九十五話 竜巫女
ドラゴンリードの宿で一晩明かした少女は現在悩んでいる。勢いで竜聖国の首都に来た。だがしかし、私自身をどうやって黒龍だと証明するのかと言う事である。
そもそもこの格好であれば何もしていなくても不審者である。それが例えば「黒龍です!」なんて言ってしまえば即刻逮捕である。不敬罪となるだろう。この国で最も罪は重く、恐らく死刑。
取り敢えず手立てを考えるが、何も思いつく筈も無いので、相も変わらずアイちゃんに‥‥‥なんてね。
《‥‥‥ワーオモシロイデス》
『正直に言って良いんだよ?』
《いえ》
『まあ、良いけど。それより聞いてたのなら何か良い方法無い?』
《随分と無茶振りですね。理解してくれる者に正直に言うのが良いと思いますが》
『なら、竜巫女さんかな?会いに行ってみる?』
《そうですね。但し、これから単独行動をするべきですね》
『やっぱり1人の方が好都合なの?』
《この国では安全かもしれません。ですがまだ分かりませんからね》
そう言って2人で無言の会話をしていれば皆起き始める。布団を片付けて準備を始めれば会話が始まる。
「ルビー君は今日どうするの?」
リリアさんに問われた私は3人に断りを入れる為、嘘を混ぜながら説明をする。
「なので親の故郷を1人で見て回ろうと思っています」
1人でを強調して言えば察してくれる皆。正直大分我儘を言っているが理解してくれるらしい。
「そっか、なら私達は観光でもする?」
「そうだね。ルルも良い?」
「ん。お土産買わないと。ドラゴンの置物」
「それ喜ぶの??」
「多分。あーいうのが男の子は嬉しいみたい」
「へー。私は貰ったら内心困るわ」
「んー?私も要らないな」
この街に入ってすぐに目に付いたドラゴンの玩具の事だろう。何故かドラゴンは人気無いのかも。少し寂しい。ま、まあこの国に入る時に竜と龍は明確に違うらしいと学んだので、なんとか傷は浅いけどね。
準備を終えて街の散策に繰り出す。ある程度歩き中心部へと向かえば、見覚えのあるマークの建物を見つける。その建物はどうやら冒険者ギルドである。そう言えば聞いたことがあるのだがギルドはどの国でも存在していて、国の機関でありながらも半独立状態らしい。意味はよくわからないんだけど、横の繋がりが重要だとチルダさんに説明された事がある。
さて中に入り受付へと並ぶ。昔は割と嫌だったけれど、慣れてしまっている。コツは何も考えない事、聞かない事である。私は心を閉ざした。そうすればほら、私の番。
「お、おはようございます。依頼、でしょうか??」
「違う。聞きたい事がある」
「は、はい。わかりました。何でしょうか?」
「竜巫女さんの話を聞きたい。会ってみたいんだけど」
私がそう言えば周りの人達が、反応して騒つき始める。やれ不審者だとか不敬だとか。様付けしろだとか何とか。‥‥‥様付けするべきだったか。ミスったね。
《人間如きが喧しいですね。消しましょう。今すぐにでも。私のクロを侮辱する物こそが不敬です》
『まあまあ、ここは竜聖国だからさ。竜巫女さんはすごく偉いんだと思うよ?』
《他人の威を借りているだけの人類が気に入らないのですよ。竜巫女とやらは知りませんがね》
『まあ怒っても仕方ないよ。それよりも情報だよね』
《貴女がそう言うならば》
会話を終えて、受付さんの反応を見る。すると引き攣った笑顔で
「そ、その、竜巫女様に会いたいのであれば午前中に教会で悩み相談をされています。ですが、くれぐれも気をつけて下さい。竜巫女様ですからね」
どうやら相当な反感を買えた様子。私は凄く動揺している。仮面を着けていなければ表情が見られてしまったかもしれない。本当にこの国では竜巫女さんの事は気を付けないといけないみたい。本当に崇められているみたいだ。
逃げ出す様にギルドを後にして、教会へと向かう。恐らく信仰対象は黒龍だろう。聞くまでも無い。それはそうだろう、聞いた教会へと辿り着いた。だがてっぺんに付いているのは十字架ではなくて、ドラゴンが乗っている。
なんとも説明は出来ないが、異常なのでは?と思いながらもその建物に入ってみる事にする。
竜巫女?と思しき女の子の奥に杖が祀られており、その人に話を聞いて貰おうと結構並んでいる。列に並べば私の後ろにひっきり無しに人は並ぶ。やはり竜巫女さんは、要人なのか護衛の騎士が複数人立って警戒をしている。そして話を聞いてもらう前に身分証を提出するらしいのだ。
私の番が近付いて来れば騎士さんが私に話し掛ける。
「貴様!その仮面はなんだ!外せ!」
逆らうメリットは無く、赤銅も居ないので外す。ついでに身分証も手渡す。そうすれば萎縮してしまった騎士さんが謝る。
「うおっ!と、女の子だったのか。すまんな。ん?Cランク!?俺より強いのか?」
そして何度も驚く愉快な騎士さんに訊ねる。
「そうなの?」
「っと、すまない。どうぞ順番だ」
そう言われて竜巫女さんの対面に座る。同い年くらいかな?2つ上くらいかも。そう思っていると竜巫女さんが、喋り始める。
「あら?可愛い子ですわね。久しぶりの女の子です」
「お話を聞いて貰えると聞いて来たんですが」
「ええ。何かお悩みでしょうか?」
「はい。驚かずに聞いてください」
そう言って体を乗り出す少女。そして耳元で囁やく。その光景を不審に思う、周囲の騎士達や他の人達。そして王女の叫び声が大きく響き渡るのだった。