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白炎を手にしてどう思ったか

次の日、朝目覚めてから、早速朝食を食べに居間に向かう。

昨日、隊のみんなと楽しくお酒を飲んだことで、居間で朝食をとるのも億劫ではなくなっていた。


「おはようございます!」


障子を開け、元気よく挨拶をした。

居間には隊長が座っており、台所ではおそらく凪さんが料理を作っている最中だった。

それぞれから、おはようとの声が返ってくる。


「そうだ、斑。朝食のあと、少し俺の部屋で話があるんだ。凪も関係ある話だから、後で凪と一緒に俺の部屋に来てくれ」


隊長の言葉に対し、わかりましたと返事をした。

隊長と凪さんと話ってなんだろう。

やっぱり白炎についてだろうか。


朝食を食べ終わったあと、凪さんは隊のみんなの使った食器を洗っていた。

何もせずに凪さんを待つのも悪いので、何かできることはないかと聞くと、じゃあ、話し相手になってもらっていい?と言われた。


「斑ちゃん、隊の生活はどう?うまくやっていけそう?」

「そうですね。。。まだ分からないことばかりですが、皆さんよくしてくださるので、何とかやっていけそうです。まだ会っていないカナタさんがどんな方かっていうのが少し不安ではありますが」

「あ~、そうねえ。カナタは人懐っこいし、蒼炎の使い手としては守護隊の中でもトップクラスでとても頼りになるわよ。それにうちの隊の副隊長だしね」

「えっ、カナタさんが副隊長なんですか?」

「そうそう。昔は私が副隊長やってたんだけど、今は空と海がいて、前線には出られないしってことで、カナタが副隊長をすることになったの。愛李やエリカは若干認めてないらしいけどね」


まぁ、カナタに関しては斑ちゃんが心配するようなことはないと思うから安心して、と付け加えてくれた。

そんな話をしているうちに凪さんは、洗い物を全て済ませてしまった。


「おまたせ。洗い物も終わったし、隊長のところに行きましょうか」


そうして、凪さんと一緒に隊長の部屋へと向かった。

隊長の部屋は、居間から一番遠い場所にあり、部屋の大きさも他に比べて一際大きい。

なんでも、寝相が相当悪いらしく、部屋を大きくしなければ、部屋のいたる所を蹴られ、家がもたないからなのだとか。


「隊長、凪と斑です。失礼します」


凪さんはそう言って障子を開けた。

僕もそれに倣って、失礼しますと告げる。


「おう、凪に、斑。わざわざ来てもらってすまんな」

「隊長が部屋まで呼ぶってことは大事な話があるんでしょ?斑ちゃんたら、さっきから緊張しまくりで」

「え!いや、まぁそうですけど。。。」


大事な話の前でも凪さんの調子はいつものままであった。


「俺が大事な話をするってのは、やっぱり二人とも分かってるよな。それなら、早速本題にいくか」


隊長のトーンが一段階下がる。


「斑。昨日、白炎が出たとき、純粋にどう思った?何言っても大丈夫だから、率直な感想を教えてくれ」

「ほ、本音でいいんですか?」

「あぁ、本音で頼む」

「わかりました。正直に言うと、白炎が出たことに対して、若干の失望はありました。僕は妹である燈の仇を討つために頑張ろうと思っていたのに、白炎だと自分で仇を討つことはできないので」

「そうだよな。俺もあれからそのことを考えていて、凪とも相談をしたんだ。俺の意見は、貴重な白炎の使い手には、ヒールなどの回復技による後方支援に専念してもらい、できるだけ危険を犯してほしくない。つまり、お前が言うように、自分で燈ちゃんの仇を討つというのは叶わない」

「そうですよね」


わざわざ呼ばれたこともあり、後方支援以外の別の道もあるのでは、と少しだけ期待していたが、無理そうだ。

そう悟って、僕は少し肩を落とした。


「しかし、な。凪は俺の意見を否定した。これは凪の口から直接聞いた方がいいかもしれねぇ」


隊長は僕に向けていた視線を凪さんへと移した。


「じゃあ、ここからは私から話させてもらうわね。斑ちゃんも知るように、私はあなたと同じ白炎の使い手。でも後方支援に専念していたわけじゃないの。もちろん場面場面に応じて、どうしても後方支援を任されることはあったのだけれど、基本的には最前線で戦っていたわ」


予想外の話が展開され始めた。

白炎の使い手である凪さんが最前線で戦っていた!?

