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異世界クラス転生~君との再会まで長いこと長いこと  作者: アニッキーブラッザー
第十二章 お前との再会からも長いこと長いこと―神世界

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第521話 ぷんすか天使

 朝起きたとき、俺はホテルの廊下で寝てた。

 本来フカフカの高級ベッドに寝れるはずだったのに、昨晩は廊下でそのまま倒れちまって、結局朝までノンストップで寝ちまった。

 体中が痛いのと、昨晩のエロスヴィッチとバスティスタの大騒動の影響で、随分と朝から市民やら政府関係者やらがバタバタしている。

 どうやら街の至るところで、機動兵と呼ばれるロボが出動したり、ドラゴンや九尾の化物が出現したとか、色々なニュースがありすぎて、情報整理もうまくできていないようだ。

 それに、アイドル姫のバスティスタへの告白とか、話題に事欠かないだろう。

 しかし、テレビでも点ければ、そんなニュースを見ながら朝飯でも食えるんだろうが、俺は今そういう状況ではなかった。


「う~~~~~~~~~~~~~~」


 俺は今、VIPルームの豪華な部屋のベッドの前で、リガンティナと二人並んで正座していた。


「悪かったよ」

「すまん。昨晩はどういうわけか興奮が収まらず、お前を置いて部屋を出てしまった」


 ベッドの上に座って、頬を大きく膨らませてムス~っとしてる天使が一人。


「お嬢様、申し訳ないでござる。拙者も今朝、目を覚ましたら、違う部屋で……」

「私、なんであんな恥ずかしいことを夕べ……う~、エロスヴィッチさんの、ばかあ~」


 正座している俺とリガンティナの後ろでは、土下座して地面に額を擦りつけているムサシ。

 そして、昨晩での己の痴態を思い出して、顔を覆い隠して項垂れているペット。

 で、なんでこんな状況なのかというと………



「パッパとティナおばちゃんの、いじわるっ!」



 今、朝一で俺たちはコスモスからの説教タイムだったからだ。



「ウラちゃんとフォルナちゃん居たとき、パッパたまに一緒に寝てくれなかったけど、マッマたちがお仕事でいなくなったら、毎日コスモスと一緒に寝てくれる約束した! ティナおばちゃんも、パッパくるまで一緒にいてくれるって言ったのに、ウソついたッ! コスモス、昨日、一人ぼっちで寝たもん! うそつきうそつきっ!」



 なんでこうなったか。まあ、要するに、昨晩俺も力尽きたから、結局コスモスのところまでたどり着けず、そのためにコスモスは生まれて初めて一人で寝るということになってしまったのだ。

 その結果が、これだ。

 コスモスは、メッチャ怒っていた。


「だから、ごめんって。パッパもな、コスモスをほったらかしにしてたわけじゃないんだよ」

「もーいーもん! パッパは、キレーなお姉さんとチュウしてるほうがすきでしょ!」


 なんでやねん。

 だが、今のコスモスは頑なにプイッと横を向いてこっちを見ない。


「いや、別にキレーなお姉さんとなんて何もないぞ! 特に昨日なんてパッパ頑張ったんだぞ?」

「ふーんっだ。マッマたちに言っちゃうんだから!」

「ちょっ、待て待て待て待て待て待て! コスモス、お前は自分の発言がどれだけ世界に影響を与えるのか分からないんだろうが、とにかくそれはやめろ! いや、やめてください!」

「でも、パッパ、キレーな人すきでしょ!」

「んなことねーって!」

「あるもん!」

「ないっ!」

「あるもん!」


 そして、どんな言い訳をしても聞き入れてくれない。


「でも、ヴェルトくんは、キレーな人好きだよね」

「お待ちくだされ、ペット殿。殿は拙者のような、その~、半端物にもお情けを下さりましたゆえ、人の外見のみで寵愛を授けるとも言い切れぬと………」

「ううん、ムサシちゃんスゴく可愛いし………ん? えっ? その、ムサシちゃん? お情けって………まさか!」

「ああああああっ、しし、しまったでござるーーっ!」

「し、信じられない! 姫様たちが居ないからって、そんなことを! ……うん……コスモスちゃんの言う通りだよ。エッチすぎるよ~、ヴェルトくん」


 いや、そこでコソコソそんな会話するなよ、ムサシ、ペット。

 挙げ句の果てに、怒りが頂点に達したコスモスは、ベッドの上に立って、腕を組んだ。


「もういいもん! コスモス、おこプンプンだから、うそつきパッパ知らないもん! コスモスだってもういい子じゃないもん! ワルい子になるもん。フリョーになっちゃうんだから!」


 まさかのフリョー宣言。コスモスは翼をパタパタさせて、俺たちを飛び越え、部屋の奥へと向かう。

 そこには、腕組んで壁に寄りかかったまま、欠伸しているジャレンガ。



「レン君! レン君はワルい子なんでしょ? コスモスにワルい子のなりかた教えて! コスモスもフリョーになるから!」


「はあ? なに、チビちゃん。ワルい子?」



 ってうおおおおおおおおおおおおおいい! 


