俺たちに背中を向けて足早に扉へと向かった。


「さあ、俺も仕事あるんでそろそろ戻るん―――」

「おいこらニートくん、ちょっとお話があるので一旦私たちの愛の巣に戻りましょうね」


 だが、回り込まれた。

 満面の笑みのフィアリ。俺にはその光景が、フォルナとウラとアルーシャのデジャブに見えた。

 そして、それをニートも思ったのか、全身がガクガク震えて、汗がダラダラと流れている。

 そりゃそうだ。さっきまで、「ヴェルトざまあ」とかって思って、第三者の安全ポジションで笑っていたこいつが、まさか自分も同じシチュエーションになるとは思っていなかっただろう。


「えへへへ、みなさ~~ん、私、ちょっとカレシと~二人で~、お話があるので、今日はここで失礼します~」

「…………い、いや、フィアリ、じゅ、ジュース屋を」

「えっ? なんですか? ミキサーで攪拌されたいんですか?」

「…………い、いえ、なんでも」

「ではでは~」


 今の俺は、多分、悪魔と呼ばれてもいいぐらいの笑顔を浮かべているだろう。

 心の底から思った。ザマア!



「いやぁ……ニート哀れ。ということでお前ら、メシに――――」


「「「「…………ん~♥」」」」


「え、あ、おい、お前ら……ちょ、おい!?」


「「「「夫婦の営みが先~♥」」」」



 だが、俺も逃げられなかった。

 俺はそのまま四人の女に寝室へ連れ去られ――――

 

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