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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
四章 竜聖国
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九十六話 誤解

建物の中は現在大騒ぎ中である。事の発端は金髪の少女が悲鳴を上げた事である。周りの人達は何事かと騒つき、少女の護衛は剣を抜いて黒髪の女の子を尋問している。


つまりどう言う状況かと言えば、私は今非常にマズい状態である。騎士に囲まれ何をしたのか問いただされている。別になにもしていない。強いて言えば

「私は黒龍です。なので驚かないで下さい」

と言っただけ。そうしたら竜巫女さんがとても驚いてしまった。そして現在動揺中であり、私を弁護してくれる者はいない。


「さあ言え!竜巫女様に何をした!」

「私はまだ何もしていない!」


そう言って反論すれば議論は泥沼と化す。


「まだ!?ならばこれから何かをするつもりだな!」

「え!あ、いや。違う」

「何が違うのだ!?竜巫女様に仇成す者は全て引っ捕えるのだ!」


騒ぎは混沌となり終息しないと思われたが、そこに1人の声が響き渡る。それは混乱から回復した金髪少女の声である。


「静かになさい!これからこの方とお話しをします。他の者は下がりなさい!」

「し、しかし!」


当然騎士の立場上それは許されないのだろう。かと言って反論するのも良くは無いのだろうが。しかし竜巫女は騎士を黙らせる為に再度命令を下す。


「今日の悩み相談は中止です。この方を城へと連れて行きます。否定は聞きません。護衛がしたいならば付いて来ることを許可します」

「竜巫女様!」

「皆さん、今日はお集まり頂いたのに突然の中止をお許し下さい。私はこれからやらなければならない事があるので、また次回お願いします」


そう言って頭を下げる竜巫女さん。この態度を見て騒ついていた人々は鎮まり返る。そして竜巫女さんの言った事に従う様に皆んな帰り始める。つい呆気に取られ人の波が引くのを眺めていた私。それよりもお城?これは間違い無く王城で裁かれるだろう事を察した。

そしてクルリとこちらを向いて口を開く竜巫女さん。


「さて?あなたは私に何もしない。信用しても良いのですか?」

「え、あ、はい」

「男性と聞いておりましたが、成る程。声が変だと思っていたのです」

「えっと?」

「細かい話はまた後でしましょう。それと証明する手立てはありますか?最悪証拠が無ければ死刑を覚悟して頂かねばなりません」


淡々と死刑と言う単語を口から放つ。先程の動揺はどこへやらとても凛々しい。見た目よりは相当偉いのだろう。周囲の騎士に手で指示を出している。そして難しそうな顔をしている騎士を無視して先行する。騎士としての妥協として私と竜巫女さんの間に騎士が入り、隊列を組んでから城へと歩き出す私達。


視線を集める一行。念の為黒髪の少女は仮面を装着しており、騎士に囲まれて歩いている。さながら竜巫女様が、罪人を引っ捕らえ連行している様にも映るだろう。そして一行は気付かなかったが、そこの通りのお店で買い物をしている赤銅の3人組。当然この光景を見てしまった。またまた少女は誤解を生みながら城へと辿り着く。


城内に顔パスで入って行く竜巫女さん。そして部屋へと連行されて奥の席に座る様に言われる。驚愕している騎士の人に向かって金髪の少女は命令を下す。


「さあ、役目は終えた筈です。下がりなさい。私はこの方とお話しがあります」

「それは出来ません!貴女様を得体の知れぬ者と2人きりにするなど」

「ふむ成る程。よくわかりました。それでは命令です。下がりなさい」


最初は優しい声から段々と凍てつく様な声音に変化し、騎士の人を脅す竜巫女様。正直な所とても怖い。私が直接言われている訳では無くともコレなのにあの騎士さんは大丈夫だろうか?


「失礼しました!」


言うまでもなく騎士さん達は頭を腰から九十度折り曲げ即刻退散する。そして静まり返っていてとても気まずい部屋で竜巫女様は私に話し掛ける。


「さて、失礼致しました。その、疑う訳では無いのですが本当に黒龍様ですか?」

「は、はい。証明すると言えばどうすれば良いでしょうか?」


緊張もあり、何も手立ては思い付かない。いや、正確に言えば黒龍化すれば良いだけである。だがこれはアイちゃんに何が起こるか分からない上に、人の多い所では目立つので不可能だろう。この国を助ける為にここへ来たが、生活を捨ててまでと言うつもりでも無い。だからこそ可能な限り私が黒龍であると知られたくない。だがそんな中途半端であれば何も得策など有りはしない。


一応アイちゃんから翼を生やしてみると言うアドバイスは貰っている。でも弱い気もする。当然龍ならば翼はある。それでも翼があるから龍だと言う証明にはならない。行き当たりばったりでここまで来てしまった。

それを聞いた竜巫女様は胸元から黒い小さな短杖を取り出し私に差し出す。どう言う事かと頭の中に疑問符を浮かべれば、私に言い放つ。


「この杖に魔力を込めてみて下さい。貴女様が本物ならば可能な筈です」


眺めれば私の使っているナイフと同じ魔力を感じる。言われた通りに私はそれを受け取って魔力を込める。そして黒く光を増していく。それを見ていた竜巫女様は、驚きながら跪く。相変わらず気まずい雰囲気の中で見つめ合う少女達なのであった。

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