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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
四章 竜聖国
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九十七話 羨望の鏡

重い空気の部屋で頭を床に当てている金髪の少女。戸惑いながらそれを眺める黒髪の少女。沈黙に支配されている2人の少女がここに居た。堪えきれず黒髪の少女は話し掛ける。


「あの、何故こんな状況に?」

「あ、そ、その。大変失礼致しました。黒龍様にご無礼を働き、どうかご容赦を」

「怒ってないけど、それよりも頭を上げてほしい」


私がそう言っても姿勢を変えてくれない竜巫女さん。この状態で人が来たら、誤解を招くので早く立って欲しい。そして案の定誰かが声と共に部屋に入って来た。咄嗟に仮面を外す。


「ラーナちゃん?ここかしら?入るわね」


同じ金色の髪をした、竜巫女さんより少し薄い髪色の女性が入って来る。そしてこの状況を見て当然戸惑いながら口を開く。私は無言のまま。喋ればまた誤解を生むと思ったから。


「え?この状況はどう言う?ラーナちゃん。このお嬢様はどちら様ですか?」

「あ、お、お母様。この方はその」


母君は私を観察しながら口を開く。


「えっと?もしや?その赤い瞳は」

「黒龍様です」

「でもあの方は男性だった筈です」

「でも、間違い無いです」

「いくつか私の見た情報とは違いますわね。ラーナちゃんが言うならば信じましょう」


どうやら流れは変わって信用してくれるっぽい。凄い信頼だね。流石は竜巫女様。私とは大違いだよ。仮面も外してよかった。装着したままだと完全に竜巫女を襲う刺客だよ。


「さて、失礼致しました。私はこの国の王妃、リアーナと申します。どうぞ気軽にそうお呼び下さい」


なんととんでもない事を急に言い放つお母様。王妃?それってあれだよね。王様のお嫁さんと言う事だよね?つまり国で2番目に偉い人だよね。つまりお偉いさんだよね。ん?私は何を言っているのだろう。


「リアーナ王妃様。よ、よろしくお願い致します」

「あら?この国では黒龍様がこの国の最高位でありますから、私達王族相手でも敬称は必要ありませんわ」

「で、でも。あ、それよりも竜巫女様は王女様なんですね」

「そうですね。今代は王女である、ラーナちゃんが務めております。さて?ラーナちゃん?自己紹介をしておりませんのね?」


私に対してよりほんの少し、わからない程度に語気を強めて娘に話し掛けている。竜巫女様の反応を見るに多分、リアーナさんは怒ってる。目に涙を浮かべ背中を震わせている金髪の女の子。少し可哀想。


「わ、私は第14代目竜巫女を務めております。ラーナと申します」

「えっと、よろしく。私は」


話している途中でアイちゃんが遮る様に私に言う。


《名前を名乗るのはやめておきましょう》

『え?なんで?』

《ちょっと、色々ありまして》

『う、うん?まあわかった』


何故かはわからない。それでも指示ならば従っておこう。


「私は黒龍です」

「さて、自己紹介も終わりましたし、少し2人でお話しをしていて下さい。私はアルバートを呼んできますね」

「お、お父様を呼ぶのですか!?」

「ラーナちゃん?陛下、です。当然です。黒龍様とお話しがありますからね」

「は、はい。わかりました」

「さて、時間を掛けますから黒龍様と仲良くなっておく事です。でないと‥‥‥では、ごゆっくり」


そう言って王妃様は部屋から出て行く。とても気の毒な竜巫女さん。狼狽えているので取り敢えず4人掛け用のテーブルを囲む様に誘導する。私は話すのが得意では無いけれども仕方ない。

私の斜め前に座らせて話し掛けてみる。多分対面には王様が座る筈だ。


「えっと?竜巫女様?お話でもしましょう?」

「は、はい!どうぞ宜しくお願いします」


ガッチガチに固まってしまって、もうどうしようもない。こんな時の対処法を私は知っている。そう、手を握ってあげる事だ。ラーナちゃんの手を捕まえて、ラーナちゃんの瞳を見つめてあげれば少しずつ話し始める。


何故私を最初に頼ったかを説明してくれた。国の危機は昔から懸念されていた。そして竜巫女が代々引き継いでいる杖で私にコンタクトを取ったらしい。黒龍が国を離れてから2年目くらいから繋がらなくなったらしい。その情報は国民に話してはいないが、その事は相当揉めたらしい。事情を知っているお偉いさん達だけの話らしいのだが。


その事情を知らぬまま、昨年竜巫女を引き継ぎ、少し前に試した結果私に繋がったのだと言う。最近では変な噂が流れ、国境での争いも激化してきている。だからこそ黒龍の力を見せ各国を黙らせたいらしい。


この竜巫女と言うお仕事は大変な名誉であるらしい。ラーナちゃんはお父さんに認められたくて必死に努力をして、竜巫女になれたのに褒められていないらしい。さらに黒龍と連絡が取れず相当絶望していたみたい。そんな感じの愚痴を‥‥‥と言うか大半がお父さんの愚痴である。


多分ラーナちゃんはお父さん子なんだね。認められたくて努力して、でも認められないから反発してと言う感じだ。「お父様なんて嫌いです!」なんてラーナちゃんは言ってるけど絶対嘘だ。少なくともそれだけは分かる。


なんだか頑張っても惜しい所でゴールを取り逃がしている少女の話を聞いて目が潤む。多分私はラーナちゃんを嫌いになれない。寧ろとても良い子で、何事にも真っ直ぐ。こんな短い時間で仲良くなっている気がする。とても羨ましく感じながら、私は話を聴くことに徹するのだった。

さて、前回に続き竜巫女回です。割と作者は竜巫女様は好きなキャラです。2番目くらいですけどね。ちなみに1番はチルダさんです。


それはそうとラーナ様は中々不憫な女の子です。頑張っても結果に結び付かない。そんな王女様ですがきっといつか幸せになる筈です。いや、幸せにしてあげたいなと思いますです。

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