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第9話 メンドクサイパターンだ

「そういえば、フォルナ姫で思い出したよ。来る途中、彼女とさっきすれ違ったけど、君たちは一緒じゃなかったのかい?」


「ぬっ……」



 俺が先生に見られたくないことのもう一つ。

 それは、街の大人たちだけでなく、こうして十歳の子供にまでフォルナとのことを弄られることである。


「ぷっ、くくく……あの朝倉が……周囲公認の十歳の彼女持ちでそれを十歳の子供にからかわれて……」


 ほら、先生がめっちゃ肩をプルプルさせて笑ってるし!


「ったく……別に俺たちがいつも一緒に居るとか思うなよな? 俺がどう動こうが勝手だろ」

「君は本当に自分勝手だね。いつか、君もこの国の王族になるのだから、少しは落ち着きを持ったらどうだ?」

「そーだよ。俺もシャウトも将来将軍になるのに、お前がだらしねえ王様になったら困るんだよ!」


 ?


「シャウト……バーツ……何で、俺が王族になるんだ?」

「当たり前じゃないか。君がフォルナ姫と結婚したらそうなるじゃないか」

「おめー、今更何を言ってんだ? 姫様と結婚したらお前は王様だろ?」


 俺は、「こいつ何馬鹿な事言ってんの?」と子供に呆れた顔して言われてしまった。


「まてまてまてまて、確かにそれはそうなんだが、それを真顔で言うのはやめてくれ! ガチみたいじゃねぇか!」

「君こそ何を言っているんだい? この間、街中でフォルナ姫が、ようやく君がプロポーズしてくれたと騒いでいたよ?」

「ガチみたい? ガチってやつだろ? 俺もそれ聞いたぞ? お前がプロポーズしたって」


 俺はたしかに『いい女になったら結婚してやる』とフォルナに言った。

 それをフォルナは周囲に吹いて回ったのか?


「私も聞いたよ。城で侍女や衛兵、国王にも嬉しそうに語っておられた」

「んなっ?!」


 しかも、大将軍のタイラーまでもがニヤニヤと。

 面倒なことになった。


「まあ、男の責任と思いたまえ。君が国王になるころには、シャウトとバーツも将軍になっているだろう。二人とも優秀な勇者候補。二人が支え、姫様もいる。この国の未来は安泰だ」


 これがこの国のおかしなところだ。

 貴族や軍の幹部など、平民と身分が天地ほど離れている連中が、誰も身分の違いに執着をしていない。

 普通、農民が王族になるとか、冗談でも言わないし、むしろ必死に妨害するはずだ。だが、今みたいな話をタイラーやシャウトをはじめ、みんな本心で言っているからタチが悪い。


「なあ、朝倉。俺は今のうちにお前に媚び売っといた方がいいのか?」

「やめてくれ、先生。いじられるのは、高校時代だけで十分だからよ」


 照れるというより居心地が悪い。それが俺の正直な気持ちだった。


「もういいや。俺は帰るぜ」

「なんだい。せっかく会ったんだから、このあとケーキでも食べに行こうよ」

「俺はコッテリを食って腹いっぱいなんだよ」 


 もう用事も無くなったし、さっさと帰ろう。そう思って外に出ようと思った俺だったが、


「お待ちしておりました、タイラー将軍。こちらの細剣≪レイピア≫が、ご子息専用に作らせたものです。それと、バーツくん用に合わせたブレードです」

「拝見しよう。シャウト、バーツ、持ってみたまえ」


 なに?



「ちょっと待てえええええええ! どういうことだ、ジジイ! ご高説のわりには、貴族の息子には武器を売るのかよ! インチキだぞ! そいつも俺と同じ十歳だぞ! ってか、バーツも俺と同じ平民だぞ!」


「たわけえ、お前のような底の浅い坊主とシャウト様とバーツくんを一緒にするでない! 二人は将来、勇者と共にこの暗黒の時代を終わらせる可能性を秘めた逸材。心構えも、覚悟も、坊主とは歴然の差じゃ」



 うっ、否定できない。

 確かに、シャウトとバーツの才能はフォルナに匹敵するらしい。

 シャウトはガキのくせに大人びてるし、バーツはガチで勇者を目指す熱血正義バカ。

 でもよ、一応は十七歳の精神年齢の俺が十歳のガキに負けるって……凹むよな。


「まあまあ、落ち着いて。それにしてもヴェルト、君が武器を持ちたくなったとは驚いたな。何かあったのかい?」

「うん、僕も気になってたんだけど、ヴェルトがここにいるのは武器を買いに?」

「そうか! ヴェルト、お前もようやく正義の心に目覚めたんだな! この暗黒の時代を終わらせる勇者を目指す心に!」


 十歳で世界を救うことを使命と思っているガキ。かたや、この世界のどっかにいるかもしれない好きな女の子を探すために、武器を探している俺。

 恥ずかしくて言えるか。


「なんでもねーよ」

「ふふ、軽々しく言えぬ事情か?」


 恥ずかしくて言えねえ事情だ。てか、この理由を話したら、俺はフォルナにぶっとばされる。

 だが、タイラーはなぜか興味がありそうだった。少し俺の様子を見ていたが、突然……


「よし、ヴェルト。ちょっと、今の君がどの程度が見せて貰えないかい?」

「なに?」

「親友の息子のよしみだ。もし君がシャウトに一太刀でもいれることができたら、君の望みを叶えよう。どうだ? 君の覚悟を見せてくれないか?」


 やばい。最強にメンドくさいパターンになった。


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