凪さんは落ち着いたトーンで話を続ける。


「私は陽の国で生まれた。両親が守護隊でね。分かりやすい例で言うと、私と空と海の関係かしらね。空と海が5歳にしてすでに陽珠を飲んでいるように、私も同じくらいの年のときに陽珠を飲んだの。それで白炎の使い手になった。そのころから白炎は貴重だったから、幼いながらも父や母と一緒に救助や陰獣の討伐などに行くこともあったわ。もちろん隊には私の他にも白炎の使い手はいたし、何より父が隊長だったから、私が危険に脅かされることはなかったの」


普段の凪さんを見ている僕にとっては、昔の話をする凪さんは信じられないくらい真面目で、そして声に温もりがなかった。


「私が12歳のころ、私は他の白炎使いがいなくても、一人で隊の後方支援をできるくらいにまで成長していた。陽の恩恵を若くから受けていたから、地の国で生活するよりも身体の成長も早かった。身長はそのころからあまり変わっていないくらいよ。ほとんど一人前として扱われるようになった私は、徐々に危険な任務にも参加するようになっていったわ」


凪さんは太ももに置いていた手に少し力を入れ、着ていた衣服にしわをつける。


「凪」


話を聞いていた隊長は話の流れで何かを察したのか、忠告するように凪さんの名を呼んだ。

隊長の一言の後、凪さんの緊張が一気にほぐれたのが分かった。


「まぁ、それでね。最初の頃は後方支援ばかりだったんだけれど、やっぱりみんなと一緒に戦いたいという思いが強くなっていったの。それから、私は必死に剣と白炎の訓練に励み、オートヒールっていう自動で回復できる技を編み出して、それを使いこなすことで、最前線で戦う事を許された。いつしか白炎の剣士っていう異名までついてしまうくらいまで活躍したの」


凪さんは、ふぅっと息を吐き、話を続ける。


「だからね。あなたも最前線で戦いたいっていうのなら、誰がなんと言おうと私は応援するし、精一杯力も貸してあげる。ただし、その道は本当に険しいこと、それだけは覚えていて」


こうして凪さんの話は終わった。

隊長からは、どちらにせよ初歩の訓練から始めることに変わりはないから、訓練をしながら三日間くらい、じっくり考えてみてくれ。と、そう言われた。


とりあえず、訓練は午後から開始するそうなので、それまでは自室に戻ってゆっくり過ごすことにした。


『ねぇ、セイさん』

『ん、なんだ?』

『さっき、凪さん、どんな話をしようとしたんだろうね』

『ん~、たしかにあの男の方の剣幕すごかったからなぁ。なんかまずいことでも言おうとしたんじゃねーの?それにしても、斑!お前いつの間にかため口になってるじゃねーか!」

『そうだよね。凪さん、昨日からちょっと変だったし、あと、凪さんのお父さんが守護隊の隊長だったって。今どうしてるんだろう』

『もう死んじまったんじゃねーの?それで、そのことが何か重要なことで、お子ちゃまな斑にはまだ教えられない、ってそんなところさ』


あと、ため口の件、無視すんじゃねぇってセイさんは怒ってた。

死んだのでは、と考えるセイさんに思いっきり怒りたかったが、僕自身も同じことを考えていた。

もしかしたら、凪さんのお母さんも既に死んでしまっているのかもしれない。

旦那さんに関しても謎のままだ。


いくつかの疑問を覚えたが、あまり詮索するのもよくないので、とりあえず、隊長からもらった守護隊の心得にでも目を遠しながら、時間が午後になるのを待つことにした。

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