「待てーっコスモス! そいつに師事を頼むとか、やめろっ!」

「………ふ~ん、ワルい子ね~、まあ、でも、そうだよね? 僕だってさ~、昨日、どこかの変態姫が発情して車から飛び出してくれたおかげで、車が墜落して事故に巻き込まれちゃって、色々面倒だったんだよね~、ねえ? ニート君?」


 すると、俺の制止に対して、ジャレンガはニヤリと笑みを浮かべて昨晩のことをネチネチと。でも、それは俺の所為じゃねえだろ?


「ぷ、くくくく、いい気味なんで。あのヴェルトが子供に頭上がらないとか、マジウケるんで」


 そしてその傍らには、昨晩の事故で怪我したのか、頭と腕に多少の包帯を巻いているが、それでも腹抱えて笑っているニート。

 うるせえよ、悪かったな。


「それも、ヴェルトくんが、あの変態姫どもを男らしく始末しないからあんなことになったわけだし、これぐらいの仕返しはありかな?」

「やめろっ! っていうか、コスモスに不良の師事なんてことしたら、テメエは俺の嫁に殺される前に、チーちゃんに消滅させられるぞ!」


 コスモスが不良になったら、国が爆発して、真っ白いカブトムシみたいな魔王様がやってきかねん。


「というより、コスモスが不良なんて絶対ダメに決まってる! 不良なんて、クズでダメ人間の最悪な生物にさせるなんて、絶対にダメだ!」

「あのさ、ヴェルト。お前さ、ブーメランって言葉知らない? 全部お前に返って来てるんで」


 ニートのツッコミに何とも言えない中で、俺の制止は続いたが、コスモスはこっち向いてくれない。

 すると………



「やめないか、コスモス」



 その巨体の腰を曲げてコスモスを高く持ち上げる、逞しき男、バスティスタ。


「バッくん……」

「お前の父親と母親以上にお前のことを考えている者は世界に存在しない。だが、父親も母親も完璧ではない。約束を守れなかったり、お前の願いをどうしても叶えられない時もある。だが、それでも世界の誰よりもお前を考えているということは分かってやれ」


 バスティスタ………さすが、言葉に重みが………



「って、元々、テメェから始まったことだけどな! そもそも、テメエが姫に告られて、さっさとチューでもしてやって部屋に連れ込んでいれば、エロスヴィッチが現れることも暴走することもなかったんだよ!」


「……分かっている。俺のことで、本当に迷惑をかけたと思っている。挙げ句の果てに、気づいたら意識を失って寝ているという堕落ぶりだった」


「謝んなあああああああああああああッ! どう考えても、俺の八つ当たりだろうがーっ! 十ゼロで、オメー悪くねえし! なのに糞真面目に捉えやがって~」



 ちなみに、エロスヴィッチは簀巻きにして、ホテルの屋上に吊るしてる。そのあと、どうなったかは知らん。



「ぷーっくくくくく、ほんと、かわいくて面白いわね、あなたたち」



 すると、その時、これまでずっとこのやりとりを黙って見ていた一人のおばちゃんが、耐え切れずにとうとう笑い出してしまった。



「昨晩のことは、我々としても軽く見ることはできなけれど、それでもその中心に居たあなたたちも、こんなふうに喧嘩したり言い争ったりするのね」



 それは、俺たちのこっちでの生活を全て面倒見てくれている、ホワイトとかいう女。



「本当にそう思う。私たちも向こうの世界で小競り合いすることになった原因は、コスモスちゃんだから、よっぽど大切にされているのね」



 そして、そのサポートとしてやってきたアイボリー。

 昨晩での騒動を色々と処理し、俺たちの様子と今後についての話をするために来たようなんだが、のっけから俺とコスモスの問題により後回しにされて、ずっと部屋の隅で待機させられていた。




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